【安積明子】総理になると精彩が消える⁉ 2人の「菅」(《あづみん》の永田町ウォッチ㊸)

課題山積の中、尾を引きそうな「接待問題」。官房長官時代は切れ味鋭かった菅(すが)総理も、総理就任後は防戦一方でどうもかつてのキレがない様子。さて、総理になって評価を下げたと言えば、民主党政権時の菅(かん)直人元総理。おりしも22日の衆院予算員会で「対決」した2人だが、なんというか予想通りというか嚙み合わなかった雰囲気…。ひょっとして「菅」の字は総理に向かない⁉

【安積明子】総理になると精彩が消える⁉ 2人の「菅」

菅直人元総理の質問に答える菅義偉総理
via youtube
 総務官僚への接待問題で、東北新社の二宮清隆社長が2月26日に引責辞任し、同社に勤務する菅義偉首相の長男・正剛氏はメディア事業部趣味・エンタメコミュニティ総括部長を解任。執行役員を解任された三上義之氏や木田由紀夫氏とともに人事部付となりました。正剛氏はさらに子会社の「囲碁将棋チャンネル」取締役も辞任するなど、厳しい処分が下されています。

 もっとも、これらのポストは「総務省にメチャ強い菅義偉の長男」ゆえに与えられたものでしょうから、文春砲で玉砕した以上は会社にとって優遇する必要はないということなのでしょう。

 そのように考えれば、ひとり単価7万4000円の接待を東北新社から受けていた山田真貴子内閣広報官には月額報酬の10分の6を返納させたのみで、首都圏以外の2府4県で緊急事態宣言が解除されるにもかかわらず、総理会見を開かない菅首相の「思惑」は理解できます。あれは山田広報官を庇っているのではなく、長男を庇(かば)っているんですよ。これでさらに山田広報官に処分を下すと、東北新社側ももう一段踏み込まなくてはならず、正剛氏は職を失いかねないですからね。

 しかし、官房長官としては収まりが良かった菅首相ですが、総理大臣になって以降はさっぱりですね。まるで昨年の自民党総裁選で勝利することに、自分を含めて一族の運を全部使っちゃったという印象です。

 同じく総理大臣になったとたん、単なるイライラ・ヘラヘラおじさんになった印象を持ったのが菅直人元首相。現在の菅首相と漢字は同じですが、読み方が違います。

 菅元首相は民主党結成時には「総理大臣にしたいナンバーワン」と呼ばれましたが、女性スキャンダルでその期待も消えました。それでもなお菅元首相は野心は捨てず、民主党政権で2代目の総理大臣に就任した時にはニヤニヤしながら「ずっとやりたい」とご満悦の様子でした。それを聞いて胃(胸ではなく)から何かがぐっとこみ上げ、「勘弁してよ」と思ったものですが。

思い出したくない方の「菅」総理
 こうしてみると、音読みであれ訓読みであれ、「菅」という苗字の人は総理大臣になってはいけないのではないかとも思えてきます。全国の「菅」さんには申し訳ないのですが、ケチが付くとはこういうことなんですよね。もし3人目の「菅首相」を誕生させたかったら、まずは日枝神社でお祓いを受けて下さい。

 なお、個人的には山田真貴子広報官の問題は非常に残念に思っています。総理大臣会見で筆者をフリーランスとして最初に指名してくれたのは長谷川榮一広報官でしたが、一度として名前を呼んで指名してもらったことはありませんでした。そもそも3密を避けるために参加者を制限する以前から、フリーランスが着席する場所は決められており、どこに誰が座っているのかは官邸は把握しています。

 一方で、山田広報官は最初から名前を呼んで指名してくれました。筆者だけではありません。官邸での会見の常連である内閣記者会加盟社以外からの参加で、山田広報官から名前で呼ばれなかった人はいなかったはずです。
 指名に際しても、内閣記者会加盟社の記者とそれ以外の記者とのバランスをとっていました。また指名の順番についても内閣記者会加盟社が優先されがちでしたが、山田広報官はそうした優劣を付けずフリーランスを先に指名したこともありました。これは安倍政権以前ではあり得なかった出来事です。

 にもかかわらず、アンチ権力ビジネスに勤しむ一部の新聞記者などは、まったく方向違いの批判を繰り広げています。もっとも彼らにとって新聞記者が自由勝手に質問できればそれでいいわけで、その主張のために便宜上フリーランスを利用しているに過ぎません。

 政治力を頼みにする高額接待は問題ですが、それに乗じてあざといエセ正義に騙されないよう、くれぐれもご用心を。

安積 明子(あづみ あきこ):ジャーナリスト
兵庫県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。
1994年、国会議員政策担当秘書資格試験合格。参議院議員の政策担当秘書として勤務の後、執筆活動を開始。夕刊フジ、Yahoo!ニュースなど多くの媒体で精力的に記事を執筆している。