菅総理に無視された韓国の「ラブコール」

菅総理に無視された韓国の「ラブコール」

甘すぎる韓国の期待

 菅総理が誕生したことにより日韓関係が改善するという見方を河村建夫日韓議員連盟幹事長は示した。河村氏は菅内閣誕生によって「私たち(日韓議員連盟に所属する国会議員)が関係改善に向けて様々な行動をすることが非常に容易になるだろう」「菅義偉政権の誕生で日韓関係改善に弾みがつくだろう」と述べたのだ。

 こうした河村氏の発言に期待を寄せたかどうかはわからないが、韓国の文在寅大統領は菅総理の就任を祝う書簡の中で「韓日関係をさらに発展させるためにともに努力していこう」と記した。日本と対話する準備は韓国側には整っており、日本側の積極的な呼応を期待する旨を、韓国の報道官は付け加えた。

 だがこうした韓国側のラブコールは菅総理には完全に無視されたようだ。就任後初の記者会見において、アメリカ・中国・ロシア・北朝鮮についてはそれぞれ言及しながら、韓国については菅総理は一切触れなかった。

 そもそも菅氏は自民党総裁選挙において、いわゆる元「徴用工」問題で「日韓請求権協定が日韓関係の基本」であり、「国際法違反に対して徹底して対応していく」との考えを改めて示し、この点での韓国に対する妥協がないことを示している。韓国側がこの点での日本側の譲歩を前提としている限り、韓国とは話し合いが持てないというのが菅総理の基本姿勢である。

 菅総理がこうした原則的な立場を決して崩そうとしないことには理由がある。2015年の日韓慰安婦合意は、交渉が行き詰まるたびに水面下で菅官房長官(当時)と韓国の李丙琪大統領秘書室長(当時)とがホットラインで何度もやりとりをして打開してきたものだ。そうした苦労の結果として生み出され、日韓両国において「最終的かつ不可逆的な解決」を確認した日韓慰安婦合意を、朴槿惠政権を引き継いだ文政権は事実上破棄した。さらにこの合意に菅氏とともに尽力した李丙琪氏を韓国政府は逮捕までしているのだから、菅氏が文政権のあり方に怒りを持っているのは当然である。

文政権との相容れない姿勢

 さて、菅氏については官房長官として主として内政に尽力してきたために、外交は疎いという見方がある。それゆえに、外交のグリップを他の人に任せる割合が大きくなり、二階幹事長などの影響力が拡大して、方針が大きく変わる可能性もあるのだという。だが、それはあまりに表面的な見方であろう。

 菅氏は師と仰ぐ梶山静六氏から「官僚は自分たちの考えがあり、政治家に説明する時必ずそれを入れてくる。お前なんかすぐに騙される」と言われたことをきっかけとして、毎日朝食会や夕食会を通じて幅広くいろんな立場の人たちから意見を聞いてきた。その中には外国の要人も数多く、李丙琪氏との接点も氏が駐日大使をしていた時にこうした機会を通じて作られたものだ。そしてそうであるからこそ、日韓慰安婦合意の裏方を菅氏は務めることができた。菅氏が外交に疎く、対韓政策で安倍政権時代と違った動きになる可能性があるというのは、ありえない。

 菅氏は対北朝鮮外交においても北朝鮮にすり寄る文政権とは全く相容れない。悪名高い北朝鮮の万景峰号の日本寄港を停止させるために「特定船舶の入港の禁止に関する特別措置法」を議員立法で提出して成立させたのは、菅氏の偉大な功績である。朝鮮総連系の企業家が北朝鮮に送金するのを止めさせようと、「外国為替および外国貿易法」の改正の先頭に立って動いたのも菅氏である。

 菅氏の厳しい対北朝鮮政策に揺るぎない。菅氏が対韓政策で安倍路線から外れていくというのは杞憂(きゆう)だと断言できるだろう。
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朝香 豊(あさか ゆたか)
1964年、愛知県出身。私立東海中学、東海高校を経て、早稲田大学法学部卒。
日本のバブル崩壊とサブプライム危機・リーマンショックを事前に予測、的中させた。
現在は世界に誇れる日本を後の世代に引き渡すために、日本再興計画を立案する「日本再興プランナー」として活動。
日本国内であまり紹介されていないニュースの紹介&分析で評価の高いブログ・「日本再興ニュース」( https://nippon-saikou.com )の運営を中心に、各種SNSからも情報発信を行っている。
近著に『左翼を心の底から懺悔させる本』(取り扱いはアマゾンのみ)。

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