朝香豊:無視できない河野太郎氏と「日本端子」の関わり

朝香豊:無視できない河野太郎氏と「日本端子」の関わり

日本端子とはどのような会社か

 自民党総裁選挙において、現在最も支持を集めているのは河野太郎氏だとされているが、この河野氏をめぐって大きな問題が浮上してきた。それは河野氏の一族が経営する日本端子という会社をめぐるものである。

 日本端子は2021年3月決算で純利益として22億1300万円を計上し、総資産261億円、うち利益剰余金169億1700万円という優良企業である。非上場で出資者が10名のみというファミリー企業であり、河野家の資産形成に大きな影響を及ぼしてきた。大株主には河野洋平氏(58000株)、河野太郎氏(4000株)の他、恵比寿興業(24000株)の記載もあるが、恵比寿興業の代表は河野太郎氏の実弟である河野二郎氏である。恵比寿興業は競走馬の会社であり、これまた河野家のファミリー企業であるのは間違いない。

 河野太郎氏は今回の総裁選挙への出馬に際して庶民性をアピールするかのように、かつてトヨタの第4次下請けで社員として働いていたなどという話をしていたが、その下請け企業とは自身がオーナー一族に含まれる巨大優良企業であったというわけである。

「特別扱い」を受ける中国の子会社

 日本端子は中国との関係が深く、早くも1995年に北京東方電子集団(現在の北京東方科技集団)との合弁で北京日端電子を設立している。外資系企業が中国に進出する場合には、中国の現地企業が51%以上の資本出資となるのが通例であるのに対して、北京日端電子は中国側の出資は40%にとどまり、日本側の出資が60%にも達していることがわかっている。ここには河野洋平氏の政治力が大きく影響していることが想像される。

 また合弁相手の北京東方電子集団の董事長(代表取締役)である陳炎順氏は、同社の中国共産党委員会書記(トップ)でもある。陳氏は中国共産党創建100周年を記念して表彰された全国の「優秀党務工作者」300名のうちの一人であるだけでなく、その人物名一覧の一番最初に掲載されている人物でもある。この名簿は地域ごとに記載され、一番最初が北京から選出された7名であったことも関係しているのだろうが、それでも序列順位がものをいう中国において、実に興味深いところだ。
 日本端子はその後中国に1996年に香港日端電子、2007年に日端健和興電子、2012年に昆山日端電子、2017年に広州日覃貿易を設立している。このうち日端健和興電子は2013年に全株が売却され、グループ企業から外されている。販売金額がわからないので決めつけることはできないが、中国側が日本に対する政治的影響力の行使のために、法外な値段で買い取っている可能性も考えられるであろう。

 もう一つ注目したいのが昆山日端電子である。同社は江蘇省の昆山(すなわち香港ではなく、中国本土内)に設立されたものだが、日本資本が100%で、中国資本が入っていないという破格の特別扱いを受けている。
朝香豊:無視できない河野太郎氏と「日本端子」の関わり

朝香豊:無視できない河野太郎氏と「日本端子」の関わり

日本端子の中国子会社は、なぜか中国国内で「破格の」待遇を受けている
 日本端子のWebページに掲載されている昆山日端電子についての説明には、「有事に備えてお客様の足元で生産活動を行っています」との気になる説明がある。「有事」とは、日本と中国の間での軍事的衝突が生じることを想定しているということなのだろうか。そうした場合が生じても中国にいるお客様に迷惑をかけることがないように、中国での現地生産を進めているとも読めるからである。もちろんこの一文だけできっとそうだと決めつけることはできないが、それでも安全保障の意識の強い中国政府への強い配慮によって設立された企業であることは間違いないだろう。

 日本資本が100%で設立されていることには、河野家の政治的影響力の問題もあるだろうが、昆山日端電子が中国側の事情に特に強く応えて設立されたものであることを強く伺わせる。そしてそのことは日本端子をファミリー企業として抱える河野太郎氏の対中姿勢を大きく制約しているであろうことを見失うわけにはいかない。

太陽光発電にも使われる製品群

 さて、日本端子は電線と電線をつなぐコネクタや終末端子の製造を中心とする企業である。そして太陽光発電にも同社の製品が当然にも使われている。この点について同社のウェブページでは「環境に配慮したエネルギー・インフラ開発に貢献」との表題のもと、「未来に続くクリーンエネルギーとして注目を集める太陽光発電システムなど、日本端子はこれからのエネルギー開発に貢献しています」と強調している。

 ところで、世界の太陽光パネル製造のランキング上位10社のうち7社は中国企業であり、中国企業以外としてはCanadian Solar(第5位 カナダ)、Hanwha Q-Cells(第6位 韓国)、First Solar (第9位 アメリカ)の3社しかない。しかもこの3社のうちの1社のCanadian Solarは、創業者で同社の会長兼最高経営責任者(CEO)はXiaohua Quという中国人であり、同社はアメリカのナスダックでの上場を廃止して、現在は上海や深圳での上場を目指している。つまり、建前はカナダ企業だとしても、実質的には中国企業とみなすべき会社なのである。ということは、太陽光パネル製造のランキング上位10社のうち8社が実質的には中国企業だと見た方がよいだろう。


 さらに太陽光パネルの原料である結晶シリコンは、世界生産の45%がウイグル、30%がウイグル以外の中国であり、中国生産が世界全体の75%を占める。こうしたところから見て、中国での太陽光パネル生産に日本端子が大きく関わっているのは確実であろう。
朝香豊:無視できない河野太郎氏と「日本端子」の関わり

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太陽光パネルの原料である結晶シリコンは中国生産が世界の75%を占める。

「無視」は許されない情報だ

 河野氏は今回の総裁選挙で中国を刺激しないような発言を繰り返している。そればかりではない。そもそも防衛相であった時に陸上に置くミサイル防衛システムであるイージス・アショアの配備を、独断で潰した。ミサイルから切り離されるブースターが自衛隊の演習場の敷地の外の住宅地に落下する可能性があるからという無茶苦茶な理由だったことを記憶している人も多いだろう。ここにも中国への配慮が見られる。さらにこのことをスクープ報道した読売新聞を「フェイクニュース」扱いして非難していたことも忘れるべきではない。余程都合が悪かったのだろう。

 河野氏はまた脱原発と再生可能エネルギーの推進に力を入れていることもよく知られている。上記のような事情を踏まえると、そのような政策をとっていることもすんなりと腑に落ちるのだ。

 さて、アメリカ政府はウイグルでの強制労働の疑いから中国製太陽光パネルを輸入禁止にした。日本はこの点で同じ動きを見せることは果たしてできるのか。少なくとも、河野氏が総理になったとすれば、極めて難しくなるだろう。ファミリー企業である日本端子のビジネスを考えれば、そんなことはできないはずだ。となれば、河野氏を自民党の総裁にし、日本の総理大臣に就かせるという選択肢は国益の観点からしてありえないことになる。

 だが、少なくとも9月20日段階では日本の主流派メディアでこの問題を扱っているところはない。しかし、述べてきた日本端子に関する情報は公開情報からわかる話であるし、その中国との濃いかかわりは日本のリーダーを選ぶにあたって決して無視のできない要素だ。主流派メディアの動向を踏まえるに、おそらく総裁選前にこの問題が広く周知されることは期待できないだろうが、このような日本の国益を左右する事実が日本のリーダーを選ぶ際に無視されることはあり得ない。私も力の及ぶ範囲で、この事実を拡散してゆきたい。
朝香 豊(あさか ゆたか)
1964年、愛知県出身。私立東海中学、東海高校を経て、早稲田大学法学部卒。日本のバブル崩壊とサブプライム危機・リーマンショックを事前に予測、的中させた。現在は世界に誇れる日本を後の世代に引き渡すために、日本再興計画を立案する「日本再興プランナー」として活動。日本国内であまり紹介されていないニュースの紹介&分析で評価の高いブログ・「日本再興ニュース」の運営を中心に、各種SNSからも情報発信を行っている。『それでも習近平が中国経済を崩壊させる』(ワック)が好評発売中。

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この記事へのコメント

キャプテン 2021/9/23 10:09

大手メディアが今このことを報じないのは、次の狙いがあるのでしょう、まずは河野太郎を総裁にした後に、大々的に報道して衆院選で自民党を敗北させる、というシナリオかと。

奈良漬 2021/9/22 05:09

沢山の方にこの記事を読んでほしいです。
昨日中国不動産バブル崩壊で米国の株がダダ下がりです。
今日も回復していません。
経済は間違った方向に進むと簡単に崩壊するのです。
ましてや一国の総理が誤った判断をすると国民の命が守れないのです。
本日午後2時、ニコ生で河野氏への質問コーナーがあるので、日本端子について問いただしましょう。

2021/9/22 00:09

分かりやすい良い記事です。
すくなくとも、自民党総裁にはふさわしくないと思います。自民党も除籍処分がいいと思います。
日本はウイグル奴隷労働に加担してると言われかねない重大問題ですね。

ムーちゃん 2021/9/21 21:09

河野洋平が外務大臣のとき中国に進出して合弁会社を作ったのではないですか。

憂国おばさん 2021/9/21 14:09

分かりやすく、しかも必要にして十分な解説、ありがとうございました。
唯一の救いは、河野氏の低劣な品性、口ほどにもない低能ぶり(公開討論会をみて一目瞭然)、
売電一家顔負けのC国との癒着が、国民に周知されつつあることで、
ここは賢明な党員の皆様の良識ある判断を信じ、藁にも縋る思いです。
高市氏当選を祈願して、お百度参りする所存でございます。
懸念材料は、オールドメディアの河野推し(高市隠し)、C国工作機関が絡んだ選挙不正で、
悪夢が実現すれば、アメリカで絶賛進行中の混乱が我々を待っているわけですね。
アフター河野政権なんて、おぞましすぎて考えたくもない。

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