日本端子とはどのような会社か
日本端子は2021年3月決算で純利益として22億1300万円を計上し、総資産261億円、うち利益剰余金169億1700万円という優良企業である。非上場で出資者が10名のみというファミリー企業であり、河野家の資産形成に大きな影響を及ぼしてきた。大株主には河野洋平氏(58000株)、河野太郎氏(4000株)の他、恵比寿興業(24000株)の記載もあるが、恵比寿興業の代表は河野太郎氏の実弟である河野二郎氏である。恵比寿興業は競走馬の会社であり、これまた河野家のファミリー企業であるのは間違いない。
河野太郎氏は今回の総裁選挙への出馬に際して庶民性をアピールするかのように、かつてトヨタの第4次下請けで社員として働いていたなどという話をしていたが、その下請け企業とは自身がオーナー一族に含まれる巨大優良企業であったというわけである。
「特別扱い」を受ける中国の子会社
また合弁相手の北京東方電子集団の董事長(代表取締役)である陳炎順氏は、同社の中国共産党委員会書記(トップ)でもある。陳氏は中国共産党創建100周年を記念して表彰された全国の「優秀党務工作者」300名のうちの一人であるだけでなく、その人物名一覧の一番最初に掲載されている人物でもある。この名簿は地域ごとに記載され、一番最初が北京から選出された7名であったことも関係しているのだろうが、それでも序列順位がものをいう中国において、実に興味深いところだ。
もう一つ注目したいのが昆山日端電子である。同社は江蘇省の昆山(すなわち香港ではなく、中国本土内)に設立されたものだが、日本資本が100%で、中国資本が入っていないという破格の特別扱いを受けている。
日本資本が100%で設立されていることには、河野家の政治的影響力の問題もあるだろうが、昆山日端電子が中国側の事情に特に強く応えて設立されたものであることを強く伺わせる。そしてそのことは日本端子をファミリー企業として抱える河野太郎氏の対中姿勢を大きく制約しているであろうことを見失うわけにはいかない。
太陽光発電にも使われる製品群
ところで、世界の太陽光パネル製造のランキング上位10社のうち7社は中国企業であり、中国企業以外としてはCanadian Solar(第5位 カナダ)、Hanwha Q-Cells(第6位 韓国)、First Solar (第9位 アメリカ)の3社しかない。しかもこの3社のうちの1社のCanadian Solarは、創業者で同社の会長兼最高経営責任者(CEO)はXiaohua Quという中国人であり、同社はアメリカのナスダックでの上場を廃止して、現在は上海や深圳での上場を目指している。つまり、建前はカナダ企業だとしても、実質的には中国企業とみなすべき会社なのである。ということは、太陽光パネル製造のランキング上位10社のうち8社が実質的には中国企業だと見た方がよいだろう。
さらに太陽光パネルの原料である結晶シリコンは、世界生産の45%がウイグル、30%がウイグル以外の中国であり、中国生産が世界全体の75%を占める。こうしたところから見て、中国での太陽光パネル生産に日本端子が大きく関わっているのは確実であろう。
「無視」は許されない情報だ
河野氏はまた脱原発と再生可能エネルギーの推進に力を入れていることもよく知られている。上記のような事情を踏まえると、そのような政策をとっていることもすんなりと腑に落ちるのだ。
さて、アメリカ政府はウイグルでの強制労働の疑いから中国製太陽光パネルを輸入禁止にした。日本はこの点で同じ動きを見せることは果たしてできるのか。少なくとも、河野氏が総理になったとすれば、極めて難しくなるだろう。ファミリー企業である日本端子のビジネスを考えれば、そんなことはできないはずだ。となれば、河野氏を自民党の総裁にし、日本の総理大臣に就かせるという選択肢は国益の観点からしてありえないことになる。
だが、少なくとも9月20日段階では日本の主流派メディアでこの問題を扱っているところはない。しかし、述べてきた日本端子に関する情報は公開情報からわかる話であるし、その中国との濃いかかわりは日本のリーダーを選ぶにあたって決して無視のできない要素だ。主流派メディアの動向を踏まえるに、おそらく総裁選前にこの問題が広く周知されることは期待できないだろうが、このような日本の国益を左右する事実が日本のリーダーを選ぶ際に無視されることはあり得ない。私も力の及ぶ範囲で、この事実を拡散してゆきたい。
1964年、愛知県出身。私立東海中学、東海高校を経て、早稲田大学法学部卒。日本のバブル崩壊とサブプライム危機・リーマンショックを事前に予測、的中させた。現在は世界に誇れる日本を後の世代に引き渡すために、日本再興計画を立案する「日本再興プランナー」として活動。日本国内であまり紹介されていないニュースの紹介&分析で評価の高いブログ・「日本再興ニュース」の運営を中心に、各種SNSからも情報発信を行っている。『それでも習近平が中国経済を崩壊させる』(ワック)が好評発売中。