毎日新聞の報道によると、内閣支持率は26%まで下がり、最低を更新した。大手メディアの言うことは信頼しないほうがいい場合が圧倒的に多いのだが、支持率低下の件に関しては、概ね間違っていないと感じている。私自身も初期のコロナ対策を評価していたものの、時短命令や酒提供の禁止といった禁酒法らしき飲食店イジメ、また医療整備よりも個人の行動制限に拘る姿勢を受けて、この投稿やSNS等で何回か不支持を表明している。

 しかし、問題の本質は何なのだろうか?
ナザレンコ・アンドリー:今こそ自民党は「保守」の源流に...

ナザレンコ・アンドリー:今こそ自民党は「保守」の源流に立ち返れ

日々悩ましい!

「当選」できればOKという議員たち

 私は、最大の原因が「支持のウイング(幅)を広げる戦略」の失敗ではないかと考えている。自民党の悪いところは、選挙に強いため、確固たる政治信条や国家観が薄いにもかかわらず政治家になりたい者がたくさん入ってくること。その上、立法府の機関である国会に属しているはずなのに、実際に法案作成なんかに関わったことなく、言われるがままに投票するだけの「お荷物議員」が多い。彼らの目的は日本をよくすることではなく、あくまでも議員でいることなので、決断力が足りず、必要だが反発を招きやすい政策(例:憲法改正)を避けたがる傾向がみられる。決断力が最も求められる今のような危機的な時期での頼りなさも、彼らの意思の弱さゆえではないかと思う。

 また、本当は思想がだいぶ左に偏っているけど、無力な野党に入っても何も変えられないので、自民党の方針に賛同をするフリしながらも日本の左傾化につながる案(LGBT法案や夫婦別姓など)を通そうとする「工作員では?」と思われるような人もいる。

 彼らは「リベラル寄りの人々の支持も得る必要ある」ともっともらしい言い訳を付けているが、結局曖昧な立場のせいでリベラル層の支持を得られないまま、保守層の支持を失っている。それでも選挙に勝っているのは、保守層の票の受け皿になり得る右寄りの政党が他にないからと、特定野党がだらしなすぎて民主党政権の再来が恐ろしすぎるからだろう。
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ナザレンコ・アンドリー:今こそ自民党は「保守」の源流に立ち返れ

「再来」が恐ろしすぎると思われている人たち

政治に「八方美人」は許されない

 コロナ対策でも「八方美人」的な態度が見受けられる。今は日本の世論が見事に二極化している。「コロナは風邪」、「ワクチン接種が進んだおかげで死亡率がだいぶ下がったから感染自体を恐れるべきではない」、「経済抑制はコロナより害が大きい」と考えている人もいれば、「ロックダウンが必要」、「感染拡大を抑えることが最優先課題」、「個人の行動を規制できる法整備が必要」と考えている人もいる。

 正反対の立場であるが故に、どちらも納得がいく政策を取ることは不可能。片方に寄るともう片方から強い反発を食らう。こういう時にこそ政権がリーダーシップを発揮し、どの路線を進むかはっきり決めるべきだろう。

 が、政府の対応には一貫性が全く見られない。経済重視派が歓迎するGoToキャンペーンを行なったり、それを中止し要請に応じない飲食店に過料を課す法律を通したり、ロックダウンは日本でなじまないと言った直後に緊急事態宣言の対象地域を拡大させたり…。

 慎重で、どっちの派にも寄り添いたい意図があるだろうけど、スタンスをはっきりさせないからこそ中途半端感が強く、どちらの派からも嫌われてしまう結果になっている。党内の政治的思想のバラツキが大きすぎて、中々まとまらないことも、支持率に悪影響を及ぼしているのだろう。
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ナザレンコ・アンドリー:今こそ自民党は「保守」の源流に立ち返れ

強力で一貫した意思が必要だ―

バッシングを恐れず、「保守」に立ち返れ

 だが、ここに大事なポイントがある。内閣支持率が下がったとはいえ、自民党の支持率は未だに野党の何倍もあるし、スキャンダルを追及する能力しかない左派政党の支持率が上がっているわけではない。

 つまり世論が反自民的勢力の主張に賛同しているのではなく、自民党は安倍氏が総理だった時代の自民党らしさを失ってきているから不支持に転向しているということだ。よって、支持率回復へのキーとなるのは、野党に耳を向けることではなく、マスコミや極左によるバッシングを恐れずに一貫した路線を維持すること。また、自民党が保守政党だからこそ支持されてきた事実を思い出し、保守離れをもたらす左派系議員を抑制すること。

 選挙が近づいているので、早くそれに気づき、より強い保守色とリーダーシップを出さないと、負けることがないとしても、与党の使命である憲法改正の発議に必要不可欠の3分の2の議席を確保することが難しくなるのは間違いないだろう。
ナザレンコ・アンドリー
1995年、ウクライナ東部のハリコフ市生まれ。ハリコフ・ラヂオ・エンジニアリング高等専門学校の「コンピューター・システムとネットワーク・メンテナンス学部」で準学士学位取得。2013年11月~14年2月、首都キエフと出身地のハリコフ市で、「新欧米側学生集団による国民運動に参加。2014年3~7月、家族とともにウクライナ軍をサポートするためのボランティア活動に参加。同年8月に来日。日本語学校を経て、大学で経営学を学ぶ。現在は政治評論家、外交評論家として活躍中。ウクライナ語、ロシア語のほか英語と日本語にも堪能。著書に『自由を守る戦い―日本よ、ウクライナの轍を踏むな!』(明成社)がある。

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