「トランプが社会を分断した」が米主流メディアにおける定番の主張だった。しかし実態を見れば、トランプ大統領の言動を常に曲解し、社会の分断を煽ってきたのは何よりメディア自身である。
日本において保守とリベラルの間の不信を増大させたのが、「安倍一派」ではなく朝日新聞以下の反安倍メディアである事情とよく似ている。
「ニューヨーク・タイムズはアメリカの朝日新聞」という認識は、日本で随分定着した。一方、ワシントン・ポストとなると、いまだ、いわゆるクオリティ・ペーパー(信頼できる高級新聞)というイメージを抱いている人が多いのではないか。
だがトランプ報道に関する限り、同紙の党派性は異様なほどだった。アメリカの日刊ゲンダイ、と評したいくらいである。「あのトランプ」が大統領に就くことを受け入れられず、何とか引きずり降ろそうと報道人の矩をこえた「トランプ錯乱症候群」を最もよく体現した老舗メディアだったと言える。
もっとも、NYタイムズやWポストは、保守派の政治家や言論人の寄稿文も、時折だが載せる。その点、朝日ほど狭隘ではない。米主流メディアのわずかに残された矜持と言えるだろう。
数少ない保守系大手メディアとしては、ケーブルテレビのFOXニュース、新聞のウォールストリート・ジャーナル、ニューヨーク・ポストがある。いずれもメディア王ルパート・マードック率いるニューズ・コーポレーションの傘下にある。
しかしマードック(1931年生)は高齢で、後継者と目される人物群にはリベラル派も多い。数年内に、アメリカの大手新聞、テレビは軒並み民主党応援団という事態になることもあり得る。
今回の大統領選挙では、主流メディアは従来の民主党応援団の域を超え、バイデン近衛兵の様相すら呈した。
選挙戦の終盤、ニューヨーク・ポストが、バイデン親子の権力濫用や中国企業との不透明な関係を窺わせる新証拠(息子ハンターのパソコン・データや知人によるメールの提供)をスクープしたが、米主流メディアは、一貫して見て見ぬふりを決め込んだ。
これがトランプ親子にまつわる話なら、メディアは「歴史的なスキャンダル」として連日騒ぎ立て、トランプや周囲の人物に憎悪に満ちた質問や非難を浴びせ続けただろう。
主流メディアはもはや「公正中立な報道が使命」といった衣装をかなぐり捨てたかに見える。彼らにとっては進歩派的政策の推進こそが使命であり、また、民主党政権誕生の暁に、ホワイトハウスや各省庁の広報関係幹部職などに登用されることを念頭に行動する者も少なくない。
短期間であれ政府入りできれば、有力メディアの元記者に加えて元政府高官の肩書が付き、その人脈に期待する大企業やシンクタンクから高給で声が掛かる。
すなわち、彼らの報道姿勢には、民主党政権誕生を睨んだ「就職活動」の側面がある。なりふり構わずトランプを叩き、バイデンを守護できる猛者であるとアピールすることが重要なのである。
一部激戦州でなお開票作業が続いていた11月5日、アメリカの主要テレビネットワークは、トランプの会見の中継を途中で打ち切る異例の行動に出た。映像付きでその模様を伝えたNHKニュースから引いておこう。
《このうちNBCテレビの司会者は番組の中で、「トランプ大統領が不正な投票が行われているなどと誤った主張をしているためです。こうした主張を裏付ける証拠はありません」と説明しました》
この場合の大統領発言は、貴重な歴史資料である。判断は視聴者に委ね正確な報道に徹すべきメディアが、自らの声をかぶせて視聴者に聞こえないようにするとは余りに傲慢である。批判的コメントを加えたければ、大統領会見が終わってから行えばよいだろう。
トランプの虚言に煽られた保守勢力が暴動を起こしかねないと言いたいのかも知れないが、それこそ、トランプ時代を通じてメディアが流してきた虚構である。
主流メディアが、バイデンの勝利確実と一斉に報じた11月7日以降、保守派は何ら組織的暴力行為に及んでいない。せいぜい、不正な票を排除すべく法廷闘争を続けよと気勢を上げる程度だった。
逆にトランプ当選というニュースが流れていれば、各地で極左が先導する暴動が起こり、略奪、放火が続いたのではないか。
日本のメディアも、米主流メディアを受け売りする体質を脱しない限り、「公正中立なアメリカ報道」の実現は夢のまた夢である。
日本において保守とリベラルの間の不信を増大させたのが、「安倍一派」ではなく朝日新聞以下の反安倍メディアである事情とよく似ている。
「ニューヨーク・タイムズはアメリカの朝日新聞」という認識は、日本で随分定着した。一方、ワシントン・ポストとなると、いまだ、いわゆるクオリティ・ペーパー(信頼できる高級新聞)というイメージを抱いている人が多いのではないか。
だがトランプ報道に関する限り、同紙の党派性は異様なほどだった。アメリカの日刊ゲンダイ、と評したいくらいである。「あのトランプ」が大統領に就くことを受け入れられず、何とか引きずり降ろそうと報道人の矩をこえた「トランプ錯乱症候群」を最もよく体現した老舗メディアだったと言える。
もっとも、NYタイムズやWポストは、保守派の政治家や言論人の寄稿文も、時折だが載せる。その点、朝日ほど狭隘ではない。米主流メディアのわずかに残された矜持と言えるだろう。
数少ない保守系大手メディアとしては、ケーブルテレビのFOXニュース、新聞のウォールストリート・ジャーナル、ニューヨーク・ポストがある。いずれもメディア王ルパート・マードック率いるニューズ・コーポレーションの傘下にある。
しかしマードック(1931年生)は高齢で、後継者と目される人物群にはリベラル派も多い。数年内に、アメリカの大手新聞、テレビは軒並み民主党応援団という事態になることもあり得る。
今回の大統領選挙では、主流メディアは従来の民主党応援団の域を超え、バイデン近衛兵の様相すら呈した。
選挙戦の終盤、ニューヨーク・ポストが、バイデン親子の権力濫用や中国企業との不透明な関係を窺わせる新証拠(息子ハンターのパソコン・データや知人によるメールの提供)をスクープしたが、米主流メディアは、一貫して見て見ぬふりを決め込んだ。
これがトランプ親子にまつわる話なら、メディアは「歴史的なスキャンダル」として連日騒ぎ立て、トランプや周囲の人物に憎悪に満ちた質問や非難を浴びせ続けただろう。
主流メディアはもはや「公正中立な報道が使命」といった衣装をかなぐり捨てたかに見える。彼らにとっては進歩派的政策の推進こそが使命であり、また、民主党政権誕生の暁に、ホワイトハウスや各省庁の広報関係幹部職などに登用されることを念頭に行動する者も少なくない。
短期間であれ政府入りできれば、有力メディアの元記者に加えて元政府高官の肩書が付き、その人脈に期待する大企業やシンクタンクから高給で声が掛かる。
すなわち、彼らの報道姿勢には、民主党政権誕生を睨んだ「就職活動」の側面がある。なりふり構わずトランプを叩き、バイデンを守護できる猛者であるとアピールすることが重要なのである。
一部激戦州でなお開票作業が続いていた11月5日、アメリカの主要テレビネットワークは、トランプの会見の中継を途中で打ち切る異例の行動に出た。映像付きでその模様を伝えたNHKニュースから引いておこう。
《このうちNBCテレビの司会者は番組の中で、「トランプ大統領が不正な投票が行われているなどと誤った主張をしているためです。こうした主張を裏付ける証拠はありません」と説明しました》
この場合の大統領発言は、貴重な歴史資料である。判断は視聴者に委ね正確な報道に徹すべきメディアが、自らの声をかぶせて視聴者に聞こえないようにするとは余りに傲慢である。批判的コメントを加えたければ、大統領会見が終わってから行えばよいだろう。
トランプの虚言に煽られた保守勢力が暴動を起こしかねないと言いたいのかも知れないが、それこそ、トランプ時代を通じてメディアが流してきた虚構である。
主流メディアが、バイデンの勝利確実と一斉に報じた11月7日以降、保守派は何ら組織的暴力行為に及んでいない。せいぜい、不正な票を排除すべく法廷闘争を続けよと気勢を上げる程度だった。
逆にトランプ当選というニュースが流れていれば、各地で極左が先導する暴動が起こり、略奪、放火が続いたのではないか。
日本のメディアも、米主流メディアを受け売りする体質を脱しない限り、「公正中立なアメリカ報道」の実現は夢のまた夢である。
島田洋一(しまだ よういち)
1957年、大阪府生まれ。福井県立大学教授(国際政治学)。国家基本問題研究所企画委員、拉致被害者を「救う会」全国協議会副会長。
1957年、大阪府生まれ。福井県立大学教授(国際政治学)。国家基本問題研究所企画委員、拉致被害者を「救う会」全国協議会副会長。
あふぉ 2020/12/2 17:12
アメリカのメディアは偏向することが許されていたはず
それでもここまで一方向に全部が振れるとt明確に力(汚れた資金や約束された爛れた未来)が働いているんだと確信する
日本はメディアの偏向は認められていないのでいい加減に罰則適用し入れ替えを図るべき
既得権益化して一世紀経過する前に是非ともそうすべきだ