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岸田首相の増税論に異を唱えた高市早苗経済安保担当相
 財務省に躍らされる岸田文雄首相が「国民」に牙を剥(む)いた。

 12月8日、防衛費増に伴う増税を2027年度から1兆円分「増税で賄(まかな)う」と宣言して与党に検討を指示。3日後の11日には、これに呼応して首相の従兄にあたる宮澤洋一氏が会長を務める自民党税制調査会の非公式会議で2024年度から法人税、所得税、たばこ税を軸として増税を段階的に実施するとのさらなる強硬策を固めた。

 GDPの伸び率が世界157位(2021年)で、G7の中でもダントツ最下位の日本。1997年の消費増税以来、GDPは、アメリカが2.95倍、中国が20.78倍、韓国も3.16倍という中で、日本は1.09倍と低迷したまま。勤勉でまじめで、長時間労働にも耐える世界最高の日本の労働力をもってしても、なぜ4半世紀も低迷しているのか。

 すべてが財政・経済政策の失敗に起因することは言うまでもない。だが、財務省一家に生まれ、政権発足当初から「財務省に操られる」と囁(ささや)かれてきた岸田首相は、やはり財務省の掌で踊り、国民に牙を剝き始めたのである。この増税宣言には反発が噴出。高市早苗経済安保担当相が、

「企業が賃上げや投資をしたら、お金が回り、結果的に税収も増えます。再来年以降の防衛費財源なら、景況を見ながらじっくり考える時間はあります。賃上げマインドを冷やす発言を、このタイミングで発信された総理の真意が理解できません」

 と言えば、西村康稔経産相も、

「今年の税収は過去最高の68兆円。今後五年間は大胆な投資・賃上げに集中し、成長軌道に乗せて税収増につなげるべき時です。この五年間が経済再生のラストチャンス。大変革期の中、バブル期に匹敵する企業の投資・賃上げ意欲の高まりに水を差すべきではありません」

 と反対の狼煙(のろし)を挙げた。訪台中だった萩生田光一自民党政調会長も、

「〝台湾有事は日本有事であり日米同盟有事〟との安倍元総理の言葉を忘れてはなりません。防衛費GDP比2%以上を念頭に、5年以内に防衛力抜本強化を進めてまいります。財源は国債償還60年ルールを見直し、償還費をまわすことも検討に値します」

 と、増税論を一蹴した。
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日本の経済成長を止める財務省
 この演説の2日前の12月9日、自民党政調全体会議では、岸田首相の増税方針に対して「バカヤロー」という怒声が飛び交う事態になった。その場を仕切った萩生田政調会長は誰よりも良識派の議員たちの気持ちを「知っている」のである。発言者55人の内、実に40が増税反対を唱え、推進派は圧倒された。

 西村経産相が指摘するように今年の税収は過去最高の「68兆円」である。まさに今後5年間は大胆な投資・賃上げに集中し、成長軌道に乗せて税収増につなげる「経済再生のラストチャンス」なのだ。その最重要時期にこれに冷水を浴びせるのが岸田政権である。

 この3年間でコロナ対策に実に「94兆円」という信じ難い額の税金をぶち込んできた日本。悪名高い「空床補償」では、コロナ用に1日ベッドを空けておくだけでICU用ベットなら43万6000円、中等症用ベッドは21万1000円、一般病床の場合は7万4000円もの補助金が転がり込んでくるのである。笑いの止まらない医療機関は、赤字経営が黒字転化し、さらには有価証券保有額など、病院資産が圧倒的な額で蓄積され続けている。
 感染症上の類別がエボラ出血熱並みの「2類相当以上」を今も日本が維持しつづけるのは、季節性インフルエンザ並みの「5類相当」になれば、これらの補償が「消えてしまうから」にほかならない。こんな国は間違いなく滅びるだろう。

 財政を健全化するには、消費を喚起して景気を好転させ、税収を増やして経済規模を大きくしていくことが基本である。だが、財務官僚には〝税収を増やす〟というのは、そのまま〝増税する〟との発想しかない。消費に打撃を与え、経済規模を逆に縮小させることを選ぶのが彼らの頭脳構造なのである。
 外国為替資金特別会計(外為特会)の評価益(30兆円から40兆円程度)という〝埋蔵金〟活用もせず、故・安倍晋三氏提唱の「防衛建設国債」も使わず、またしても日本の経済成長を止める財務省。歳入庁創設による「財務省解体」が望まれる所以(ゆえん)がそこにある。この日本を滅ぼす政策を潰すことができないなら、自民党良識派の存在価値もない。
門田 隆将(かどた りゅうしょう)
1958年、高知県生まれ。作家、ジャーナリスト。著書に『なぜ君は絶望と闘えたのか』(新潮文庫)、『死の淵を見た男』(角川文庫)、『疫病2020』(産経新聞出版)など。『この命、義に捧ぐ』(角川文庫)で第19回山本七平賞を受賞。最新刊は『日中友好侵略史』(産経新聞出版)。

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