地球温暖化対策について話し合う国連の会議「COP25」が、2019年12月2日からスペインのマドリードで開催された。世界190の国・地域から、政府関係者が集まって各国の主張を議論する重要な会合だが、それぞれの抱えた事情が交錯するだけに、容易に結論にたどり着ける問題ではない。
 この場で、近年、存在感を増しているのが非政府組織(NGO)。自らの主張と異なる国の政策に抗議するデモを行うなど、行動は刺激的な方向に向かっている。会議のたびにメディアが好んで取り上げているのは、環境団体などでつくる「気候行動ネットワーク」が発表する「化石賞」。今回も開幕翌日の3日に日本など3カ国を選んだと発表した。
 
 梶山弘志・経済産業相が石炭火力発電の利用を続ける政府方針を示したことをやり玉にあげ、「二酸化炭素(CO2)の排出が多く、石炭火力を利用するのは、人々を危険にさらすものだ」と決めつけた。「恒例行事」となった感があるが、このような短絡的な発想で問題解決の道筋は描けないだろう。環境派が訴える現実軽視の姿勢こそが、COPで実現可能な地球温暖化対策を構築していく障壁になる可能性さえあると認識するべきではないか。
現実を直視しない環境派
 過激な言動で「時の人」になったスウェーデンの環境活動家、グレタ・トゥンベリさん(16)も現地入り。6日夜には、気候変動対策を訴えるデモ行進にも参加した。環境派にとって強力な宣伝役になり、言動はますますエスカレートしていく気配が濃厚である。

 こうした運動の根幹は、ドイツで政治力を維持してきた「緑の党」の政策にきわめて近い。「太陽光・風力発電など再生可能エネルギーをどんどん導入すれば、全てはうまくいく」といった単純な論法を駆使して、支持を得てきた勢力だ。ところが、本家本元のドイツでは「緑の党」が主導したエネルギー政策の欠陥が次々に明らかになっている。再エネの優先買取制度で電気料金は大幅に上昇、経済へのマイナス影響とともに、メルケル政権の2022年原子力発電ゼロに向かう中、電力安定供給の不安が高まる。
 一方、エネルギー資源の乏しい日本は第1次石油ショック(1973年)の教訓を活かして、多様な選択肢を確保するエネルギーミックス戦略に転換、その過程で原発を活用してきた。福島事故以降は、原発の安全性向上に注力するとともに、安定供給、経済性、環境性のバランスをとる「S+3E」を目標に掲げる。

  政府は温室効果ガス(GHG)を2030年度に2013年度比26%削減する目標を決定。実現に向けて、2030年度の発電方法の組み合わせを、

①液化天然ガス27%
②石炭26%
③再エネ22~24%
④原子力20~22%
⑤石油3%
 
 とした。資源もなく、島国で他国との電力網を構築できない我が国のエネルギー事情と国民生活の安定、地球温暖化対策に配慮した「ベストミックス路線」であり、現実的な対応だ。
 これに対して、環境派は「石炭火力をやめろ」と主張し、原子力にも批判的である。こんな訴えを聞いていたら、日本はエネルギー不足で経済も国民生活も成り立たなくなってしまう。
 同様の事情は、先進国、新興国、途上国ともに抱える。英BP資料による世界のCO2排出量(2018年)は、338億9080万トン。最大の排出国は中国で全体の28%を占める。その中国は広大な面積を活かして再エネ導入を進めると同時に、原子力利用に国を挙げて取り組み、近いうちに世界一の原子力大国になる。12月初旬には、ロシアから天然ガスを輸送するパイプラインも完成、エネルギー安全保障への体制確立に全力投入だ。
 環境派は、日本に「化石賞」を出す前に、エネルギーをめぐる世界の現実と対策をもっと知るべきだ。短絡的な「夢物語」こそが、地球温暖化対策の最大の壁にならないために。

日本エネルギー会議:代表・柘植綾夫、発起人代表・有馬朗人

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