世界中が注視する米国大統領選挙は日本時間の5日未明、一時のトランプ優勢からウィスコンシン・ミシガンを押さえたバイデン優勢……という状況になっているようだが、トランプ陣営からの再集計要請などもあり、選挙結果は、いまだ予断を許さない状況だ。
私はジャーナリストという職業柄もあるが、イチ個人投資家としても世界中のマーケットに影響を与える今回の選挙結果が気になってならない。
そこで本稿では「個人投資家」が今回の米国大統領選についてどう考えているか、またその情報源となる大マスコミのいい加減さがいかに私たちの判断を迷わせるか……についてお届けする。
私はジャーナリストという職業柄もあるが、イチ個人投資家としても世界中のマーケットに影響を与える今回の選挙結果が気になってならない。
そこで本稿では「個人投資家」が今回の米国大統領選についてどう考えているか、またその情報源となる大マスコミのいい加減さがいかに私たちの判断を迷わせるか……についてお届けする。
投資家は株高をこう考える
「なんだかんだいって、トランプが前回同様勝つでしょう。バイデンなら、増税で相場は急落だよ」
と、筆者の周囲では9割以上の人々が明言していたが、先週末急落した日経平均は、2日に続き投開票日の4日も大幅続伸した。
あれ、なんで? と考えたが、原因は以下のようなことではないだろうか。
投資家の間では、一番怖いのは、政治的混乱が内政のみならず、外交に空白をもたらすことであると囁かれていた。トランプ氏が法廷闘争に訴える可能性もあるし、勝者が決まらない場合は、興奮した市民を鎮圧するために軍が出動するというシナリオまで飛び出していた。
実際、トランプ陣営は「再選」宣言、バイデン陣営も「自信あり」宣言を出し、トランプ氏は、先述のように激戦区2区での投開票差止請求を行うなど、混乱を極めている。現在の株高は、こうした状態を受けて、「増税が当面見送られる」という判断から起きたものであろう。しかし、いつ急落してもおかしくないし、当然余波は日本に及ぶ。
と、筆者の周囲では9割以上の人々が明言していたが、先週末急落した日経平均は、2日に続き投開票日の4日も大幅続伸した。
あれ、なんで? と考えたが、原因は以下のようなことではないだろうか。
投資家の間では、一番怖いのは、政治的混乱が内政のみならず、外交に空白をもたらすことであると囁かれていた。トランプ氏が法廷闘争に訴える可能性もあるし、勝者が決まらない場合は、興奮した市民を鎮圧するために軍が出動するというシナリオまで飛び出していた。
実際、トランプ陣営は「再選」宣言、バイデン陣営も「自信あり」宣言を出し、トランプ氏は、先述のように激戦区2区での投開票差止請求を行うなど、混乱を極めている。現在の株高は、こうした状態を受けて、「増税が当面見送られる」という判断から起きたものであろう。しかし、いつ急落してもおかしくないし、当然余波は日本に及ぶ。
朝日新聞の素早い変わり身
ではメディアは今回の大統領選および株高をどう見ているか。筆者が印象に残った2つの事例をお伝えしたい。
個人投資家にとって何よりも必要なのは情報収集だ。筆者も自分の株資産を考えると怖くなり、いつも以上にいろいろな情報を仕入れているうちに、久しぶりに朝日新聞までひらいた。
同紙には数日前までは「トランプ氏総得票は敗北か」、「トランプ氏の劣勢覆る余地は」などのタイトルに加え、「答えが決まっている(バイデン勝利)選挙」という識者のコメントなどが散見されていた。
本音と建前が大きく乖離しているが、読者の誘導に長けた、いかにも朝日新聞らしい論調である。また、TVを含む日本のメインストリームメディアも概ね同様の論調であった。
ところが、である。今朝(11月5日)の朝日新聞のニュースレターでは、「世論調査では『トランプ氏劣勢』 またも覆された理由は」というタイトルの記事が早速送られてきている。実に変わり身が早い。本当にトランプが不利と分析していたのか? と勘ぐってしまう。
個人投資家にとって何よりも必要なのは情報収集だ。筆者も自分の株資産を考えると怖くなり、いつも以上にいろいろな情報を仕入れているうちに、久しぶりに朝日新聞までひらいた。
同紙には数日前までは「トランプ氏総得票は敗北か」、「トランプ氏の劣勢覆る余地は」などのタイトルに加え、「答えが決まっている(バイデン勝利)選挙」という識者のコメントなどが散見されていた。
本音と建前が大きく乖離しているが、読者の誘導に長けた、いかにも朝日新聞らしい論調である。また、TVを含む日本のメインストリームメディアも概ね同様の論調であった。
ところが、である。今朝(11月5日)の朝日新聞のニュースレターでは、「世論調査では『トランプ氏劣勢』 またも覆された理由は」というタイトルの記事が早速送られてきている。実に変わり身が早い。本当にトランプが不利と分析していたのか? と勘ぐってしまう。
日本経済新聞の「なんとでも言える」感
個人投資家必読の日本経済新聞(電子版)も4日当日の株高を受けて、こんな感じだ。
9:17分時点での記事では前場(午前中のマーケット)早々で日経平均が前営業日比500円高を付けた理由を「開票日を迎えた米大統領選で民主党候補のバイデン前副大統領の優勢が伝えられ、選挙後の財政支出による景気回復を見据えた投資家の買いが入った」
からとしていた。
しかし、同日昼頃には徐々にトランプ優勢気味となり、後場(午後のマーケット)中には注目州であったフロリダ州をトランプが獲得したにもかかわらず、日経平均は下がらず、結果的に前営業日比399円高と続伸した。
すると同じく電子版の更新記事(同日15:42更新)には識者の分析として、こうあった。
《「このままトランプ氏が再選されれば、民主党のバイデン氏に比べてIT(情報技術)企業への規制強化方針が薄まるとの期待でナスダック100の先物相場が上昇し、日本でも相場を押し上げた」とみる。市場ではトランプ氏の法人税減税などの政策案を改めて評価する動きも広がっているという》
結局、どちらが当選しようが株高ってことかい! と思わずツッコミを入れたくなってしまった(株高はありがたいが)。
9:17分時点での記事では前場(午前中のマーケット)早々で日経平均が前営業日比500円高を付けた理由を「開票日を迎えた米大統領選で民主党候補のバイデン前副大統領の優勢が伝えられ、選挙後の財政支出による景気回復を見据えた投資家の買いが入った」
からとしていた。
しかし、同日昼頃には徐々にトランプ優勢気味となり、後場(午後のマーケット)中には注目州であったフロリダ州をトランプが獲得したにもかかわらず、日経平均は下がらず、結果的に前営業日比399円高と続伸した。
すると同じく電子版の更新記事(同日15:42更新)には識者の分析として、こうあった。
《「このままトランプ氏が再選されれば、民主党のバイデン氏に比べてIT(情報技術)企業への規制強化方針が薄まるとの期待でナスダック100の先物相場が上昇し、日本でも相場を押し上げた」とみる。市場ではトランプ氏の法人税減税などの政策案を改めて評価する動きも広がっているという》
結局、どちらが当選しようが株高ってことかい! と思わずツッコミを入れたくなってしまった(株高はありがたいが)。
メディアの首尾一貫性のなさを憂う
このようなメディアの首尾一貫しない姿勢というのは投資家にとっては本当に困る。
投資家でなくとも、読者・視聴者が選挙行動などの判断をする際にその判断の根本を誤らせる大きな要因になる恐れもあるであろう。この2~3日で、情報の取捨選択が求められる時代であることを再び痛感した次第だ。
『WiLL』読者には異論もあるだろうが、筆者ともども投資家の本音は、「どちらでもいいから経済を上昇気流に乗せてくれ、持っている資産(株含め)価値を上げてくれ」ということ以外に、ほとんど何もない。
しかし、これから起こり得る混乱を考えると、とにもかくにもメディアには「正確な情報」の発信を期待する。
投資家でなくとも、読者・視聴者が選挙行動などの判断をする際にその判断の根本を誤らせる大きな要因になる恐れもあるであろう。この2~3日で、情報の取捨選択が求められる時代であることを再び痛感した次第だ。
『WiLL』読者には異論もあるだろうが、筆者ともども投資家の本音は、「どちらでもいいから経済を上昇気流に乗せてくれ、持っている資産(株含め)価値を上げてくれ」ということ以外に、ほとんど何もない。
しかし、これから起こり得る混乱を考えると、とにもかくにもメディアには「正確な情報」の発信を期待する。
埼玉県出身。青山学院大学在学中より、取材活動を始める。官界を中心に、財界、政界など幅広いテーマで記事、コラムを執筆。「官僚村生活白書」など著書多数。IT企業の代表取締役を経て、2015年、合同会社マグノリアを立ち上げる。女性のキャリアアップ支援やテレビ番組、書籍の企画・プロデュースを手がける。