初の女性総理大臣が誕生する可能性があった

※おことわり 本稿は、自由民主党総裁選が取り行われている9月17日に執筆した内容です。時宜的な調整もあり、掲載が10月1日になりました。あらかじめ、ご承知おきください。

  健闘が期待されている高市早苗さん、自由民主党総裁選2024では政策論争も含めて非常に良い印象を自民党員のみならず世間一般にも伝えられているのではないかと思います。

 いわゆる安倍晋三さんの後継として、強くその正統性を主張するだけでなく、各種政策分野においても専門とする各議員と深い議論ができるあたりに、高市早苗さんの芯の強さ、政治家としての優秀さが感じられるのは頼もしいことです。

 今回、高市早苗さんも割といい位置につけていて、もしかしたら一気に自民党総裁、そして総理大臣の座に就くこともあるかもしれません。これは界隈の悲願であり、頑張ってやっていこうぜってのは同意します。まだまだ勝ち目は残されていますから。

 そして、今回は特に、日本憲政史初の女性の総理大臣が誕生する可能性があることは、過去さまざま取り沙汰された各氏よりもはるかに近い位置におられる高市早苗さんの存在感を示しています。しかし、政治の世界は時に予測不可能な展開を見せることがあります。もし仮に、高市早苗さんが惜しくも総裁選で敗れ、総理大臣の座を獲得できなかった場合、高市さんの支持者はどのように行動すべきでしょうか。
YouTubeより (14060)

自民党総裁選2024は高市早苗氏(右)と石破茂氏との決選投票となった
via YouTubeより

党内の結束を乱すな

 まず、総裁選はこれで終わりではない、次に向けて何に取り組んでいくのかを考え、高市さんの支持者は特に、おさえめの発言に留め、今後のことを考えて、幅広く自民党員の支持を取り付けられるような行動を取るべきです。
 政治は長い道のりであり、一度の敗北が全てを意味するわけではありません。高市さんの掲げる理念や政策は、一回の選挙結果で消えてしまうものではありませんし、安倍さんがそうであったように思想、路線は背負って紡(つむ)いでいくべきものなのです。むしろ、この理念を継続して支持し、自由民主党の一員としての結束を保ちながら、さらに広めていくことこそが、真の支持者としての責務であると言えるでしょう。

 次に、建設的な姿勢を持つことです。事実に基づいて敗北の原因を冷静に分析し、次につなげる努力をすることが大切です。他の総裁候補も、また勝ち残って総裁に就任する人物も、同じ自由民主党を支える大事な政治家であり同志であるとも言えます。近く行われる解散を考えれば、新しい総裁・総理大臣が担う重責を高市さんも有力候補者として担う必要が出てくるのです。この結果に対して、ほかの総裁候補や就任した新総裁に対して単に批判や非難に終始するのではなく、どうすれば自民党支持層だけでなく日本人有権者の皆さまからより多くの支持を得られるか、政策をどのように改善できるかを考えることが求められます。

 高市さんの支持者に限らず、党内の結束を乱すような行動は厳に慎むべきです。自民党という大きな枠組みの中で、高市さんの主張を継続して訴えていくことが重要でしょう。今回惜しくも総裁選で敗れたとて、それを起点とした自由民主党内の分裂が起きてしまうとするならば、それは結果的に自民党全体の弱体化につながり、高市さんの政治理念の実現をさらに遠ざけてしまう可能性があります。あくまで、当面、目指すことは自由民主党の総裁なのであり、我が国の憲政史初の女性総理大臣に高市さんが就任し、非業の死を遂げた安倍晋三さんの遺志を継いで我が国をより良く、強く、美しい国にしていくことにあるのです。

 さらに、民主主義のプロセスを尊重する姿勢も欠かせません。総裁選は党員や国会議員による投票によって決定されます。その結果を受け入れ、次の機会に向けて準備することが、成熟した民主主義社会における政治参加のあり方です。今後は、多くの民意を自民党総裁選に反映させるために、オンライン投票など自民党だからできる仕組みを用意しておく必要があります。特に、自民党党員・党友の皆さんからの支持が篤い高市さんは、決選投票でも多くの党員・党友の意見を反映させられるよう、総裁選の仕組みをオンラインにできるよう主張し、それを支持者が建設的に後押しすることが大事であると言えます。

 特に、今回の高市早苗さんは「党員票は割と稼げるが、議員票で苦戦する可能性がある」ということは、裏を返せば仮に決選投票に残れたとしても、議員票主体の決選投票で対抗に負ける可能性があることを意味します。高市支持者の皆さんの暴れポイントはまさにここで、党員の多くが高市さんを支持して決選投票に高市さんを連れて行ったのに、高市さんが正統な安倍政治後継者であるにもかかわらず現職の自民党議員や都道府県連が篤く支持することなく対抗候補を推して、相手を自民党総裁・総理大臣にしてしまうという事態です。これはまあ、暴れますわな……。

負けても立ち上がる

 やはり、政権を安定的に担い、来(きた)る解散総選挙や参院選、都議会選を乗りこなすには、ほかの候補者や支持者との対話も重要です。また、長く連立政権を維持してきた公明党との関係も、主義主張を超えきちんと手を取り続ける必要はあるでしょう。高市さんの政治において必要なことは、政策の路線を巡る直接的な対立を際立たせることではなく、建設的な議論を通じて相互理解を深めることで、党全体としての政策の質を高めることに尽きます。

 高市さんの周辺でも非常に優秀な政治家が支えていると思いますが、異なる路線の人たちともきちんと交わり政策論争を重ねながら信頼関係を築くことが極めて重要になるのです。これは結果的に、高市さんの主張がより広く受け入れられる土壌を作ることにもつながります。

 高市さんの政治家としての高い資質やその評価は、1回の選挙結果で変わるものではありません。むしろ、逆境にあってこそ、その本来の力、真価が問われるのです。従前よりずっと高市さんが示してきた強靭な精神力と不屈の姿勢を、私たち支持者も見習う必要があります。

「負けても立ち上がる」という言葉がありますが、まさにこの精神で次の機会に向けて準備を進めることが重要なのは間違いありません。高市さんの政治理念は、日本の将来にとって極めて重要なものです。一時的な挫折に屈することなく、その実現に向けて粘り強く活動を続けていくことこそ、真の支持者としてのあり方ではないでしょうか。

 最後に、高市さん自身の言動にも注目する必要があります。仮に敗北した場合、高市さんがどのような態度を取るかは、支持者の行動指針となります。高潔さと冷静さを保ちつつ、建設的な姿勢で次の機会に向けて準備する高市さんの姿勢を見習い、私たちもまた同様の態度で臨むべきです。冷静さと生産性を保ちつつ、長期的な視点で活動を継続していくことが不可欠なのです。

 高市さんの支持者は特に、この国を思う気持ちが前に出る傾向にあります。あるべき政治を実現するために、妥協なく働いてくれる高市さんを応援する気持ちがとても強いのもまた事実です。それゆえに、この重要な時期に真価が問われています。高市さんの政治理念の実現に向けて粘り強く活動を続けていくことが、真の支持者としての責務であると言えるでしょう。
山本 一郎(やまもと いちろう)
1973年、東京都生まれ。個人投資家、作家。慶應義塾大学法学部政治学科卒。一般財団法人情報法制研究所上席研究員。IT技術関連のコンサルティングや知的財産権管理、コンテンツの企画・制作に携わる一方、高齢社会研究や時事問題の状況調査も行っている。

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