【山口敬之】ポスト大統領選・カギを握る3人の女性

【山口敬之】ポスト大統領選・カギを握る3人の女性

 メディアが言うように、トランプの「悪あがき」なのか、それともバイデンの「隠蔽」なのか。アメリカ大統領選挙は、投票日を過ぎて10日が経っても、まだスッキリと決着がつかない。

 そんな中、大手メディアだけを見ていたら分からない、ポストエレクション(投票日後の戦争)を読み解く際に注目されている3人の女性を紹介する。

パトリッセ・カラーズ(BLM)

パトリッセ・カラーズ

パトリッセ・カラーズ

via 著者提供
 まずはパトリッセ・カラーズ。今年夏、全米を席巻したBLM運動(Black Lives Matter)の共同提唱者だ。

「BLM=黒人の命を尊重しろ」という名前からもわかる通り、この運動はアメリカ建国以来虐げられてきた黒人の地位向上を目指している、と思われてきた。

 しかし今年彼女らが指揮したデモは、全米各地で暴徒化し、街に火を付け、白人の通行人を棍棒で殴打し、商店に押し入り、略奪を繰り返した。そして、こうした犯罪行為を多くのメディアは見逃し、運動を美化し続けた。

 「黒人の地位向上」というお題目とは程遠い暴虐集団と、それを擁護する大手マスコミ。この構図の真相を鮮やかに解説する1本の動画が、今注目されている。それが反トランプの急先鋒であるCNNが、カラーズにインタビューにした今年7月の動画だ。

「トランプを大統領選挙で再選させないことは当然だが、それでは十分でない。今すぐにホワイトハウスから叩き出さねばならない」

 黒人の地位向上が運動の目的なのだとすれば、大統領に運動への賛同と政策面でのアクションを求めるのが王道であって、トランプ政権転覆を主張したカラーズのこの発言には、一部の運動賛同者からも強い批判が出た。

 今回の大統領選でトランプは、黒人とヒスパニック系の有権者から史上最高の票を得ている。「打倒トランプ」はアメリカの黒人層の意見を代表した立場でない事は明らかだ。

 カラーズの独善的で過激な反トランプ発言について、「思想的な背景があるのではないか?」という質問を受けたカラーズは、衝撃的な答えを返した。

「BLM共同提唱者のアリシア・ガーザと私は、訓練されたマルクス主義者だ」

 と明言したのだ。

 BLM運動の母体となった「黒人未来研究所」(Black Future Lab)は、2017年に「華人進歩会」(CPA: Chinese Progressive Association)という団体の資金で設立された。CPAは、アメリカ政府が「中国共産党の影響下にある」とみなしている団体だ。

 中国共産党系の資金で設立されたアメリカのマルクス主義者団体が、大統領選挙の年に反トランプを掲げて、全米各地で社会騒擾を引き起こしていたわけだ。

 それでは、共産革命実現のために手段を選ばない彼女らは、大統領選挙の期間中、そして開票日から今日に至るまで、何をしていたのか。

 まさに本日(日本時間 11月11日)、カラーズはバイデンにメッセージを送り、BLM運動グループの選挙協力に対して見返りを求めた。カラーズのメッセージ送付がニュースになり、それをバイデン側が否定しない。中国の米国侵略は、ついにホワイトハウスに到達し、もはや公然の秘密ですらなくなりつつあるのだ。

 一方、共和党の選挙不正追及のホームページには、「アメリカ 対 社会主義」(America vs. Socialism)と書かれている。共和党と民主党の戦いではなく、「アメリカ人と社会主義者・共産主義者との闘いだ」と強調している。

 歩調を合わせるように、アメリカのウィリアム・バー司法長官も11月10日、選挙不正の調査に連邦政府が関与することを認め、全米の検察官に指示を出した。この中には、開票所での選挙不正の捜査も含まれている。

ペネロープ・チェスター(DVS)

ペネロープ・チェスター

ペネロープ・チェスター

via 著者提供
 選挙不正の疑惑は多岐にわたる。特にミシガン州は多種多様な疑惑が指摘されていて、「不正のデパート」の様相を呈している。

 死者1万人以上が郵便投票したとか、1900年1月1日生まれの人数千人が投票したとか、様々な選挙不正疑惑が浮上しているが、特に注目を集めているのが、集票ソフトの「不具合」だ。

 ミシガン州の共和党関係者は「北部のアントリム郡で、トランプ大統領に投じられた6000票がバイデン票に化けていた事が判明した」と述べた。

 さらに、この件を調べているシドニー・パウエル弁護士はアメリカFOXニュースの取材に対し、

「『不具合』は常にトランプ票がバイデン票に化けるという方向だけで、バイデン票がトランプ票に化けたケースは見つかっていない。これは偶発的なソフトの不具合ではなく、何者かがシステムに侵入して故意に操作した、れっきとした選挙不正だ」と述べた。

 ミシガン州では47の郡でこのソフトが使用されていたことがわかっている。ミシガン州の得票はバイデンが2,790,648、トランプが2,644,525で、その差は146,123。集票所あたり1500票の「一方的不具合」が見つかれば、ソフトによる集計ミスを修正するだけで、ミシガン州はトランプが逆転勝利する計算になる。

 このソフトをつくったのはドミニオン・集票システム社(DVS: Dominion Voting System)。ドミニオン社は幹部が長年にわたり民主党のナンシー・ペロシ下院議長の顧問を務めていた。

 そこで、この会社を巡る一つのツイートが関係者の耳目を引いている。

 これは投票日の11月3日午後、トランプがツイッターに「全米ですごくいい感じだ。ありがとう!」と書き込んだしたことに対して、DVSの広報担当ペネロープ・チェスター・スターがこうコメントしたのだ。

「ウソだ。ウソを吐き続けている」

 なぜ、トランプの票を「不具合で」大量にバイデンに付け替えたソフトをつくった会社の広報担当が、まだ開票作業が始まって間もない11月3日のカリフォルニア時間の夜19:30に、トランプの敗北を知っているかのようなツィートをしたのか。

 チェスターは4日後の11月7日にも、トランプ大統領の「我々はこの選挙で大勝した」というツイートに対して、「クソ野郎(Fuck You)」とコメントしている。

 Fuck youは、日本語には訳しきれないほど下品な言葉で、たとえプライベートアカウントだとしても、企業の広報担当が使うべき言葉ではない。チェスターのトランプへの憎悪が尋常ならざる次元のものであることを如実に表している
問題のツイート2点

問題のツイート2点

via twitter
 この下劣なツィートには、3つのグラスにシャンパンを注ぐ映像が添えられている。それは、チェスターがトランプの敗北のためにした、何らかの作業を暗喩しているのか。

 チェスターは政治分野のキャリアを、民主党のクリントン元大統領夫妻が設立したクリントン財団でスタートさせている。その後、数々の反トランプ運動で先頭に立っていたことが確認されている。

 ウィリアム・バー司法長官が捜査着手を指示した選挙不正事案には、この集票ソフトの「不具合」も含まれているだけに、チェスターの2つのツイートには、大きな注目が集まっている。

ケイリー・マケナニー(ホワイトハウス報道官)

ケイリー・マケナニー

ケイリー・マケナニー

via 著者提供
 ホワイトハウスの報道官、ケイリー・マケナニーが9日、記者会見で「民主党が不法投票結果を歓迎している」と述べると、アメリカの4大ネットワークが生中継を打ち切る「事件」が起きた。

 マケナニーは「個人の考え」と断った上で、「有権者の身分、署名、住所などを確認する措置に反対するのは民主党だけだ」と述べ、「合法的な票だけが集計され、違法な票は排除されるべきだ」と述べた。

 すると、4大ネットワークの中では一番保守的とされるFOXニュースのキャスターが、「不法投票を裏付ける証拠を提示しない限り、報道官の発言を放送し続けることはできない」として会見中継を打ち切った。CBS、ABC、NBCも「根拠のない主張」として会見中継をストップした。

 ホワイトハウス報道官の会見が、内容が不適切との判断から遮断されるのは、前代未聞と言っていい。

 共和党の重鎮ミッチ・マッコーネル上院議員は同じ日、「大統領選挙はまだ終わっていない」と強調。「メディアに選挙結果を決定する憲法上の権利はない」と非難した。

 マコーネルの上院での立場は、上院議長を兼務するペンス副大統領に次ぐ「多数党院内総務」。もしマコーネルがバイデンからの電話を受けて祝意を伝えれば、共和党が事実上党として敗北を認めたことになる。マコーネルは上院議員として35年のキャリアを持ち、バイデンとも長い付き合いがある。投開票日後は、マコーネルがどういう対応をするのか注目が集まっていた。

 この日のマコーネルの発言は、共和党が組織として大統領選挙の敗北を認めていないことを明確に示す形となった。

 アメリカの4大ネットワークのみならず、NHKや新聞など、日本メディアも「バイデン次期大統領」という既成事実に乗っかって、トランプの抵抗を「悪あがき」と黙殺している。

 しかし党派を超えて高い信頼を得ているマコーネルのような重鎮が、トランプの闘いに寄り添っているという事実は、ほとんど報道されない。
 
 バイデン陣営は、大手メディアの力を借りながら、不正追及の黙殺と大統領選挙勝利の既成事実化に邁進する。片やトランプと共和党は、不正の動かぬ証拠を示すために全力を注いでいる。

「アメリカの共産主義者」と「反トランプ勢力」と「大手メディア」――。

 この3者の不気味な連携が、今回の大統領選挙の混乱を通じて、少しずつ明らかになってきた。
 
 見えてきた闇はとてつもない深く、全体像はまだまだ見えない。1つだけはっきりしている点は、アメリカ大統領選はまだ終わっていないということだ。
 (3475)

山口 敬之(やまぐち のりゆき)
1966年、東京都生まれ。フリージャーナリスト。
1990年、慶應義塾大学経済学部卒後、TBS入社。以来25年間報道局に所属する。報道カメラマン、臨時プノンペン支局、ロンドン支局、社会部を経て2000年から政治部所属。2013年からワシントン支局長を務める。2016年5月、TBSを退職。
著書に『総理』『暗闘』(ともに幻冬舎)がある

関連する記事

関連するキーワード

投稿者

この記事へのコメント

Ai B 2020/11/15 02:11

ブロンド女性以外の2名は初耳です。そのツイッターアカウントは青い検証マークが付いていませんが、本当にペネロープ・チェスター=スターという問題システムの広報担当者なのでしょうか? SNSとはいえ公開のプラットフォームで comin' とか Fuck you の発言は知性が全く感じられません。山口さんの語彙・文章・文体はプロのもので、読んでいて小気味良い。

kamo 2020/11/14 21:11

ペネロープについて初めて知ることができました。恥ずかしながら山口敬之さんの大統領選関係の記事を読むのは初めてでしたが、やはり自然で的確、無理ない説得力に溢れていてジャーナリズムかくあるべきと改めて尊敬の念を抱きました

すべてのコメントを見る (2)

コメントを書く