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ウクライナ戦争におけるバイデン政権の対応は

隠された「もう一つの悪」

 ウクライナ戦争が始まって以降、私は「一方的な侵略戦争を仕掛けたロシアに弁明の余地はない」という立場を明確にしている。そのうえで、TBSワシントン支局長として米国政治を取材してきた立場から、欧米諸国のウクライナをめぐる思惑について、各国首脳の言動や歴史をもとに分析してきた。

 例えば「開戦前のバイデン大統領の言動には戦争を抑止する意思が見られなかった」という見解がある。昨年末から、米国の情報機関はウクライナ侵攻の危険性が高まっていると警鐘を鳴らしてきた。にもかかわらず、バイデン政権は早々に米軍派遣を否定した。プーチン大統領が侵攻に踏み切るハードルを下げたことは紛(まぎ)れもない「客観的事実」である。

 ところが、米国を批判すると即座に「ロシア擁護」「陰謀論」とのレッテルを貼られてしまう。「米国やウクライナを非難する人たちについて、ロシア政府やロシア大使館から金銭などの利益供与を受けていないか確認すべきだ」という主張まで飛び出す始末だ。プーチン大統領が「悪」であることは間違いない。しかし、「陰謀論」というレッテル貼りによって、もう一つの「悪」が隠されているように思えてならない。

 産経新聞が、トランプ前政権で国家安全保障問題担当大統領副補佐官を務めたナディア・シャドロー氏のインタビューを掲載した(4月14日付)。彼女は現在、シンクタンク「ハドソン研究所」で上級研究員を務めている。
 シャドロー氏は、バイデン政権がウクライナへの軍事介入の選択肢を早々と否定するなど「しないこと」を明らかにする一方、抑止に重要な「能力と意思」を十分示さなかったことが、侵攻を抑止できなかった大きな原因との見方を示した。
 そのうえで彼女は、大統領の発言には一定の「曖昧さ」も不可欠だと強調した。

「少なくとも、敵側に『何をしないのか』を伝えてはならない」
「これはしない、あれはしない、ということで、選択肢を限定するだけでなく、こちらの境界線は何かを相手に明確に伝えてしまうことになる」

 米国では、「なぜロシアによるウクライナ全面侵攻を抑止できなかったのか」を検証する機運が高まっており、共和党系のみならず民主党系のメディアやシンクタンクからも様々な分析がなされている。(つづきは本誌にて!)
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