日本のメディアが伝えない   米大統領選はトランプ圧勝

日本のメディアが伝えない 米大統領選はトランプ圧勝

前近代国家の見えない侵略

古田 漢(カラ)コロナによって世界がひっくり返ってしまいましたね。そんな中、中西輝政先生が産経に「歴史はまさに21世紀最大の危機を迎えようとしている」といったテーマで寄稿されていた(6月28日付)。

藤井 大きな歴史の転換点にいることは間違いありません。そのキーワードは「米中対決」。武漢コロナ問題やミネアポリス暴動問題も、その本質は米中対決にあります。この基軸が見えなければ、現代社会に現れてくるさまざまな問題を本質的に理解することは難しいでしょう。『米中最終決戦』(徳間書店)では、そのあたりのことを解明しています。

古田 米国は本気で中国を締め上げようとしています。

藤井 5月29日、ホワイトハウスのローズガーデンにおけるトランプ演説が、大統領自身の声明による対中宣戦布告であることは間違いありません。

古田 中国による米国経済の搾取(さくしゅ)の実態や、香港の自治の保障を反故にしたことなどをあげていました。

藤井 その上でトランプは「米国が求めるものは、開かれた、そして建設的なチャイナとの関係であるが、こういった関係を実現するためには、我々はわが国の国益を積極果敢に防衛しなければならない」と述べています。実際にトランプ政権は、超党派でチャイナ締め上げ政策を進めている。たとえば、議会は上場している外国企業の監視を強める法案を可決しましたが、まさにチャイナの企業を狙い撃ちしたものです。そもそもチャイナの国有企業は、会計報告(貸借対照表:バランスシート。以下、BS)を公開しないことが、チャイナ国内の法律で決められています。

古田 社会主義経済をやってしまった国には、複式簿記なんて絶対にできません。

藤井 しかも、大企業内には、共産党委員会が設置され、党中央に報告する義務がある。米国で上場するには、極めて高い透明性のあるBSの公開が必須でした。ところが、ここ20年ほど、チャイナ企業で儲けたいウォールストリートの金融資本の力に負け、米国は50社以上のチャイナ企業の上場を黙認してきたのです。今回の法案によって、BSを詳細にチェックする義務が発生しました。これでチャイナは米国内で資金調達ができなくなります。チャイナ企業の多くは上場廃止になるでしょう。私が最も注目している企業はアリババです。上場廃止となれば、ソフトバンクの孫正義さんもタダでは済みません。孫さんの最大の資産はアリババの株ですから。

古田 さらに知的財産権の問題でも、米国は追及の度合いを強めていくでしょう。

藤井 7月7日にFBIのレイ長官がハドソン研究所で講演し、知的窃盗の具体例をあげて米国民に警告を発しました。現在FBIが扱っている5000件のスパイ事件のうち、その50%がチャイナ絡みだそうです。チャイナは人材ですら、自国に取り込んでいます。2008年から「1000人計画」を始めていました。具体的に説明すると、2050年をめどに、科学と技術の分野においてチャイナが世界一になることを目標に掲げ、外国のトップレベルの研究者をチャイナに招聘するプログラムのことです。

古田 カネにものをいわせた体(てい)のいい奴隷ではありませんか。

藤井 そうです。頭脳狩りですし、知的奴隷狩り、あるいは一流研究者の拉致問題と言っても過言ではありません。特に米国の研究者が狙われていて、給与や研究費、そして研究施設や研究環境の面でチャイナは破格の条件を出していますから、本人たちは人材拉致であることに気づかないのです。 
 実際に逮捕者も出ています。例をあげると、ハーバード大学の化学・化学生物学部長で、ナノテクノロジーの世界的権威のチャールズ・リーバー教授は、米国防総省から研究費を受け取っていたのにもかかわらず、同時に1000人計画にも参加、そのことを連邦政府に報告していませんでした。これは違法行為です。

古田 お金ももらっていたんですか。

藤井 ええ、毎月5万ドル(約540万円)の研究奨励金と年間15万8000ドルの生活費、加えて彼のハーバードの研究室と同じ研究室をチャイナにつくった謝礼として150万ドルを受け取っていました。結局、リーバー教授は逮捕されましたけど、氷山の一角に過ぎないでしょう。すでに7000人の研究者を招聘していると、米国の調査報告書によって公表されていますから。少なくとも日本人研究者3人が「1000人計画」に参加していることもわかっています。

古田 大学教授はマルクス信者で親中派が多いから、すぐに中国に協力してしまいますよ。これから、どんどん増えていきそうです。

藤井 確かにチャイナのやり方は狡猾(こうかつ)極まりないですが、習近平は尻尾を出しやすいので、ありがたい。鄧小平のような知恵者だったら、「韜光養晦(とうこうようかい)」戦略で米国は完全にチャイナに呑み込まれていたでしょう。ところが、習近平は実に素直にすべての種明かしをしてくれる(笑)。

古田 5Gだって放っておいたら、ファーウェイにすべて支配されていましたよ。

藤井 全くです。ところが、習近平は「チャイナ製造2025」を掲げて、2025年までにさまざまなハイテク分野でチャイナがトップに立つと表明しました。米国はそれを見て危機感を覚え、ファーウェイ潰しに動いたのです。習近平は本当にバカです(笑)。

讒言(ざんげん)・タカリ・イチャモンの東洋

古田 中国が「コロナは米国発だ」と言ったとき、「ああ、この国はやっぱり近代合理性を欠いているんだな」と思いました。米国は、西部劇の『真昼の決闘』に象徴されるように、侮辱されたら絶対に許さない国です。欧州も同じですよ。19世紀まで決闘の文化が残っていましたから。あのニーチェも鼻に銃弾がかすった経験をしている。フランスのスタンダールは逃げてバカにされましたが(笑)。
 そういう西洋人の歴史的矜持(きょうじ)が、中国人にはわかっていません。「100回ウソをつけば、それも真実になる」と信じ込んで、ただ人のせいにしているだけ。讒言で政治が動く歴史でしたからね。しかも無意識的な言動だから、余計に卑劣な印象を受けます。

藤井 根拠も何もない、自分に不利だと思ったら、とりあえずウソをつく。

古田 東洋的古代性の表れです。特に中国と北朝鮮はひどい。韓国はまだ西洋社会と付き合っているので、相手の顔色を窺いながら(これを「ヌンチ」と言います)発言しているフシがあります(笑)。

藤井 その底の浅い韓国の近代合理性も、文政権と共に消滅しそうですね。

古田 北朝鮮にしても開城にあった南北連絡事務所を爆破したでしょう。金与正がなぜ、あそこまでやったのか。それは「女だからって舐めんじゃないわよ」という意味だと思う。

藤井 同感です。うちの事務所の女性アルバイトも同じ感想を言っていました。

古田 女性は丸ごと破壊する傾向があります。ほら、女性は男を一撃でふって未練を残さないでしょ。第2次大戦時、ソ連の女性パイロットが何よりも恐れられました。男性パイロットの場合、銃撃して敵機から火があがると、撃墜したと認識して攻撃をやめます。ところが、女性パイロットだと、火だるまになるまで撃ち込み続ける。男よりもっと大きな〝全体的な性〟なのですね。男性は部分にばかり興味を持ちます。これはジェンダー研究の上野千鶴子さんの業績ですけどね。

藤井 なるほど。

古田 表向きは同胞を取るか、同盟(米国)を取るか、その選択を迫った。でも、本音は金が欲しいだけ。南北ともに、ゴネるときは金をたかるときですよ。文在寅は早速それに応えて、金正日時代に4億5000万ドルの裏金を北に送った朴智元を、爆破の翌日に大統領府に呼び、7月6日には国家情報院(旧KCIA)の院長に据えました。たかりに応えるという意思表示ですよ。すべて金。

藤井 慰安婦問題やいわゆる徴用工問題もまさにそうです。

古田 もう1つの手として、イチャモンがある。2019年、韓国の国会議員たちが、五輪で旭日旗の使用禁止を求める決議案を国会で採択しました。旭日旗は「軍国主義の象徴」だと。あれこそイチャモンの好例です。何の根拠もなしにイチャモンをつけるのはダメだということが、韓国人には理解できない。こういう事例は聖書にもたくさん出てきます。『旧約聖書の政治史』(春秋社、64頁)を参考にしてください。国家的イチャモンは近代合理性が確立する以前の国で起きます。

藤井 古田さんは以前、朝鮮王朝は困ったら遷延策(引き延ばし)に走ると指摘していましたが、今回は米国が北朝鮮に対して遷延策を実行しています。過去の米朝トップ会談で、トランプは「核を放棄したら、経済的支援をしよう」と提案しましたが、米国はそれ以上、北朝鮮に何も要求していません。次のトップ会談があるとしたら、北朝鮮側が妥協するか否か。その1点です。北朝鮮は自ら2020年の年末までに結論を出すと、デッドラインを決めてしまったので、それに苦しめられています。

古田 やっぱり近代合理性を理解していない(苦笑)。

藤井 米国からしたら、北朝鮮は「小さな躓(つまず)きの石」、チャイナは「大きな躓きの石」です。大きなトラブルを取り除けば、自ずと、小さなトラブルも消える。無駄なエネルギーを北朝鮮に注ぐ必要はありません。

古田 当面は中国対策に集中すればいいのです。

香港とは何だったのか

藤井 トランプは大統領候補の時、演説で「西洋文明」という言葉をよく口にしていました。つまり、米国を中心に西洋文明を保持している、という自負がある。ところが、チャイナのような古代国家が世界の覇権を握ったら、近代合理主義文明が破滅に追いやられます。だからこそ、今、チャイナと対峙するのは、ある意味、当然のことです。

古田 香港も陥落してしまった。

藤井 英国にはずる賢い旧植民地主義の流れを汲む連中(守旧派=タックスヘイブン派)が存在しています。香港こそ、共産主義者とその連中が結託する場でした。
 戦前から活躍していたチャイナ専門家の佐藤慎一郎氏(1905~99年)の著作集第1巻『汨羅の淵に佇んで中国の激動史を見る』を読んだとき、ハッと気づかされたことがありました。佐藤氏は次のように記述しています。
「中共を今日まで育成して来たものは、ソ連ではなく、イギリスである。毛沢東が井崗山で旗揚げした時の軍資金から武器から一切が、イギリスの援助であった。その後、中共が国民党の討伐にあっても、よく2万8000里(中国の6里は日本の1里にあたる)の逃亡に成功することが出来たのも、揚子江沿岸に権益を持つイギリスが陰に陽に守護したからである」
 と、ここまで中国共産党と英国は深い関係にあったのです。

古田 中華人民共和国ができたとき、最初に承認したのは英国だったでしょう。

藤井 それにも裏があって、中ソ紛争をやらせて、ソ連を疲弊させるという外交的思惑もあった。香港も、その流れを汲んでいます。中英で手を組み、返還後も国際金融の場として利用する。対中投資の7割が、香港経由でなされ、英国金融資本は大儲け。また、ここ20年ほど、さんざん賄賂で儲けたチャイナの役人は、香港にまず資金を移し、そこから海外に資金を逃避させました。

古田 体のいいマネーロンダリングですね。

藤井 マカオも同じ役割を担っていました。マカオのカジノを通じて、裏金を表金に換え、海外送金していたのです。米国はそもそも香港ネットワークの主流から外されていたので、それほど関心の高い地域ではありません。かつての香港空港の拡張工事でも米国は参入できず、英国企業が落札した。米国の本音としては、香港の民主政治を潰すのは許せない、でも、タックスヘイブンの香港が潰れることは賛成なのです。

古田 英国と中国の関係は今後どうでしょうか。

藤井 英国は最終的に5Gからファーウェイを排除することに決めましたが、これにも裏がある。ファーウェイの研究所をケンブリッジ市郊外につくらせることを承認する見込みです(笑)。

古田 実にイギリス人らしい。平壌にあるブリティッシュ・アメリカン・タバコ工場みたい(笑)。

藤井 トランプが再選できなかったら、再び英国とファーウェイの関係が復活するというわけです。

古田 イギリス人の祖先はノルマンのバイキングだから、根が山師なんだな。

藤井 香港は反習近平勢力である江沢民派の拠点です。習近平は民主派など歯牙にもかけていない。江沢民派が目障りなのです。江沢民派は紅2代で、香港に金を流し、それを運用して勢力を拡大しています。
 習近平にとって江沢民派を潰せるなら、香港の金融センターとしての機能を失っても、まったく構わない。傍から見ると香港のような「金の卵を産む鶏」をなぜ潰すのか、まったく理解しがたい行為です。しかし、習近平個人からすると、最大の党内反対派の江沢民派を潰す必要があったのです。

古田 そういう権力闘争のために、香港は潰された。中国が訳の分からないことをするときは「敵つぶせ」、同じ場合のコリアはだいたい「金よこせ」だと思っていると当たります。

「積極的不潔さ」とウイルス

藤井 過去のチャイナの外交政策の転換を見ると、合理的かどうかで判断されるのではなく、内紛によって動いています。つまり、チャイナの外交政策の転換は、国内、党内の権力闘争の延長線で行われるのです。

古田 党派がすべてなのです。古代的世界観から脱していない。

藤井 ここ70年のチャイナの歴史を見ても、党内闘争がない時代はありません。熾烈な権力闘争が常に存在している。その理由は、チャイナにおいて「権力」そのものに正統性が存在していないからです。トップに立つ条件は軍事力があるかどうか、平時であれば金があるかどうか、そこだけが問われます。
 毛沢東は「権力は銃口から生まれる」といみじくも言っているように、チャイナの政治力学をよく理解していた。賊だとしても力を得て、国内を統一できたら皇帝になれる。力こそすべての世界です。

古田 法と秩序なんて概念が存在したことはありません。明時代に制定された法律「大明律」を見ても、それがよくわかります。「汚物を人の顔に投げてはいけない。すると百叩きの刑」とか、そんなくだらないことばかり(笑)。人を侮辱したいときは、脱糞して、それを投げつける。海上保安庁の女性乗務員が中国密航船の船員から糞便を投げつけられたことがあります(「産経抄」「産経新聞」2010年11月11日付、拙書『「統一朝鮮」は日本の災難』飛鳥新社、2018年、111頁)。

藤井 韓国でもストライキの際、労組の連中が経営者の前で糞便をまき散らしたりします。

古田 中国の影響を受けています。〝大中華〟に対する〝小中華〟の関係ですから。
 韓国もとにかく不潔です。女性紀行作家イザベラ・バードは「世界一汚い都市は、中国・紹興市。第2位は韓国・ソウル」と書いているほど。下着ですら気持ち悪くなるまで取り換えません。食べ物のせいか足が臭いのも多く、ハングルでは特別に足の臭いを表現する言葉として「コリンネ」という単語もあるほどです。兵営でも足の臭うものは、ドアの外に足を出して就寝させられます。
 福島香織さんによれば、ここ12年間で、中国は2000種類のウイルスを抽出しているそうです。世界だと280種類程度。段違いです。さらに南部の中国人はセンザンコウやキンシコウ、キクガシラコウモリなどを食べる。それでウイルスが拡散するのです。

藤井 そもそもウイルスは、人間が家畜を飼育するようになってから、動物から人間に寄生するようになったそうです。人間と動物の距離が近いと、新種のウイルスがどんどん登場してくる。危険地域は特にサハラ以南のアフリカと、南部チャイナです。豚、ニワトリ、野生の鳥、池の鯉などが混在している。そこにウイルスが存在して、人間はそれらの動物を口にする。そうやって新種のウイルスが拡大していきます。

古田 中国国内で新たな豚インフルエンザが見つかったという情報もあります。こんなところで引用してしまって申し訳ないのですが、中国思想の三浦國雄先生が、「中国文化というものを大局的に捉える場合、人間ないし生物次元の基本的な欲望から出発する、という観点は外せないのではないかと私は考えている」(『不老不死という欲望─中国人の夢と実践』、人文書院、2000年、11頁)と言っています。つまり、「人間の獣性」が、動物たちとの共生という形で素直に出てきてしまった人たちなのです。
 もとより人間の獣性というのは、獣の獣性とは違うでしょう。だから風呂に入らないアボリジニのような自然な不潔さではなく、中国人の場合は「積極的不潔さ」とでも言うべきでしょうか。シナ人には人間の獣性に対する、おおらかな肯定があるのです。子供に股割れパンツはかせて、ディズニーランドで脱糞させてしまうのはそれですね。近代合理性もしつけないので、子供たちは小動物のようにあちこちの穴や土管にはまります。

藤井 どんどん新しいウイルスが出てくる。世界で5000万人以上が死んだスペイン風邪だって、チャイナが発祥ではないかと言われています。

古田 古代世界が近代を蚕食(さんしょく)していくようですね。

藤井 しかもウイルスは人と場所を選びませんから、チャイナ国内でもどんどん感染が拡大している。ただ、毛沢東のゲリラ戦略を見てもわかるように、チャイナの価値観からすると人の命はタダです。いくら死んでも構わない。「超限戦」にしても、いくらウソをついても良心の呵責を感じない人たちしか実行できません。善悪の基準があったら、とても無理です。チャイナにとっては勝利のみが求められます。

古田 人間という動物の獣性ですね。

米国の過激派組織

藤井 米中の最終戦争は、いわば「近代vs.古代」の戦い。それこそ21世紀の世界の方向性を決めることになるでしょう。

古田 ただ、トランプが秋の大統領選で再選するかどうかが、大きな分かれ道になりませんか。日本の新聞を見ていると、トランプが不利だと世論調査をあげて報じていますけど。

藤井 米国も同じですよ。大手メディアのSNSを見ても、反トランプ一色です。驚くべき話ですが、CNNを辞めた記者5名が、チャイナ・グローバル・テレビジョン・ネットワーク(CGTN)に再就職していることが判明しました。
 CGTNは、チャイナの国営テレビ局「中国中央電視台」の英語で国際ニュースを放映する1部門です。「中国中央電視台」なんて純然たる中国共産党の宣伝部門ですよ。恥も外聞もありません。

古田 まさに功利主義ですね。米国内はANTIFAをはじめとした過激派組織が騒いでいました。トランプ再選の足を引っ張ろうと頑張っていましたが。

藤井 すでに彼らの本性は明らかになっています。今回のデモ騒動でANTIFAとともに、「ブラック・ライブズ・マター(BLM)」も注目されました。共同創設者の1人、パトリッセ・カロス女史は「我々は訓練されたマルキストである」と明言しており、さらに「私たちの目標はトランプ大統領を退陣させることだ」とも発言しています。

古田 つまり、黒人差別反対運動ではなく、反トランプ運動、暴力革命運動がメインなんだ。

藤井 もっと言えば、BLMは警察に狙いを絞り、警察予算を削減させ、暴力行為が横行するような動乱的な社会状況を目指しています。ANTIFAに比べて、緩い連帯型の組織ですが、本質は同じです。

古田 60年代~70年代にかけても、似たような組織が存在していましたよね。

藤井 ええ、ブラックパンサーやウェザーメンなどですが、彼らは毛沢東思想を信奉していました。ANTIFAやBLMも同様の流れを汲んでいますから、チャイナから資金を得ている可能性がありますね。

銅像撤去は野蛮な「記憶の抹殺」

古田 シアトル市では、過激派連中によって自治区ができた。

藤井 中心街6ブロック分が占拠されました。その中は完全なる治外法権状態で、放火やレイプ・略奪が横行する無法地帯でした。「みかじめ料」まで徴収していたというから驚きです。

古田 そこまでのさばった理由はなんだろう。

藤井 ANTIFAやBLMが警察署に抗議デモで押し寄せたとき、なぜか、ジェニー・ダーカン市長が、警察署から警察官を退避させたのです。そのため、警察署が乗っ取られ、警察署を中心に占拠されてしまった。トランプ支持派の市民は「早く軍隊を送れ」と訴えたのですが、市側はまったく制圧する気がなかった。

古田 市長はリベラルですか。

藤井 そう、民主党リベラルです。加えて、ワシントン州のジェイ・インスレー知事も民主党です。記者会見のとき、占拠について聞かれたら、「え、そうですか? 知りませんでした」と、とぼけていましたよ(笑)。「知っている」と答えたら、知事の義務で州兵を動員しなければならないからです。

古田 ずいぶんと汚い手を使いますね。

藤井 シアトル市で騒ぎが拡大すれば、トランプ再選の足かせになると、知事と市長は睨んだのでしょう。トランプが「このままだと軍を投入する」と言っても、市長は「これは夏の祭りみたいなものだ」とごまかしていました。ところが、市長が突然、方針を転換して、立ち退き命令を出したのです。その翌日、警官隊を出動させた。銃撃戦もあり得るかと思いましたが、過激派の連中は、あっさり投降しました。

古田 市長はどうして心変わりしたのですか。

藤井 自宅が襲撃されたことも大きかったと言われています(笑)。どうやら真相は、自治区内で19歳の黒人青年が殺されてしまったことが大きいようです。被害者の父親はFOXテレビに出演し、涙ながらに訴えかけました。息子の遺体に対面するまで、1週間も待たされたそうです。病院に運ばれても、医者や看護師が避難していたので適切な治療が施されませんでした。ほかにも14歳の黒人少年が襲撃されています。
 これらの事件が明るみに出て、過激派たちの欺瞞が暴かれた。「何がBLMだ」と、世論が大きく変化したのです。

古田 「ブラック・ライブズ・マター」にあるまじき行いというわけだ。

藤井 ともかくシアトル事件は解決したわけですが、過激派の連中が去った後はゴミの山だらけ。ひどいものです。

古田 そういうのも人間の獣性かもしれない。韓国人は引っ越しの時にメチャメチャに汚して去ります。「積極的不潔さ」を感じますね。

藤井 この1件以降、コロンブス像やジェファソン像の撤去運動も、ピタッと止まりました。トランプが記念碑や像を「損壊、汚損、撤去」する行為に最大10年の禁錮刑を科す大統領令に署名したことが大きかった。

古田 あれはたぶん野蛮な「記憶の抹殺」ですよ。過去をたどって、そこに着地できないように記憶自体を抹殺してしまうのです。うちの国でも、マルキストの日本史研究者や記紀研究者、アジア主義の内発的発展論者のなかにいます。シナ文化に肯定的でない本居宣長(もとおりのりなが)のような歴史上の人物をいなかったかのように扱うのですね。聖徳太子も彼らの犠牲になりかけたのですが、藤岡信勝先生たちがうまく救い出してくれました。
 ついでに言っておくと、韓国の「慰安婦像」の方は「歴史の捏造(ねつぞう)」、米国の銅像の撤去は「記憶の抹殺」です。前のは普通名詞の幻像を入れ込み、後のは実在の有名人を取り除く。どちらも進歩派の汚い手です。

藤井 シアトルの過激派の連中には、中東からの資金が相当流れていたようです。実際、活動家の中には複数の会社を所有し、ベンツを乗り回したりしている人もいました。

古田 中国はかかわっていないんだろうか。

藤井 まだはっきりしていません。ただトランプが落選するのを一番願っているのが習近平であることは間違いありませんから、チャイナが裏で工作していた可能性は高いと思います。

ウィズアウト「チャイナ」

古田 バイデンが勝利する目はまったくありませんか。

藤井 可能性がゼロではないのが怖いところです。バイデンはコロナを理由に、3カ月間、自宅に籠りっきりでした。久しぶりに登場してインタビューに応じていましたが、その受け答えを見ると、結構鈍い印象を受けました。米国はメディアも民主党寄りで、明らかに優しい質問しかしていないのに、しどろもどろになっている。
 テキサス州での演説で、「全ての人間は平等につくられている、ということを自明の……みんな知ってるだろう、例のアレだよ」と、独立宣言の内容を忘れたり、認知症疑惑が取りざたされています。大統領という激務をまっとうできるかどうか、かなり怪しい。リベラルな米国人は「バイデンしか候補はいないのか」と嘆いています。

古田 切実な問題ですね(笑)。

藤井 それと「バイデンは反中だ」と言われることがありますが、真っ赤なウソです。息子のハンター・バイデンはチャイナの投資会社の重役になり、10億ドルもの金が懐に入っています。バイデン・ファミリーは完全にチャイナに取り込まれています。
 それにバイデン自身も、チャイナとのスキャンダルが報じられています。バイデン氏は、ペンシルベニア大学の傘下に、外交公共政策研究組織として、自ら出資し、バイデン・センターを設立しました。ところが、このセンターには、チャイナから過去3年間にわたって約7000万ドルにのぼる寄付金が流れていました。そこでNPO団体の国家法律政策センターが米国教育省に全面的な調査と情報公開を求めたのです。

古田 米国の大学は外国から25万ドルを超える寄付金を受け取った時には、政府に報告することが義務づけられているでしょう。

藤井 バイデン・センターは、今のところ、何ら声明を発表していません。ところが日本の評論家の中には、バイデンは反中だから、どちらが当選してもチャイナは嫌がるだろうと言う御仁もいる。

古田 いやあ、そんなのデタラメですよ。かつての「進歩的文化人」の後遺症で、シナを上位者に見立ててしまう。高校教師や大学教授にそういうことを教えるのがいっぱいいます。

藤井 チャイナ当局が言ってほしいことを代弁しているだけです。ともかく体調の不安も抱えているバイデンに、勝利の目はほとんどありません。秋の大統領選挙は、間違いなくトランプの圧勝で終わりますよ。

古田 でも、そういう事実を日本のマスコミは、まったく報じてくれません。メディアの危機だとつくづく思います。
藤井 厳喜(ふじい げんき)
1952年、東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業。77~85年、アメリカ留学。クレアモント大学院政治学部(修士)を経て、ハーバード大学政治学部大学院助手、同大学国際問題研究所研究員。82年から近未来予測の「ケンブリッジ・フォーキャスト・レポート」発行。株式会社ケンブリッジ・フォーキャスト・グループ・オブ・ジャパン代表取締役。古田博司氏との共著『韓国・北朝鮮の悲劇 米中は全面対決へ』、石平氏との共著『米中「冷戦」から「熱戦」へ』(ともにワック)など著書多数。
古田 博司(ふるた ひろし)
1953年、神奈川県生まれ。慶應義塾大学大学院文学研究科東洋史専攻修士課程修了。延世大学、漢陽大学などで日本語講師を務める。滞韓6年の後、帰国。下関市立大学を経て、筑波大学名誉教授。『ヨーロッパ思想を読み解く──何が近代科学を生んだか』(ちくま新書)、『日本文明圏の覚醒』(筑摩書房)など著書多数。近著に『韓国・韓国人の品性』(ワック)、藤井厳喜氏との共著『韓国・北朝鮮の悲劇 米中は全面対決へ』(ワック)がある。

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