小泉進次郎氏が環境大臣を退任した直後から、「レジ袋有料化を廃止しろ」という声が高まっているという。
 ※参考記事

 『WiLL』11月号(「菅総理は鬼神のごとき仕事師だった」)やインターネットテレビWiLL増刊号(「マスコミが絶対に報じない菅政権の偉業」)で述べたが、菅首相は仕事師であり、菅政権は鬼神のごとく数多くの仕事を成し遂げている。新型コロナウイルス禍と東京五輪という2つの大案件を抱えながらであったことを考えると、これまででも屈指の「政権実現政権」であったと言える。
小泉進次郎・前環境相が残してくれた"教訓"

小泉進次郎・前環境相が残してくれた"教訓"

菅政権の評価を下げた進次郎氏

 だが、それほどの政策を実現していながら、世間の評価は不思議なほど低い。

 その理由として、新型コロナウイルスの変異株で感染者が急増したことに加え、政策の多くが大マスコミが嫌う「安倍政権の継承」であったこと(主に左派からの批判)、アイヌ新法(法律自体は安倍政権で成立している)を推し進めたこと(こちらは主に保守派からの批判)など、左右双方から嫌われてしまったことが上げられるだろう。
 そして、もう1つの理由として、小泉環境大臣の負の効果があったのではないかというのが私の意見だ。

 政治家・菅義偉はたたき上げの仕事師だけに部下にも厳しいと言われるが、なぜか小泉進次郎氏には大甘だった。それは同じ神奈川選出というのもあるだろうし、もしかしたら政治信条も近かったのかもしれない。どちらにしても私には過大評価としか思えなかった。

 だが、菅首相の愛情は、それまでマスコミが共同でひた隠しにしてきた小泉氏の政治家としての「無能さ」をさらけ出すことにつながってしまう。

 小泉大臣は「レジ袋有料化」のようにさほどの環境への効果は見られないわりに国民の日常に不便強いる政策や、「温室効果ガス46%削減目標」のように日本の経済成長の足かせになる政策を決めた。その後も空気も読まずに、太陽光パネル設置の義務化やプラスチックスプーンの有料化まで嬉々として開陳した。
小泉進次郎・前環境相が残してくれた"教訓"

小泉進次郎・前環境相が残してくれた"教訓"

なぜか小泉氏には大甘だった菅前総理

悪い意味での"日本人離れ"

 小泉進次郎という政治家は、価値基準が国民にないのではないか。少なくとも国民目線からは見ているものがほど遠いといっていい。実際、環境意識の高いアメリカ人学生のようなことを毎回平気で言うのである。最近はツイートまで英語で発信するようになっており、本人も「脱日本人」を果たそうとしているかのようだ。

 もしかしたら小泉氏は日本が嫌いなのだろうか。

 小泉氏について多くのことが広く知られるきっかけとなったのが、2019年9月、ニューヨークで開かれた国連気候行動サミットでの「セクシー発言」だ。外国人記者もいる中で「皆さんは環境問題を退屈だと思うかもしれないが、一緒にセクシーにやろうぜ」などと、日本の大臣が公式で述べるにはふさわしくないことを口にした。

 このようなことも臆面も無くテレビカメラの前に言えるのが、小泉進次郎という政治家の(悪い意味で)日本人離れしたところだろう。
 少し斟酌しなければいけないのは、元が英語だったことだ。こういう言葉は日本語に直すと、恥ずかしさが倍加する。いや、知ってて訳している私が意地悪なだけなんだけれども、それを斟酌してもやっぱり恥ずかしいものは恥ずかしい。ツイートを英語にしてから小泉氏への批判がずいぶん減ったが、小泉氏が私たちの知らないところで、どれだけ恥ずかしいことを英語で発信しているのかわかったものではない。

 大臣になるまで、小泉氏は「期待のホープ」として奔放さを許されてきた。いや、テレビが気を遣って「かっこいい進次郎」を切り取りで演出していたと言ったほうが現実に近かったもしれない。要職に就く前はテレビカメラの前で一発かっこいいことをかましているだけでよかったので、ぼろが出なかったのだ。
小泉進次郎・前環境相が残してくれた"教訓"

小泉進次郎・前環境相が残してくれた"教訓"

"ポエマー"としての地位は確立した?
 だが、人気大臣として複数のカメラに追いかけられると、それまでごまかしてきた「小泉進次郎の底の浅さ」が一気に吹き出すことになった。

 「セクシー発言」や「46という数字が浮かんできた」という珍・謎発言の連発で「ポエマー」というありがたくないアダ名まで付けられ、ついにはコロナ禍で鬱屈した国民の格好のおもちゃにすらなってしまった。とすれば、もはや多くの国民にとって小泉進次郎氏は政治家ではなくエンターテナーなのかもしれない。

 ただ、私たちが楽しんだぶんの代償はあまりにも大きかった。そして、払った代償の大きさを見て、「小泉進次郎にぼったくられた」と気づいてももう遅いのだ。

 だが、私たちはそれで落ち込む必要はない。そんなときは、大リーグの大谷翔平選手のニュースを見よう。日本にはこの程度の若い政治家が期待のホープなのかと絶望的な気持ち成ったら、大谷翔平を見て「日本の若者はすごい」と認識を改めて、精神のバランスをとろうではないか。

 大谷翔平は一例に過ぎない。日本には他にもすばらしい若者がたくさんいる。それなのに、マスコミのプロパガンダに乗ってなぜ小泉進次郎を「ホープ」などと期待する必要などない。私たち自身が人材をちゃんと選んでいけば、政治にも大谷翔平が現れるかもしれない。日本の未来は明るいのだ。
白川 司(しらかわ つかさ)
評論家・翻訳家。幅広いフィールドで活躍し、海外メディアや論文などの情報を駆使した国際情勢の分析に定評がある。また、foomii配信のメルマガ「マスコミに騙されないための国際政治入門」が好評を博している。

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