赤い巨塔――日本学術会議のセンセイ政治

赤い巨塔――日本学術会議のセンセイ政治

※写真はイメージです

閉鎖性と権威主義

 月刊『WiLL』12月号が発売されました。特集は「赤い巨塔――日本学術会議という病」。

 もちろん、原作・山崎豊子で何度も映画化・ドラマ化された『白い巨塔』とかけた洒落です。「白い巨塔」というタイトルは、題材となった大学病院という組織が、「外見は学究的で進歩的に見えながら、その厚い強固な壁の内側は封権的な人間関係と特殊な組織で築かれた非情な世界」であることを表しているとのこと。

 一方の「赤い巨塔」は、アカデミズムの閉鎖性と権威主義に共産主義思想をまぶせば、あっという間に出来上がり。

 主演は田宮二郎でも唐沢寿明でもなく、今をときめく京都精華大学・白井聡センセイでいかがでしょうか。ふだん通り振る舞えばいいので、演技指導も必要ナシ。ヒロインは小泉今日子、主題歌は加藤登紀子で“獄中ロマン”を匂わせつつ、山田洋二監督で粋な時代劇チックに。どんなB級映画だよ!

 せっかくなので『幸福の赤いハンカチ』と同時上映。『しんぶん赤旗』共産、いや協賛で前進座劇場…は閉鎖されたから岩波ホールにて絶賛上映中か!

もはや大喜利ネタ

 いずれにせよ、「日本学術会議を解体せよ」や「日本学術会議は反日組織か」といったストレートなタイトルより、少しニヤリとする“遊び”の要素を入れた方が読者も楽しんでくれる。そんなことを考えながら、編集部は特集や記事のタイトルを考えているのです。

 学術会議は、大喜利ネタの素材としてなかなか面白い。例えば、「学者の国会」を自称しているようですが、もっと適切な表現はないか……と、ついつい考えてしまう。政府の庇護下にありながら権力批判に明け暮れるという意味では、「学者の記者クラブ」。人事を内輪で回して民主主義が担保されていないという意味では、「学者の全人代」。

 ちなみに、個人的にお気に入りの駄洒落は「センセイ政治」。傍から見ていて滑稽な学者のエリート意識と、全体主義的な方向に走りがちなアカデミズムの傾向が一言で表現されています。

「ヒトラー」レッテルの起源

 学術会議問題で、任命拒否された教授たちが記者会見を開いていました。立命館大学の松宮孝明教授は、菅首相を「ナチスドイツのヒトラー」呼ばわりしていたのですが、とりあえず「ヒトラー」と言っておけばいいという風潮、そろそろヤメにしませんか。たまにはスターリンや毛沢東くらい出しておかないと、ヒトラーのハイパーインフレが起こってしまいます。ワイマール共和国並みの。

 ちなみに、ヒトラーやナチスを持ち出して他人を批判することを、欧米では「ナチス・カード」と呼ぶらしいです。しかも、ナチス・カードを初めて批判したのがレオ・シュトラウスというのも興味深い。新保守主義(ネオコン)の思想的支柱となったシュトラウスがどういった文脈でナチスのレッテル貼りを批判したのか、気になるところです。

 ちなみにちなみに、ヒトラーが“レッテル界”のスターダムにのし上がる前は、古代エジプト王ファラオが史上最悪の指導者として君臨していたそうです。ファラオにさほど極悪のイメージはなかったので、少し意外!
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山根 真(ヤマネ マコト)
1990年、鳥取県生まれ。中学時代から『WiLL』を読んで育つ。
慶應義塾大学法学部卒業。ロンドン大学(LSE)大学院修了。銀行勤務を経て、現在『WiLL』編集部。
好きなものは広島カープと年上の優しい女性。

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