事はインテリジェンスの問題
そろそろ終息してもいいのではないかと思うのだが、一向におさまりそうにない「日本学術会議任命拒否問題」。
各省の概算要求が出そろい、総額は105兆4071億円と過去最大。コロナ対策でさらなる増額が見込まれる中、歳入増は見込めず、日本経済は青息吐息である。日経平均は依然として高く、実態経済と大きく乖離(かいり)したままだ。いつ、この綱渡りのようなバランスが崩壊してもおかしくない状態である。
年末に向けて、本格的な予算折衝に入る中で、学術会議問題は、そこまでアツくなるテーマなのか、正直疑問である。もちろん前回の拙稿でも、疑問を呈したように、日本の学会内部でのもたれあいや、ヒエラルキー至上主義的な問題も孕(はら)んでいるのだから、冷静に議論した上で、見直すべき箇所は見直すべきであるし、外部から見ても明らかにおかしい「特権」はなくすべきである。
しかし、日に日に冷静さを欠き感情的な論調が目立つようになってきた。
たとえば、10月12日付の毎日新聞では、菅義偉首相の出身大学である法政大総長の田中優子氏が、
「民主主義国家が誇り持てる首相に」
というタイトルで、菅首相から新会員6人が任命されなかったことを「断じて許してはなりません」と、2年前に撮影した和服姿の写真でメッセージ(=抗議)を発信している。申し訳ないが、これには苦笑してしまった。
その後の取材によると、任命されなかった6人について深く説明がないのは、それなりに「深い理由がある」からだ。任命されなかった本人があずかり知らないことで納得がいかない声が出るのも仕方ないが、「昨今の国際インテリジェンスの状況から身体検査の枠を広げて行った結果」なのだという。
政府関係者は、声をひそめて次のように話す。
「彼らの弟子に、母国で〝中国人民解放軍〟の一員として、敬礼している写真に収まっていた人がいたそうです。また、弟子自身も知らないうちに、他国の情報機関とパイプを持っていたというケースもありました。こんなことを会見で説明できるわけがないでしょう。それこそ、我が国のインテリジェンスを左右する。任命拒否された人は、過去の政府方針に対する批判が原因だと言い、『学問の自由への侵害』を主張しますし、メディアも、もて囃(はや)すけれど、そんな安易な理由で拒否までするわけないでしょう」
至極、ごもっともなご説明である。
各省の概算要求が出そろい、総額は105兆4071億円と過去最大。コロナ対策でさらなる増額が見込まれる中、歳入増は見込めず、日本経済は青息吐息である。日経平均は依然として高く、実態経済と大きく乖離(かいり)したままだ。いつ、この綱渡りのようなバランスが崩壊してもおかしくない状態である。
年末に向けて、本格的な予算折衝に入る中で、学術会議問題は、そこまでアツくなるテーマなのか、正直疑問である。もちろん前回の拙稿でも、疑問を呈したように、日本の学会内部でのもたれあいや、ヒエラルキー至上主義的な問題も孕(はら)んでいるのだから、冷静に議論した上で、見直すべき箇所は見直すべきであるし、外部から見ても明らかにおかしい「特権」はなくすべきである。
しかし、日に日に冷静さを欠き感情的な論調が目立つようになってきた。
たとえば、10月12日付の毎日新聞では、菅義偉首相の出身大学である法政大総長の田中優子氏が、
「民主主義国家が誇り持てる首相に」
というタイトルで、菅首相から新会員6人が任命されなかったことを「断じて許してはなりません」と、2年前に撮影した和服姿の写真でメッセージ(=抗議)を発信している。申し訳ないが、これには苦笑してしまった。
その後の取材によると、任命されなかった6人について深く説明がないのは、それなりに「深い理由がある」からだ。任命されなかった本人があずかり知らないことで納得がいかない声が出るのも仕方ないが、「昨今の国際インテリジェンスの状況から身体検査の枠を広げて行った結果」なのだという。
政府関係者は、声をひそめて次のように話す。
「彼らの弟子に、母国で〝中国人民解放軍〟の一員として、敬礼している写真に収まっていた人がいたそうです。また、弟子自身も知らないうちに、他国の情報機関とパイプを持っていたというケースもありました。こんなことを会見で説明できるわけがないでしょう。それこそ、我が国のインテリジェンスを左右する。任命拒否された人は、過去の政府方針に対する批判が原因だと言い、『学問の自由への侵害』を主張しますし、メディアも、もて囃(はや)すけれど、そんな安易な理由で拒否までするわけないでしょう」
至極、ごもっともなご説明である。
前々から言っていることだが、筆者は、菅首相を特別に支持しているわけではない。以前本コラムにも書いたように以前も本コラム女性活躍推進が後退している現状については、批判しているし、周辺人事にも納得できない部分は多い。
しかし、それにしても今回の日本学術会議問題に対する論調は「何でもかんでも攻めればよい」という姿勢ありきにしか思えない。
先の経済問題だけでなく、米国大統領選挙も迫り、日本を取り巻く世界環境が大きな変革を迎える可能性も高いのだ。メディアも我々も何が本当に大事なのか、今一度立ち止まって考えてみるべきであろう。
しかし、それにしても今回の日本学術会議問題に対する論調は「何でもかんでも攻めればよい」という姿勢ありきにしか思えない。
先の経済問題だけでなく、米国大統領選挙も迫り、日本を取り巻く世界環境が大きな変革を迎える可能性も高いのだ。メディアも我々も何が本当に大事なのか、今一度立ち止まって考えてみるべきであろう。
埼玉県出身。青山学院大学在学中より、取材活動を始める。官界を中心に、財界、政界など幅広いテーマで記事、コラムを執筆。「官僚村生活白書」など著書多数。IT企業の代表取締役を経て、2015年、合同会社マグノリアを立ち上げる。女性のキャリアアップ支援やテレビ番組、書籍の企画・プロデュースを手がける。