【安積明子】総裁選後に待たれる「解散総選挙」

【安積明子】総裁選後に待たれる「解散総選挙」

 あれよあれよという間に、自民党総裁選の「本命」は菅義偉官房長官になっている。その一方で、かねてから安倍晋三首相の「意中の後継者」と言われながら、本命から滑り落ちたのが岸田文雄政調会長。ある議員は「一時は確実に『次は岸田だ』と思った。岸田さんの警備が総理級になったことがあったから」と述べている。

 しかしそれはほんの一瞬だったようだ。9月2日の菅長官の出馬会見では、2人のSPが菅長官の後ろで護衛した。参加するメディアの数も、菅会見の方が格段に多かった。しかも国民の意識もそのように動いている。

 朝日新聞が9月2日と3日に行った電話による世論調査では、「次の首相に相応しい」として菅長官を挙げたのが38%で、石破茂元地方創生担当大臣の25%を大きく引き離した。同紙が6月に行った世論調査では菅長官は5%で石破氏が31%だったのに、がらりと様変わりしたわけだ。

 果たしてこれをそのまま信じていいのだろうか。同じ世論調査で「安倍政権の7年8か月の実績」についても聞いているが、「評価する」が71%も占めている。これまでの朝日新聞の世論調査で、安倍首相に対する評価がここまで高かったことはあったのか。

 もちろん安倍首相の突然の辞意に対する「ご祝儀数字」の可能性が大きいが、これは長くは続かない。次の政権は安倍人気がある間に、解散総選挙に踏み切るべきだろう。そうすれば選挙の洗礼を受けたことになり、正当性が発生する。自民党内では党員投票を求める声が多かったが、総裁選は事実上の首相選挙だ。国民による選挙以上に民意に添うものはない。

 こうした危惧を感じるのは、現在の国政に政治的な空白があるように思うからだ。安倍首相は次の総裁が選任されるまで臨時代理を置かずに執務を続けると宣言したが、影響力は日々に落ちている。激動する国際社会で、その隙間を狙われないとも限らない。ポストコロナ社会とは、そうした無秩序の社会でもある。

 さて自民党総裁選の日程は、8日告示・14日投開票と決定した。最も注目したいのは「どの候補が一番日本を守るのか」という点だが、石破氏以外は国内政治に偏重しすぎて、それが見えない状態だ。

 そもそも事実上の首相を選ぶ選挙というのは決して人気投票であってはならないし、ましてや派閥の勢力争いの具になってはいけないはずなのだが、すでにつくられた流れで動いている感が凄い。だからといって「漂流する日本」になってしまうことだけは、まっぴら御免こうむりたい。
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安積 明子(あづみ あきこ):ジャーナリスト
兵庫県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。
1994年、国会議員政策担当秘書資格試験合格。参議院議員の政策担当秘書として勤務の後、執筆活動を開始。夕刊フジ、Yahoo!ニュースなど多くの媒体で精力的に記事を執筆している。

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