ウクライナ情勢に日本はどう対応すべきか【朝香豊】

ロシアのプーチン大統領がウクライナへの攻撃を命じる可能性が高まっていると報じられている。仮に大規模な侵攻作戦が行われれば、犠牲者が民間人、ウクライナ軍、ロシア軍合わせて最大8万5000人に達し、難民の数も最大で500万人にもなるとも伝えられている。しかし、果してウクライナ侵攻はあり得るのだろうか。透けて見えるのはバイデン大統領の浅知恵――。

プーチン大統領は戦争を望んではいない

 アメリカの国家安全保障問題担当のサリバン大統領補佐官は、
「ロシアのプーチン大統領がウクライナへの攻撃を命じる可能性は十分にあり得る」
「早ければ明日(8日)かもしれないし、数週間後かもしれない」
 と語り、危機感をあらわにしたと報じられた。

 大規模な侵攻作戦が行われれば、犠牲者が民間人、ウクライナ軍、ロシア軍合わせて最大8万5000人に達し、難民の数も最大で500万人にもなるとも伝えられている。

 こうした一連の報道からはすごく緊迫している感じを受けるが、これらに対してまず我々が警戒しなければならないのは、戦争を起こそうという意図から出たプロパガンダかもしれないという点だ。

 1月20日、バイデン大統領はロシアによるウクライナへの侵攻が「小規模」なら西側諸国の対応も小規模にとどまるとの発言をして物議を醸(かも)したが、あれはアメリカがロシアのウクライナ侵攻を行わせようとする陰謀ではなかったかと思われる。

 さすがに、そんなバイデンの浅知恵に引っかかるほどロシアのプーチン大統領はバカではなかった。

 ロシアがウクライナに侵攻すれば、それを口実に厳しいロシア制裁を行いつつ、ウクライナの安全保障を口実としてウクライナをNATOに組み込むことをアメリカが画策していることは、プーチン大統領にはお見通しだっただろう。西側の一般的な報道とは違って、プーチン大統領は戦争を望んではいないと見るべきである。

ウクライナ情勢に日本はどう対応すべきか【朝香豊】

プーチン大統領はウクライナをどうする

フランス・ドイツの動き

 そして、フランスも戦争を望まない立場から積極的な動きに出ている。フランスのマクロン大統領はモスクワに飛び、ロシアのプーチン大統領との会談に臨んだ。

 ロシアは2月10日からウクライナの北側に位置するベラルーシで、ベラルーシ軍との合同軍事演習を行う予定である。この合同軍事演習についてプーチン大統領は演習の終了後にベラルーシから部隊を撤退させることをマクロン大統領に約束している。

 またプーチン大統領は、事態打開に向けたマクロン大統領の提案は十分実現可能だとした上で協議を継続することで一致したとし、「誰もが受け入れられる妥協点を見つけるために全力を尽くす」と強調した。マクロン大統領の和平を求める姿勢にプーチン大統領は共感しているわけである。

 フランスの動きだけでなく、ドイツの動きも注目に値する。

 ドイツのベーアボック外相はウクライナのクレバ外相との会談で「我々はウクライナの側に立っている」として、対露制裁に踏み切る場合には、ドイツとロシアを結ぶパイプラインのノルドストリーム2の稼働を当面認めないという「高い経済的な代償」を支払う覚悟ができていることを明らかにした。

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プーチン大統領とマクロン大統領の会談

ウクライナの腹黒さ

 だが、その一方でベーアボック外相はウクライナに対するドイツからの武器輸出は認めない姿勢を貫いたようで、予定されていたゼレンスキー・ウクライナ大統領との会談は急遽中止になった。

 ここにウクライナの腹黒さが透けて見えるのではないか。
 ドイツはウクライナが緊張を高める行動を引き起こすのを止める立場に立ち、軍事行動を引き起こさせないようにしようと努めている。だが、反露のウクライナの現政権からすれば、親露派が支配するウクライナ東部への攻撃を行うことでロシアの参戦を引き出し、これを理由にNATOへの加入の道を引き出そうとしているのだろう。
 そのための道具を与えない姿勢を明確にしたベーアボック外相に対して、ゼレンスキー大統領は拒絶姿勢を見せたと見るべきである。

 まとめれば、ウクライナとロシアとの戦争を引き出すことで、これを口実にウクライナのNATO加盟を実現させようとする思惑をアメリカとウクライナが持っているのに対して、フランスとドイツはその危険性を認識しながら、そうした思惑によって地域の安全保障を損なうような事態はごめんであるとの立場で動いているということになる。

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ゼレンスキー・ウクライナ大統領

日本は傍観するな

 さて、日本はここでどう動くべきか。

 1月21日に行われた日米首脳会談で、ロシアがウクライナに軍事侵攻した場合の経済制裁について、日本にも制裁を課す方向で足並みをそろえるよう求められていたことがわかっている。日本はこの場では対応を保留した。

 対中政策を念頭に置いた場合に、日本がアメリカを裏切る行動を取るのは避けるべきである。

 だが一方で、ウクライナで有事が発生する事態となるとすれば、アメリカ軍を極東に集中させておくことができなくなることを懸念しなければならない。

 そもそもアメリカのバイデン政権が今ウクライナ紛争を引き起こそうとしているのは、本質的な親中姿勢のなせる技かもしれないのである。

 議会動向や国内世論に配慮した場合には、とてもではないがあからさまな親中姿勢が取れないバイデン政権が、ウクライナで有事を引き起こすことで米軍勢力を二分させることを行い、結果として極東における米軍のプレゼンスを低下させることで、中国にとって有利な国際環境をつくり出そうとしている可能性を見ておかなければならない。

 こうした観点からすれば、日本はこのウクライナ問題について後ろ向きであっていいはずはない。日本はドイツやフランスと共同歩調をとることで、ウクライナ有事を発生させないように積極的な工作を行うべきである。

 安倍元総理にウクライナ、ロシア、ドイツ、フランス、アメリカをしっかり回らせる積極外交を行ったらどうだろうか。安倍氏であれば軽んじられることなく各国の首脳は会おうとするだろうし、その調停力にも期待するだろう。

 ここでどういう流れになるかは、日本の存立に大きな影響を与えるものとなる。決して傍観するようなことはあってはならない。

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バイデン大統領の腹積もりは……
朝香 豊(あさか ゆたか)
1964年、愛知県出身。私立東海中学、東海高校を経て、早稲田大学法学部卒。日本のバブル崩壊とサブプライム危機・リーマンショックを事前に予測、的中させた。現在は世界に誇れる日本を後の世代に引き渡すために、日本再興計画を立案する「日本再興プランナー」として活動。日本国内であまり紹介されていないニュースの紹介&分析で評価の高いブログ・「日本再興ニュース」の運営を中心に、各種SNSからも情報発信を行っている。『それでも習近平が中国経済を崩壊させる』(ワック)が好評発売中。