菅政権に期待する「女性」の活躍

菅政権に期待する「女性」の活躍

順調な滑り出しを見せた菅政権

 菅内閣が順調な滑り出しを見せている。

 各社世論調査では、軒並み6~7割という高い支持率をたたき出しており、日本経済新聞社とテレビ東京が行った調査では、01年に発足した小泉純一郎内閣の80%には及ばないものの、なんと74%と歴代3位の数字であった。

 追随するかのように自民党の支持率も上昇。

「解散するなら、今しかない」
「支持率が高すぎるため、5割に落ち込んでも、〝急落〟と書かれてしまう、早期解散が望ましい。1日でも早く総選挙を打つべきだ」

 と述べるのは、憲政史上最長政権を築いた安倍政権の恩恵を受けて、ろくに選挙活動もせずに、2012年以降、当選を重ねている4期生以下の某自民党議員だ。

 本来なら、中堅議員と呼ばれてもおかしくない彼らだが、本当の意味で選挙の洗礼を受けていないせいか、未だ新人議員のような軽量級の議員ばかりである。彼ら自身、自分たちの真の実力を自覚しているからこそ、ストップ高の今選挙に持ち込めば、再選は固いと思っているのだ。

 コロナ禍に苦しむ国民や、今後、予算編成が本格化していくことなどどこ吹く風といった様子である。もし、安倍政権の負の遺産を挙げるとしたら、彼らのような国益を第1に考えない新人議員への教育不足であろう。

人気の秘密と感じた「違和感」

 それにしても、顔ぶれからしてあまりにも地味な菅内閣の人気がなぜここまで高いのか、不思議でならない。理由には、「安定感」や、「人柄」といった回答が多くみられるが、菅総理のたどってきた昭和的経歴が背景にあることは間違いないだろう。また、安定感の理由には、安倍総理が次の総裁選まで1年の任期を残して退陣したことを前提に安倍政権の継承を前面に打ち出したこともあると思う。

 実際、閣僚の顔ぶれもバランスがとれていて悪くはない。しかし、私は党人事を含めて、若干の違和感を感じた。それは、海外メディアも同様だったようだ。

 米ニューヨーク・タイムズは、
「女性活躍推進の扉は閉じたように見える」
 と、報じている。

 閣僚には、上川陽子法相と橋本聖子五輪担当相だけ。いずれも、「絶対に失敗しない(したくない)女性人事」だ。

 上川法相は、過去に何度も法相を担当し、顔面蒼白になりながらも、オウム真理教事件で13人の死刑囚の死刑を執行した。法相でありながら妻と共に逮捕された河井克行氏のような失敗は犯さないだろう。

 橋本担当相は、フィギュアスケートの高橋大輔選手への逆セクハラ報道こそあったが、自らも元スピードスケート・自転車競技選手であるだけでなく、参議院議員5期目と安定感は抜群である。
 
 副大臣25人、政務官27人の顔ぶれを見ても、女性はそれぞれ3名ずつに留まった。
 全体的に高齢層が密集しているだけでなく、「女性の顔が見えない」というのも致し方ないであろう。

待たれる女性の活躍

 そうした「女性不在の政治」という批判をかわすかのように、菅総理は、不妊治療の助成を、大幅に増額するよう厚労省に指示し、オーダーメイドの高額な不妊治療で有名な杉山産婦人科の院長と面談したりしているが、少子高齢化社会だからこそ、女性に、
「産めよ、育てよ」
 と、国策として負担を押しつけているように見えてしまうのはなぜだろう。

 不妊治療への助成金引き上げ、対象年齢引き上げは、重要な施策であり、遅すぎた感も否めないが、同時に働き方や育児に悩む女性、パート、非常勤など、コロナ禍の中で最低限の経済水準で働こうとしている女性を補助する施策にも力を入れてもらわなければ、意味が感じられない。

 そのためには、女性の国会議員にもっと働いてもらう必要があるし、女性の有識者も増やした上で議論を進めるべきだ。
 
 日本の女性国会議員の数は、未だ先進国で最低レベル。数がすべてではないといっても、政治の世界は数が全て。

 1年後に控えた総裁選、そして次期解散総選挙の次期という方程式を解くためには、高支持率の要因分析に加え、女性活躍のさらなる推進が欠かせない。それこそ、菅カラーの女性活躍を見てみたいものである。
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横田由美子(よこた・ゆみこ) 

埼玉県出身。青山学院大学在学中より、取材活動を始める。官界を中心に、財界、政界など幅広いテーマで記事、コラムを執筆。「官僚村生活白書」など著書多数。IT企業の代表取締役を経て、2015年、合同会社マグノリアを立ち上げる。女性のキャリアアップ支援やテレビ番組、書籍の企画・プロデュースを手がける。

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