安積明子:菅総理を追いこんだスタッフの「無能」

安積明子:菅総理を追いこんだスタッフの「無能」

 菅義偉首相が9月3日、次期自民党総裁選への不出馬を表明しました。投開票日の9月29日には新しい総裁が選任され、10月には首班指名が行われて新しい政権が発足。菅政権は1年で終わることになります。

 昨年9月の発足時では内閣支持率は極めて高く、「4年間はやるのではないか」と言われていた菅政権。菅首相もすっかりその気だったようですが、あれよあれよという間に支持率は半分以下になってしまいました。自民党支持率がもっと低ければ、もっと早く潰れた可能性も否定できません。

 官房長官時代には「安定の菅氏」などと言われ、決して評価は低くなかったはずなのに、一体どこで狂ってしまったのか。それは菅首相が権力の動かし方を理解していなかったからではないでしょうか。

 横浜市議時代には「影の市長」と言われるほど権勢をふるった菅首相ですが、官房長官時代にも内閣人事局を使って省庁の首根っこを押さえ、官僚をひれ伏させていました。しかし国政はそれだけでは務まりません。

 安倍政権下の官邸では菅長官の他に今井尚哉秘書官(後に補佐官)がいて、権力構造はいわゆる分権型でした。菅政権になると権力をトップに集中させるシステムになったわけですが、菅首相は総理大臣就任後、「情報が上がらない」とぼやいていたそうです。ということは安倍政権時の半分も、上に情報が入っていなかったことになります。
安積明子:菅総理を追いこんだスタッフの「無能」

安積明子:菅総理を追いこんだスタッフの「無能」

日本全国を駆け巡った「菅総理退任」報道
 原因として考えられるのは、スタッフの不足です。ここでいう「不足」とは、人数ではなく能力です。菅首相自身も決してオールマイティというわけではないので、これでは政治がまわるはずがありません。

 そもそも「無投票で総裁選を乗り切ろう」なんて考えるのが無理過ぎです。ましてや「解散を打って総裁選を潰そう」なんて悪手もいいところ。8月31日に毎日新聞が「首相、9月中旬解散意向」とスクープしましたが、「解散」の文字が表に出た瞬間にその可能性が消えるのは永田町の常識。反菅サイドの工作が功を奏したわけです。菅首相が「悪あがき」をしているイメージを作って政治生命に致命傷を与え、その結果総裁選を諦めさせる―。もし菅首相に優秀なブレーンがいれば、後3年間は総理大臣を務めることができたはずでしたのにね。

 なお菅政権を支えるべき職務の某氏は、まだ菅首相がジタバタしていた8月に「この政権は間もなく終わるから、テレビのコメンテーターをやりたいので宜しく!」とリクルート活動をしていたそうです。しかしそういう側近しかいなかったために、菅政権は短命となる宿命を背負ったのでしょう。

 総裁選ではすでに出馬表明している岸田文雄前政調会長と高市早苗前総務大臣の他、河野太郎ワクチン担当大臣や野田聖子幹事長代行が意欲を見せ、石破茂元幹事長も準備中とか。それにしても10月21日に任期満了を迎える衆議院の選挙を前にして、この騒動は自民党の良い宣伝になりましたね。
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安積 明子(あづみ あきこ):ジャーナリスト
兵庫県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。
1994年、国会議員政策担当秘書資格試験合格。参議院議員の政策担当秘書として勤務の後、執筆活動を開始。夕刊フジ、Yahoo!ニュースなど多くの媒体で精力的に記事を執筆している。

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