10年で元が取れる?
立派な新築住宅を買える建築主、つまりお金持ちは元が取れるようになっている。
しかし、それを支えるのは、その他大勢の一般国民だ。説明しよう。
経済産業省の資料だと、発電コストは以下のように試算されている。
一般国民が100万円を負担する
そして、太陽光発電の設備を建設しても、太陽が照っていない時のためには火力発電の設備はやはり必要だから、太陽光発電は必然的に二重投資になる。
そうすると、太陽光発電の価値は、せいぜい火力発電の燃料を焚き減らすぐらいしかない。
図3をみると、石炭火力とLNG火力の燃料費は平均してだいたい5円程度だ。これが太陽光発電のお陰で実際に日本国民が受ける恩恵となる。
国道交通省の試算(図2)だと、PVシステムを利用する建築主は、キロワットアワー当たりで、
①自家消費分の削減で24.76円
②売電分で10年間は21円
③その後は8円を受け取ること
になっている。
これと5円との差は、ことごとく国民全体の負担になる。順に19.76円、16円、3円だ。
これを15年間で合計すると幾らになるか? 下表のように計算すると、なんと、112万円!
「東京に家を買える人が、一般国民から100万円以上を受け取って太陽光発電を付け、元を取る」というのが、「太陽光発電義務化」の正体だ。
なお以上に加えて、送電線も補強しなければならないし、大量に導入すると、太陽が照った時に一斉に発電して、余った電気は捨てることになる。このときは事業用のメガソーラーの電気を捨てることになるだろう。また火力発電は太陽の気まぐれに合わせてオンオフを繰り返すことになって、傷(いた)みやすくなるし、発電効率も下がる。これらの費用負担も、結局はみな一般国民が負担する。
深刻な人権問題を抱えている太陽光パネル
太陽光パネルは、新疆(しんきょう)ウイグル産が世界の生産の半分を占めているなど、深刻な人権問題も抱えている。
このように見てくると、太陽光パネルの設置の義務化には、到底、賛同できない。
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹。温暖化問題およびエネルギー政策を専門とする。産経新聞・『正論』レギュラー寄稿者。著書に『脱炭素は嘘だらけ』(産経新聞出版)、『15歳からの地球温暖化』(扶桑社)、『地球温暖化のファクトフルネス』『脱炭素のファクトフルネス』(共にアマゾン他)等。