すべて説明できる
小川 前号で上久保先生と「新型コロナ第二波はこない」と題して、集団免疫について対談しました。
上久保 簡単に言ってしまうと、「私たちの多くは、すでにコロナに感染して免疫を獲得している」というものです。
小川 「集団免疫説」などと言われますが、説というほどのものではありません。毎年、ある時期になると風邪が流行って、しばらくすると収まる。そういう例年の事象を言っているわけですね。
はじめに、先生が提唱されているモデル理論で、日本人が免疫を獲得した経緯を簡単におさらいしておきましょう。
上久保 私は吉備国際大学の高橋淳先生と協力して、「鳥インフルエンザ情報共有の国際推進機構(GISAID)」に発表されているコロナウイルスの特性を解析しました。その結果、「S型(先祖型)」と「K型(先祖型の変異型)」が存在していることが判明した。昨年12月に中国からS型が、今年1月にK型が日本に入ってきたようです。どちらも症状が軽く、致死率も低い。
そんななか、12月ごろに武漢でコロナウイルスが変異した「G型」が登場、一気に感染が拡大しました。それが欧米に入って「欧米G型」に変異して猛威を振るった。
小川 日本にもG型は入ってきましたが、欧米に比べて圧倒的に死者を抑え込むことができた。
上久保 その理由は「T細胞免疫」にあるのではないかと考えています。日本は、3月8日まで中国からの入国を許可し続けました。その間ずっと入っていたK型がT細胞(リンパ球の一種)により認識され、T細胞が活性化することで、免疫が獲得された。このT細胞免疫によって、日本人は「G型」と対峙することができたわけです。
対して欧米は、2月初めの段階で中国からの渡航を全面的に禁止しました。それゆえに、K型があまり入ってこなかった。T細胞免疫を得るチャンスを逃してしまったわけです。結果論ではありますが、入国規制がアダとなって死者や重症者が多くなってしまった。
小川 上久保先生と高橋先生は、実際は緻密なデータ分析をされています。ただ基本的にこの説明で、世界中の感染状況の傾向を理解できるのは事実ですね。
上久保 簡単に言ってしまうと、「私たちの多くは、すでにコロナに感染して免疫を獲得している」というものです。
小川 「集団免疫説」などと言われますが、説というほどのものではありません。毎年、ある時期になると風邪が流行って、しばらくすると収まる。そういう例年の事象を言っているわけですね。
はじめに、先生が提唱されているモデル理論で、日本人が免疫を獲得した経緯を簡単におさらいしておきましょう。
上久保 私は吉備国際大学の高橋淳先生と協力して、「鳥インフルエンザ情報共有の国際推進機構(GISAID)」に発表されているコロナウイルスの特性を解析しました。その結果、「S型(先祖型)」と「K型(先祖型の変異型)」が存在していることが判明した。昨年12月に中国からS型が、今年1月にK型が日本に入ってきたようです。どちらも症状が軽く、致死率も低い。
そんななか、12月ごろに武漢でコロナウイルスが変異した「G型」が登場、一気に感染が拡大しました。それが欧米に入って「欧米G型」に変異して猛威を振るった。
小川 日本にもG型は入ってきましたが、欧米に比べて圧倒的に死者を抑え込むことができた。
上久保 その理由は「T細胞免疫」にあるのではないかと考えています。日本は、3月8日まで中国からの入国を許可し続けました。その間ずっと入っていたK型がT細胞(リンパ球の一種)により認識され、T細胞が活性化することで、免疫が獲得された。このT細胞免疫によって、日本人は「G型」と対峙することができたわけです。
対して欧米は、2月初めの段階で中国からの渡航を全面的に禁止しました。それゆえに、K型があまり入ってこなかった。T細胞免疫を得るチャンスを逃してしまったわけです。結果論ではありますが、入国規制がアダとなって死者や重症者が多くなってしまった。
小川 上久保先生と高橋先生は、実際は緻密なデータ分析をされています。ただ基本的にこの説明で、世界中の感染状況の傾向を理解できるのは事実ですね。
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9月27日発売予定
第二波はきていない
小川 前回の対談から一カ月が経ちますが、案の定、第二波はきていない。ただ依然として、「感染者数」を報道するニュースやワイドショーに煽られ、「社会不安」と「自粛傾向」が続いています。小池都知事に至っては、何の根拠もなく「今がもう『第二波』であるという認識を私自身が持っている」と発言している。「第二波」の定義が曖昧とはいえ、自分が責任ある立場にいることを考えてほしい。
七月末、上久保先生、奥村康先生(順天堂大学医学部免疫学特任教授)と一緒に、都内で記者会見を開きました。ところが、大手メディアはいっさい取材にこなかった。コロナを危険なものだと信じたい彼らにとって、我々の主張がいかに都合が悪いかを物語っています。あるいは、単に私がマスコミから嫌われているだけかもしれませんが(笑)。
上久保 「感染者が増えている」といっても、検査数を増やしたんだから陽性者が増えるのは当たり前。初回の感染で免疫がついている人たちに、再びウイルスが曝露しているだけです。特に若い世代では、微熱が出たり喉が少しだけ痛くなったりすることはあっても、重症化することはほぼありません。
小川 PCR検査の無条件・大量実施の必要性を必死に訴える人たちもいます。
東京都の小池百合子知事を筆頭に、世田谷の保坂展人区長、共産党の志位和夫委員長なども「PCR検査推進派」。東京大学先端科学技術研究センターの児玉龍彦名誉教授は「大量の検査をしないのは世界に類を見ない暴挙」「東京にエピセンター(震源地)が発生しており、いま全力で食い止めないとニューヨークのような事態になる」などと言っている。
上久保 PCR検査の数だけ増やしても、数が積みあがっていくだけ。ほとんど意味がありません。
小川 上久保先生は、コロナ対策は「何もしないのが一番」とおっしゃっています。
上久保 はい。コロナというのは、いわば無症候の風邪です。半日ぐらい微熱が出て、「ちょっと体調が悪いな」くらいで済む人もいますし、もともと身体が弱い方や、家族内二~三人でうつると二、三日にわたって熱が出る人もいます。幅はありますが、ほとんどが無症候なんです。
小川 今回の新型コロナは、それの感染力が強いバージョンですね。
七月末、上久保先生、奥村康先生(順天堂大学医学部免疫学特任教授)と一緒に、都内で記者会見を開きました。ところが、大手メディアはいっさい取材にこなかった。コロナを危険なものだと信じたい彼らにとって、我々の主張がいかに都合が悪いかを物語っています。あるいは、単に私がマスコミから嫌われているだけかもしれませんが(笑)。
上久保 「感染者が増えている」といっても、検査数を増やしたんだから陽性者が増えるのは当たり前。初回の感染で免疫がついている人たちに、再びウイルスが曝露しているだけです。特に若い世代では、微熱が出たり喉が少しだけ痛くなったりすることはあっても、重症化することはほぼありません。
小川 PCR検査の無条件・大量実施の必要性を必死に訴える人たちもいます。
東京都の小池百合子知事を筆頭に、世田谷の保坂展人区長、共産党の志位和夫委員長なども「PCR検査推進派」。東京大学先端科学技術研究センターの児玉龍彦名誉教授は「大量の検査をしないのは世界に類を見ない暴挙」「東京にエピセンター(震源地)が発生しており、いま全力で食い止めないとニューヨークのような事態になる」などと言っている。
上久保 PCR検査の数だけ増やしても、数が積みあがっていくだけ。ほとんど意味がありません。
小川 上久保先生は、コロナ対策は「何もしないのが一番」とおっしゃっています。
上久保 はい。コロナというのは、いわば無症候の風邪です。半日ぐらい微熱が出て、「ちょっと体調が悪いな」くらいで済む人もいますし、もともと身体が弱い方や、家族内二~三人でうつると二、三日にわたって熱が出る人もいます。幅はありますが、ほとんどが無症候なんです。
小川 今回の新型コロナは、それの感染力が強いバージョンですね。
夏風邪でPCR検査するのか
上久保 夏風邪もコロナの1種ですが、多少の症状が出ても「どうせすぐ治る」と思って病院にも行かないことが多い。平気で出社したり、友人と食事したりする人も多いと思います。夏風邪が怖くて、わざわざPCR検査する人がいるでしょうか。
小川 私たちは今まで、夏風邪に対して何か特別な対策をしてきたか、という話です。
エボラ出血熱の感染者は、隔離することで感染拡大は防止できる。しかしコロナは、封じ込めて「制圧」できる相手ではない。常在ウイルスである以上、PCR検査の数を増やせば、増やした分だけ陽性反応は出る。
「コントロール」や「制圧」できる相手ではなく、免疫だけが決め手──これは奥村先生も再三おっしゃっています。しかし免疫ではなくて検査やワクチンで「制圧」したくてしようがない人たちが頑張ってパニックを長引かせている。
上久保 人類誕生以来、ヒトとウイルスはずっと共生してきました。もともと存在していて、周期的に人に感染したり鎮まったりします。
小川 『日本書紀』をはじめ、歴史文献をみると数年に1度の流行り病の記述が頻繁に登場する。赤痢とか結核とか見当がつくのもありますが、変異コロナかもしれない。
上久保 今となっては検証しようがありませんが、その可能性はあります。コロナは約十年に一度のペースで変異を起こしますからね。
目立ったところで言えば、インフルエンザウイルスが原因とされるスペイン風邪が流行したのは1919年。その間にも様々なウイルスが流行しましたが、90年後の2009年に新型インフルエンザが流行しています。そして、2019年に新型コロナが登場した。
小川 今回のようなコロナの変異を人類は何度も経験してきた。しかし、それでも必ず流行は収まる。でなければ、人類はとっくの昔に絶滅しています。
昔はワクチンも薬もない。もちろん、PCR検査もありません。どんなに医療レベルが低くても、感染症は最終的に消えてしまうんです。あるところまで人を殺し続けたのに、いつからか誰も死ななくなる。ガンや肝硬変や心疾患に罹患の波はないのに、なぜ感染症では罹患や死亡が波を描いて消えるのか。「集団免疫」以上に納得できる答えがあるなら教えてほしい。
小川 私たちは今まで、夏風邪に対して何か特別な対策をしてきたか、という話です。
エボラ出血熱の感染者は、隔離することで感染拡大は防止できる。しかしコロナは、封じ込めて「制圧」できる相手ではない。常在ウイルスである以上、PCR検査の数を増やせば、増やした分だけ陽性反応は出る。
「コントロール」や「制圧」できる相手ではなく、免疫だけが決め手──これは奥村先生も再三おっしゃっています。しかし免疫ではなくて検査やワクチンで「制圧」したくてしようがない人たちが頑張ってパニックを長引かせている。
上久保 人類誕生以来、ヒトとウイルスはずっと共生してきました。もともと存在していて、周期的に人に感染したり鎮まったりします。
小川 『日本書紀』をはじめ、歴史文献をみると数年に1度の流行り病の記述が頻繁に登場する。赤痢とか結核とか見当がつくのもありますが、変異コロナかもしれない。
上久保 今となっては検証しようがありませんが、その可能性はあります。コロナは約十年に一度のペースで変異を起こしますからね。
目立ったところで言えば、インフルエンザウイルスが原因とされるスペイン風邪が流行したのは1919年。その間にも様々なウイルスが流行しましたが、90年後の2009年に新型インフルエンザが流行しています。そして、2019年に新型コロナが登場した。
小川 今回のようなコロナの変異を人類は何度も経験してきた。しかし、それでも必ず流行は収まる。でなければ、人類はとっくの昔に絶滅しています。
昔はワクチンも薬もない。もちろん、PCR検査もありません。どんなに医療レベルが低くても、感染症は最終的に消えてしまうんです。あるところまで人を殺し続けたのに、いつからか誰も死ななくなる。ガンや肝硬変や心疾患に罹患の波はないのに、なぜ感染症では罹患や死亡が波を描いて消えるのか。「集団免疫」以上に納得できる答えがあるなら教えてほしい。
マスクは無意味
小川 コロナは無症候で感染力が強いから、中途半端な行動制限で防げるものではありません。新幹線はガラガラ、都心の通勤電車は満員、コンサート会場は座席を間引き、夜の居酒屋は満席。こんな気まぐれな対策で、コロナの感染を防ぐのは不可能です。
上久保 座席を1つ空けたところで、ほとんど意味がありません。
小川 子供たちが、いわゆるスーパースプレッダーだそうですね。小学校と幼稚園が感染の拠点となっている。
上久保 ええ。園児や生徒さんは遊んだり運動したりして、お互いに唾やよだれを飛ばしあい組んずほぐれつしますから、濃厚接触します。そして、まず先生が感染します。子供たちが家に帰れば、親や祖父母などと濃厚接触する。その大人が無症候のまま他人にうつしてゆく。
小川 もちろん、小学校や幼稚園が悪いという意味ではありません。先生や生徒たちのおかげで、社会全体が免疫を獲得し続けて重症化を防ぐ。そして、多くの人から免疫が薄れるとまた流行る。
上久保 むしろ中途半端に行動を制限すると、免疫が薄れてしまいます。どんどん外に出るべきなんです。
小川 GoToトラベルキャンペーンが批判され、東京だけ対象外になってしまった。不条理というか非合理というか……。いま社会全体が集団ヒステリーに陥り、非科学的な言説がまかり通るようになってしまっている。
上久保 最もわかりやすい例がマスクです。
小川 梅雨が明けて全国的に30度を超える猛暑が続くなか、いまだに9割の人々がマスクを着けている。マスクをせずに電車に乗ると、まるで指名手配犯かのような視線を浴びせられます(笑)。でも、コロナより熱中症の心配をしたほうがいいような……。
上久保 マスクを着けても、ほとんど感染防止に意味はありません。コロナウイルスは直径約0.1マイクロメートル程度。一般的な不織布マスクの穴の直径は5マイクロメートルですから、理屈上は通り抜けてしまう。
ただ、唾が塊として飛ぶことを考えると、いくらかは遮断される。ウイルス量は少なくなると思います。他人にうつさないためには多少の効果はあるかもしれません。
小川 でも、気温が40度近い猛暑のなか、ずっとマスクを着けているわけにはいきません。暑くなるとマスクを外してポケットに入れて、しばらくするとまた着ける人も多いですね。
上久保 マスクを外してレストランや会議室のテーブルに置いた瞬間、アウトです。病院の無菌室のような環境でない以上、ウイルスは至るところに存在していますから。
上久保 座席を1つ空けたところで、ほとんど意味がありません。
小川 子供たちが、いわゆるスーパースプレッダーだそうですね。小学校と幼稚園が感染の拠点となっている。
上久保 ええ。園児や生徒さんは遊んだり運動したりして、お互いに唾やよだれを飛ばしあい組んずほぐれつしますから、濃厚接触します。そして、まず先生が感染します。子供たちが家に帰れば、親や祖父母などと濃厚接触する。その大人が無症候のまま他人にうつしてゆく。
小川 もちろん、小学校や幼稚園が悪いという意味ではありません。先生や生徒たちのおかげで、社会全体が免疫を獲得し続けて重症化を防ぐ。そして、多くの人から免疫が薄れるとまた流行る。
上久保 むしろ中途半端に行動を制限すると、免疫が薄れてしまいます。どんどん外に出るべきなんです。
小川 GoToトラベルキャンペーンが批判され、東京だけ対象外になってしまった。不条理というか非合理というか……。いま社会全体が集団ヒステリーに陥り、非科学的な言説がまかり通るようになってしまっている。
上久保 最もわかりやすい例がマスクです。
小川 梅雨が明けて全国的に30度を超える猛暑が続くなか、いまだに9割の人々がマスクを着けている。マスクをせずに電車に乗ると、まるで指名手配犯かのような視線を浴びせられます(笑)。でも、コロナより熱中症の心配をしたほうがいいような……。
上久保 マスクを着けても、ほとんど感染防止に意味はありません。コロナウイルスは直径約0.1マイクロメートル程度。一般的な不織布マスクの穴の直径は5マイクロメートルですから、理屈上は通り抜けてしまう。
ただ、唾が塊として飛ぶことを考えると、いくらかは遮断される。ウイルス量は少なくなると思います。他人にうつさないためには多少の効果はあるかもしれません。
小川 でも、気温が40度近い猛暑のなか、ずっとマスクを着けているわけにはいきません。暑くなるとマスクを外してポケットに入れて、しばらくするとまた着ける人も多いですね。
上久保 マスクを外してレストランや会議室のテーブルに置いた瞬間、アウトです。病院の無菌室のような環境でない以上、ウイルスは至るところに存在していますから。
科学の敗北
小川 集団免疫は、ネットを中心に徐々に浸透してきたように思います。ただ一方で、「トンデモ論」と一蹴する声も聞かれる。その多くが、「ただの仮説じゃないか」というような批判。
上久保 我々は仮説ではなく、素直にデータを示しているだけなんですけどね。
小川 日本での新型コロナウイルスの死者は約1,000人ですが、その半数近くは院内感染で、平均年齢は79歳。日本では毎年130万人程度が死亡する。半年で60万人強として、そのうち約1,000人というのは0.1%強にすぎない。
エビデンスを求められたら、死亡者カーブがエビデンスだと言うほかありませんね。
上久保 集団免疫に異を唱えたいのであれば、抽象的な批判ではなく、真正面から科学的な議論で挑んできてほしい。私より説得力のある理論なりデータなりを提示していただければ、素直に白旗を上げます。真実にたどりつくため、互いに検証し合うべきなんです。
小川 そもそも、議論の土俵が違うように思います。
我々の目的は、医学的・病理的に厳正な事実を確定することではない。社会をマクロで眺めたうえで、「こんなふうに経済活動を凍結支配する疾病ではない」と警鐘を鳴らしているわけです。それは上久保先生をはじめ、立場を異にする多くの「コロナは怖くない派」共通の立場だと思います。
にもかかわらず、集団免疫を否定する人たちは「病理学的なエビデンスを出せ」「T細胞免疫は十分に検出されていない」と騒ぎ立てる。しかし、科学的に証明されて明確な答えが出るのを待っていては、社会政策を決めることができません。
上久保 現時点でウイルスの生態を解明できる専門家は1人もいない。というより物事の性質上、エビデンスを示しながら正確な説明をすることが不可能です。
小川 ビッグバンをその目で見た天文学者はいるのか、という話です。
上久保 スペイン風邪が流行したとき、第1波の後にやや小さな第2波があって、大きな第3波が来た。「第2波」を主張する人たちはそれをもとに話しているようですが、そこに解析や理論といったものはありません。
小川 こちらには執拗にエビデンスを求める割に、「来月から第2波が起こるかもしれない」と根拠もなく言い張る専門家がいます。彼らは科学を感情で支配しようとしている。
上久保 我々は仮説ではなく、素直にデータを示しているだけなんですけどね。
小川 日本での新型コロナウイルスの死者は約1,000人ですが、その半数近くは院内感染で、平均年齢は79歳。日本では毎年130万人程度が死亡する。半年で60万人強として、そのうち約1,000人というのは0.1%強にすぎない。
エビデンスを求められたら、死亡者カーブがエビデンスだと言うほかありませんね。
上久保 集団免疫に異を唱えたいのであれば、抽象的な批判ではなく、真正面から科学的な議論で挑んできてほしい。私より説得力のある理論なりデータなりを提示していただければ、素直に白旗を上げます。真実にたどりつくため、互いに検証し合うべきなんです。
小川 そもそも、議論の土俵が違うように思います。
我々の目的は、医学的・病理的に厳正な事実を確定することではない。社会をマクロで眺めたうえで、「こんなふうに経済活動を凍結支配する疾病ではない」と警鐘を鳴らしているわけです。それは上久保先生をはじめ、立場を異にする多くの「コロナは怖くない派」共通の立場だと思います。
にもかかわらず、集団免疫を否定する人たちは「病理学的なエビデンスを出せ」「T細胞免疫は十分に検出されていない」と騒ぎ立てる。しかし、科学的に証明されて明確な答えが出るのを待っていては、社会政策を決めることができません。
上久保 現時点でウイルスの生態を解明できる専門家は1人もいない。というより物事の性質上、エビデンスを示しながら正確な説明をすることが不可能です。
小川 ビッグバンをその目で見た天文学者はいるのか、という話です。
上久保 スペイン風邪が流行したとき、第1波の後にやや小さな第2波があって、大きな第3波が来た。「第2波」を主張する人たちはそれをもとに話しているようですが、そこに解析や理論といったものはありません。
小川 こちらには執拗にエビデンスを求める割に、「来月から第2波が起こるかもしれない」と根拠もなく言い張る専門家がいます。彼らは科学を感情で支配しようとしている。
国民の命を弄ぶな
上久保 このままコロナウイルスを恐れて自粛生活を続ければ、日本経済は大ダメージを受け、失業者が街に溢れてしまいます。失業率が1%上昇すると、自殺者は2,400人増加するといわれている。コロナで死ぬ数より、そちらのほうが大きい。
小川 集団免疫を主張すると、「人が死んでいるのに、よくそんなことが言えるな」と批判される。しかし、「あなた方こそ国民の命を弄んでいるじゃないか」と言いたい。
上久保 おっしゃる通りです。死者がそれほど増えていないのに、不安だけ煽るほうがよっぽど無責任だと思います。
それに、実は6月18日に厚生労働省から各都道府県に対し、「新型コロナウイルス感染症の陽性者が死亡した場合、厳密な死因を問わず、新型コロナウイルスで死亡した感染者として全数公表するようにお願いします」と事務連絡があった。死者が少し増えているのは、この通達が原因である可能性が高い。実際にそういう事例が報告されています。このことについても検証すべきです。
小川 すでに、コロナが原因で60万人が失職状態と聞きます。時間はありません。ただちに日本社会は検査・感染者増の呪縛から脱し、全面的な稼働、再生態勢に入るべきです。
小川 集団免疫を主張すると、「人が死んでいるのに、よくそんなことが言えるな」と批判される。しかし、「あなた方こそ国民の命を弄んでいるじゃないか」と言いたい。
上久保 おっしゃる通りです。死者がそれほど増えていないのに、不安だけ煽るほうがよっぽど無責任だと思います。
それに、実は6月18日に厚生労働省から各都道府県に対し、「新型コロナウイルス感染症の陽性者が死亡した場合、厳密な死因を問わず、新型コロナウイルスで死亡した感染者として全数公表するようにお願いします」と事務連絡があった。死者が少し増えているのは、この通達が原因である可能性が高い。実際にそういう事例が報告されています。このことについても検証すべきです。
小川 すでに、コロナが原因で60万人が失職状態と聞きます。時間はありません。ただちに日本社会は検査・感染者増の呪縛から脱し、全面的な稼働、再生態勢に入るべきです。
小川 榮太郎(おがわ えいたろう)
1967年生まれ。大阪大学文学部卒業、埼玉大学大学院修了。第18回正論新風賞を受賞。『小林秀雄の後の二十一章』『約束の日──安倍晋三試論』(ともに幻冬舎)、『平成記』(青林堂)など著書多数。最近著は『フルトヴェングラーとカラヤン──クラシック音楽に未来はあるのか』(啓文社書房)。社団法人日本平和学研究所理事長。
1967年生まれ。大阪大学文学部卒業、埼玉大学大学院修了。第18回正論新風賞を受賞。『小林秀雄の後の二十一章』『約束の日──安倍晋三試論』(ともに幻冬舎)、『平成記』(青林堂)など著書多数。最近著は『フルトヴェングラーとカラヤン──クラシック音楽に未来はあるのか』(啓文社書房)。社団法人日本平和学研究所理事長。
上久保 靖彦(かみくぼ やすひこ)
1967年生まれ。1996年、兵庫医科大学医学部を卒業。京都大学医学部附属病院の研修医や兵庫県立尼崎病院(現・兵庫県立尼崎総合医療センター)血液内科専攻医を経て、99年、京都大学大学院医学研究科に進学。血液・腫瘍内科学専攻を2003年3月に修了。2004年~09年まで米国立衛生研究所(NIH)ヒトゲノム研究所(NHGRI/フランシス・コリンズ所長)博士研究員。10年3月から東京大学医学部附属病院無菌治療部フロアマネージャー・東京大学大学院医学研究科血液・腫瘍内科学第6研究室(血液研究室)の室長。18年12月から現職の京都大学大学院医学研究科特定教授。
1967年生まれ。1996年、兵庫医科大学医学部を卒業。京都大学医学部附属病院の研修医や兵庫県立尼崎病院(現・兵庫県立尼崎総合医療センター)血液内科専攻医を経て、99年、京都大学大学院医学研究科に進学。血液・腫瘍内科学専攻を2003年3月に修了。2004年~09年まで米国立衛生研究所(NIH)ヒトゲノム研究所(NHGRI/フランシス・コリンズ所長)博士研究員。10年3月から東京大学医学部附属病院無菌治療部フロアマネージャー・東京大学大学院医学研究科血液・腫瘍内科学第6研究室(血液研究室)の室長。18年12月から現職の京都大学大学院医学研究科特定教授。