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バイデン政権を厳しく批判しているマルコ・ルビオ上院議員

バイデンの2つの大失敗

 元大統領候補のテッド・クルーズ上院議員は、バイデンの大失敗は2つあったとする。

 1つはアフガニスタンからの無様な撤退であり、これが「アメリカ弱し」との印象を世界に与えたこと。

 もう1つは、前回書いたように、ノルドストリーム2ガスパイプラインにトランプ政権が課していた経済制裁を解除してしまったことだ。

 これによってノルドストリーム2の工事が進み、すでに完成して、いつでも使用できる状態になっている。

 これはロシアによる欧州への支配力を大いに高めることになった。

 ロシアのウクライナ侵攻後、欧州は遅まきながら再び制裁をかけたが、この制裁が長続きするとプーチンは思っていないだろう、クルーズは言う。

 というのは、どうせ欧州はガスを必要とするから、ほとぼりが冷めれば、制裁を解除すると読んでいるのではないか、ということだ。クルーズはそうさせないために、米国議会で立法して、制裁を解除できないようにすべきだ、としている。
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テッド・クルーズ インタビュー動画

愚かな脱炭素を止めるべき

 もう1人の有力者、元大統領候補のマルコ・ルビオ上院議員も、同じくアフガニスタンとノルドストリーム2がバイデンの2大失敗だとした。

 その上で、ロシアへのガス依存を高めてしまい、ロシアに力を持たせてしまったのは、脱炭素政策のためだと糾弾している。

 ルビオは、「最大の対ロシア制裁は、いますぐ愚かなグリーンディールを止めると宣言することだ」と述べている。
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マルコ・ルビオ上院議員インタビュー動画
 アメリカは世界一の産油国・産ガス国であり、石炭埋蔵量は世界一だ。採掘技術も世界最高水準にある。アメリカが本気で資源を採掘し世界に供給すれば、エネルギー価格は大いに下がることは明らかだ。

 ソ連崩壊後のロシアはろくに産業が育たず、もっぱらエネルギーの輸出に頼って外貨を獲得し、財政を支えてきた。

 図でロシアの品目別輸出額を見ると、石油・ガスなどが圧倒的に多いことが分かる(茶色の箇所)。
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ロシアの品目別輸出額 (2019年)
 世界的に石油・ガスの価格が下がれば、ロシアにとって大きな経済的痛手になるはずだ。

 だが、欧米政府は脱炭素にうつつを抜かし、石油・ガスの採掘を環境規制によって妨げ、石油・ガス企業に圧力をかけて事業や権益を放棄させてきた。結果としてOPECとロシアが世界の石油・ガス市場を支配するようになって、今日の石油・ガス価格の高騰を招いている。

「再生可能エネルギーを大量導入すれば化石燃料は不要になり、価格はタダ同然になる」などという夢物語はもうたくさんだ。

 今後ウクライナ情勢がどのように展開するかは予断できないが、米国の脱炭素政策が大幅に見直しされることは間違いなさそうだ。
杉山 大志(すぎやま たいし/キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹。温暖化問題およびエネルギー政策を専門とする。産経新聞・『正論』レギュラー寄稿者。著書に『脱炭素は嘘だらけ』(産経新聞出版)、『15歳からの地球温暖化』(扶桑社)、『地球温暖化のファクトフルネス』『脱炭素のファクトフルネス』(共にアマゾン他)等。

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