たにもと まゆみ
1975年、神奈川県生まれ。シラキュース大学大学院にて国際関係論および情報管理学修士を取得。ITベンチャー、コンサルティングファーム、 国連専門機関、外資系金融会社を経て、現在はロンドン在住。日本、イギリス、アメリカ、イタリアなど世界各国で就労経験がある。ツイッター上では「May_Roma」(めいろま)として舌鋒鋭いツイートで好評を博する。

今さら何を言っているのか

『週刊文春』が「〝おひとりさまの教祖〟上野千鶴子が入籍していた」なる記事を掲載した。上野氏は歴史学者の色川大吉氏と不倫の末、前妻が亡くなったあとに入籍していたというのだ。

 上野氏といえば、日本を代表するフェミニスト学者である。1980年代から2000年代までの左派論壇を牽引してきた彼女は長年にわたり、独身女性のアイドルであり続けた。著書の「おひとりさま」シリーズはベストセラーとなり、キャリアウーマンから専業主婦まで、女性に絶大な支持を得ている。そんな上野氏は生涯独身を貫くだろう──。そう思い込んでいた彼女のファンは「結婚報道」に開いた口が塞(ふさ)がらなかったはずだ。
 上野氏は「文春砲」を受け、『婦人公論』で反論を展開した。

「わたしはおひとりさまの教祖などではない。おひとりさま教などというものを発案したことも広めたこともない」

 本人にその気がなくても、世間に「おひとりさまの教祖」と認識されている。さんざん「おひとりさま」をネタに本を書いてきたのに、何を今さら。自信を持って堂々と教祖を名乗ればいいではないか。
 世の中には1人で生活している人が大勢いるのだから、何も恥じることはない。上野氏が付き合っていた「彼氏」の色川氏もその1人である。色川氏は妻に先立たれてから、家族との交流もほとんどなく、八ヶ岳で「おひとりさま」生活を送っていたという。

 とはいえ、色川氏は必ずしも孤独というわけではなかった。色川邸と同じ敷地に上野氏の「仕事場」があったからだ。上野氏は愛車のBMWに乗り、東京から八ヶ岳の「仕事場」に通っていたという。
 色川氏は晩年、体調を崩して要介護状態だったという。家族とも疎遠だったため、上野氏が介護を請け負っていたそうだ。上野氏はこれまで「最後はみな一人になる」などと言っていたが、色川氏の最期を看取っている。

 これは世間一般にいう「内縁」「事実婚」であり、結婚しているのとほぼ変わらない。諸々の事情を抱えた男女が夫婦同然の生活を送る状態である。若者向けに言い換えると「同棲」。高齢者なら「同居」。法的に婚姻関係があっても別居する夫婦は多い。それに比べたら、実に仲睦(むつ)まじいではないか。(続きは本誌にて!)
 (13208)

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