朝香豊:Dappi報道に見る野党・メディアの"ダブスタ"

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via twitter

表現の自由を萎縮させる行為

 ツイッターアカウント"Dappi"から「虚偽の投稿で名誉を傷つけられた」として、立憲民主党の小西洋之議員と杉尾秀哉議員が都内のウェブ関連会社を訴えた損害賠償請求訴訟が12月10日に東京地裁で始まった

 まだ裁判が開始されたばかりであるはずなのに、この件に関するマスコミの報道では「野党議員の言動を切り取り「事実と異なる内容」で執拗に攻撃していたTwitterの匿名アカウント「Dappi」の書き込みに対する損害賠償訴訟」(Friday DIGITAL)などのように、"Dappi"が犯罪を犯していることを前提としているように受け取られやすいものまでが出ている。
 この問題は言論・表現の自由に関わることであり、表現者の基本的人権を萎縮させてしまうような流れが生まれることは断じてあってはならないことだ。表現者たるマスコミがこの点の認識が鈍感であってはならないだろう。仮に自分の主張したい立場と真逆の立場の言論であっても、同じ表現者としてその権利を擁護するというポジションを取るのが当然の前提ではないか。この点で"Dappi"に対する扱いがマスコミにおいて既にフェアになっていない流れが出ていることには、私は強い危機感を覚えている。

 小西洋之議員と杉尾秀哉議員は野党とはいえ国会議員であり、警察を含めた各方面への強い働きかけが可能な立場にある。こうした立場にいる人間が市井の個人や中小企業に対して圧迫を加えるということについては、よほどの合理性が認められなければならないはずだが、そのような合理性を私はこの件では全く感じない。

問題のポイント

 さて、この問題を改めて振り返ってみよう。"Dappi"の問題ツイートの全文は以下である。

 門田隆将「朝日や毎日は自殺した近財職員の元上司が『改竄はやるべきでないが野党から追い詰められ少しでも作業量を減らす為にやった』という音声部分はカットし事実と真逆の報道。近財職員は杉尾秀哉や小西洋之が1時間吊るしあげた翌日に自殺」 左派メディアは野党に都合が悪いことは報じない
朝香豊:Dappi報道に見る野党・メディアの"ダブスタ"

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Dappiのツイートは産経新聞の記事を引用したものであった
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 さて、ツイート部分の「近財職員は杉尾秀哉や小西洋之が1時間吊るしあげた翌日に自殺」は誤解を招きやすい表現だということはできる。杉尾議員や小西議員に吊るしあげられた近財職員がその翌日に自殺したものだと受け取ってしまう可能性もあるからだ。

 事実関係として見た場合には、1)近財(財務省近畿財務局…財務省の関西の出先機関)に乗り込んだのは森ゆうこ議員と福島瑞穂議員であり、杉尾議員や小西議員が乗り込んだのは東京の財務省であったこと、2)自殺した近財職員は休職をしており、森議員や福島議員にしても直接詰め寄った相手ではなかったことが確認できる。

 こうしたことを踏まえた場合には、より正確には「近財職員は杉尾秀哉や小西洋之が東京の財務省職員を1時間吊るしあげた翌日に自殺」と書いた方がベターであったとは言えるだろう。だが、投稿文字数を140字に制限されているTwitterでは「東京の財務省職員を」の9文字を入れてしまうと字数オーバーになってしまう。こうした中で"Dappi"は字数制限の中で入れない選択を行ったのかのかもしれない。あるいは"Dappi"自身が門田隆将氏の記事を中途半端な理解をしたままツイートをしてしまったのかもしれない。
 だが"Dappi"が事実関係に基づかずに野党議員を貶めようという悪意を持ってこのツイートをしたとは私には思えない。そもそもこれら4名の国会議員が財務省に乗り込んだことと、近財職員の自殺との間に関係があったことは十分に推測可能である。

 4名の国会議員が財務省に乗り込んだ(前述の通り、森議員、福島議員は近財、小西議員、杉尾議員は東京の財務省)ことは広く報道されていたから、そういう事件があったことは自殺した職員も恐らく知っていたであろう。財務省の職場仲間からも報告があったかもしれない。野党合同ヒアリングなどでの役人を人間と思わないような野党議員の傍若無人な追及姿勢には、国民の間からも批判が上がっていたくらいであり、4名が乗り込んでのやりとりにも相当な激しさがあっただろうと推察することは不思議なことではない。こうした中で自分が生きている間は周りに迷惑をかけ続けることになってしまうと、当該職員が思い詰めた可能性はあるだろう。

そしてそうした事実関係が十分に類推可能だとした場合に、「近財職員は杉尾秀哉や小西洋之が1時間吊るしあげた翌日に自殺」との表現が事実関係に基づかないものだとは必ずしも言えないわけである。

裁判に訴える前に言論で勝負すべし

人間とは常に冷静沈着に行動できる存在ではない。気持ちが熱くなればなおのこと、自らの主張を強く訴えたいがために要約や解釈が雑になるといったことは普通にある話である。言論の自由、表現の自由においてはこうした人間が持つ特性というものを十分に配慮した上で、多少雑なところがあることを織り込んだ上で考えるべきだ。

 そもそも問題のツイートに書かれている「朝日や毎日は自殺した近財職員の元上司が『改竄はやるべきでないが野党から追い詰められ少しでも作業量を減らす為にやった』という音声部分はカットし事実と真逆の報道」という部分が問題にならないのはどういうことか。問題の改竄は安倍総理に対する忖度などから起こったものではなく、野党からの執拗な攻撃によるものであるという重大な証言があったわけだが、このことは広くは報道されていない。はっきり言えば、マスコミ側によって隠されていると言われてもおかしくない。この結果としてこの重大な証言のことを知らない国民は未だに多いはずだ。
朝香豊:Dappi報道に見る野党・メディアの"ダブスタ"

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まずは「言論」で勝負したらいかが?
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 実際に野党陣営は先の総選挙において政権への忖度が文書改竄につながったかのような自民党攻撃を行なっていた。野党議員はこの件についての(彼らの主張とは反対である)事実関係を知りながら、それを前提として選挙活動を行うのは得策ではないから、国民の中に広がっている誤解に働きかけて運動を展開していたのではないか。そんな野党議員が自らの姿勢を振り返らずに、人間が普通に犯す不注意レベルのことで損害賠償請求訴訟を起こすというのは尋常ではない。

 そもそも杉尾議員や小西議員が言論の自由や表現の自由を極めて重要なものとして位置付けているのであれば、正確でない記述を見つけた場合に訂正を申し入れるのが普通の流れであろう。一度の申し入れでは見落とされる可能性もあることから、再三再四行うべきものだとも思う。それによって改まらなかった場合に訴訟に訴えることを予告し、それでも修正が行われなかった場合にはじめて訴訟手続きに入るべきものではないのか。私の見落としかもしれないから断言はしないが、杉尾議員や小西議員がそういう手続きを踏まえた形跡は見つけられなかった。こうした手続きなしでの"Dappi"に対する提訴であるとすれば、自由な言論を圧殺しようとする常軌を逸したものと言わざるをえない。

野党に都合の良いマスコミの"ダブスタ"

 さて、杉尾議員や小西議員が"Dappi"アカウントが何者であるかについて知りえたのは、プロバイダ責任制限法による情報開示請求を行ったことに基づくものである。同法の第4条の第3項には「発信者情報の開示を受けた者は、当該発信者情報をみだりに用いて、不当に当該発信者の名誉又は生活の平穏を害する行為をしてはならない」ことが規定されている。

 ところが、この両名しか知らないはずがない"Dappi"アカウントに関する情報が一般のマスコミに流布して、"Dappi"アカウントを所有する企業のインターホンを鳴らすような報道さえ普通に行われた。この企業がIT系の企業であり、自民党とも取引があったことが大々的に報じられ、自民党が仕掛けた謀略事件であるかのように扱われた。一部では社名すらも報道対象となっている。これは「当該発信者情報をみだりに用いて、不当に当該発信者の名誉又は生活の平穏を害する行為」なのであり、完全な法律違反ではないのか。

 共産党の機関紙の「赤旗」においても、"Dappi"アカウントの会社の社長は自民党本部の事務総長の親戚なのだという報道が「スクープ」としてなされた。これもまたプロバイダ責任制限法違反であるのは言うまでもない。

 「赤旗」の側は立憲民主党の杉尾議員や小西議員から開示された情報に基づいて当該企業の調査を行ったということなのだろうが、こうした法律違反を犯してこうした情報を探り、知りえた情報を開示していることを日本共産党はどう位置付けているのだろうか。こんなことをやっておきながら、基本的人権を尊重し、自由と民主主義を守ると謳うのはありえない話である。立憲民主党にせよ、日本共産党にせよ、自分たちに都合のよい言論については自由を認めながらも、自分たちに都合の悪い言論は排除しようとする。保守派の人間が怒りを感じるのは、彼らのこうしたダブルスタンダードである。
朝香豊:Dappi報道に見る野党・メディアの"ダブスタ"

朝香豊:Dappi報道に見る野党・メディアの"ダブスタ"

平気で「ダブスタ」を行うメディアを読む価値はあるのか??
 そもそも自民党を勝たせるために"Dappi"アカウントが活動を行なっているというのは明らかに事実に反する。というのは"Dappi"は立憲民主党の松原仁議員を応援するツイートを何度も上げていることが知られているからだ。松原仁議員は自民党の石原宏高議員と激しく小選挙区で戦っている間柄であり、その差は常に僅差である。自民党からお金をもらって工作を行なっているとしたら、松原仁議員を応援するようなことは絶対にやらないだろう。

 また自民党や公明党の対中国政策が弱腰であることを非難するツイートを"Dappi"は繰り返して上げている。選挙で自民党を勝たせるための工作を行なっているとすれば、こうしたことを"Dappi"がわざわざ取り上げるようなこともしないであろう。保守的な政治傾向を持ち、その立場から応援したい人を応援し、批判すべきは批判しているだけだと解する方がはるかに自然な理解である。

 自己の思想信条に基づいて社会的不正に対して声を上げているだけの"Dappi"に対して、プロバイダ責任制限法に違反してその名誉や生活の平穏を不当に乱すようなことまで行い、さらにはあらぬ疑惑までふっかけて追い詰めていくということが許されるとすれば、民主主義の観点からも基本的人権の観点からも到底見逃せる話ではない。

 問題は立憲民主党や日本共産党だけではない。彼らと平仄を合わせたかのような行動を行っている日本の主流派マスコミにも、公正感というものを感じることはできない。この問題は"Dappi"アカウントだけが晒されている話ではなく、保守言論を不当に弾圧することを狙った悪質な謀略ではないか。日本の言論空間の闇が凝縮した事件がこの"Dappi"問題であるとの視点を、我々は見落としてはならないであろう。

【Dappi問題】立民・共産の「犯罪的」卑劣さ【朝香豊】

本件について朝香さんが解説する動画はコチラ!
朝香 豊(あさか ゆたか)
1964年、愛知県出身。私立東海中学、東海高校を経て、早稲田大学法学部卒。日本のバブル崩壊とサブプライム危機・リーマンショックを事前に予測、的中させた。現在は世界に誇れる日本を後の世代に引き渡すために、日本再興計画を立案する「日本再興プランナー」として活動。日本国内であまり紹介されていないニュースの紹介&分析で評価の高いブログ・「日本再興ニュース」の運営を中心に、各種SNSからも情報発信を行っている。『それでも習近平が中国経済を崩壊させる』(ワック)が好評発売中。

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