ジャンポケ斉藤氏の「性的暴行」疑惑をどう見る?【兵頭新児】

ジャンポケ斉藤氏の「性的暴行」疑惑に日本中が揺れている。同氏が不同意の関係ではないと容疑を否定、また妻の瀬戸サオリ氏も勇気ある告発をするも、マスコミはその瀬戸氏を含めバッシング一辺倒。しかしでは、本当に斉藤氏が疑わしいのかとなると……。

ジャンポケ斉藤のスキャンダル、どう見る?
via YouTubeより

合意があった?

 お笑いトリオ「ジャングルポケット」斉藤慎二氏の「性的暴行」が話題になっています。
 当初、同氏は警視庁の調べに対し容疑を認めており、また9月には「体調不良」を理由に芸能活動休止を発表、出演していた全テレビ番組を降板していたと報じられ、ぼくも本人が認めている以上、同氏に一方的な非があるものと思っておりました。事実、本件を伝えた最初期のものと思われる『東スポWEB』の記事を見れば、そのような感想しか浮かんできません
 ところがこの『東スポ』の数時間後の記事を見ますと、同氏の妻でタレントの瀬戸サオリ氏が、インスタグラムで報道を否定する投稿をしたことが話題になっています。

《事実関係としましては、
相手の方からも行為があり
SNSをフォローしたり
連絡先を交換していたことは事実で
こちらとしましては
ロケバスの中のドライブレコーダー及びカメラの解析を
警察の方に求めていました。
一方的な行為ではなかったことを伝えている状況でした》


 つまり、前提として問題の「被害者」女性と斎藤氏は旧知の間柄であり、また「相手の方からも行為があり」というのはちょっと判然としませんが、流れから察すると「相手から積極的に(性行為を)求めてきた」、それも恐らくはかつてからそうしたことがあった、と読めます。もちろん最後の「一方的な行為ではなかった」というのも、普通に読めば合意の行為であった、という意味にとれますよね。

 仮に両者が旧知であったにせよ、性的暴行は充分起こり得ることですが、何にせよ「合意があったのだ」となれば話は180度変わってきます。
『東スポWEB』は瀬戸氏の投稿について報じた後も、斉藤氏を「元ジャングルポケット」と表現し、過去の女癖の悪さを暴露し、関係者の「ロケバスで性的行為に及ぶのは言語道断」などという証言を掲載するなど(本当にそれがコンプライアンス違反になるのか、よくわかりませんが)、正直、引き返せなくなって強弁しているという感がなくもありません。

むしろ斉藤氏に有利

 ――さて一方、『文春』では今月10日発売号で、本件の「全真相」を語るとぶち上げていました。SNSでは『文春』絡みとなると当てにならない、松本人志事件と同様に火があるか疑わしいまま、煙を立てているのではないか……と懐疑的な声が上がっていたのですが……読んでみるとその「真相」はむしろ、斉藤氏に有利という印象を受けたのです。

 先の『東スポ』では斉藤氏が容疑を認めていたかのように報じられていたのに、同誌を読むと最初から当人が容疑を否認、合意であったと主張しているのです。同氏が言うには相手の女性はことが終わり、別れる時にも円満だった、また、ドラレコの記録にも言及、後日、相手の女性は「お礼メール」すら送ってきたとされています。
 もう一つ、行為は口淫であったといいますが、普通に考えてこれはかなり女性が能動的にならなければ成立しないものではないでしょうか。

 人気YouTuberの失敗小僧氏(司法書士)は本件について、非合理な点が多いと指摘しています。ロケバスの中、運転手もスタッフも席を外し、2人きりだったという状況自体が極めて考えにくく、たまたま2人きりであったとしても、いつ誰かが戻ってくるかも知れない中、そうした行為に及んだというのは(『文春』では「大胆にも」及んだのだ、などとありましたが)疑わしい、仮にそれができても痕跡(要するに匂い)を消すのは難しいだろう、というわけです。同時に、こうした犯罪で嫌疑が強く、本人が容疑を否定している場合は逮捕されることが多く、そうなっていないのは検察が「冤罪だ」と判断しているのではないか、というのが同氏の考えです。

 しかし、それならば『文春』は斉藤氏に好意的なのかとなると、そうではありません。記事の後半では(本件と何ら関係のない)氏の借金について書かれ、全体としてはネガティブキャンペーンというイメージを感じずにはおれないもの。ゲスの勘繰りかもしれませんが、記事にする直前、夫人の思わぬ反撃に遭い、大慌てで借金の件を木に竹を接(つ)いだように持ち出してネガキャンを強行した……とそんなふうに見えなくもありません。

松本人志事件に似ている

 さて、上記したように、本件からはどうしたって松本人志事件を思い起こさずにはおれません。お笑いタレントの性的暴行疑惑という点もそうですが、「不同意性交等罪」のその「不同意」の部分で被害者とされる側と加害者とされる側で言い分が異なる、ところがメディアは専ら女性を被害者扱いするものばかり、といった点も共通しています。しかし何より、女性からの好意的なメールを、何でもないことのように報じている点が、ぼくには気味悪く感じられます。

 マスコミによる、まだ容疑者に過ぎない人物へのリンチは以前よりあることですが、ことに近年の性犯罪関連では女性の証言を絶対視し、疑惑の人物を早々に「クロ」であるとして断罪するというのが特徴であると言えます。
 しかし今回は斉藤氏と被害者とされる女性は知り合い同士、また松本氏の件でも「上納」などと、おどろおどろしく報じられましたが、(松本氏本人についてはサプライズで伏せられていたとは言え)そもそも飲み会に参加したこと自体は女性の意志によることなどを考えると、問題は「不同意性交等罪」の言葉通り、性交についての同意の有無だけです。
 しかし、その答えは突き詰めれば、女性の心の中のみにあり、実証のしようのないものではないでしょうか。何しろお礼メールすらも「そんなものは何の証拠にもならない」と言われてしまうのですから(この言い分の根拠と、それに対する批判はどうぞ、「松本人志さんの騒動に便乗する怪しい人たち」をご覧ください)。

 しかしながら、法律上のこの「不同意」の基準が近年、厳格化する一方であることは今までも伝えてきた通りです。
 そもそもこの「不同意性交等罪」は2023年に施行されたもので、「強姦罪」という旧称に比べ、言葉からして「同意していない」即ち、男性側に強制性がないとの認識があっても、女性側に明確な同意がない場合は犯罪である、との理念が根底にあることがうかがえます。つまり、その時に明確な拒否、抵抗がなかったとしても、同意がなかったとなれば(あったのだと後から証明できなければ)、男性側は逃げられないのです。

 同法の定めた成立要件の項目を見ると「アルコールや薬物を摂取させること」も含まれており、例えばですが、両者が飲酒をした後に行為に及んだと仮定すると、相手女性と合意を取っていたとしても、「酒で酩酊したところを(つまり、判断力の鈍ったところで合意を取りつけ)襲ったのだ」と有罪判決を受けてしまう可能性があるわけです。もちろん斉藤氏の件については、ロケバスという場所を考えるならば仕事中であったろうし、その可能性は低いだろうとは思いますが。

 もう一つ、同法には「経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること」とあり、要するに立場が上の者が性交などを求められ、断ることによって不利益が生じることを危惧(きぐ)し、求めに応じた、といった場合が想定されているわけです。
 もちろん、相手が会社の上司などで要求に逆らいがたいといったことは普通にあり得ることですが、「だから強制性があったのだ」では、立場が上位である者は、いついかなる場合も下位の者に訴えられても文句を言うな、といったことにもなりかねません。

 先にも述べたように同意、不同意というものは極めて曖昧で、ことに性関係というものは密室で行われることがほとんどで、しかも、その時に女性の意志が明示されることは、あまりないのではないでしょうか。いえ、メールの件を考えれば、立場の上下がある場合は合意があってもダメだということになりそうですが。

セックスボット

『PRESIDENT ONLINE』で、ノンフィクションライターの窪田順生氏が本件を採り挙げていました。
 同氏は「昭和の感覚では、現代では捕まってしまう」という現状を鑑み、いくつかの対案を提唱しているのですが、その一つは性的同意サービス「キロク」。これはスマホで相手の同意を記録するウェブサービスということなのですが、そもそも同意が明示されていれば問題は起こらない、しかし女性が同意を明示すること自体が稀少だといった現実に対する認識が、ここからは抜け落ちています。

 女性がこうした時に自分の意志を曖昧にしたままであることが多いのは、決してフェミニストが主張するような、「女性は自己主張が認められていないから」などといった「差別」に還元できるものではありません。むしろそれは、性の現場において、(自分が魅力的であるがため)男性が自分へと強引に迫ってきた、という物語こそが、女性にとって望ましいからでしょう。男性向けのアダルト漫画よりも、むしろレディースコミックにこそレイプ描写が溢れているのはそのためです。

 男性にしたって、そもそも「セックスしよう」と互いに明確に言語化するのは野暮だと感じる人が多いのではないでしょうか。いえ、もちろん1回のセックスで自分の人生が破壊されるとなっては野暮だ何だと言ってはおれません。しかし何にせよ、先の「キロク」は以上のような次第で、普及するとは考えにくいのです。

 実はこの種の話は以前からありました。15年前のぼくの著作、『ぼくたちの女災社会』においても女性にセクハラ扱いを受けた時の用心として、とある週刊誌が恋人と「恋愛契約書」を取り交わそうと提案していたことを採り挙げています。こんなモノを男性から出されたら、女性はまず間違いなくどんびきでしょうし、著作の中でもそう茶化してしまいましたし、事実、これが流行したという話も聞きません。

 結局、こうした現象を打破するには、女性ももう少し自己の意志をはっきりと示していただくか、ある程度自衛をしていただくしか手はありません。
 もっともそれが今の世の中で現実味を帯びた提案かどうかは、心許ないところです。何しろ窪田氏は同記事で女性の自衛を呼びかけることは「被害に遭った女性を責める(≒自衛しなかった者が悪いと責める)ことにつながる」という性教育YouTuberのSHELLY氏の意見を「ド正論」として紹介しています。どこが正論かさっぱりわけがわかりませんが、ともかくフェミニストはこうした言い方をする人が多く、こうなると男性はいつ冤罪で人生を破壊されても、あきらめるしかないのかと嘆きたくなってきます。

 もっとも、そのことは窪田氏もお気づきなのか、同記事ではもう一つ、対案が挙げられています。
 どのようなものかと思ってみれば、それが「セックスボット」。
 つまり、女性以上に魅力的な萌えキャラ的なロボットを開発すれば、問題は解決というわけです。同氏は妙にこの案にご執心で、「キロク」よりもはるかにこの案に文字数を費やしていらっしゃるのですが、果たしてそれで満足できるのか、満足できるような高性能のロボの開発はいつになるのか(氏は海外では年内に発売される予定だと太鼓判を押していらっしゃるのですが、それが本当に満足できるものであり、また普及まですぐなのでしょうか。ちょっと動いておしゃべりのできるダッチワイフみたいなものなんじゃないでしょうか)、またその場合、女性も男性にあぶれるのだから男性のセックスボットも開発するのか、そもそもそうなったら子供はどうやって産み、育てるのか。
 1億歩ほど譲って人工授精で賄うとしても、じゃあ、それを誰が育てるのでしょうか。原始共産主義のカルトみたいに「共同体で」育てよというわけでしょうか。

やっぱり背後にはフェミニズムが

 さて、ぼくの記事をいつもお読みいただいている方には、もうおわかりじゃないでしょうか。いつも言っている通り、そもそもフェミニズムには「強制異性愛」といった概念があり、「異性愛」そのものをまかりならぬものであるという考えが、根本にあるのです。
 セックスボットはフェミニズムにとってはむしろ、福音とも言える存在でしょう。

 ジャンポケ斉藤氏について話させていただいていたはずが、いつの間にかセックスボット云々などという話になっていてぼく自身がちょっと戸惑っていますが、しかしこれはある種の必然なのです。フェミニズムは何しろ、「あらゆるセックスはレイプだ」「結婚とは奴隷制度だ」という考えなのですから、今回の斉藤氏の相手の女性は(仮に性交渉があったのであれば)どうあろうとレイプされたのであり、瀬戸氏の勇気ある告発も、当然「ご主人様を守ろうとする奴隷の発言」に過ぎず、取るに足りないものなのです。

 そう、「不同意性交等罪」の成立の裏にはフェミニズムの理念が潜んでいると考えるほかありませんし、法曹界がフェミニズムを受け容れてしまった以上、ぼくたちはもうどうやってもセックスから撤退するしかない。詰んでいるのです。
 今回、瀬戸氏が告発するとともに「私にも守るべき子供がいますのでお伝えさせていただきました。」と語っていたことが、ぼくには印象に残りました。
 窪田氏が言うにはセックスボットなどすぐに普及するのですから、後10年も遅かったら、彼女のお子さんもこの世に生を受けられなかったのかもしれないのですから。
 そう、子をなしたいと考える男女と、「セックスボット」との大戦争は、すでに始まっているのかもしれません。
兵頭 新児(ひょうどう しんじ)
本来はオタク系ライター。
フェミニズム、ジェンダー、非モテ問題について考えるうち、女性ジェンダーが男性にもたらす災いとして「女災」という概念を提唱、2009年に『ぼくたちの女災社会』を上梓。
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