【杉山大志】≪クリーンコール技術≫を世界で活用すべきだ

【杉山大志】≪クリーンコール技術≫を世界で活用すべきだ

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世界と日本の石炭活用状況

 以前の記事で、中国と日本の石炭消費量を比較して、日本が自滅的に石炭を減らし、安価で安定したエネルギーを失うことが如何に愚かしいかを説明した。

 今回は世界と日本の石炭のデータを比較してみよう。元データはOurWorldInDataによる。

 下記の図1は石炭消費量。中国、米国、インド、日本、その他の世界、のシェアを図示している。
図1 世界の石炭消費量

図1 世界の石炭消費量

※)標準炭1トンとはエネルギーの単位で、29.31ギガジュールである)

 中国が圧倒的に多いのは以前述べたとおり。米国は天然ガスが普及した結果として石炭消費量は従前に比べると半減したが、もともとが多かったので、まだ日本の倍以上ある。インドは既に日本の3倍以上であり、これから伸びてゆく。日本は世界の3.1%に過ぎない!

 次に生産量を見てみよう。
図2 世界の石炭生産量

図2 世界の石炭生産量

 インドは米国とだいたい同じになっている。図1と図2を比べると、米国は輸出国、インドは輸入国であることが分かる。生産量から消費量を引くと米国は0.489-0.388=0.101(標準炭10億トン)で、日本の消費量0.168(標準炭10億トン)の60%に相当する結構な量を輸出している。オバマ政権のころから米国民主党は日本に石炭火力発電を減らすようにと説教してきたが、その前にこの輸出を自ら止めるという話は聞いたことが無いのはどうもご都合主義だ。

 日本がこのグラフに無いのは書き忘れではない。生産量が少なすぎて事実上ゼロであり、グラフの線の太さより細くて、図示できなかったのだ!

 最後に埋蔵量も見てみよう。
図3 世界の石炭埋蔵量

図3 世界の石炭埋蔵量

 石炭はとにかく埋蔵量が多く、世界全体では年間消費量の約200年分もある。中でも米国が世界一である。中国とインドも決して少ない訳ではなく、枯渇する心配など無い。日本はまたもや線の太さ以下なので図示できない!

≪クリーンコール技術≫を積極活用せよ

gettyimages (5276)

石炭の埋蔵量はかなり多い
 さて以上のデータから、どのような示唆が得られるか?

 日本は世界の石炭の僅か3%を消費しているに過ぎない。CO2を理由に日本が経済や安全保障を犠牲にしてまで石炭を止めるというのは愚かしいことだ。もしCO2を問題視するならば、別の方法がある。

 日本は石炭の省エネ技術(=高効率燃焼技術)やCCS技術(石炭からエネルギーだけを取り出しCO2は煙突から回収して地中に貯留する技術。Carbon Capture and Storageの略)などの「クリーンコール技術」は世界でも指折りの高いレベルにある。生産・埋蔵大国のCO2を削減するために、この技術を提供するとよい。もちろん応分の対価は貰おう。

 クリーンコール技術を本当に必要とするのは石炭の生産国であり、埋蔵量の多い国である。そうしないと、CO2を気にする限り、折角の石炭が宝の持ち腐れになってしまうからだ。 クリーンコール技術の開発に資金や場所を提供するのはこれら生産大国や埋蔵大国であるべきだ。

 日本は持てる技術を活用し、より上手く交渉すべきであろう。
杉山 大志(すぎやま たいし/キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)
温暖化問題およびエネルギー政策を専門とする。
国連気候変動政府間パネル(IPCC)、産業構造審議会、省エネ基準部会等の委員を歴任。産経新聞・『正論』レギュラー寄稿者。著書「地球温暖化のファクトフルネス」を発売中。電子版99円、書籍版2228円。

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