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Steamで発売予定の『いちばん美味しいゴミだけ食べさせて』

高まる反BL、反腐女子の気運

 目下、SNSではBL、腐女子について大荒れに荒れています。
 ご存じの方も多いでしょうが、BLとはボーイズラブの略。オタク女子の愛好する、美少年同士の同性愛をテーマとした漫画や小説のことです。また、腐女子とはBLを好む女性たちのことを指しています。
 経緯は複雑を極めているのですが、できるだけ簡単に説明しましょう。

 発端はSteamで発売予定の『いちばん美味しいゴミだけ食べさせて』というゲームでした。同作は女性キャラ(正確にはラブドール)にゴミを食べさせるという内容で、七川琴氏を初めとするフェミニストたちに女性差別だと噛みつかれました。
 七川氏は(既に削除済みですが)Xにおいて、同作を「明らかに一般常識を欠き、異常に女体に執着してる人間達にこんなゲーム与えていいのか?」「あ、こんなゲームはあかん!」などと述べていました。

 確かにラブドールとは言え、人格のある存在にゴミを食べさせるというのはぎょっとします。しかしアダルト要素のあるゲームでもなく、(そもそも発売前なのですが、情報を総合するに)ラブドールが次第に知性を発達させ、自分の食べていたものがゴミだと理解するようになるというドラマ性こそが本作の肝(きも)であり、単なる悪趣味を売りにしたものではないのです。

 近くも女性がうどんを啜るアニメCMが炎上するなど、フェミニストの素っ頓狂なクレームはいよいよ過剰になっていくばかりですが、しかし今回、話題はそれよりも、同作に噛みついた多くが腐女子であったことへと移っていきました。上野千鶴子氏がBLの元祖とも言うべき『風と木の詩』を賞賛するなど、かねてよりフェミニストの中には腐女子が多いのです。

 事件の発端となった七川氏も商業作家であり、『祓い屋・木津恵信の荒ぶる性欲』というBL作品を発表していました(下図参照)。
 えぇと、これはちょっと……どうなんだという感じですね。
 これがきっかけで七川氏は大炎上。

 実のところ、腐女子フェミが男性向けの性表現に対しては苛烈に攻撃するにもかかわらず、自分たちの表現には何ら内省がない、言わば「BL無罪」といった態度であるのはかねてよりの傾向でした。フェミニズムはことにBLをLGBTアライ(理解者)の表現として称揚する傾向にあり、大学でBL講義を行うところも出てきています。
 しかし、そうしたダブルスタンダード(二重基準)に男性側もさすがにぶち切れ、BLに対する抗議運動のようなものも始まってしまいました。例えば、アンチフェミ論客の一人、とみこうみ氏はBLを出版する出版社にクレームを送り、またnoteでそうした運動を盛り上げようと呼びかけています。

 以上からもわかるように、こうした男性たちはいわゆるアンチフェミ的な層です。その中には、ぼくが「表現の自由クラスタ」と呼ぶような、オタクコンテンツの規制に反対していた層もおり、一方で「規制反対派として、それはどうなんだ」といった意見もあったのですが、全体的にはいい加減腐女子の身勝手さに堪忍袋の緒が切れた、といった具合で、反BL、反腐女子の気運が高まっているという気がします。
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七川琴『祓い屋・木津恵信の荒ぶる性欲』

ポルノは理論、レイプは実践

 さて、この状況を理解するには、いくつもの予備知識が必要となります。
 先に書いた「規制反対派を名乗りながらBLならば規制というのは、さすがに平仄(ひょうそく)が合わないのではないか」といった意見は確かに正論ではあります。

 しかし、まず腐女子側のダブルスタンダードがあまりに非道いこと、またこうした意見の多くは、「そもそもがBLやレディースコミックなど、女性向けの性表現はゾーニングがなされていない、男女平等というならばそちらもゾーニングすべきだ」といったものが多く、意趣返しとは言え、平等の原則は保っているわけです。
 しかしいずれにせよ、左派が主導してきた表現規制反対運動はここへきて支持を失い、いよいよ瓦解しつつあるなとの意を強くします。
 
 今までもお伝えしてきましたが、表現の自由クラスタは今まで性表現を守ろうとするとともに、党派性から必死でフェミニストをも守ろうという、それこそあり得ないダブルスタンダードを繰り返してきました。また、先のゾーニングについても、子供に読ませないようにする工夫などはあってしかるべきだと思いますが、こうした人々はフリーセックスの影響を受けており、それを是としない場合も多いのです。どうも「子供にもポルノを開放せよ!」というのが彼らの考えであるように思われます。
 そうした左派の欺瞞(ぎまん)や偏向が、アンチフェミ的機運の台頭で露わになりつつあったのがここ数年ですが、本件は決定打になったと言えそうです。

 もはやX上は腐女子を憎み、BLを否定する言説で溢れています。それも無理もないところなのですが、ぼくはここで腐女子のみなさんに「フェミニズムさえ捨てれば、ことは万事上手く収まる」と申し上げたいと思います。
 というのも、腐女子に限らず、女性たちのダブルスタンダードに根拠を与え続けてきたのはフェミニズムであるからなのです。

 まず、フェミニズムの主張では「ポルノは理論、レイプは実践」とされます。すなわち、レイプという(本来なかった)ものを男たちがレイプ文化(すなわちポルノ)で世に蔓延をさせたのであり、ポルノを廃絶することでこの世から性犯罪もなくなるのです。そう考えればなるほどポルノはけしからんし、しかし(女性のレイプ事件が稀少である以上)BLは害がない、ということになりましょう。

 いえ、そればかりかフェミニズムによれば(時々言及する通り)異性愛そのものが男性が女性を支配するためにつくり出したフィクションであり、LGBTを肯定的に描くBLはいよいよ素晴らしい、先進的な文化である、となってしまうのです。つまり、これを仮に受け容れるなら、確かに腐女子たちの振る舞いに矛盾はなくなるのです。
 しかしもちろん、こうしたリクツは普通に考えて妄想と言うしかないし、女性一般、腐女子一般にも受け容れがたいものなのではないでしょうか(学者や研究家などのプロのフェミニストはそこに気づいてか気づかずしてか、あまりこうしたフェミ理論のコアな部分については語りません)。


 以上は、「ポルノを見て性犯罪を引き起こす者が出るかもしれぬ」といった、もう少し穏当なリクツに読み替えることもできるかもしれません。しかし、例えば萌え系の性表現はここ数十年で急激に増えましたし、ネットの発達でポルノの流通は想像もできないくらいに増えているはずですが、むしろ性犯罪は減るばかりであり、ことさらの影響があるとは思えません(近年の微増は法の改正などの影響が大でしょう)。

結局は腐女子同士の揉めごと

 しかし……ぼくの前回の記事を読んでくださった方は、あるいはここで既視感を覚えていらっしゃるのではないでしょうか。
 そう、前回、ぼくはラオス在住の日本人女性について書かせていただきました。彼女は日本人男性の少女売春に心痛めながら、自分も少年と性関係を持っていたのです。しかし、この女性は今も反省することなく、平然と、X上で相変わらずの主張を繰り広げていらっしゃいます。

 そう、仮に上のようなフェミ理論は措くにしても、女性は「しかし女性は差別されてきたのだから、多少の意趣返しは許されるのだ」との「復讐史観」を持つ人もおり、また基本、女性ジェンダーというものは、ことに性行動において「受動性」を旨とするため、自らの加害性に思い至りにくいのではないか、といったことをお話ししたかと思います。
 今回も、それに近しい女性心理が、腐女子の内省を阻(はば)んでいるのではないか、という気がします。

 しかしそうした考えは、女性にも資するものではありません。
 それはもう一つ、本件についての、重要な点を見ていくことで明らかになりましょう。
 発端の『いちばん美味しいゴミだけ食べさせて』のビジュアル担当(絵描きさん)は女性なのです。普段は男性向けアダルトを描いているのですが、BLも描いているのです。そう、これは言うならば本来、腐女子同士の揉めごとであり、そこをいつのまにか本来不在の男性へと責が押しつけられたという図式です。

 上にも挙げた「赤いきつね」のアニメも女性の作であった、というオチがついています。もう今まで無限回数繰り返されてきた男性への冤罪(えんざい)が、今回も起きたというわけです。
 これもまた女性ジェンダーの受動性こそが原因(「私は男性から加害を受ける性なのだ」との考えに取り憑かれてしまった結果)なのですが、しかしもう一つ、重要な論点があります。

 これもよく申し上げることですが、いわゆる「萌え」業界には女性の描き手も大変多い。それは言うまでもなく、女性もまた、「可愛い、色っぽい女の子」が大好きだからです。
 レディースコミックなどを見ても、男性が積極的に女性に迫る、女性は性的魅力のある存在として、見られる対象となりセックスの客体となる、その構造は男性向けポルノと、何ら変わるところはありません。

 翻ってBLはその女性役をも男性が担うところに特徴があり、そこがフェミに受けのよい部分でもあるのですが、しかし実際にはその女性役の男性は精神的、性役割的には女性そのものです。
 先に見た七川氏の作品などはマッチョな男同士であり、いわゆる「ガチホモ」っぽさが濃厚ですが、これはBL全体で見た場合、マジョリティとは言い難く、基本は(女性的な)美少年が女性役を受け持つことが多い。

 すなわちBLはどこまで行っても異性愛者である女性たちの、異性愛に根ざした表現であり、実際のLGBTには何ら関係はない。
 そこを自己正当化を図ろうとフェミニズムで理論武装してもいいことは何もないし、かえってBLの本質から遠ざかるばかりです。
 よく申し上げるように、オタクの年長者には左派寄りの人たちが多く、そのため、表現の自由クラスタも何とかフェミニズムを守ろうと無理に無理を重ね、そしてオタクたちの支持を失いつつある。残念ながら左派の論法がオタクに益さなかったことは、もはや明白です。

 腐女子についても全く同じことが言えようかと思います。
 上に書いただけでも、フェミニズム理論の破綻は明らかだし、だからこそ今、腐女子はこれだけ総スカンを食っている。
 はっきり言えば七川氏の表現など、(その趣味のない)男性からすればかなり嫌悪感を催させるものなのですが、いったいにオタク男子は、腐女子たちの表現にも極めて寛容です(いえ、まずここを認めようとしない腐女子も多いのですが……)。

 それをここまでぶち切れさせたのは、(これは一般的な男性vs女性の対立においても言えることですが)やはり腐女子側の非が大きいのではないでしょうか。
 気に入らない表現に対して「気に入らない」と表明することは自由としても、そこにフェミを乗っけることは我慢して、何とか男性向けの性表現とも上手に距離を取って共存していく方がいい。それが互いにとって一番好ましい選択なのではないでしょうか。

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