12/23、アメリカ東海岸のヴァージニア州にあるダレス国際空港に降り立って大変驚いた。ホワイトハウスの西40km程にある、アメリカの首都ワシントンD.C.の玄関口となっているこの空港を私が利用するのは昨年12月、今年4月と、この一年で3回め。
 今回、3回めの利用で何が驚いたか。語弊を恐れずに言えば、アメリカではコロナ禍がほぼ完全に終息していたのである。
山口敬之:"オミクロン"に動じないアメリカと、動じても...

山口敬之:"オミクロン"に動じないアメリカと、動じても「媚中メディア」が守る岸田政権

「普通」にクリスマスの行事も行っている米国の様子

元々ユルかったアメリカの水際対策

 今、アメリカ合衆国を訪れる全ての外国人は、以下2つのことを証明する書類か、デジタルデータを持っていなければならない。

①ワクチン接種の完了後2週間が経過している事
②出発日の1日前のPCR検査で陰性が出ている事

 ファイザー社やモデルナ社のような2回接種が義務付けられているmRNAワクチンであれば、2回めの接種から14日が過ぎていなければならない。
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上記①②について証明する筆者の書類
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 ①②をいつ提示するのか。日本で航空便の搭乗手続きの際に、チェックインカウンターで見せるのである。

 パスポートと一緒に①②を提示すると、航空会社の地上職員が書類の名前やパスポート番号、ワクチン接種やPCR検査の書類の日付を照合して、条件を満たしているか確認する。

 無事条件を満たせば、後は通常の空の旅と何も変わらない。この季節なら12時間足らずの空の旅を楽しめばいい。

 しかし多くの旅行者は、到着空港が近づいて来るにつれてソワソワし始める。世界最悪のコロナ禍をくぐり抜けたアメリカの空港では、一体どんな厳しい水際対策が実施されているのか。もし検査で陽性が出て入国を拒絶されたらどうしよう。旅慣れない外国人にとっては、気が気ではないだろう。今回も、たまたま席が近かったスウェーデン人に話しかけられた。
「あなたはダレス空港最近利用した事ある?」
「この1年で3回めですよ」
「あら、それは良かったわ。空港ではどんな検査が行われるの?」
「コロナ禍でのダレス空港の利用は初めてですか?それは心配ですね。」
「アメリカ人と外国人では扱いが違うの?」
「到着時の水際対策は、アメリカ人と外交人の区別はありません。というより、水際対策そのものが全くないのです」
「えっ?何にもないの?ウソみたい」
「私の最後の利用は4月ですから、オミクロン株の影響で水際対策に変化があれば別ですけど」
 実際ダレス国際空港についてみたら、4月と何と変化もなかった。全く水際対策など行われていないのだ。
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ダレス空港に到着
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 ダレス国際空港に到着した客は、まずフィンガーから滑走路側の建物に入ると、そこからおかしな形をした無料のシャトルバスに乗せられて、ターミナル側の建物に移送される。そこでまず入国審査を受ける。

 この間、一切の検査は行われない。機内では「ワクチン接種証明書やPCR検査の陰性証明書の提示を求められる事がありますので、すぐ出せるようにご準備下さい」とのアナウンスがあった。しかし入国審査でも検疫でも、書類の提示を求められる事は全くなかった。

 ものは試しで、入国審査官に
「ワクチン接種証明書やPCR検査の陰性証明書はチェックしないの?」
と聞いたら、愛想のいい白人の中年男性の係官は

「そんなのしないよ。俺が見ても何だかよくわからないしさ。」とニベもなかった。

 入国審査の後は、植物検疫を経て、預け入れ手荷物を受け取ると、到着ロビーに出る。
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ごく「普通」の入国風景
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到着ロビーもにぎわいを見せる
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 これで全ての入国手続きが完了した。この間、一切の追加検査はおろか、書類の確認すら行われなかった。アメリカの空港での水際対策なるものは、要するに「皆無」なのだ。

 もし、オミクロンなど警戒すべき変異株の陽性反応者が出たらどうするのだろう?航空会社が乗客のデータをアメリカ当局に提出するのだろうか?そんなタイミングで追跡調査をしても、当該乗客と数十人の濃厚接触者が、公共交通機関でウイルスを撒き散らした後だ。そもそもクラスター制御をする気がない証拠だ。

日米で真逆の水際対策

 到着時に全く検査がないアメリカに比べ、日本に到着した際の空港での水際対策の厳しさと煩雑さは世界でもトップクラスだ。

 日本に到着すると、日本人だろうと外国人だろうとまず唾液によるPCR検査を全員が強制的に受けさせられる。そして検査結果が出るまでの時間に、
・海外での渡航履歴
・日本での移動手段や行動計画、自主隔離の施設の詳細の申告
・追跡用アプリの携帯電話へのインストールなどが義務付けられる。

 これらの処理が全て終わるのに、6時間以上かかる事もある。
 
 オミクロン株の出現で、さすがにアメリカの空港も検査体制を整えたかなと思っていたが、いざ到着してみると、以前と全く変わっていなかった。要するに何の検査もなく、書類提出すら求められなかったのである。

 相変わらずのノーガード戦法以上に私を驚かせたのが、空港内の雰囲気の変化だった。今年4月に利用した時には、検査や書類提出はなくとも空港全体にピリピリした空気が充満していた。入国審査の際に並ばされるリノリウムの床面には1.5mおきに「Social Distance」と書いたステッカーが貼られ、間隔が近すぎる利用客がいるとそこここに立っている係員が飛んできて「もっと間隔を空けなさい!」と怒鳴られた。

 ところが今回は、足元のステッカーは残っていたものの、多くの客に無視され結果としてギッチリとした行列が出来てしまったが、注意する係員は一人もいなかった。

 それどころか、行列の先で各入国審査官のブースを指定されて並び直す際には「もっと詰めて並びなさい」と言われる始末だった。中には誰もマスクをしていない黒人の大家族がいたが、誰も注意をしなかった。

 全ての入国手続きを終えて到着ロビーに出ると、もう私は完全な自由人だった。バスでも乗合タクシーでも、好きな公共交通機関に乗る事が出来るし、何ならマスクをしなくても大丈夫だ。

 そう、少なくともアメリカのダレス国際空港は、手続きも雰囲気も完全にコロナ前の状態に戻ったのだ。

 アメリカではこれまでに、コロナ禍で5180万人の感染者と81.4万人の死者を出した。日本は感染者で1/30の173万人、死者は1/45の1.8万人に過ぎない。人口比を勘案しても、日本はアメリカの1/11、死者は1/17以下、要するにコロナ禍の被害の桁が違うのだ。
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日本では依然として厳しい水際対策が取られている

対策を批判しなくなった米国メディア

 ところが、少なくとも水際対策について言えば、被害の深刻さと対応の厳しさが、日米で真逆となっているのはなぜなのだろうか。

 アメリカではオミクロン株の報道が出ても、「政府の水際対策は緩すぎる」「もっと厳しくしろ」という声は、大手メディアのみならず野党共和党からもほとんど聞かれない。

 もちろん、民主党支持者の多い東海岸や西海岸の州ではレストランの利用にワクチン接種証明書の提示を求めたり、公共の場でのマスク着用を義務付けたりしている。しかし、中西部や南部等共和党の政治家が知事を務めている州では、逆に「マスク着用の義務化」を禁止するところもあり、米国内のコロナ対策は州によってマダラ模様だ。

  それでも、打つ意思のある人のほとんど全員がワクチン接種を完了した今、アメリカでは国を挙げての「コロナ禍の空騒ぎ」は完全に終息しているように見える。

 オミクロン株に対するアメリカでの受け止めも冷静そのものだ。アメリカでは現在新規感染者の7割以上がオミクロン株で、特に都市圏での市中感染が急増している。例えばニューヨーク市では1週間で感染者数が60%増加し、その大半がオミクロン株だった。

 しかし政府もメディアも、これまでのような大騒ぎはしていない。ニューヨーク市の保健当局は20日、「新規感染はしているが入院者数は感染者数ほど増えていない」「オミクロン株はワクチンを接種していれば比較的症状が軽い」と、国民に安心感を与える事を優先しているように見える。

 コロナ禍に乗じて必要以上に国民生活を圧迫し行動制限を求める論調は米国内ではもはやほとんど聞かれなくなった。

 「コロナの恐怖を悪用して執拗に政権批判をする」という大手メディアや政治家のスタイルを米国民が支持しなくなったからこそ、コロナ禍の非難の応酬が「撃ち方止め」となったのだ。
山口敬之:"オミクロン"に動じないアメリカと、動じても...

山口敬之:"オミクロン"に動じないアメリカと、動じても「媚中メディア」が守る岸田政権

メディアの批判も止み、日常を取り戻している米国

朝令暮改、スキャンダル発覚でも持ち上げられる岸田政権

 翻って日本はどうだろうか?岸田首相はオミクロン株の対応について、23日、こう述べた。

 「未知のウイルスだからこそ、リソースを集中投入する。危機の時にはトゥーレイト・トゥースモールより、拙速・やりすぎの方がマシであるという考え方に基づいて取り組んでいる」と述べた。

 外国人の流入を完全に止めなかった安倍・菅政権のアンチテーゼとして、岸田首相が「迅速かつ果断」なコロナ対策を選択する傾向にある事は、周知の事実である。

 12/1には全ての日本に向かう航空便の新規予約停止すると発表して、日本人の帰国すら事実上禁止する措置を一旦は決めて見せた。しかし、政府が国民の帰国を阻害するのは人権問題だとの意見が出され、憲法違反との指摘もあった事から、この決定はわずか数日で全面撤回された。

 これが安倍・菅政権なら、野党のみならず大手メディアも集中攻撃を加えていただろう。「人権無視」「憲法違反」「朝令暮改」。陰惨かつ執拗な政権攻撃が、いつまでも続いていた事は、想像に難くない。

 週刊文春が報道した木原誠二官房副長官の隠し子疑惑も、驚くほど静かだ。

 同じ事が起きても「安倍・菅」は叩かれるが、「岸田」は叩かれないどころか、支持率は上がり続けている。

 毎日新聞が18日に発表した岸田内閣の支持率は54%だったという。そしてこの調査結果の毎日新聞の報道の仕方が興味深い。「前回調査の48%から6ポイント上昇した。10月の政権発足直の49%より高かった。」とベタ褒めなのだ。

 安倍内閣の支持率が2017年8月に9ポイント上がった時には、毎日新聞はこう書いた。

「内閣支持率は35%で、第2次安倍内閣発足後、最低だった7月調査の26%から9ポイント増。前回まで3カ月連続の支持率低下には歯止めがかかったが、不支持率がなお上回っており、人事で安倍晋三首相の求心力が高まったとはいえない。」

 毎日新聞は2016年8月から、中国政府と中国共産党による世界的プロパガンダ戦略の一環である「チャイナウォッチ」を月一回掲載(折り込み)している。
著者提供 (10338)

via 著者提供
 (10339)

毎日新聞に折り込まれる「CHINA WATCH」
 チャイナウォッチを掲載する新聞は、中国側から巨額の資金が供給されている事を、英国の高級紙「ガーディアン」が2018年に暴いている。例えば発行部数37万部のイギリスの高級紙「デイリー・テレグラフ」は、月に1度発行の「China Watch」で年間75万ポンド(1億円強)の支払いを受けているという。

 ガーディアンによれば、毎日新聞は660万部の発行部数があると認定されているとの事で、部数37万の「デイリー・テレグラフ」と単純比較すれば、中国共産党から20億円もの資金が入っている事になる。

 毎日新聞は1977年に負債処理で分社化、1993年には早期退職を募集。今年3月には大阪市の自社ビルを信託銀行に譲渡し、210億円を借り入れた。

 今、毎日新聞はチャイナウォッチの扱いで入ってくる中国のカネがなければ即座に経営が立ち行かなくなると見られている。

 中国は、同じく親中だが不動産という払い下げ資産で経営が多少はマシな朝日新聞ではなく、すぐに生殺与奪の権利を握れる経営不信の毎日新聞にターゲットを絞ってチャイナウォッチの売り込みを行ったのだ。

 こんな新聞が、中国政府や中国共産党の嫌がるニュースを容易に出せるはずがない。日本側に忖度を働かさせる事こそ中国側の狙いであり、文化侵略なのだ。

 毎日新聞はチャイナウォッチのみならず、その他の紙面も中国のプロパガンダを背負わされていると見る方が安全だ。

 そんな媚中の極地の毎日新聞にゲタを履かせてもらっている岸田政権。北京オリンピックの外交ボイコット問題でも中国への配慮ばかりが目立ったし、悲惨な環境に置かれている事が国際的に認定されているウイグル人権問題に関する非難決議も、換骨奪胎の末に岸田政権が握りつぶした。

 中国にNOと言えないメディアと、中国の機嫌をうかがう政権。両者の生温い関係が、ただでさえ歪な日本の報道を、さらに腐らせているのである。
山口 敬之(やまぐち のりゆき)
1966年、東京都生まれ。フリージャーナリスト。
1990年、慶應義塾大学経済学部卒後、TBS入社。以来25年間報道局に所属する。報道カメラマン、臨時プノンペン支局、ロンドン支局、社会部を経て2000年から政治部所属。2013年からワシントン支局長を務める。2016年5月、TBSを退職。
著書に『総理』『暗闘』(ともに幻冬舎)、新著に『中国に侵略されたアメリカ』(ワック)。

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