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ふじい げんき
1952年、東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業。77〜85年、アメリカ留学。クレアモント大学院政治学部(修士)を経て、ハーバード大学政治学部大学院助手、同大学国際問題研究所研究員。82年から近未来予測の「ケンブリッジ・フォーキャスト・レポート」発行。株式会社ケンブリッジ・フォーキャスト・グループ・オブ・ジャパン代表取締役。古田博司氏との共著『韓国・北朝鮮の悲劇 米中は全面対決へ』、石平氏との共著『米中「冷戦」から「熱戦」へ』(ともにワック)など著書多数。

まさに暴挙

 トランプ起訴は暴挙と言うほかない──。

 ニューヨーク・マンハッタン地区州刑事裁判所(地裁)の大陪審が、3月30日、ビジネス上の詐欺容疑をはじめ34の罪で、トランプ前大統領を起訴しました。米大統領経験者として史上初めてのことです。
 トランプは4月4日に出頭し、その場で、すべての罪状について否認し、釈放されました。裁判には出廷すると明言していますが、第1回公判が12月に開催されるとも噂されています。相手側の狙いは、検察の取り調べや裁判で、トランプの政治活動の時間とエネルギーを奪うことでしょう。それとともに民主党でも共和党でもない独立層(浮動票)に向けて、トランプの悪印象を植え付けようという魂胆(こんたん)もあるでしょう。

 しかし、今回のやり方に対して、リベラル・マスコミからも疑念が出るほど、法理上、非常に無理のある起訴です。言い換えれば、これはトランプへの政治的弾圧であり、選挙妨害です。さらに言えば、司法制度を党派的利益のために利用するものであり、言うまでもなく違憲・違法行為でもあります。トランプ自身も「政治的迫害」と批判しています。
 これまで反トランプ勢力は、トランプの過去のビジネス上の活動を詐欺行為として起訴することを狙ってきました。トランプの一族企業「トランプ・オーガニゼーションズ」の所在地はニューヨークです。そこで反トランプ勢力は、極端にリベラルなニューヨークの政治風土を利用してトランプを訴えようとしてきました。今回の起訴もその流れに乗じたものと言えるでしょう。

 今回は34の罪状を持ち出してきたわけですが、主軸がビジネス記録の改竄に関する容疑です。より重大な犯罪を隠蔽するために文書の改竄をしたということで、重罪であると認定しています。ところが、「より重大な犯罪」の中身が何なのか、起訴状を見ても明記されていません。まったく意味がないのです。要するに三十四の罪状は、すべて軽犯罪か微罪、有罪認定されても罰金程度で済みます。
 しかもニューヨーク州では軽犯罪(長期15日以上1年未満の自由刑が定められている犯罪)は2年で時効ですから、本来であれば罪に問うことも難しい案件です。ところが、検事局の言い分では、トランプがニューヨーク州から離れていた二年を時効期間から除外するとしています。そんな詭弁がまかり通っているのです。

 起訴内容には、トランプの不倫相手と言われるポルノ女優への「口止め料」として、13万ドル(約1700万円)を支払ったことを巡る疑惑についても含まれています。(続きは本誌にて!)
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