髙橋 イギリスはジョンソン首相が重症化し、欧州のなかでは親中だったドイツのメルケル首相でさえ、「中国がもう少し透明性を持ってくれていたら、この問題を学ぶ上で全世界の人々にとって、もう少し良い結果になっていたと思う」と言っています。今後はアメリカだけでなく、欧州も協調した〝対中包囲網〟が形成される可能性が高い。具体的にはモノの輸出規制、投資などを制限する金融制裁でしょう。日本も足並みを揃えなければなりません。

藤井 1月の米中貿易交渉の第一段階の合意により〝休戦〟するとみられていた米中対決が〝再開〟し、冷戦から熱戦へとエスカレートするのは確実です。日本人はまず、この単純明快な事実を強く認識する必要があります。

髙橋 金融制裁によって西側諸国からのマネーが止まれば、チャイナ経済は音を上げるでしょう。もちろん、中国の日本資産は差し押さえられ、反対に日本国内のチャイナ資産も接収されることになる。そのなかにもし、中国共産党幹部の資産があれば大変なことになる。

藤井 日本企業は大局観を持ち、〝脱チャイナ〟を進めていかなければなりません。チャイナへの傾倒を進めれば、必ず痛い目に遭うことになる。脱チャイナのための資金も、日本政府は提供するべきです。日本ではあまり取り上げられていませんが、アメリカではいよいよハイテク技術の輸出規制措置であるECRA(輸出管理改革法)が始動します。これはかつてソ連圏へのハイテク技術輸出を規制したCOCOM(対共産圏輸出統制委員会)の対チャイナ版というべきものです。

髙橋 ハイテク技術の輸出規制は、ソ連が崩壊したあとにCOCOMが解散され、後継として紳士協定のワッセナー・アレンジメントができた。それをまた米国主導で強化するというわけ。

藤井 規制の詳細を決めるのに時間がかかりましたが、航空機部品や半導体製造装置など、アメリカの製品や、アメリカ国産技術の割合が10%以上の製品はチャイナへ輸出できなくなります。もちろん、日本企業も規制対象です。とくに半導体製造装置の輸出規制はインパクト絶大です。チャイナはハイテク技術を持っていても、ハイテク製品に必要不可欠な半導体を製造する技術、装置は持っていません。
「中国製造2025」の要であるファーウェイは、子会社のハイシリコンに半導体の製造を任せています。同社は半導体製造装置を持っていないので、台湾のTSMCに生産を委託していました。
 しかしECRAの発動によって、TSMCは半導体をハイシリコンに、つまりファーウェイに供給できなくなったのです。ファーウェイはサプライチェーンの根本的な再構築を迫られ、世界的な5G展開は困難になるでしょう。今後、ECRAはチャイナにボディーブローのようにジックリと効いてくるはずです。

髙橋 ECRAに違反すればアメリカの法律によって、アメリカ国内でのビジネス展開もできなくなります。勘が鈍い経営者でも、さすがにアメリカでビジネスができないことを知れば目を覚ますはず。

藤井 1987年、日本の東芝機械がCOCOMに違反したとき、アメリカは東芝機械だけでなく、グループ全社の製品輸入を禁止しました。同じ過ちを繰り返す日本企業が出てこないか心配です。日本企業はいまや、チャイナとアメリカに二股をかけることは許されません。チャイナに入れ込む企業は、ゆくゆくはチャイナに乗っ取られたり、接収されるのが関の山。経済界は米ソ冷戦時代以上に政治リスクに敏感になる必要があります。日本はアメリカの同盟国として、中国共産党の独裁体制と戦う運命にあるのです。武漢ウイルス騒動は、その未来を決定づけたといえるでしょう。
財務省の悪だくみ 武漢ウイルスの真実

財務省の悪だくみ 武漢ウイルスの真実

軍事的にも緊急事態

藤井 トランプ大統領の怒りも相当なようです。「アメリカ史上最悪の攻撃」「真珠湾攻撃と9・11同時多発テロよりもひどい」とも発言しました。この発言は本物です。

髙橋 アメリカ経済への影響も甚大で、昨年5月、3.5%という50年ぶりの低水準を記録した失業率は、4月には戦後最悪の14.7%になってしまった。時の経済状況は、大統領選にも大きく影響します。

藤井 武漢ウイルスは順風満帆だったアメリカ経済を奈落の底に突き落としたのです。トランプ大統領にとって、アメリカ経済を再建したことは11月の大統領選で最大の強調材料になるはずでした。彼の再選を阻む最大の敵は、チャイナが〝買収済み〟のバイデンではなく、武漢ウイルスそのものです。とはいえ、9月頃までにウイルス感染を終息させ、景気が回復基調のなかで大統領選が行われれば、トランプ大統領が再選する可能性はかなり高いでしょう。
 その背景には、国民の反チャイナ感情の高まりがあります。4月11日に発表されたハリス世論調査会社の調査では、武漢ウイルスの拡散は「チャイナ政府に責任がある」と答えた人が77%、「ウイルスに関して、チャイナ政府の報告は信用できない」と答えた人は72%、「チャイナ・ウイルスと呼ぶことに賛成する」と答えた人は52%にのぼりました。
 さらにトランプ政権の対中姿勢について、「より強硬にしたほうがいい」と答えた人は50%、「これまでと同じでいい」が33%、反対に「よりソフトにしたほうがいい」と答えた人はわずか17%という結果でした。また5月15日現在、アメリカ国内の武漢ウイルスによる死者は約8万8000人で、ベトナム戦争の死者5万8220人をはるかに超えています。同胞を殺されたアメリカの人の恨みは、チャイナに向かわざるを得ません。

緊急事態宣言延長のワケ

藤井 髙橋さんは元感染症数理モデル研究者です。対談時点では緊急事態宣言は5月31日まで延長(39県は14日解除)されていますが、これをどう見られますか。

髙橋 妥当でしょうね。感染症対策には、約100年前に猛威を振るったスペイン風邪のあとにつくられた数理モデルが使われています。日毎の「新規感染者数」(全国)をみれば、1、2週間先が推計できる。このままいけば5月下旬に多くても2ケタの真ん中付近、6月上旬には2ケタの前半になる可能性が高い。政府の専門家チームも同じ見立てでしょう。ちなみに、数理モデルで用いる「基本再生産数」(感染者1人が何人に感染させるかを示す)が注目されていますが、流行中の感染症で瞬時に導き出すのは難しい。新規感染者数を見るのと、さほど変わりません。

藤井 数理モデル上は、基本再生産数を1以下にしなければならない、といわれていますね。

髙橋 そうしないと、感染者の増加は続く。1以下にするには、人との接触を約六割減さなければならない。これは数理モデルから導き出せます。でも6割では心許ないので、専門家チームは「極力、8割削減」と言ったんでしょう。その後の新規感染者数の推移を見る限り、8割はムリでも6割は削減できているようです。それを見た専門家チームが「2週間~1カ月の延長」を主張し、「間を取って3週間に」「それならキリのいい5月末に」と政治的に「5月31日」が決まったんじゃないですか。余裕をもって安全サイドの数字をとっているので、それより早い自粛解除もあり得ます。

藤井 夏頃には武漢ウイルスの「第1波」は終息するでしょう。しかし元の生活に戻れるわけではありません。満員電車が復活したらすぐ第2波がやって来る可能性が高い。暑くてもマスクは付ける必要があります。というのも、スペイン風邪のように、警戒感が緩むと第2派の被害のほうが大きくなることがあるからです。第1波を徹底して終息させることが、第2波の被害を最小限に抑えることにつながります。

髙橋 数理モデルでは、感染症の終息シナリオは2つしかありません。 何の対策もとらなければ医療崩壊を起こし、最悪数十万人の死者が出る。その後、集団免疫を獲得して感染者が減っていく。経済的なコストはない。一方、強力な移動制限をとれば死者数は1000人程度で済む。しかし、GDP(国内総生産)は低下し、失業者は200万~300万人、それによる自殺者は1万人程度になる。ここで最も合理的なのは、感染症による死者を減らすために移動制限をかけ、GDPの減少を休業補償や現金給付、減税などの経済政策によって最小限にとどめることです。

藤井 おっしゃる通りです。それが最も合理的な対策です。まず感染拡大を防ぐことが第一。移動制限はペストの時代から行われている古典的な方法ですが、感染拡大を防ぐために最も効果があります。それによって生じる経済的損害に対しては、その分の経済対策をしっかりと行えばいい。武漢ウイルスによる死者と経済苦による自殺者は、天秤にかけるものではありません。その経済対策ですが、4月30日に補正予算が成立し、それを財源とした第1弾の緊急経済対策が打ち出されました。100点満点でいえば60点くらい。不十分ですが、合格点でしょう。

2度目の10万円給付を

髙橋 大学でいえば、ギリギリ単位はあげられる(笑)。

藤井 3月下旬に髙橋さんにお目にかかったときも、直接GDPを押し上げる「真水」は最低でもGDPの5%=約25兆円必要だと話していました。第1弾の緊急経済対策の真水は見事、約25兆円だった。

髙橋 減収世帯への30万円給付から、全国民への一律10万円給付への〝ちゃぶ台返し〟は評価できます。30万円給付のままなら落第でしたから(笑)。もともと、安倍首相や公明党の山口代表は「一律10万円」派。ところが、麻生太郎財務相と岸田文雄政調会長の「所得制限つき一世帯30万円」案に押されてしまった。前者なら予算は約12兆円、後者なら約4兆円。財務省は「生活に困っている世帯への支援」と美辞麗句を弄して、補正予算の総額を抑えようとしていたんです。国民の不幸をよそに、相変わらずのケチっぷりに呆れ返る。
 それにテレビ東京「ワールドビジネスサテライト」の山川龍雄キャスターが指摘していましたが、安倍首相は4月7日、「一律10万円給付は3カ月かかってしまう」と言っていた。でも実務的には一律10万円のほうが簡単で、減収したかどうかを審査する30万円給付のほうが難しいに決まっている。つまり、「所得制限付き30万円給付」に落とし込みたい人たちが〝誤情報〟をあげて首相の意思決定を誘導していた可能性があるんです。有事に際してトップに正確な情報を伝えないのは〝倒閣運動〟と言っていい。

藤井 許しがたい謀略的な倒閣運動ですね。

髙橋 さらに10万円給付の申請書を見てビックリ。マイナンバーを記入する欄がない。1回目の申請でマイナンバーを書けば、2回目の給付は申請書ナシで、即振り込むことができる。財務省が給付を1回切りと決め込んでマイナンバーの記入欄をつくらなかったのではと疑っています。10万円給付については補正予算成立後、会見で安倍首相が「5月7日から、かつての日常に戻ることは困難と考えます。ある程度の持久戦は、覚悟しなければならない。(中略)その中で、全ての国民の皆様と一体となってこの困難を乗り越えていくため、この補正予算による、一人一律10万円の給付をお届けいたします」と発言しています。
 つまり10万円は、4月7日~5月6日までの緊急事態宣言を乗り切るためのもの。緊急事態宣言を延長したなら、もう一度10万円を給付すべきです。

藤井 全面的に賛成です。異例の事態には、異例の対策を講じる必要があります。そこで重要になってくるのが第2弾、第3弾の経済対策です。

「復興税」を許すな

髙橋 3月、昨年10月の消費増税の影響を受けた10~12月期のGDPが前期比7.1%減(年率換算)という衝撃的な数字が発表されました。しかし、コロナショックの影響が含まれた今年1~3月期は前期比3.4%減(同)、4~6月期も前期比25%減程度(同)というすさまじい数字が出るでしょう。このGDPを取り戻すには、総額で50~100兆円の真水が必要になる。
 だから第2次補正予算でも、25兆円の真水を出すべきです。そうすれば最低ラインの50兆円になる。2回目の10万円給付、家賃減免や雇用調整金の増額など、やることはいくらでもあるんですから。労働者の休業手当を助成する雇用調整助成金は、事業主が毎月支払っている雇用保険料の一部が原資です。民間保険なら〝万が一〟のとき、だいたい1週間以内で保険金を受け取れる。
 ところが、雇用調整助成金は申請が通るまでに1カ月以上もかかってしまうんです。私が聞いた話では、4月下旬で2~4月に申請された案件の1%しか認可されていないとか。こんなの、〝保険〟じゃないですよ。事業主はいったい、何のために雇用保険料を支払ってきたのか。万が一のためでしょう。その万が一がいまやってきたんです。官僚は自らの天下り先に多くの資金を使ってきたのに、ここでケチるなんて信じられない。

藤井 いまがその万が一の事態です。この緊急事態のど真ん中で、財務省の盲目的な緊縮イデオロギーこそ〝日本の敵〟だとハッキリしました。そんななか、専門家チームに経済の専門家4人が加わりました。しかしメンバーの1人、小林慶一郎東京財団政策研究所研究主幹は筋金入りの増税派、財政破綻論者です。東日本大震災後のように、「復興税」が導入されるようなことがあれば、日本経済は終わりです。

髙橋 自民党の主導で第2次補正予算が検討されているので、財務省が〝緊縮牽制球〟を投げたんでしょう。西村康稔経済再生担当相はツイッターで、「(前略)任命に際し本人と何度も話しました。最近の氏の論文では、今は財政再建にこだわらず国債発行してでも厳しい状況にある人の支援を行うべきと、財政支出の重要性を主張しています。経産省の後輩でもあります」と投稿しましたが、大丈夫でしょうか。財務省は復興税だけでなく〝2匹目のドジョウ〟を狙っている気さえします。緊急経済対策で財政支出を強いられるので、財政悪化を理由に復興税、その勢いで消費税も12%、15%へホップ・ステップ・ジャンプという具合に──要注意です。

藤井 一方、日銀は4月27日の金融政策決定会合で、国債の買取について「年間80兆円」という上限の撤廃を決めました。無制限の国債買取はアメリカのFRB(連邦準備制度理事会)、ECB(欧州中央銀行)もやっていることです。しかし上限を撤廃しても、これが現実的な財政出動に結びつかなければ意味がありません。

2度目の〝ちゃぶ台返し〟を

髙橋 「無制限」というと聞こえはいいですが、日銀の年間国債買取額は2016年9月に長期(10年物)国債金利を0%程度で推移するように国債を買い入れるイールドカーブ・コントロールを導入してから、年間20兆円ベースに減っていました。これでは、白川方明前日銀総裁の頃と変わりません。〝黒田バズーカ〟は鳴りを潜め、黒田総裁の〝白川化〟──「80兆円枠」は実績と乖離し、有名無実化していたんです。コロナショックを口実に撤廃しただけのことでしょう。
 だから、わざわざ「無制限」といわなくても、20兆円ベースのいまは60兆円くらい追加購入する余裕がありました。25兆円の真水なんて〝朝飯前〟なんですよ。これからは口だけでなく、実際にどれくらい購入するかが重要です。テレビ番組で「政府・日銀の連合軍をつくれ」と言いましたが、それは「財政を気にしないでカネを刷れ」ということ。何度も言っていますが、政府が発行した国債を日銀が買い取れば、財政への負担はありません。利払い費が国庫納付金として政府に戻るくらいです。

藤井 国債を日銀がいくらでも買い取るという仕組みはできました。政府と日銀は協調して、前例のない大規模な財政出動を行うべきです。思い切って「3年間消費税0%」というスローガンを打ち出せれば、国民も元気になると思うのですが。

髙橋 党派を超えて減税運動が起きていますが、消費減税は是が非でも実現させてほしい。現実論として「ゼロ」はムリでも、時限的に5%へ下げるべきです。社会保険料の免除もすぐにやるべき。「支払猶予」じゃなく、「免除」です。社会保険料はすべての国民が払っているから、止めるのも簡単なんです。何でやらないのか、不思議で仕方ありません。

藤井 この状況を見ていると、ある意味で安倍首相は強運な政治家だなと思います。昨年10月の消費増税に加えて、今春に予定されていた習近平の国賓招聘が実現していたらどうなっていたか。日本経済も復活させられず、確立させた対米機軸外交も台無しになった。保守層の総スカンを食らってオリンピック後、惨めに首相の座を降りるだけでした。しかし誤解を恐れずにいえば、安倍首相にはコロナショックという〝チャンス〟が巡ってきた。財務省との戦いに勝ち、大規模な経済対策を実施できれば、もう一度求心力を高めることができるのです。

髙橋 安倍首相には2度目の〝ちゃぶ台返し〟で、家賃補填、休業補償の拡充と消費減税を実現してもらいたい。ただ、まわりは緊縮イデオロギーに染まった人たちが囲っています。与野党問わず政治家は相変わらずだし、軽減税率という〝毒まんじゅう〟を食った新聞も、社会保険料の据え置きや法人減税というニンジンをぶら下げられた経済界も財務省の味方。それでも第1弾の緊急経済対策はギリギリ合格点をあげられたように、大規模な財政出動・無制限の金融緩和という先進国の〝定番政策〟に近づいています。そして国民のマクロ経済政策への理解は、東日本大震災のときよりはるかに高まっている。これが日本経済復活への一縷の望みです。

研究者を銃殺?

藤井 世界に目を転じれば、武漢ウイルスの起源について米中で激しい応酬が続いています。3月13日にはトランプ大統領が、「チャイナはウイルスがどこから来たか分かっている。アメリカもウイルスの出所を知っている」と発言、4月17日には「武漢ウイルス研究所」からの流出疑惑をアメリカ政府として調査していることを明らかにしました。トランプ大統領はその後、同月30日に、研究所から流出した証拠を「見た」と発言し、5月2日にはポンペオ国務長官も「大きな証拠がある」と続きました。調査結果のレポートが、まもなく公表される見込みです。

髙橋 アメリカでは武漢ウイルス騒動の前から、感染症の蔓延を予見したレポートが出ていたとか。

藤井 たとえば、2018年にジョンズ・ホプキンス大学が発表したレポート「パンデミック・パソジェンス(病原体)」には、次のような一節があります。
「変異しやすいRNAウイルスがパンデミックを起こしやすい。呼吸器系に感染するものが世界で破滅的被害をもたらす恐れがある」

髙橋 武漢ウイルスそのものじゃないですか。

藤井 さらに同年、武漢ウイルス研究所を訪れた国務省の担当者が、研究所の安全について懸念を示していたことが明らかになりました。国務省への外交公電で、「研究所を安全に運営するうえで必要な訓練を受けた技術者が不足しており、コロナウイルスが人に感染する可能性がある」と指摘していたのです。研究所起源説は、チャイナ内部からも出ていました。たとえば、華南理工大学の肖波濤教授は「新型コロナウイルスの考えうる発生源」という論文(232頁に全文掲載/編集部注)を2月6日に研究者向けサイト「ResearchGate」に投稿し、「武漢にある研究所は、自然発生的な遺伝子組み換えや中間宿主の発生源であっただけでなく、おそらく、猛威を振るうコロナウイルスの発生源でもあったのだ」と主張しています。
 ところが、欧米メディアがこの論文を取り上げるとチャイナ当局によって闇に葬られ、肖教授も米紙ウォール・ストリート・ジャーナルに「直接的な証拠に裏付けられているわけではない」と論文取り下げの理由を自己弁護しています。

髙橋 圧力があったんでしょう。

藤井 5月2日には、武漢ウイルスの研究で「非常に重要な発見を目前にしていた」とされるピッツバーグ大学医学部の劉兵助教授が、自宅で銃殺されているのが発見されました。犯人もチャイニーズで、車の中で自殺しています。都合の悪い真実が明らかになることを恐れたチャイナが口封じに走った可能性があります。被害者と自殺者の間には個人的トラブルがあったとも伝えられていますが、真相は闇の中です。またチャイナ当局は4月10日、武漢ウイルスに関する学術論文を出版前にすべて検閲することも発表しています。

「人工ウイルス説」の傍証

髙橋 ウイルスが人工的につくられたかどうかは、遺伝子を解析すればわかります。武漢の研究所ではウイルスの遺伝子組み換えも行われていた。

藤井 そんななか注目されているのが、石正麗という女性のウイルス研究者です。武漢ウイルス研究所で修士号を取得したあとフランスにわたり、モンペリエ大学でウイルス学の博士号を取得しています。彼女はコウモリからウイルスを採取・研究していることで有名で、メディアから〝バット・ウーマン〟というニックネームまで付けられていました。今回、武漢ウイルスは彼女が実験室で合成したものではないかと疑われているのです。
 事実、石研究員を中心としたチームはコウモリから抽出したSARSウイルスに遺伝子工学で手を加え、ネズミの呼吸器にダメージを与えるウイルスを生成していました。この研究論文は2015年11月に学術誌『ネイチャー メディシン』に掲載され、当時も人間に感染するウイルスをつくるのではないかという批判の声が上がっていたのです。

髙橋 さすがに「研究所でつくったウイルスを現地でバラ撒く」という見え透いたことはしないでしょうが、事故で誤って流出した可能性はあります。

藤井 ここに来て、武漢ウイルス研究所とアメリカの大学、研究機関の怪しい関係も明るみに出てきました。まず、テキサス大学と武漢ウイルス研究所、石研究員、ファーウェイなどのつながりです。テキサス大学はこれらの企業や研究機関からマネーやサービスを受けていながら、教育省に報告していなかった可能性があるのです(外国の企業や組織からの寄付については、教育省への報告義務がある)。石研究員がウイルス標本をテキサス大学に持ち込んだ可能性さえあるといわれています。
 また4月21日、ある共和党の議員が、全米衛生研究所(NIH)がコロナウイルス研究のために武漢ウイルス研究所を含む複数のチャイナの大学や研究所に、研究資金を提供していたことを明らかにしました。6年間でその額、340万ドル(約3億6000万円)以上。さらにオバマ政権時代の2014年10月まで、ホワイトハウスの科学技術政策室は武漢ウイルス研究所など外国の研究機関に、パンデミック研究のための研究資金を提供していました。武漢ウイルス研究所で石研究員らが危険な研究を行っているということで、この資金提供を停止したのです。チャイナ側はアメリカの大学や研究機関に資金提供や協力を申し出て、研究成果を盗もうとしていた。その一方、アメリカからの研究資金によって、危険なウイルス研究に役立てていた。中国共産党に侵食され、アメリカは双方向からチャイナのウイルス研究に協力させられていたのです。

髙橋 人工ウイルス説については、1月下旬にインドの科学者が「bioRxiv」というサイトに発表し、撤回した論文も注目を集めました。武漢ウイルスのタンパク質の配列が、自然界で起こる現象とは考えられないと。

藤井 フランスのリュック・モンタニエ博士の発言も注目すべきです。4月16日、欧州の有名テレビ番組で、「新型コロナウイルスは武漢にあるウイルス研究所から事故で漏洩してしまったもので、人工的につくられたウイルスだ」と発言したのです。彼は1983年にエイズ・ウイルス(HIV)を発見し、2008年にノーベル医学生理学賞を受賞したウイルス学の権威。特筆すべきは、「自分はもう87歳だし、圧力など怖くない。科学的な真実は必ず明らかになる」と言っていることです。この言葉は、圧力が加わっている証拠でしょう。
 番組内での「コロナウイルスはエイズウイルスから派生したものではないか」という質問には、「HIV配列をゲノムに挿入するには分子工具を使用しなければならず、患者ができることではない。実験室の人間がやったことだ」と回答しています。また海鮮市場発生説については、「耳障りのよい伝説でしかない」と喝破しました。さらに、モンタニエ博士の研究に参加している数学者ジャン・クロード・ペレズ氏は、武漢ウイルスのなかにエイズウイルスの構造が組み込まれていることを確かめ、「これは時計職人が行うような精密なもので、自然に存在することはあり得ない」と結論づけています。そして、そもそも武漢ウイルス研究所のP4(病原体レベルの最高危険度)研究室は、フランスの全面協力で建設されています。

台湾の報告を無視したWHO

髙橋 証拠の一歩手前の「傍証」は出揃っていますね。今後、アメリカはチャイナに対し、ウイルスに関する疑惑のほかに、情報を隠蔽し、パンデミック化させた責任を追及していくでしょう。情報開示を争点とした戦いで、チャイナが勝つことはできません。

藤井 アメリカはチャイナに「疚(やま)しいところがないなら、全て情報開示しろ」と迫っています。ところがチャイナは疚しいところだらけなので、絶対に情報を開示できません。チャイナは昨年12月の段階で、ヒト・ヒト感染の事実を掴んでいました。そうでありながら、WHOや国際社会に報告せず、世界中から人工呼吸器や防護服、マスクなどの医療品を買い占めた。いまや、それらを世界へ高値で転売している。〝悪徳商人〟そのものです。
 チャイナは春節(1月24~30日)前に何の対応も取らず初期対応を誤り、一地域の伝染病で済ませられた武漢ウイルスをパンデミック化させたのです。この紛れもない真実を無視し、「独裁体制だからこそ伝染病を抑圧できた」と共産党政権の優位性をアピールしたところで、誰も信じません。また先月号でもお話ししましたが、武漢ウイルスが蔓延し自国経済が悪化、企業が世界のサプライチェーン(供給網)から外されることを恐れたチャイナは、わざと世界中にウイルスを拡散させたのではないかと推測しています。

髙橋 一方、台湾は昨年12月31日に、ヒト・ヒト感染の可能性を示唆、警告するメールをWHOに送っていたことが明らかになりました。しかし、WHOはそれを無視した。〝人類の敵〟ともいえる暴挙です。WHOに対しては、台湾の対策チームのトップ、陳時中・衛生福利部長も「これ以上、過ちを犯さないでほしい」と言っています。

藤井 台湾が世界一、素早い対応ができたのは日頃からチャイナ内部の動きを正確に把握していたからです。台湾の自由と民主政治を守るインテリジェンス活動の賜物なのです。

髙橋 果たして、WHOの日本の担当者は、このメールを知っていたのでしょうか。もし知らなかったとしたら、あまりにもお粗末です。また知っていたとすれば、日本政府に伝えていたのか。政府が情報を得ていたら、もっと早くチャイナからの入国制限ができたかもしれません。武漢ウイルス騒動で明るみに出た日本のインテリジェンス問題も、議論する必要があります。

アメリカの恨みはチャイナへ

髙橋 メディアでは報じられませんが、チャイナの軍事的挑発も活発になっています。本誌の連載「月報 尖閣最前線」(75頁)を見てもそれはわかる。

藤井 1~3月のチャイナ公船尖閣諸島周辺の接続水域入域は延べ289隻で、前年同月比57%増。5月8日~10日には3日連続で中国公船が領海侵犯。領海侵犯はこれまで月に1~2回でしたから、3日連続というのは明らかに異常です。5月9日には、中国公船が日本漁船を追尾、これは2008年に中国船が尖閣諸島で確認されるようになってから2回目のことです。台湾に対しても、中国機が中間線を越えたり、防空識別圏に接近を続け、3月16日の夜には台湾の南西空域で初の夜間飛行を行っています。
 また4月11日には、チャイナの空母遼寧とミサイル駆逐艦など計6隻の軍艦が、沖縄本島と宮古島の間を南下して太平洋と南シナ海に進出、五日間にわたって軍事演習を行いました。こうした動きを受け、ポンペオ国務長官は4月22日、「世界の注目が武漢ウイルスに向けられていることを利用して、中国共産党は台湾に軍事的圧力をかけ、南シナ海で近隣諸国を威圧し、ベトナム漁船を沈めるなどの暴力的活動を行っている」と非難しています。

髙橋 医療品の売りつけといい、まさに〝火事場泥棒〟。米中の「貿易戦争」は、貿易以外のところでも「準戦争」になりつつあります。

藤井 ここで大きな問題があります。現在、西太平洋・東アジア海域で活動できる米海軍の空母が存在しないのです。米海軍には11隻の空母がありますが、作戦行動が可能なのはドワイト・D・アイゼンハワー、ハリー・S・トルーマン、セオドア・ルーズベルトの三空母だけでした。このうちドワイト・アイゼンハワーとハリー・S・トルーマンは北アラビア海で作戦行動中、西太平洋・アジア海域で活動できるのはセオドア・ルーズベルト1隻だった。
 そんなセオドア・ルーズベルトを悲劇が襲います。3月24日、艦内で3名の武漢ウイルス感染者が発生したのです。3人はただちにグアムへ航空機で移送されましたが、その後も艦内で感染者は増え続け、100人以上が感染してしまいました。日本はこのような軍事的な緊急事態に対しても緊張感を持ち、不測の事態に備える必要があります。国民や政治家の関心が武漢ウイルス禍のみに集まることは危険です。

チャイナ傾倒は許されない

髙橋 イギリスはジョンソン首相が重症化し、欧州のなかでは親中だったドイツのメルケル首相でさえ、「中国がもう少し透明性を持ってくれていたら、この問題を学ぶ上で全世界の人々にとって、もう少し良い結果になっていたと思う」と言っています。
 今後はアメリカだけでなく、欧州も協調した〝対中包囲網〟が形成される可能性が高い。具体的にはモノの輸出規制、投資などを制限する金融制裁でしょう。日本も足並みを揃えなければなりません。

藤井 1月の米中貿易交渉の第一段階の合意により〝休戦〟するとみられていた米中対決が〝再開〟し、冷戦から熱戦へとエスカレートするのは確実です。日本人はまず、この単純明快な事実を強く認識する必要があります。

髙橋 金融制裁によって西側諸国からのマネーが止まれば、チャイナ経済は音を上げるでしょう。もちろん、中国の日本資産は差し押さえられ、反対に日本国内のチャイナ資産も接収されることになる。そのなかにもし、中国共産党幹部の資産があれば大変なことになる。

藤井 日本企業は大局観を持ち、〝脱チャイナ〟を進めていかなければなりません。チャイナへの傾倒を進めれば、必ず痛い目に遭うことになる。脱チャイナのための資金も、日本政府は提供するべきです。
 日本ではあまり取り上げられていませんが、アメリカではいよいよハイテク技術の輸出規制措置であるECRA(輸出管理改革法)が始動します。
 これはかつてソ連圏へのハイテク技術輸出を規制したCOCOM(対共産圏輸出統制委員会)の対チャイナ版というべきものです。

髙橋 ハイテク技術の輸出規制は、ソ連が崩壊したあとにCOCOMが解散され、後継として紳士協定のワッセナー・アレンジメントができた。それをまた米国主導で強化するというわけ。

藤井 規制の詳細を決めるのに時間がかかりましたが、航空機部品や半導体製造装置など、アメリカの製品や、アメリカ国産技術の割合が10%以上の製品はチャイナへ輸出できなくなります。もちろん、日本企業も規制対象です。
 とくに半導体製造装置の輸出規制はインパクト絶大です。チャイナはハイテク技術を持っていても、ハイテク製品に必要不可欠な半導体を製造する技術、装置は持っていません。
「中国製造2025」の要であるファーウェイは、子会社のハイシリコンに半導体の製造を任せています。同社は半導体製造装置を持っていないので、台湾のTSMCに生産を委託していました。
 しかしECRAの発動によって、TSMCは半導体をハイシリコンに、つまりファーウェイに供給できなくなったのです。
ファーウェイはサプライチェーンの根本的な再構築を迫られ、世界的な5G展開は困難になるでしょう。今後、ECRAはチャイナにボディーブローのようにジックリと効いてくるはずです。

髙橋 ECRAに違反すればアメリカの法律によって、アメリカ国内でのビジネス展開もできなくなります。勘が鈍い経営者でも、さすがにアメリカでビジネスができないことを知れば目を覚ますはず。

藤井 1987年、日本の東芝機械がCOCOMに違反したとき、アメリカは東芝機械だけでなく、グループ全社の製品輸入を禁止しました。同じ過ちを繰り返す日本企業が出てこないか心配です。
 日本企業はいまや、チャイナとアメリカに二股をかけることは許されません。チャイナに入れ込む企業は、ゆくゆくはチャイナに乗っ取られたり、接収されるのが関の山。経済界は米ソ冷戦時代以上に政治リスクに敏感になる必要があります。
 日本はアメリカの同盟国として、中国共産党の独裁体制と戦う運命にあるのです。武漢ウイルス騒動は、その未来を決定づけたといえるでしょう。
藤井 厳喜(ふじい げんき)
1952年、東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業。77~85年、アメリカ留学。クレアモント大学院政治学部(修士)を経て、ハーバード大学政治学部大学院助手、同大学国際問題研究所研究員。82年から近未来予測の「ケンブリッジ・フォーキャスト・レポート」発行。株式会社ケンブリッジ・フォーキャスト・グループ・オブ・ジャパン代表取締役。古田博司氏との共著『韓国・北朝鮮の悲劇 米中は全面対決へ』、石平氏との共著『米中「冷戦」から「熱戦」へ』(ともにワック)など著書多数。

髙橋 洋一(たかはし よういち)
1955年、東京都生まれ。東京大学理学部数学科・経済学部経済学科卒業。博士(政策研究)。80年に大蔵省(現・財務省)入省。大蔵省理財局資金企画室長、プリンストン大学客員研究員、内閣府参事官(経済財政諮問会議特命室)、内閣参事官(首相官邸)等を歴任。現在、株式会社政策工房代表取締役会長、嘉悦大学教授。2008年、『さらば財務省!』(講談社)で第17回山本七平賞受賞。ほかに『「文系バカ」が、日本をダメにする』(ワック)など著書多数。

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