【朝香 豊】森会長後任問題~「女性前提」の後任選びが国...

【朝香 豊】森会長後任問題~「女性前提」の後任選びが国益を損なう

後任の有力候補と言われる橋本聖子・東京五輪担当大臣

メディアの呆れたダブスタ

 森喜朗元総理の東京五輪・パラリンピック組織委員会会長辞任が決まって以降、後任選びを含めた世論や東京五輪へ流れがどんどんおかしな方向に進んでいるように感じる。

 以前に私のブログで指摘したように、森発言は決して褒められるような発言ではないとは思っているが、それでも森氏の真意は女性蔑視ではなかったのだというのは、きちんと確認しておくべきだと思う。

 森氏はまだまだ経験に裏打ちされた能力の高い女性が限られている現状を念頭に発言を行った。生まれながらに女性に能力がないと言ったわけではなく、今回の「問題発言」においてもむしろ女性は能力が高いと評価もしている。これまでの歴史的経緯の中で、様々な社会経験を経た女性がまだまだ少ないから、一律に40%以上の女性比率を求めることは、現段階ではなかなか難しいのではないかと述べたにすぎない。

 非行少年や不良少女に対してでさえ、寄り添う姿勢の大切さを説き、冷静な話し合いの必要性を認めているはずのマスコミが、これほどまでにも森いじめ一色になっていることには、改めて彼らのダブルスタンダードぶりを確認した思いだ。

 彼らは自分たちが毛嫌いする意見の持ち主には、寄り添う必要など全く考えておらず、本質的には冷静な議論など不要だと考えていることを露呈させた。特に大手メディアには放送法が求めるような公正な見地などまるでなく、相手の持つ考えによって態度を180度変え、イデオロギーを前面に出した判断しかしていないと言われても仕方ないだろう。
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イジメとも思えるメディアの集中砲火を受けた森氏

橋本聖子氏「一本化」で良いのか

 さて、森氏辞任を受けて後任の会長は女性であるべきだなどという話が出てきているが、女性を前提として会長に選ぶというのが正しい選択肢であるのかは、冷静に考えるべきではないか。

 実際に女性であるというただ一点で、橋本聖子東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会担当・女性活躍担当大臣の起用に一本化されたとの報道も出ている。橋本聖子氏はオリンピック選手として目覚ましい活躍があったのは事実だし、政治家としての経歴も長いことは確かだが、彼女が会長として適任だとは言えないだろう。

 まず、高橋大輔氏に対する抱きつきキス事件を起こした過去がある。イメージを大切にしなければならないオリンピック、そして今回の森氏辞任のきっかけが(その真意はともあれ)女性に対する「性的蔑視」発言と内外からとらえられている現状から、同種の不祥事として過去を掘り起こされかねない彼女を選択するというのは果たしてありうるのだろうか。

 また、組織委員会の会長とオリンピック担当大臣の役務を兼任することが果たしてよいことなのか。今後開催に向けていずれの仕事も激務になっていくであろうに、ダブルの負担となると橋本聖子氏一人にかかる重圧は大きすぎることになる。
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アスリート時代の実績は抜群だが…
 さらに言えば、森氏ほどのキャリアや人脈のある政治家だからこなせた会長職を遂行するにあたって、橋本聖子氏の(現時点での)能力や実績はあまりにも浅いと言えるのではないだろうか、組織をまとめて動かすという見地で能力を発揮したと思える事案は、残念ながら私には全く思い浮かばないのだ。

 上記の理由は誰でも考えればわかることだろうが、悲しいことに、橋本聖子氏以外に候補が上がってこないというのが現状であり、それは森氏の懸念を裏付けたという話でもある。潜在的には高い能力を持つ女性たちは数多くいるだろうが、組織委員会、IOC、JOCなどのメンバーとのコミュニケーションが円滑に取れるポジションに既にいて、オリンピックの顔になるにまちがいなくふさわしい女性が見当たらないのである。

 したがって、「女性である」ことを第一条件として無理に橋本聖子氏を擁立しても、東京オリンピックのイメージを汚しかねず、また実務も混乱する恐れがあることから、結果的に日本の国益を損ねることにもつながるであろう。

 以上の理由より私は、後任会長には「まずは女性ありき」という選び方に動いていかないことを、切に願わずにはいられない。
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朝香 豊(あさか ゆたか)
1964年、愛知県出身。私立東海中学、東海高校を経て、早稲田大学法学部卒。
日本のバブル崩壊とサブプライム危機・リーマンショックを事前に予測、的中させた。
現在は世界に誇れる日本を後の世代に引き渡すために、日本再興計画を立案する「日本再興プランナー」として活動。
日本国内であまり紹介されていないニュースの紹介&分析で評価の高いブログ・「日本再興ニュース」( https://nippon-saikou.com )の運営を中心に、各種SNSからも情報発信を行っている。
近著に『左翼を心の底から懺悔させる本』(取り扱いはアマゾンのみ)。

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