【安積明子】4.25参院補選:軽すぎる政治家の「政策」と「信条」(《あづみん》の永田町ウォッチ㊼)

来る4月25日に各地で実施される補選と再選挙。参院長野補選は無風という感触だったが、ここにきて有力候補の羽田次郎氏が共産党長野県委員会と政策協定を結んだことで波風も―。それにしても羽田氏、2017年衆院選では希望の党から出馬していたはずなのに、今度の政策協定で「憲法を守り、安保法制などの違憲立法の廃止」「原発ゼロ」とはあまりにも軽すぎませんか?

【安積明子】4.25参院補選:軽すぎる政治家の「政策」と「信条」

 4月25日の衆議院北海道第2区補選と参議院長野県選挙区補選は、前者は自民党の不戦敗、後者は野党の圧勝ということで、わざわざ取材に赴く必要はないと思っていました。ですから選挙違反で2人の国会議員が辞職した参議院広島県選挙区再選挙を見に行こくつもりだったんですよ。そこに発生したのが小川洋福岡県知事の辞意表明による福岡県知事選で、4月は忙しくなるぞと思ったものです。

 1月に出した著書でも書きましたが、次期衆議院選では福岡県と山口県、広島県に注目です。福岡県は端的にいえば、麻生太郎 対 武田良太の仁義なき戦いです。ほら、麻生副総理兼財務大臣は3月16日の衆議院財政金融委員会で、NTT幹部との会食問題をのらりくらりと逃げる武田大臣に対して「国民がテレビで見たらどう思うかを言ってやろうかと思ったけど、あんまり仲が良くないので黙っておいた」と発言し、自分でも“犬猿の仲”であることを認めたでしょ。2019年4月の知事選では現職の小川知事を擁した武田側の勝ちでしたが、次回の知事選では武田大臣は総務省を中心に官僚から候補を立てようとしたところ、東北新社問題から発展した総務省の汚職問題でそれも断念。当初は意欲を見せていた元国交省局長の奥田哲也氏も出馬をとりやめたため、福岡県知事選は無風となりそうです。

 なので当面の焦点は4月24日の広島入りだと思っていたのですが、ここに来て情勢が変わってきたのです。そう、もしかしたら長野県入りするかもしれません。

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 昨年末に新型コロナウイルス感染症で突然死去した故・羽田雄一郎議員の後継として、早々に名乗りを上げたのは弟の次郎氏でした。流れを作ったのは、いまだ強固な組織力を持ち、羽田家を代々支えてきた後援会の「千曲会」で、しかも弔い合戦なら負けるはずがありません。

 しかし次郎氏は2011年4月の世田谷区議選でボロ負けしているんですよね。さらに2017年の衆議院選では希望の党から東京ブロック単独で出馬して落選。この時は選挙区すらもらえなかったようです。そうそう希望の党って、小池百合子東京都知事らが「憲法改正と原発」のハードルをかけて候補者を選抜したはずです。これに合格したということは、次郎氏は憲法改正と原発について賛成のはずですよね。

 ところが次郎氏は2月27日に立憲民主党長野県連や共産党長野県委員会と政策協定を結びます。その中にしっかりと書かれていたのが「憲法を守り、安保法制などの違憲立法の廃止」「原発ゼロ」という文言でした。

参院長野補選に出馬する羽田次郎氏
via 立憲民主党ウェブサイト
 あちゃっー!全然違うやん!政治家にとって信条や政策はいわば命も同然。にもかかわらず、当選するためには魂を売ってもいいのでしょうか?しかもその2日前に推薦を出した国民民主党には何も連絡がないという不義理…。もちろん国民民主党は激怒するし、連合も微妙な状態。もっとも連合はいちおう応援することになりましたが、週明けに結論を出す国民民主党の支援は難しいでしょう。

 そもそも立憲民主党からも、「政策協定については普通は内々にやるものだ」と呆れた声も聴かれています。とりわけカメラマンの堀田喬さんが、立憲民主党や国民民主党の会見に出席してこれについて糾弾しています。昭和43年から永田町で取材する堀田さんの声は、誰も無視できません。なんといっても取材歴は、昭和44年生まれの国民民主党の玉木雄一郎代表の人生より長いんですからね。

 選挙は勝たなければ意味がありませんが、それで人間として大事なものを踏みにじってもいいんでしょうかね。いや、これは与党にも言えることですけどね。そのことについては、また追々。

安積 明子(あづみ あきこ):ジャーナリスト
兵庫県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。
1994年、国会議員政策担当秘書資格試験合格。参議院議員の政策担当秘書として勤務の後、執筆活動を開始。夕刊フジ、Yahoo!ニュースなど多くの媒体で精力的に記事を執筆している。