今は「戦時」だとよく言われる。しかしこの言葉は、より文字通りにとらえるべきだろう。我々は今、「生物兵器戦争」の渦中にあると言える。

 新種のウイルスを体内に仕込んだ工作員を送り込み、満員電車やエレベーター内で盛んに咳をさせ、ドアノブや商品を触って回らせれば、感染爆発によって相手社会を麻痺させられる。以前から指摘されてきた「生物兵器自爆テロ」である。

 好景気に沸いたアメリカ経済が一転、歴史的不況に陥り、米空母の一つは艦内での感染拡大を受けて戦線離脱を余儀なくされた。中国共産党政権(以下、中共)をはじめ、世界の反米勢力は「ウイルス兵器」の威力に目を見張っただろう。今後、中共が台湾侵攻に出る場合、準備の一環として、米空母の乗組員に濃厚接触しウイルス感染させる作戦を考えるはずだ。
 大量破壊兵器は、核、化学、生物の3種からなる。この内、核ミサイルは瞬時に大破壊を引き起こすものの、「リターン・アドレス付きの攻撃メール」と評されるように、誰が撃ったかが明白なため、破滅的な報復を覚悟せねばならない。

 その点、生物兵器は、効果発揮まで時間を要する一方、いつ誰がどこで攻撃を行ったかが見えにくい。ただし難点は「死体」である。致死力の強いウイルスだと、感染工作員が潜入先で死亡して、遺体や所持品の分析から「送り主」が特定されかねない。

 しかし今回のように、感染力は強いが致死力はさほど強くなく、基礎体力の弱い者以外では重篤化しにくいウイルスの場合、工作員は作戦遂行後、何食わぬ顔で出国することができる。証拠はまず残らない。新型コロナウイルスが、一部専門家の示唆するように、武漢ウイルス研究所その他中国の公的機関から漏れ出た開発中の生物兵器だったかどうかはまだ分からない。一党独裁下で透明性のある調査がなされるはずもなく、今の体制が続く限り、真相は藪の中にとどまろう。

 いずれにせよ重要なのは、今回のような大混乱が、意図的な生物兵器攻撃としても起こり得ることである。「戦争」を念頭に置いた対応と、感染に強い体制づくりが急務たる所以だ。発生源の中国はいち早く収束宣言を出し、他国に先駆けて経済活動正常化を図る構えである。習近平国家主席が陣頭指揮した以上、新たな感染者が出ようが出まいが「収束」以外のシナリオはあり得ない。経済情報に強いブルームバーグ・ニュースによれば、すでに中国の国営企業が、パンデミック(世界的大流行)で大打撃を受けた欧州各国において、現地企業の買収に乗り出すなど混乱に乗じた攻勢に出ているという。2011年に浙江省で起こった高速鉄道の衝突脱線事故では、事故車両をさっさと現場の高架下に埋め、一日半後には運行を再開した。証拠隠滅と表裏一体の、中共流「スピード処理」である。

 またファシズム政権の発想では、認知症で「習近平思想」を理解できないような年寄りや「社会主義建設」に役立たない病人などは、生きる価値がない。現役世代はほぼ無症状ないし軽症で済み、高齢者や基礎疾患のあるものが集中的に犠牲となる武漢ウイルスは、ファシストの観点からは、まさに便利な「人口調節ウイルス」「財政健全化ウイルス」であろう。

 もちろん中共幹部とその家族の安全は守られねばならない。実際にウイルスをパンデミック兵器として使うに当たっては、ワクチンまで開発し、体制エリートへの接種が済んで、というのが条件となろう。
 先述の通り、生物兵器は使用者を特定しづらく、報復が難しい。すなわち抑止力が効かない。人権感覚が欠如し、極秘の生物兵器開発が可能な体制をこの世からなくしていく以外、根本的な対策はないだろう。

 不幸中の幸いというべきは、今回、ウイルスの発生源が中国の武漢であることが特定され、文明国ではそれを疑う声がほとんどないことだ。

 生物兵器開発は割に合わない、あるいは兵器とは無関係であっても新ウイルス発生を隠蔽する行為は割に合わないとの組織的記憶を中共幹部が胸に刻むよう事態を展開させねばならない。中でも、戦略物資の脱中国化など自給力強化は日米欧の待ったなしの課題だろう。速やかな感染封じ込めなど自衛力の強化も必要だ。そして共産党独裁が続く限り、自由はもちろん繁栄もないと中国人の多くが感じるような状況を作り出していかねばならない。
島田 洋一(しまだ よういち)
1957年、大阪府生まれ。福井県立大学教授(国際政治学)。国家基本問題研究所企画委員、拉致被害者を「救う会」全国協議会副会長。

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