技術の「国際標準化」は日米劣勢、中国優位に
アメリカ大統領選の結果は、民主党のジョー・バイデンが自身の「当確」を受けて新政権の準備に入っているが、トランプ大統領は不正投票を訴え続けており、アメリカ政治は混迷の渦の中にある。
そんな混乱するアメリカ政治をよそに、覇権戦略を着々と進める国がある。言うまでもなく、中国だ。
中国の2020年7-9月期のGDPは前年同期比で+4.9%で、新型コロナウイルスの再拡大で世界経済が停滞の泥沼からなかなか抜けられないのを尻目に、2四半期続けてのプラス成長を達成した。
トランプ大統領が仕掛けた米中貿易戦争はアメリカ優位に進んでいるが、向かい風の中でも中国政府は世界の技術覇権を握るための戦略を着々と進めている。
「グレート・リセット(大いなるやり直し戦略)」を公約に掲げるバイデン氏の外交ブレーンで、同氏から次期国務長官にも指名されているアントニー・ブリンケンが、2020年9月の全米商工会議所主催イベントで「中国との完全なデカップリング(切り離し政策)は非現実的だ」と述べた。
ブリンケン氏はトランプ大統領の米中通商合意を「大失敗」と、現時点で戦略的地位は「中国がアメリカを上回っている」と評価しており、中国とのデカップリングより、アメリカの競争力を強化すべきだと訴えている。バイデン大統領が誕生すれば、アメリカの外交・貿易が中国寄りに戻っていくことはほぼ確実だろう。
ただし、ここで本当に問題視すべきは競争力ではない。中国政府が国家戦略としてテクノロジーの国際基準を、中国主導で標準化することを狙っていることだ。平たく言うと、最大の懸念は、日米とは違う中国仕様の規格でテクノロジーを標準化して、技術覇権をにぎる端緒にしようとしている。
そして、さらに深刻なのは、そんな中国の戦略に協力する勢力も我が国にもいるということだ。
そんな混乱するアメリカ政治をよそに、覇権戦略を着々と進める国がある。言うまでもなく、中国だ。
中国の2020年7-9月期のGDPは前年同期比で+4.9%で、新型コロナウイルスの再拡大で世界経済が停滞の泥沼からなかなか抜けられないのを尻目に、2四半期続けてのプラス成長を達成した。
トランプ大統領が仕掛けた米中貿易戦争はアメリカ優位に進んでいるが、向かい風の中でも中国政府は世界の技術覇権を握るための戦略を着々と進めている。
「グレート・リセット(大いなるやり直し戦略)」を公約に掲げるバイデン氏の外交ブレーンで、同氏から次期国務長官にも指名されているアントニー・ブリンケンが、2020年9月の全米商工会議所主催イベントで「中国との完全なデカップリング(切り離し政策)は非現実的だ」と述べた。
ブリンケン氏はトランプ大統領の米中通商合意を「大失敗」と、現時点で戦略的地位は「中国がアメリカを上回っている」と評価しており、中国とのデカップリングより、アメリカの競争力を強化すべきだと訴えている。バイデン大統領が誕生すれば、アメリカの外交・貿易が中国寄りに戻っていくことはほぼ確実だろう。
ただし、ここで本当に問題視すべきは競争力ではない。中国政府が国家戦略としてテクノロジーの国際基準を、中国主導で標準化することを狙っていることだ。平たく言うと、最大の懸念は、日米とは違う中国仕様の規格でテクノロジーを標準化して、技術覇権をにぎる端緒にしようとしている。
そして、さらに深刻なのは、そんな中国の戦略に協力する勢力も我が国にもいるということだ。
「スーパーシティ」構想に食い込む中国企業
現在、いくつもの国でスマートシティの建設が進んでいる。スマートシティとは、ある地域で、物のインターネット(IOT)の技術を使って、生活インフラや社会インフラを、エネルギー消費の効率化(=節約)を実現させながら充実させていくことを指している。いわば、近未来の町を、地域限定で先に実現させようというものだ。
スマートシティ建設の本格化はこれからで、「技術の国際標準化」が確立していない。もし中国の技術で国際標準が確立すれば、これからの世界の都市インフラは独裁国家であり監視国家でもある中国の技術がリードしていくことになる。
中国の国際戦略は、国連や世界保健機関(WHO)など国際機関の事例からもわかるように、国の多いアフリカやアジアの新興国を巻き込んで、圧倒的な票数で自分たちの優位に進めていくというやり方を基本としている。もし、スマートシティで同じことをやられると、日米側が圧倒的に不利であるのみならず、監視国家である中国の監視する範囲が世界に及びかねない。
実際、スマートシティ構想で先頭を走る中国のアリババ傘下の金融会社アントグループ(以下、アント社)などが、日本において進んでいるスマートシティ構想「スーパーシティ」に参入する動きが見られる。もしスーパーシティがアント社の運営になれば、日本はアメリカの制裁対象となって、日米同盟解体の第1歩ともなりかねない。ことは、世界情勢にも大きな影響を与えかねないほど重要なのである。
アント社については、トランプ政権では警戒対象企業になっている。というのは、アント社は中国で広く決済サービスと個人向け融資をおこなっており、すでに数億人ぶんの個人データと数多くの銀行データを所有する「世界1のフィンテック企業」であるからだ。もしアント社の業務範囲が世界中に広がれば、世界のデジタル決済が中国企業に握られることになる。アリババ総帥のジャック・マー氏が中国共産党員であることを考え合わせると、アント社を通じて世界のマネーの動きが中国共産党に握られれば、世界の金融体制をにぎられて、ひいては日米の安全保障をも脅かしかねない。
実際、アメリカ共和党上院議員のマルコ・ルビオが、「アメリカ人の金融個人情報を守るために行動すべきだ」と主張して、アント社の新規株式公開の延期を働きかけたことがある。アメリカの中枢はすでにアント社の危険性を事前に認識しているのだが、日本にはそういった動きは皆無だ
スマートシティ建設の本格化はこれからで、「技術の国際標準化」が確立していない。もし中国の技術で国際標準が確立すれば、これからの世界の都市インフラは独裁国家であり監視国家でもある中国の技術がリードしていくことになる。
中国の国際戦略は、国連や世界保健機関(WHO)など国際機関の事例からもわかるように、国の多いアフリカやアジアの新興国を巻き込んで、圧倒的な票数で自分たちの優位に進めていくというやり方を基本としている。もし、スマートシティで同じことをやられると、日米側が圧倒的に不利であるのみならず、監視国家である中国の監視する範囲が世界に及びかねない。
実際、スマートシティ構想で先頭を走る中国のアリババ傘下の金融会社アントグループ(以下、アント社)などが、日本において進んでいるスマートシティ構想「スーパーシティ」に参入する動きが見られる。もしスーパーシティがアント社の運営になれば、日本はアメリカの制裁対象となって、日米同盟解体の第1歩ともなりかねない。ことは、世界情勢にも大きな影響を与えかねないほど重要なのである。
アント社については、トランプ政権では警戒対象企業になっている。というのは、アント社は中国で広く決済サービスと個人向け融資をおこなっており、すでに数億人ぶんの個人データと数多くの銀行データを所有する「世界1のフィンテック企業」であるからだ。もしアント社の業務範囲が世界中に広がれば、世界のデジタル決済が中国企業に握られることになる。アリババ総帥のジャック・マー氏が中国共産党員であることを考え合わせると、アント社を通じて世界のマネーの動きが中国共産党に握られれば、世界の金融体制をにぎられて、ひいては日米の安全保障をも脅かしかねない。
実際、アメリカ共和党上院議員のマルコ・ルビオが、「アメリカ人の金融個人情報を守るために行動すべきだ」と主張して、アント社の新規株式公開の延期を働きかけたことがある。アメリカの中枢はすでにアント社の危険性を事前に認識しているのだが、日本にはそういった動きは皆無だ
スーパーシティ構想にあの「親中派」の暗躍
2018年10月13日にさいたまスーパーアリーナで開催された「WORLD BLOCKCHAIN FESTIVAL 2018」において、基調講演をした竹中平蔵氏(慶應義塾大学名誉教授・パソナグループ取締役会長 など)がこのように述べている。
「中国にアリババという企業があります。アメリカもアマゾンに対して、中国にはアリババがある。1ヶ月前に本社に招待されました」
さらに、同年10月2日に地方創生担当大臣に就任した片山さつき氏が、2019年1月に杭州市のアリババグループによる「ET City Brain」を視察して、アリババ本社を訪問している。このときに杭州市視察を推薦したのが竹中氏だと見られている。というのも、同年1月15日の懇談会で座長だった竹中氏は、片山大臣(当時)に対して、「アリババ本社に行っていただいてありがとうございます」と述べているからだ。
竹中氏は小泉純一郎内閣で2001年に経済財政政策担当大臣とIT担当大臣に就任して、のちに金融担当大臣(兼任)や、内閣府特命担当大臣として金融、経済財政政策を担当して、2004年に参議院議員になってから、郵政民営化担当大臣に就任して「聖域なき構造改革」の中心を担った人物である。NHKの民営化を進めようとした過去もあり、日本では典型的な新自由主義者だと見られることが多い。また、大阪維新の会のブレーンとして、2020年11月1日に住民投票で否決された「大阪都構想」の思想的な柱だとも考えられている。
だが、竹中氏への懸念は新自由主義的な考え方だけではなく、中国に近い「親中派」と見られる点にもある。
スーパーシティ構想を支える「アーキテクト」にアント社が参入すれば、安全管理基準に「中国製」が導入されることを意味する。その意味で、片山大臣をアリババ本社に招く竹中氏は、技術的な派閥として中国側に接近し、日米安全保障体制を「壊す側」に属しているのではないだろうか。
アント社は北京市近郊のスマートシティ「雄安新区」でアーキテクトを担当している。雄安新区は習近平主席の肝いりの構想であるが、その目標の1つに「軍民融合」がある。つまり、アント社が中心となって作るスマートシティは「軍」と「民」を融合したもので、当然のことながら人民解放軍の存在が組み込まれている。
しかも、アント社は上海市場と香港市場での新規上場を当局に直前で中止させられて、いわば中国共産党に脅されている弱い立場にあり、今後アント社における中国共産党の影響力が強まる可能性が高い。日本の舵取りに影響を与えることのできる竹中氏が「アリババ推し」なのであれば、日米の同盟関係を基本とする日本の安全保障体制を崩しかねない危険要因だと言わざるをえない。
「中国にアリババという企業があります。アメリカもアマゾンに対して、中国にはアリババがある。1ヶ月前に本社に招待されました」
さらに、同年10月2日に地方創生担当大臣に就任した片山さつき氏が、2019年1月に杭州市のアリババグループによる「ET City Brain」を視察して、アリババ本社を訪問している。このときに杭州市視察を推薦したのが竹中氏だと見られている。というのも、同年1月15日の懇談会で座長だった竹中氏は、片山大臣(当時)に対して、「アリババ本社に行っていただいてありがとうございます」と述べているからだ。
竹中氏は小泉純一郎内閣で2001年に経済財政政策担当大臣とIT担当大臣に就任して、のちに金融担当大臣(兼任)や、内閣府特命担当大臣として金融、経済財政政策を担当して、2004年に参議院議員になってから、郵政民営化担当大臣に就任して「聖域なき構造改革」の中心を担った人物である。NHKの民営化を進めようとした過去もあり、日本では典型的な新自由主義者だと見られることが多い。また、大阪維新の会のブレーンとして、2020年11月1日に住民投票で否決された「大阪都構想」の思想的な柱だとも考えられている。
だが、竹中氏への懸念は新自由主義的な考え方だけではなく、中国に近い「親中派」と見られる点にもある。
スーパーシティ構想を支える「アーキテクト」にアント社が参入すれば、安全管理基準に「中国製」が導入されることを意味する。その意味で、片山大臣をアリババ本社に招く竹中氏は、技術的な派閥として中国側に接近し、日米安全保障体制を「壊す側」に属しているのではないだろうか。
アント社は北京市近郊のスマートシティ「雄安新区」でアーキテクトを担当している。雄安新区は習近平主席の肝いりの構想であるが、その目標の1つに「軍民融合」がある。つまり、アント社が中心となって作るスマートシティは「軍」と「民」を融合したもので、当然のことながら人民解放軍の存在が組み込まれている。
しかも、アント社は上海市場と香港市場での新規上場を当局に直前で中止させられて、いわば中国共産党に脅されている弱い立場にあり、今後アント社における中国共産党の影響力が強まる可能性が高い。日本の舵取りに影響を与えることのできる竹中氏が「アリババ推し」なのであれば、日米の同盟関係を基本とする日本の安全保障体制を崩しかねない危険要因だと言わざるをえない。
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中国共産党の野望に呼応する「あの日本人」
中国共産党の宿願は中国の通貨である人民元の国際化を進めて、ドルに並ぶ基軸通貨にすることである。だが、トランプ大統領の登場で、その土台となる一帯一路構想が停滞し始めている。中国政府は、もう1つの覇権政策である「デジタル人民元」で国際決済の分野での基軸通貨化に力を入れている。
現在、国際決済はドルを中心とするSWIFT(「国際銀行間通信協会」=ドル決済システム)とNTTデータが進めるCAFIS(クレジットカードを中心とするオンラインシステム)が主流になっているが、それらに対抗するのが中国のCIPS(人民元決済システム)である。
SBIホールディングス(以下、「SBI」)CEOの北尾吉孝氏は「おそらくこれからは中国がデジタル通貨を出して、それを基軸通貨にしたいと考えているはずです」「もうパックスアメリカーナというのは終焉の時期にさしかかっている。ドルを基軸通貨体制にする仕組みをというのはもう保たなくなっている」と、ドル基軸体制に対する対抗心を隠していない。北尾氏は中国投資協会ブロックチェーン・ビッグデータ産業投資専業委員会戦略投資高級顧問を務めており、中国に近い人物だと考えられている。
さらに、北尾氏のSBIは、アメリカのR3社と合弁で「SBI R3 Japan」を設立してブロックチェーンプラットフォームCordaを運営している。Cordaはアメリカリップル社の仮想通貨リップル(XRP)を使って、NTTデータのCAFISに対抗しているのだが、北尾氏の親中的の言説を見ると、今後は中国と組んでSWIFTに対抗する可能性もあるだろう。
ところで、なぜここで北尾氏を取り上げることにしたかというと、スマートシティについて気になる発言をしているからだ。北尾氏は2020年9月2日の日本経済新聞の取材で、「次世代金融のハブとなる国際金融センターを大阪・神戸地区に置く構想の実現に向け、大阪府や政府との連携に動き始めた」「ブロックチェーン技術を基盤としたデジタル証券の取引所を同地区に設立し、フィンテック企業の誘致も進める」という考えを明らかにしている。この件では大阪維新の新代表と目される吉村洋文大阪府知事からも賛同を得ているという。
さらに、2020年9月2日の時事通信社の金融懇話会の講演で、自身の地銀連合構想について「(新たな合意に)非常に近いのが3、4行ある」と述べる一方で、「大阪府や兵庫県を中心にスマートシティを誕生させ、国際金融センターに発展させる必要性がある」と強調した。北尾氏の発言を総合すると、いま関西でとんでもないことが進みつつあるのではないのだろうか。
現在、国際決済はドルを中心とするSWIFT(「国際銀行間通信協会」=ドル決済システム)とNTTデータが進めるCAFIS(クレジットカードを中心とするオンラインシステム)が主流になっているが、それらに対抗するのが中国のCIPS(人民元決済システム)である。
SBIホールディングス(以下、「SBI」)CEOの北尾吉孝氏は「おそらくこれからは中国がデジタル通貨を出して、それを基軸通貨にしたいと考えているはずです」「もうパックスアメリカーナというのは終焉の時期にさしかかっている。ドルを基軸通貨体制にする仕組みをというのはもう保たなくなっている」と、ドル基軸体制に対する対抗心を隠していない。北尾氏は中国投資協会ブロックチェーン・ビッグデータ産業投資専業委員会戦略投資高級顧問を務めており、中国に近い人物だと考えられている。
さらに、北尾氏のSBIは、アメリカのR3社と合弁で「SBI R3 Japan」を設立してブロックチェーンプラットフォームCordaを運営している。Cordaはアメリカリップル社の仮想通貨リップル(XRP)を使って、NTTデータのCAFISに対抗しているのだが、北尾氏の親中的の言説を見ると、今後は中国と組んでSWIFTに対抗する可能性もあるだろう。
ところで、なぜここで北尾氏を取り上げることにしたかというと、スマートシティについて気になる発言をしているからだ。北尾氏は2020年9月2日の日本経済新聞の取材で、「次世代金融のハブとなる国際金融センターを大阪・神戸地区に置く構想の実現に向け、大阪府や政府との連携に動き始めた」「ブロックチェーン技術を基盤としたデジタル証券の取引所を同地区に設立し、フィンテック企業の誘致も進める」という考えを明らかにしている。この件では大阪維新の新代表と目される吉村洋文大阪府知事からも賛同を得ているという。
さらに、2020年9月2日の時事通信社の金融懇話会の講演で、自身の地銀連合構想について「(新たな合意に)非常に近いのが3、4行ある」と述べる一方で、「大阪府や兵庫県を中心にスマートシティを誕生させ、国際金融センターに発展させる必要性がある」と強調した。北尾氏の発言を総合すると、いま関西でとんでもないことが進みつつあるのではないのだろうか。
あまりに危険な「北尾構想」
北尾氏のSBIホールディングスは2019年12月19日に、中国の金融コングロマリット平安グループの子会社であるワンコネクト・フィナンシャル・テクノロジー(以下、「ワンコネクト」)などと合弁会社を設立したと発表した。日経XTech(2020年2月28日)によると、同社が金融機関に提供するSaaS(Software as a Service「サービスとしてのソフト」)型のプラットフォームを日本に持ち込んで、地方銀行などに提供するものだという。
ワンコネクトは平安グループの技術販売を担う企業であり、中国国内のほとんどの銀行が同社のサービスを何らかの形で利用している。つまり、SBIとの合弁会社は、中国平安グループが有する技術の販売を日本で受け持つ会社だといえる。
北尾氏の地銀連合構想は地銀連合で「第4のメガバンク」を作る壮大な構想であり、そこに中国系の金融IT技術が導入されると、日本の金融にいわば中国のネットワークが入り込むことになるわけである。さらに懸念すべきは、中国共産党はブロックチェーン技術を「中央集権的」に使おうと考えていることだ。もしそれが可能になれば、世界中の金融情報が中国共産党に集まることにもなりかねない。
そこに、スーパーシティへの中国アント社導入の動きや、北尾氏による神戸や大阪のスマートシティ建設、および中央政府からの分離を狙う大阪維新の会の「大阪都構想」を組み合わせると何が起こるかのだろうか。大阪都構想が否決になっても、大阪維新の会はいまだに同様の計画を出し続けている。民意を問うために多額の税金と公務員の労力を費やしておきながら、結果が出てもなぜそのように執拗なのか。
日本の内部から中国企業が招かれて、日米連携が関西から切り崩される可能性が生じつつあるのではないのか。そうなれば、日米同盟は風前の灯火、日本の中国化が大きく前進する。
ワンコネクトは平安グループの技術販売を担う企業であり、中国国内のほとんどの銀行が同社のサービスを何らかの形で利用している。つまり、SBIとの合弁会社は、中国平安グループが有する技術の販売を日本で受け持つ会社だといえる。
北尾氏の地銀連合構想は地銀連合で「第4のメガバンク」を作る壮大な構想であり、そこに中国系の金融IT技術が導入されると、日本の金融にいわば中国のネットワークが入り込むことになるわけである。さらに懸念すべきは、中国共産党はブロックチェーン技術を「中央集権的」に使おうと考えていることだ。もしそれが可能になれば、世界中の金融情報が中国共産党に集まることにもなりかねない。
そこに、スーパーシティへの中国アント社導入の動きや、北尾氏による神戸や大阪のスマートシティ建設、および中央政府からの分離を狙う大阪維新の会の「大阪都構想」を組み合わせると何が起こるかのだろうか。大阪都構想が否決になっても、大阪維新の会はいまだに同様の計画を出し続けている。民意を問うために多額の税金と公務員の労力を費やしておきながら、結果が出てもなぜそのように執拗なのか。
日本の内部から中国企業が招かれて、日米連携が関西から切り崩される可能性が生じつつあるのではないのか。そうなれば、日米同盟は風前の灯火、日本の中国化が大きく前進する。
白川 司(しらかわ・つかさ)
国際政治評論家・翻訳家。幅広いフィールドで活躍し、海外メディアや論文などの情報を駆使した国際情勢の分析に定評がある。月刊『WiLL』にて「Non-Fake News」を連載するとともに、インターネットテレビ『WiLL増刊号』でレギュラーコメンテーターを務める。
また、foomii配信のメルマガ「マスコミに騙されないための国際政治入門」が好評を博している。
著書に『議論の掟 議論が苦手な日本人のために』(ワック)、訳書に『クリエイティブ・シンキング入門』。
国際政治評論家・翻訳家。幅広いフィールドで活躍し、海外メディアや論文などの情報を駆使した国際情勢の分析に定評がある。月刊『WiLL』にて「Non-Fake News」を連載するとともに、インターネットテレビ『WiLL増刊号』でレギュラーコメンテーターを務める。
また、foomii配信のメルマガ「マスコミに騙されないための国際政治入門」が好評を博している。
著書に『議論の掟 議論が苦手な日本人のために』(ワック)、訳書に『クリエイティブ・シンキング入門』。