【杉山大志】気候危機説はフェイク~隠蔽された「不都合な...

【杉山大志】気候危機説はフェイク~隠蔽された「不都合なデータ」

災害は「激甚化」していない

 まるで「気候危機説」の裏付けであるとの様に、災害が起こるたびに地球温暖化のせいで被害が激甚化したと騒ぐ記事があふれる。しかし、これらは悉くフェイクニュースである。このことは公開されている統計から確認できるのだ。

 台風は増えても強くなってもいない。台風の発生数は年間25個程度で一定している。台風に幾つか等級がある中で、「強い」以上に分類される台風の発生数は15個程度と横ばいで増加傾向は全く無い(図1)。
≪図1≫「強い」以上の勢力になった台風の発生数(青:左...

≪図1≫「強い」以上の勢力になった台風の発生数(青:左軸)と全台風に対する割合(赤:右軸)

※太線はそれぞれの前後5年間の移動平均
 猛暑は都市熱や自然変動によるもので、温暖化のせいではない。地球温暖化によって気温が上昇したといっても江戸時代と比べて0.8℃に過ぎない。過去30年間当たりならば0.2℃と僅かで、感じることすら不可能だ。

 豪雨は観測データでは増えていない。理論的には過去30年間に0.2℃の気温上昇で雨量が増えた可能性はあるが、それでもせいぜい1%だ。よって豪雨も温暖化のせいではない。

※詳しくは拙著「地球温暖化のファクトフルネス」をご覧頂きたい。図1のような一目瞭然のデータを出典と共に明記してある。

数値モデルの欠陥

 温暖化によって大きな被害が出るという数値モデルによる予測はある。だがこれには問題が幾つもある。

 致命的な欠陥の1つは、過去すらろくに再現できていないことである。

 下記の図2は、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)で用いられたモデルによる大気上空(エベレスト山の高度付近)の気温の計算結果である。
≪図2≫ 数値モデルによる計算値と観測値の比較

≪図2≫ 数値モデルによる計算値と観測値の比較

via John Christy講演資料
 図2は1980年以降の変化を表示している。高排出シナリオはIPCCのRCP8.5シナリオ、低排出シナリオはRCP4.5シナリオ。計算値はCMIP5プロジェクトのもの。ラジオゾンデとは気球による気温観測値。再分析とは、人工衛星、地上の測候所、ラジオゾンデなどの様々な観測値を統合した推計。以上は全て複数のデータの平均値。高度は300hPaと200hPaの間。
※RCPシナリオ=代表濃度経路シナリオ
※資料詳細はコチラ
 過去40年において、計算値は観測値から大きく乖離し、はるかに高温になっている。これだけ外れたものの将来予測を信じることが妥当だろうか? 

 ふつうは、これだけ外れたら、根本的な問題があるとして、予測を棄却してやり直すのではなかろうか?

 だがそうではなく、このモデルの計算結果を用いた被害予測の方が流布されていて、気候危機説の中核を成しているのだ。
 
 付言すると、大気上空の間違いというのは些細なものではない。大気上空は宇宙や下層の大気と熱をやりとりする。大気上空の温度が正しくないということは、その熱のバランスがうまく表現できていないということであり、地球温暖化問題を解くに当たって、根本的なところを間違えていることになる。
※以上のモデルの問題点について、更に詳しくは筆者による講演および資料をご覧いただきたい。

外れ続ける「予測」

 過去になされた不吉な予測は外れ続けてきた。

 温暖化で海氷が減って絶滅すると騒がれたシロクマはむしろ増えている。人が射殺せず保護するようになったからだ。

 温暖化による海面上昇で沈没して無くなると言われたサンゴ礁の島々はむしろ拡大している。サンゴは生き物なので海面が上昇しても追随するのだ。

 CO2の濃度は江戸時代に比べると既に1.5倍になった。その間、地球の気温は0.8℃上がった。だが観測データで見れば何の災害も起きていない。むしろこの間、経済成長によって、人は長く健康に生きるようになり、食糧生産は増え、飢えは過去のものになった。

 今後も緩やかな温暖化は続くかもしれない。だが破局が訪れる気配は無い。「気候危機」なるものは何処にも存在しない。

フェイクに基づいた政策立案をやめよ

gettyimages (5579)

データに基づいた正しい判断を!
 ではなぜこのようなフェイクが蔓延したのか。政府機関、国際機関、御用学者、NGO、メディアが不都合なデータを無視し、異論を封殺し、プロパガンダを繰り返し、利権を伸長したためだ。

 筆者は、「CO2削減をどの程度すべきか」という議論を始めるに当たっては、当然図1のような観測データをまず整理すべきだ、と何度も国の審議会で迫った。しかし、政府は頑として資料に入れてこなかった。

 NHKも観測データは無視して、災害を温暖化のせいにし、モデル予測を振りかざして、殊更に気候危機説を煽り立ててきた

 国民は、気候危機説にとって「不都合なデータ」を隠蔽されて、CO2ゼロという無謀な目標に駆り立てられている。日本を取り巻く問題は数多いにも関わらず、このようなフェイクに基づいた政策が何よりも優先されることは、国民をさらなる危機に陥れるのではないだろうか?現状、このようなことが許されていいとはとても思えない。政府には正確なデータと情報に則り、正しい優先順位を持った施策を期待する。
杉山 大志(すぎやま たいし/キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)
温暖化問題およびエネルギー政策を専門とする。
国連気候変動政府間パネル(IPCC)、産業構造審議会、省エネ基準部会等の委員を歴任。産経新聞・『正論』レギュラー寄稿者。著書「地球温暖化のファクトフルネス」を発売中。電子版99円、書籍版2228円。

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