石破首相のサンマの食べ方
“だらし内閣”と呼ばれるきっかけになった石破首相の着こなしについて。
内閣総理大臣の新任式と国務大臣の認証式後、内閣のメンバーが階段に並んで記念撮影をした写真が話題になりました。ズボンの丈が余り、ジャケットとベルトの間にある隙間のせいで、お腹が出ているように見えてしまったのです。
そもそも、公の場では、上から下まできちんとした身だしなみを整えるべきです。ただ、まわりの人が指摘せず放置しているのも大問題。オシャレや身だしなみは、自分だけでなく周囲の協力があって初めて成り立つものです。
石破首相の食事作法についても話題になりました。2020年11月、お笑いジャーナリスト・たかまつなな氏のYouTubeチャンネルで公開された動画が物議を醸(かも)しています。内容は当時、自民党総裁選で落選した石破首相に対し、食事を交えながら本音をインタビュー形式で引き出す、といったものです。
動画内で、サンマの塩焼きを食べる石破首相。しかし、指を茶碗の縁にひっかける持ち方をし、また、「クロス箸」と呼ばれるような箸の持ち方をしているように見えます。さらに、魚の身をほぐす時に箸を両手に一本ずつ持つ「ちぎり箸」をしています。
この件について、マナー講師・加藤瑞貴(みずき)氏は、『集英社オンライン』(2024年11月16日付)のインタビュー記事で作法はあまりよろしくない、と評しています。対して、「食べ終わったあとのお魚が綺麗で、とても感動しました」「晩餐会などの正式な場ではないですし、そこまで厳密に気にしなくてもよいのでは? というのが私個人の意見です」ともしています。
さらに、冒頭で触れた記念撮影時の着こなしについて、加藤氏は「首相は恰幅(かっぷく)がよろしい方なので、階段を降りる途中でズボンが徐々に下がってしまい、ご本人も気づいていたものの、報道陣がいる手前、直せなかったのかもしれませんね」としています。
確かに、出された料理をすべていただくことは素晴らしいことです。しかし、それが感動的な行為として報道されるのは、逆に褒めるポイントが見つからなかったのではないのではありませんか。もちろん、褒めること自体はいいことですが、それだけでは成長につながりません。
魚の正しい食べ方は、作法の中でも特に難しいので、公の場では、「お腹いっぱいなので後ほどいただきます」といった言葉で上手に対応することも必要ではないでしょうか。なにもすべてをさらけ出すことはありません。むしろ、その場にふさわしい振る舞いを心がけるべきです。
国会で居眠りをする姿勢も問題です。石破首相だけでなく、ほかの議員の中にも居眠りをしている人はいるでしょうが、これは健康を害している兆候でもあります。居眠りに限らず、公の場では、くしゃみをしたり、鼻をすすったりするのも、体調不良をアピールしているようで受け入れ難いものです。
内閣総理大臣の新任式と国務大臣の認証式後、内閣のメンバーが階段に並んで記念撮影をした写真が話題になりました。ズボンの丈が余り、ジャケットとベルトの間にある隙間のせいで、お腹が出ているように見えてしまったのです。
そもそも、公の場では、上から下まできちんとした身だしなみを整えるべきです。ただ、まわりの人が指摘せず放置しているのも大問題。オシャレや身だしなみは、自分だけでなく周囲の協力があって初めて成り立つものです。
石破首相の食事作法についても話題になりました。2020年11月、お笑いジャーナリスト・たかまつなな氏のYouTubeチャンネルで公開された動画が物議を醸(かも)しています。内容は当時、自民党総裁選で落選した石破首相に対し、食事を交えながら本音をインタビュー形式で引き出す、といったものです。
動画内で、サンマの塩焼きを食べる石破首相。しかし、指を茶碗の縁にひっかける持ち方をし、また、「クロス箸」と呼ばれるような箸の持ち方をしているように見えます。さらに、魚の身をほぐす時に箸を両手に一本ずつ持つ「ちぎり箸」をしています。
この件について、マナー講師・加藤瑞貴(みずき)氏は、『集英社オンライン』(2024年11月16日付)のインタビュー記事で作法はあまりよろしくない、と評しています。対して、「食べ終わったあとのお魚が綺麗で、とても感動しました」「晩餐会などの正式な場ではないですし、そこまで厳密に気にしなくてもよいのでは? というのが私個人の意見です」ともしています。
さらに、冒頭で触れた記念撮影時の着こなしについて、加藤氏は「首相は恰幅(かっぷく)がよろしい方なので、階段を降りる途中でズボンが徐々に下がってしまい、ご本人も気づいていたものの、報道陣がいる手前、直せなかったのかもしれませんね」としています。
確かに、出された料理をすべていただくことは素晴らしいことです。しかし、それが感動的な行為として報道されるのは、逆に褒めるポイントが見つからなかったのではないのではありませんか。もちろん、褒めること自体はいいことですが、それだけでは成長につながりません。
魚の正しい食べ方は、作法の中でも特に難しいので、公の場では、「お腹いっぱいなので後ほどいただきます」といった言葉で上手に対応することも必要ではないでしょうか。なにもすべてをさらけ出すことはありません。むしろ、その場にふさわしい振る舞いを心がけるべきです。
国会で居眠りをする姿勢も問題です。石破首相だけでなく、ほかの議員の中にも居眠りをしている人はいるでしょうが、これは健康を害している兆候でもあります。居眠りに限らず、公の場では、くしゃみをしたり、鼻をすすったりするのも、体調不良をアピールしているようで受け入れ難いものです。
APECで座りながら握手
ペルー・リマで2024年11月17日に行われた、APEC首脳会議での石破首相の態度も問題になりました。腕を組み、スマートフォンを操作し、挨拶に来た首脳にも、立ち上がらず座ったまま握手していたのです。一連の態度がSNSで批判され、「日本の恥」というワードがトレンド入りする事態となりました。さらに、各国首脳の記念撮影に遅刻する場面もありました。
国際会議や公的な場では、自ら立ち上がって挨拶をすることは礼儀です。座ったままの挨拶や、背もたれに寄りかかる姿勢、手を縁台につき、腕組みといった態度は、楽をしたいという印象を与え、傲慢(ごうまん)に見える姿勢でもあります。特に、日本では握手をするときに相手を見ず、頭を下げてしまうことが多いですが、これは相手を軽んじているように見られる恐れがあります。握手をするときは笑顔で相手の目を見て行うのが望ましいのです。
スマートフォンを操作していたことについて、例え何かを調べていたとしても、適切な行動ではありません。調べることがあるのならば、ひと言、「調べたいことがあるので少しお時間をいただけますか」と断りを入れるだけでいいのです。公の場でラフな行動をとるのは避けるべきです。もしそれが難しいなら、最初からその場に出席しないほうが良い。
2022年7月、増上寺(東京・港区)で安倍晋三元首相の通夜が執り行われた際、側近からマスクを借りる石破首相の様子が日本テレビ系の『日テレNEWS』で報じられ、SNSでは批判が集まりました。マスクを着用せずに歩く石破首相に、側近が自ら着用していたマスクを外して差し出す。石破氏は受け取ったマスクの形を整えるような仕草をし、映像は別のシーンに切り替わっています。石破氏が側近の使用済みマスクを着用したとの見方が広まり、状況を呑み込めないとする声がSNSでは相次いだのです。
マスク着用を推奨されていたコロナ禍では、マスクを持っていない状態であれば、その対応は最低限必要だったのかもしれません。しかし、撮影されているのがわかっているのであれば、コソコソするのではなく、「マスクを借りるけれどもいいか」といった側近とのやり取りをちゃんとカメラに見せるべきです。さらに、その瞬間にカメラや記者に向かって「側近が使っていたマスクですので、顔に密着することはできません」などの説明が必要です。
常に、何気ないひと言や表情、立ち振る舞いの細部が足りていないのです。首相の座を少しでも長く続けるためには、公私のけじめをつけ、より高い基準で自分を律していただく必要があります。
国際会議や公的な場では、自ら立ち上がって挨拶をすることは礼儀です。座ったままの挨拶や、背もたれに寄りかかる姿勢、手を縁台につき、腕組みといった態度は、楽をしたいという印象を与え、傲慢(ごうまん)に見える姿勢でもあります。特に、日本では握手をするときに相手を見ず、頭を下げてしまうことが多いですが、これは相手を軽んじているように見られる恐れがあります。握手をするときは笑顔で相手の目を見て行うのが望ましいのです。
スマートフォンを操作していたことについて、例え何かを調べていたとしても、適切な行動ではありません。調べることがあるのならば、ひと言、「調べたいことがあるので少しお時間をいただけますか」と断りを入れるだけでいいのです。公の場でラフな行動をとるのは避けるべきです。もしそれが難しいなら、最初からその場に出席しないほうが良い。
2022年7月、増上寺(東京・港区)で安倍晋三元首相の通夜が執り行われた際、側近からマスクを借りる石破首相の様子が日本テレビ系の『日テレNEWS』で報じられ、SNSでは批判が集まりました。マスクを着用せずに歩く石破首相に、側近が自ら着用していたマスクを外して差し出す。石破氏は受け取ったマスクの形を整えるような仕草をし、映像は別のシーンに切り替わっています。石破氏が側近の使用済みマスクを着用したとの見方が広まり、状況を呑み込めないとする声がSNSでは相次いだのです。
マスク着用を推奨されていたコロナ禍では、マスクを持っていない状態であれば、その対応は最低限必要だったのかもしれません。しかし、撮影されているのがわかっているのであれば、コソコソするのではなく、「マスクを借りるけれどもいいか」といった側近とのやり取りをちゃんとカメラに見せるべきです。さらに、その瞬間にカメラや記者に向かって「側近が使っていたマスクですので、顔に密着することはできません」などの説明が必要です。
常に、何気ないひと言や表情、立ち振る舞いの細部が足りていないのです。首相の座を少しでも長く続けるためには、公私のけじめをつけ、より高い基準で自分を律していただく必要があります。
サービス精神?
サービス精神が旺盛なのか、「自分は一般の男性と同じような人間ですよ」と見せたいのかもしれません。担当のマナー講師には必ず注意されているはずですが、わざわざそれを実行していないとなると、「緊張していない」「庶民的」な様子を見せたいと思っているのではないでしょうか。ただ、そのサービス精神が高すぎるのと、庶民受けを狙いすぎているのではないでしょうか。公の場でも行ってしまうため、国民からは逆に批判を受ける原因になっています。
首相の業務は毎日非常にお忙しいでしょうから、細かいところにまで気を配るのは難しいかもしれません。しかし、「首相」という立場であるからこそ、やはり公私のけじめをつけ、公の場では節度を守った振る舞いが求められます。公の場では、やはり本音と建て前をわきまえ、社会的な場にふさわしい振る舞いをすることが重要でしょう。
「マナー」は、ただの堅苦しいルールや古臭い規範ではなく、安心や安全をもたらすものです。首相という「日本の安心・安全」を掲げる立場の人が、その姿勢を自らの行動で示してくださると、国民も安心できるのではないでしょうか。
しかし、マナーよりも、私が最も気になっているのは、笑顔が少ないことです。笑うことはできる人ですが、笑うことと笑顔はまったく違います。笑顔は歯を見せて、余裕を感じさせるもの。その笑顔こそ最強の武器になりますし、日本の方々にも、「こんなに余裕のある笑顔を持った人なんだ」ということを示していただきたいです。
笑顔といっても、間違えてとらえられるといけないので付け加えますが、外交においては、フレンドリーすぎると甘く見られることがあります。親しみを感じさせることと尊敬を得ることは別です。11月7日に行われたトランプ大統領との電話会談で石破首相は「フレンドリーな感じがした」と記者団に感想を述べていました。私としては少々疑問な発言です。今後は、より慎重に対応していただきたいと願います。
私自身、石破首相には感謝と応援の気持ちがあります。私は石破首相と同じく鳥取県出身で、当時、幹事長であった石破首相に県人会でお会いしました。私が紙ナプキンを取ろうとした際に風で落としてしまったのですが、それを石破首相がすぐに拾って新しいものを出してくださいました。心配り、気配りができる紳士的な方だと感動したことを覚えています。鳥取県民として、あのときのジェントルマンな行動には、今でも感謝しています。
だからこそ、今回、少々厳しいことをたくさん言ったかもしれませんが、総理大臣として世界中の人から尊敬され、「この人に会うと緊張する」と思われる存在になっていただくためには、厳しい意見も必要でしょう。
歴代のどの首相でも、政治家でも、あるいは一般の人でも、日本を大切にしたい、一人ひとりが幸せになってほしいと願うのは当然のことです。重要なのは、その思いを形として見せることです。石破首相には、日本を導く立場として、その形をしっかりと示していただきたい。
首相の業務は毎日非常にお忙しいでしょうから、細かいところにまで気を配るのは難しいかもしれません。しかし、「首相」という立場であるからこそ、やはり公私のけじめをつけ、公の場では節度を守った振る舞いが求められます。公の場では、やはり本音と建て前をわきまえ、社会的な場にふさわしい振る舞いをすることが重要でしょう。
「マナー」は、ただの堅苦しいルールや古臭い規範ではなく、安心や安全をもたらすものです。首相という「日本の安心・安全」を掲げる立場の人が、その姿勢を自らの行動で示してくださると、国民も安心できるのではないでしょうか。
しかし、マナーよりも、私が最も気になっているのは、笑顔が少ないことです。笑うことはできる人ですが、笑うことと笑顔はまったく違います。笑顔は歯を見せて、余裕を感じさせるもの。その笑顔こそ最強の武器になりますし、日本の方々にも、「こんなに余裕のある笑顔を持った人なんだ」ということを示していただきたいです。
笑顔といっても、間違えてとらえられるといけないので付け加えますが、外交においては、フレンドリーすぎると甘く見られることがあります。親しみを感じさせることと尊敬を得ることは別です。11月7日に行われたトランプ大統領との電話会談で石破首相は「フレンドリーな感じがした」と記者団に感想を述べていました。私としては少々疑問な発言です。今後は、より慎重に対応していただきたいと願います。
私自身、石破首相には感謝と応援の気持ちがあります。私は石破首相と同じく鳥取県出身で、当時、幹事長であった石破首相に県人会でお会いしました。私が紙ナプキンを取ろうとした際に風で落としてしまったのですが、それを石破首相がすぐに拾って新しいものを出してくださいました。心配り、気配りができる紳士的な方だと感動したことを覚えています。鳥取県民として、あのときのジェントルマンな行動には、今でも感謝しています。
だからこそ、今回、少々厳しいことをたくさん言ったかもしれませんが、総理大臣として世界中の人から尊敬され、「この人に会うと緊張する」と思われる存在になっていただくためには、厳しい意見も必要でしょう。
歴代のどの首相でも、政治家でも、あるいは一般の人でも、日本を大切にしたい、一人ひとりが幸せになってほしいと願うのは当然のことです。重要なのは、その思いを形として見せることです。石破首相には、日本を導く立場として、その形をしっかりと示していただきたい。
鳥取県生まれ。接遇講師。エレガントマナースクール代表取締役。テレビ・ラジオ・YouTubeにも多く出演し、幅広く活躍中。著書に『平林 都の接遇道』(大和書房)、『大人の接遇スパルタレッスン』(宝島社)、『平林先生、大人として恥ずかしくないマナーを教えてください』(総合法令出版)、『なぜか成果を出す人の社会人マナー』(講談社)などがある。