トクリュウの指示役とみられる男が逮捕されたが……(YouTubeより)
via YouTubeより
高市さんじゃなきゃできない
自由民主党総裁選で善戦した前経済安全保障担当大臣の高市早苗さんが、いまや日本社会の重要なテーマに躍り出た匿流(トクリュウ)対策も含めた「治安・テロ・サイバー犯罪対策調査会」の会長に就任する、という人事が発表になりました。
高市さんじゃなきゃできない、という案件ですね。
少数与党となり厳しい船出となった石破茂政権の党側のカウンターパートとして、非常に重要な職責に就かれるということで、大変な期待を背負っての登板となられた形です。
もともとは、調査会は「治安・テロ対策調査会」として国内防犯をメインとしていたお座敷でしたが、昨今の『闇バイト』や『サイバー犯罪』は速やかな対処を求められる極めて重要な分野になってきました。広い意味での安全保障を岸田文雄前政権でも担ってきた高市さんからすれば、間違いなく適任でありましょう。
他方で、従前のテロ対策の文脈と、新しい犯罪集団の形態で被害が急増している匿流とでは、サイバーの利用では共通します。ただ、違法行為をやらかす実行者の動機や手法も異なる可能性があることから、より広い見地からの対策が求められていくでしょう。
まあ、バックが国家や軍隊組織なのか、それとも収益目的の犯罪集団(匿流)なのかで対策が違うのは当然ですが、被害を受けるネット社会・国民からすれば「なんだあいつら」と一緒くたになりがちなのは事実ですからね。ただ、自由民主党ではそういうサイバー「攻撃」もサイバー「犯罪」も国民に対する脅威を位置付けたうえで、高市さん詳しいでしょ、全部お願いって感じでしょうか。
高市さんじゃなきゃできない、という案件ですね。
少数与党となり厳しい船出となった石破茂政権の党側のカウンターパートとして、非常に重要な職責に就かれるということで、大変な期待を背負っての登板となられた形です。
もともとは、調査会は「治安・テロ対策調査会」として国内防犯をメインとしていたお座敷でしたが、昨今の『闇バイト』や『サイバー犯罪』は速やかな対処を求められる極めて重要な分野になってきました。広い意味での安全保障を岸田文雄前政権でも担ってきた高市さんからすれば、間違いなく適任でありましょう。
他方で、従前のテロ対策の文脈と、新しい犯罪集団の形態で被害が急増している匿流とでは、サイバーの利用では共通します。ただ、違法行為をやらかす実行者の動機や手法も異なる可能性があることから、より広い見地からの対策が求められていくでしょう。
まあ、バックが国家や軍隊組織なのか、それとも収益目的の犯罪集団(匿流)なのかで対策が違うのは当然ですが、被害を受けるネット社会・国民からすれば「なんだあいつら」と一緒くたになりがちなのは事実ですからね。ただ、自由民主党ではそういうサイバー「攻撃」もサイバー「犯罪」も国民に対する脅威を位置付けたうえで、高市さん詳しいでしょ、全部お願いって感じでしょうか。
サイバー「犯罪」への対策とは
もともとは、岸田政権下で24年6月18日に閣議決定された「国民を詐欺から守るための総合対策」をベースに、それまでも被害が拡大していた振り込め詐欺(オレオレ詐欺)やロマンス詐欺、SNS型投資詐欺など、犯罪から国民の生活を守る枠組みを模索する動きがありました。国民に対して犯罪類型の周知と共に防犯意識も含めた啓蒙を進め、生活経済の安全を期する活動が主眼に置かれています。
あわせて「休眠・借名口座の取り扱い」や「飛ばし携帯電話など犯罪に使われる各種ツール」、そして「暗号資産やネット上の売買サイト、空き家などを利用した換金行為」などへの対策も盛り込まれています。この中には、世界的に問題となっている犯罪収益の炙り出しなども視野に入れたFATF対応も踏まえられており、単に国内の治安・生活安全だけでなく、犯罪集団や上位の犯罪組織への収益移転を防ぐための仕組みも構築していかなければならないと認識されていました。FATFとは「Financial Action Task Force(金融活動作業部会)」のことで、要するに世界的なマネー・ローンダリング(マネロン)やテロ資金供与などの対策を国際的に連携して行うことを目的とした政府間会合のことです。
ところが、昨今「ルフィ事件」を筆頭に、いわゆる匿流など犯罪集団が第三国を拠点とする国際化、高度な技術を用いるサイバー犯罪化が進んだため、これへの事件化するための対応もキャッチアップしていかなければならなくなりました。また、闇金や違法ファクタリングなど周辺犯罪も精緻化しており、現状の刑法など法的枠組みでは犯罪者を特定できても法的に本丸の案件では立件が困難で逮捕・起訴できない、という事案が増えてきているのです。
サイバー犯罪もネット技術を使って海外拠点を作っての仕組みを講じられたことで、犯罪のネットワーク化と多層化が進むようになってきました。すなわち、首謀者は日本にいながら、犯罪の計画立案・指示役はフィリピンやカンボジア、インドネシアに、実行犯や出し子は国内で募集された使い捨ての「闇バイト」に、と構造が分散しているのです。
したがって、犯罪捜査も技術的、国際的、同時多発的にならざるを得ません。特に「デジタル社会の実現に向けた重点計画に基づく警察庁中長期計画」では、「デジタル社会の実現に向けた重点計画」(令和4年6月7日閣議決定)にそって、俗に言う警察DXを推進するために技術的、システム的に、犯罪集団の技術力向上に匹敵する捜査手法を実現する必要に迫られています。2024年はまさにこの中期計画の更新年にあたり、いろいろやってますが着地点が変遷しそうなので割愛。
また、最近では闇金的なファクタリング、違法金融も跋扈(ばっこ)してきており、ロマンス詐欺やSNS投資詐欺など犯罪の出口が多様化しています。ひとくちにサイバー犯罪とか組織犯罪といっても、警察や行政、立法の事情はお構いなしに実行者も先端技術を使い違法行為を繰り返し詐欺的なカネを巻き上げることを目的としていますから、類型を作ってどの部署が何の犯罪を担当するかという話をいくらに詰めても対策がなかなか進まない、というのが現状です。
いわば、犯罪集団やその上位の犯罪組織は資金を使って最先端の武器を使い国民の財産を奪う犯罪を繰り返しているにもかかわらず、我が国の警察組織は捜査員をたくさん動員して手作業かつ竹槍で挑むような形になりますから、いわゆる非対称性がキツい面があります。
高市さんは、自由民主党側からこの問題の責任者として問題解決に取り組む形となり、少数与党で苦労している石破茂政権と対話を重ねながら話を進めていくことになります。
あわせて「休眠・借名口座の取り扱い」や「飛ばし携帯電話など犯罪に使われる各種ツール」、そして「暗号資産やネット上の売買サイト、空き家などを利用した換金行為」などへの対策も盛り込まれています。この中には、世界的に問題となっている犯罪収益の炙り出しなども視野に入れたFATF対応も踏まえられており、単に国内の治安・生活安全だけでなく、犯罪集団や上位の犯罪組織への収益移転を防ぐための仕組みも構築していかなければならないと認識されていました。FATFとは「Financial Action Task Force(金融活動作業部会)」のことで、要するに世界的なマネー・ローンダリング(マネロン)やテロ資金供与などの対策を国際的に連携して行うことを目的とした政府間会合のことです。
ところが、昨今「ルフィ事件」を筆頭に、いわゆる匿流など犯罪集団が第三国を拠点とする国際化、高度な技術を用いるサイバー犯罪化が進んだため、これへの事件化するための対応もキャッチアップしていかなければならなくなりました。また、闇金や違法ファクタリングなど周辺犯罪も精緻化しており、現状の刑法など法的枠組みでは犯罪者を特定できても法的に本丸の案件では立件が困難で逮捕・起訴できない、という事案が増えてきているのです。
サイバー犯罪もネット技術を使って海外拠点を作っての仕組みを講じられたことで、犯罪のネットワーク化と多層化が進むようになってきました。すなわち、首謀者は日本にいながら、犯罪の計画立案・指示役はフィリピンやカンボジア、インドネシアに、実行犯や出し子は国内で募集された使い捨ての「闇バイト」に、と構造が分散しているのです。
したがって、犯罪捜査も技術的、国際的、同時多発的にならざるを得ません。特に「デジタル社会の実現に向けた重点計画に基づく警察庁中長期計画」では、「デジタル社会の実現に向けた重点計画」(令和4年6月7日閣議決定)にそって、俗に言う警察DXを推進するために技術的、システム的に、犯罪集団の技術力向上に匹敵する捜査手法を実現する必要に迫られています。2024年はまさにこの中期計画の更新年にあたり、いろいろやってますが着地点が変遷しそうなので割愛。
また、最近では闇金的なファクタリング、違法金融も跋扈(ばっこ)してきており、ロマンス詐欺やSNS投資詐欺など犯罪の出口が多様化しています。ひとくちにサイバー犯罪とか組織犯罪といっても、警察や行政、立法の事情はお構いなしに実行者も先端技術を使い違法行為を繰り返し詐欺的なカネを巻き上げることを目的としていますから、類型を作ってどの部署が何の犯罪を担当するかという話をいくらに詰めても対策がなかなか進まない、というのが現状です。
いわば、犯罪集団やその上位の犯罪組織は資金を使って最先端の武器を使い国民の財産を奪う犯罪を繰り返しているにもかかわらず、我が国の警察組織は捜査員をたくさん動員して手作業かつ竹槍で挑むような形になりますから、いわゆる非対称性がキツい面があります。
高市さんは、自由民主党側からこの問題の責任者として問題解決に取り組む形となり、少数与党で苦労している石破茂政権と対話を重ねながら話を進めていくことになります。
対策を打つために必要なことは
で、やられ放題なイメージのある警察庁・警視庁ですが、実は超頑張って上位の犯罪組織の実態解明を進めてきています。11月18日には、フィリピンから日本人を狙った特殊詐欺に関わった疑いでフィリピンを拠点にした犯罪グループ「JPドラゴン」の幹部と見られる小山智広容疑者を日本に移送し、逮捕する方針を警視庁が固めています。
やることはやっているんですが、やはり問題は「逮捕・摘発までにかなりの件数をやられてしまっていること」であり、また「件数が多すぎたり、事態解決までにハードルが高いのでそもそも被害届などを所轄署がなかなか受け取ってくれない」ことにあります。
特に、やられたと気づいてから被害を申し立てるまでに1日以上経過していると、振り込んでしまった資金は特定の(某大手)暗号資産交換業者などの金融機関を通じて暗号資産(仮想通貨)などに両替され、フィリピンなどに資金が移動してしまいます。この時点で、追跡が困難であるだけでなく、いまの日本の法律では犯罪収益が暗号資産に替えられてしまうと公権力では裁判を通じても没収できないので、やられた側は泣き寝入るしかないのです。
したがって、技術面ではサイバー警察局ほか事態に対処する組織の技術力と即応性を担保し、やられてからでは遅い捜査を「犯罪後」ではなく「犯罪準備」の段階から防犯的に処置していく必要があります。ただ、そのためにはまだ犯罪を実行したわけではない人物や集団を監視する必要に迫られます。
警察庁・警視庁など公権力では国民を監視する手段は当然制限されますが、予備的な情報収集を民間組織やボランティアなどに任せて、問題がある場合は民間の立場から通報させる仕組みは警察本部で生活安全を目的として一部導入し始めています。特に、SNSやLINEグループなど、いわゆるカモ(被害者予備軍)を勧誘したり、プールしておく仕組みや、プラットフォーム事業者にも法的制約をつけて規制させる仕組みは新法で必要になるかもしれません。
さらに、一連の匿流案件では、前述の通り暗号資産に替えられたら(被害者への救済という意味で)即座に一巻の終わりなのですが、警察庁・警視庁では完結しない問題は金融庁や総務省との連携が不可欠です。しかしながら、踏み台になっている一部の(某大手)金融機関は、いわゆる「うたとり(疑わしい取引)を止めずに決済をおこなってしまっている」場合があります。というのも、状況によっては相手が犯罪集団に利用されている口座と特定できているわけではない場合は、金融機関側の判断によってスルーすることがあり、犯罪集団はどういう理由か犯罪収益の暗号資産化や海外送金にこれらの金融機関を好んで使う傾向があるように見受けられます。
さすがに雇った闇バイトを銀行ATMに行かせて現金で犯罪収益を引き出させる古式ゆかしい手口は減少していますが、いまでは技術の進展や何らかの浸透により、もっと安全にカネを海外に流せる手法が確立してしまったとも言えます。
問題は、そのような手口情報が警察組織にあるにもかかわらず金融庁ほか他省庁との連携で躓(つまず)いたり、それらの取引を差し止める法的根拠が現行法では充分にないため、捜査に必要な情報の吸い上げや防犯行為を「民間側のリスクで背負わせる」ことになりかねないことです。
やることはやっているんですが、やはり問題は「逮捕・摘発までにかなりの件数をやられてしまっていること」であり、また「件数が多すぎたり、事態解決までにハードルが高いのでそもそも被害届などを所轄署がなかなか受け取ってくれない」ことにあります。
特に、やられたと気づいてから被害を申し立てるまでに1日以上経過していると、振り込んでしまった資金は特定の(某大手)暗号資産交換業者などの金融機関を通じて暗号資産(仮想通貨)などに両替され、フィリピンなどに資金が移動してしまいます。この時点で、追跡が困難であるだけでなく、いまの日本の法律では犯罪収益が暗号資産に替えられてしまうと公権力では裁判を通じても没収できないので、やられた側は泣き寝入るしかないのです。
したがって、技術面ではサイバー警察局ほか事態に対処する組織の技術力と即応性を担保し、やられてからでは遅い捜査を「犯罪後」ではなく「犯罪準備」の段階から防犯的に処置していく必要があります。ただ、そのためにはまだ犯罪を実行したわけではない人物や集団を監視する必要に迫られます。
警察庁・警視庁など公権力では国民を監視する手段は当然制限されますが、予備的な情報収集を民間組織やボランティアなどに任せて、問題がある場合は民間の立場から通報させる仕組みは警察本部で生活安全を目的として一部導入し始めています。特に、SNSやLINEグループなど、いわゆるカモ(被害者予備軍)を勧誘したり、プールしておく仕組みや、プラットフォーム事業者にも法的制約をつけて規制させる仕組みは新法で必要になるかもしれません。
さらに、一連の匿流案件では、前述の通り暗号資産に替えられたら(被害者への救済という意味で)即座に一巻の終わりなのですが、警察庁・警視庁では完結しない問題は金融庁や総務省との連携が不可欠です。しかしながら、踏み台になっている一部の(某大手)金融機関は、いわゆる「うたとり(疑わしい取引)を止めずに決済をおこなってしまっている」場合があります。というのも、状況によっては相手が犯罪集団に利用されている口座と特定できているわけではない場合は、金融機関側の判断によってスルーすることがあり、犯罪集団はどういう理由か犯罪収益の暗号資産化や海外送金にこれらの金融機関を好んで使う傾向があるように見受けられます。
さすがに雇った闇バイトを銀行ATMに行かせて現金で犯罪収益を引き出させる古式ゆかしい手口は減少していますが、いまでは技術の進展や何らかの浸透により、もっと安全にカネを海外に流せる手法が確立してしまったとも言えます。
問題は、そのような手口情報が警察組織にあるにもかかわらず金融庁ほか他省庁との連携で躓(つまず)いたり、それらの取引を差し止める法的根拠が現行法では充分にないため、捜査に必要な情報の吸い上げや防犯行為を「民間側のリスクで背負わせる」ことになりかねないことです。
すべての道は「プラットフォーム規制」に通ず?
これらの匿流対策は、その犯罪の手口の巧妙化や高度技術の利用により、従前の犯罪捜査の体制や法体系では効率的に摘発を進めることがむつかしいことはおろか、奪われた犯罪収益を回収し被害者に少しでも弁済させることがむつかしくなっています。
ここには闇バイトの募集から詐欺にひっかけやすそうな人たちの誘引まで、重要な情報がSNSやLINEグループを経由して犯罪集団や上位の犯罪組織に流れていることは従前より指摘されてきた通りです。しかしながら、これらの犯罪に関する捜査事項照会を求めたり、弁済を求める弁護士から裁判を起こされたりしても、日本の法律や司法を無視するかのような対応を平然と行ってくる海外大手プラットフォーム事業者が複数いることも事実です。
というか、なりすまし広告だけでなく明らかな詐欺商材の広告が跋扈しているSNSや、違法ネタやガセネタを動画にして流している大手動画サイトが内容を考課することなくネットに垂れ流した結果、匿流のような犯罪集団と大手プラットフォーム事業者が経済的に結託してしまう、ということになるのです。つまり、架空の儲かるビジネスや目立つガセネタを流して収益を得るのは犯罪集団だけではなくプラットフォーム事業者も恩恵を被るのでバズ動画を流すアカウントをBANすることはなかなか困難ですし、カモを抱えるLINEグループを作ったり、タイミーほか募集側の実態を把握せず求人情報に「高額報酬の闇バイト募集」が掲載されたりすれば、それは立派な匿流の活動の片棒となります。
著名人のなりすまし広告のようなサイバー犯罪と、日本の社会基盤である公職選挙に介入する偽情報流布などのサイバー攻撃とがごちゃ混ぜになりつつある昨今、国民に認められた表現の自由が結果的に悪用され、社会不安を引き起こしているという側面もあります。
これらの問題は、技術面と法律面での整備、そして警察組織ほか当局の人員予算の拡充を行うことが至上命題なのですが、いまや、大手プラットフォーム事業者のほうが、国家・政府よりも国民の情報を知る社会になってきました。マイナンバー制度の推進如きで野党の皆さんに反対されていますが、国家よりも韓国系のLINEや米系のGoogle、Amazonを信用しろというのでしょうか……。
ネットなど情報空間の安全を担保するために国家の機能を充実させる、というテーマは今後かなり重要な議論になっていくと思います。要は、国が認めた法の下の平等を日本社会が国民に対して実現できるよう、国が国家権力を使ってそれを阻害する事業者や組織に対して適切に規制し、国民の安全と安心を守る、というデジタル立憲主義的な考え方です。
高市さんはこういう世界に踏み込み、調査会会長として立ち向かうことになります。
本当に対応するとなると、長期的にどうするかを見据えて、当面の臨時国会・通常国会に向けて打ち手を考えていく必要があり、難作業ではないかと思いますが頑張っていただきたいと心から願っています。
ここには闇バイトの募集から詐欺にひっかけやすそうな人たちの誘引まで、重要な情報がSNSやLINEグループを経由して犯罪集団や上位の犯罪組織に流れていることは従前より指摘されてきた通りです。しかしながら、これらの犯罪に関する捜査事項照会を求めたり、弁済を求める弁護士から裁判を起こされたりしても、日本の法律や司法を無視するかのような対応を平然と行ってくる海外大手プラットフォーム事業者が複数いることも事実です。
というか、なりすまし広告だけでなく明らかな詐欺商材の広告が跋扈しているSNSや、違法ネタやガセネタを動画にして流している大手動画サイトが内容を考課することなくネットに垂れ流した結果、匿流のような犯罪集団と大手プラットフォーム事業者が経済的に結託してしまう、ということになるのです。つまり、架空の儲かるビジネスや目立つガセネタを流して収益を得るのは犯罪集団だけではなくプラットフォーム事業者も恩恵を被るのでバズ動画を流すアカウントをBANすることはなかなか困難ですし、カモを抱えるLINEグループを作ったり、タイミーほか募集側の実態を把握せず求人情報に「高額報酬の闇バイト募集」が掲載されたりすれば、それは立派な匿流の活動の片棒となります。
著名人のなりすまし広告のようなサイバー犯罪と、日本の社会基盤である公職選挙に介入する偽情報流布などのサイバー攻撃とがごちゃ混ぜになりつつある昨今、国民に認められた表現の自由が結果的に悪用され、社会不安を引き起こしているという側面もあります。
これらの問題は、技術面と法律面での整備、そして警察組織ほか当局の人員予算の拡充を行うことが至上命題なのですが、いまや、大手プラットフォーム事業者のほうが、国家・政府よりも国民の情報を知る社会になってきました。マイナンバー制度の推進如きで野党の皆さんに反対されていますが、国家よりも韓国系のLINEや米系のGoogle、Amazonを信用しろというのでしょうか……。
ネットなど情報空間の安全を担保するために国家の機能を充実させる、というテーマは今後かなり重要な議論になっていくと思います。要は、国が認めた法の下の平等を日本社会が国民に対して実現できるよう、国が国家権力を使ってそれを阻害する事業者や組織に対して適切に規制し、国民の安全と安心を守る、というデジタル立憲主義的な考え方です。
高市さんはこういう世界に踏み込み、調査会会長として立ち向かうことになります。
本当に対応するとなると、長期的にどうするかを見据えて、当面の臨時国会・通常国会に向けて打ち手を考えていく必要があり、難作業ではないかと思いますが頑張っていただきたいと心から願っています。
山本 一郎(やまもと いちろう)
1973年、東京都生まれ。個人投資家、作家。慶應義塾大学法学部政治学科卒。一般財団法人情報法制研究所上席研究員。IT技術関連のコンサルティングや知的財産権管理、コンテンツの企画・制作に携わる一方、高齢社会研究や時事問題の状況調査も行っている。
1973年、東京都生まれ。個人投資家、作家。慶應義塾大学法学部政治学科卒。一般財団法人情報法制研究所上席研究員。IT技術関連のコンサルティングや知的財産権管理、コンテンツの企画・制作に携わる一方、高齢社会研究や時事問題の状況調査も行っている。