橋本琴絵:高市早苗氏に期待が集まるこれだけの理由

橋本琴絵:高市早苗氏に期待が集まるこれだけの理由

 令和3年8月22日に実施された横浜市長選挙は、立憲民主党推薦の山中竹春氏の当選となった。しかし、開票結果をみてみると、小此木八郎氏が32万5千票であり、現職市長の林文子氏が19万6千票を得ており、この二つを合算すると山中竹春氏を上回る。つまり、度々革新派を利する「保守分裂」(実質上、林氏のカジノ賛成・小此木氏の反対)がここにきても起きてしまったのである。

 この選挙結果を踏まえ、ひとつの地方選挙とはいえども現内閣のメンバーが閣僚たる国家公安委員長の職を辞してまで出馬した横浜市長選に、現職総理大臣が現地入りして応援演説をしていたこともあり、菅義偉総理の指導力の在り方を問う声があがってきている。

固い自民党への支持

 事実、FNNの世論調査(8月24日)によると「9月末まで総理大臣を交代して欲しいか」との問いに対して「はい」と答えた割合は68%にも上り、NHKの世論調査(8月10日)では内閣支持率は29%まで低下している。

 しかし、だからといって菅内閣で衆議院選挙は戦えないとする分析は飛躍している。何故ならば、ANN(テレビ朝日)の世論調査(8月24日付)における政党支持率を見てみると、「どの政党に投票するか」の問いに対して、自民党と回答した人は先週より4.3ポイント上昇して46.6%となり、一方で立憲民主党と答えた人は先週より0.7ポイント下落して8.1%なり、政党レベルでは自民党の圧勝を示しているからだ。

 もちろんテレビ朝日の調査結果であるために全幅の信頼を置くべき理由はなく、過信は禁物である。また立憲支持8.1%は確実に投票する層だと予想されるが、自民支持46.6%のうちどれほど実際に投票するかは未知数である点も考慮しなければならない。しかし、そうはいっても一応の統計的事実は菅義偉総理大臣の国政のあり方に、有権者が納得している結果を示しているともいえよう。
 支持率に大きな影響を与えるとみられるコロナ禍に関しても、都内や神奈川県内で新型コロナウイルスの感染が過去最高の広がりを見せ、入院搬送できない自宅療養者が10万人に迫る勢いではあるが、諸外国のデータと比較した場合、依然として日本は圧倒的にコロナ死者の数は低く、人口100万人あたりの死者数を比較してみると、英米先進国の5%ほどである。いくらマスコミが国民の恐怖感情を煽る報道を連日続けていたとしても、インターネットという情報伝達技術が普及した現代において多くの有権者は冷静な判断を下し、菅義偉内閣の地道かつ堅実な感染症対策に一定の評価を下していると考えて良いだろう。

菅政権の安全保障策に不安

 一方で、そうはいっても世論とは水物であり、いつ劇的に変わるか予測できない。菅内閣の感染症対策は堅実ではあるものの、つい先日も沖縄県石垣市が尖閣諸島に標識を建設したいと政府に申し出たところ、政府は「誰であっても尖閣諸島への上陸は認めない方針」という返答を為し、自国領土であるにもかかわらず日本人の上陸を禁じ、安全保障政策についての一抹の不安を私たち国民に与えている。

 この「安全保障政策」という視点で菅内閣の施政を考えてみると、例えば、既存のミサイルディフェンスで防衛できる範囲の核ミサイルは、旧型の「弾頭自由落下式」(上空でミサイル本体と核弾頭が分離し、慣性の法則で核爆弾が自由落下をしてくる放物線を計算し、ミサイル迎撃するもの)に限られている事実がある。

 一方で現代の新型ミサイルは、ミサイル本体が発射から着弾までスクラムジェットエンジンで加速し続け、マッハ5からマッハ20の速度で攻撃目標に突入してくる(アバンガルド型。2018年3月試作機発射実験。2019年中に実戦配備と公表されている)。これに対して、日本国は有効な防衛能力を持たない。発射されたら、もう終わりとなる現実がある。現在までのところ、こうした新型ミサイルはロシアのみが占有し、中国や北朝鮮への技術供与は表向き上なされていないとはいえ、今現在も核ミサイルの標準を我が国に定めているこれらの国々が最新ミサイル技術を獲得するのは時間の問題であるといえよう。

 しかし、菅義偉内閣はこうした新型ミサイルへの対応方針を決定しておらず、有事となればコロナ死者とは比べ物にならないほどの死傷者が出る安全保障問題についての不安が残る。そんな中、登場したのが高市早苗総理大臣待望論である。
橋本琴絵:高市早苗氏に期待が集まるこれだけの理由

橋本琴絵:高市早苗氏に期待が集まるこれだけの理由

武器の進歩を驚くほど早い―
(写真はイメージ)

自国は自国で守るしかないという常識

 夕刊フジの世論調査(8月20日付)によると、次期首相として相応しい人物は誰かという問いに対して、およそ81%が「高市早苗」と回答した。FNN(8月17日)の報道によると、高市早苗議員は先月7月に安倍晋三前総理を訪ね、安倍前総理の「再出馬」を懇願したところ、安倍前総理が「去年やめて今年でるわけがない」と回答すると、自らの総裁選出馬を決意したという。

 高市早苗議員の政策の特徴は、数々の保守的な文教政策もさることながら、安全保障政策の充実にある。

 前述したように、現内閣をはじめとする戦後政府の特徴として、「日米安保におんぶ抱っこの安全保障政策」があった。アメリカが守ってくれるのだからどこも手出しできるはずがないだろう、という自負と期待である。このため、個々の防衛意識は低く、例えば1976年にはソ連から我が国に低空侵入してきたミグ戦闘機に誰も気づくことが出来ず、北海道に着陸されてしまった「ベレンコ中尉事件」も起きた。

 そもそも、日米安保締結当時とは比べ物にならないほど現代の軍事技術は進歩しており、「戦争開始から数分で一億人が全員死亡して国家が消滅する」ということが技術的に可能であるとの認識が不足しているうえ、「撃ってくるはずがないだろう」という根拠なき楽観論が日本国を支配しているように思える。そもそも、日米安保には「核報復義務」(日本が核攻撃されたらアメリカが代理核報復してくれる)という絶対的保証は無いのである。
橋本琴絵:高市早苗氏に期待が集まるこれだけの理由

橋本琴絵:高市早苗氏に期待が集まるこれだけの理由

「自ら国を守ろうとしない者たちのためにアメリカ軍が血を流すことは無い」という米・バイデン大統領
 先のアフガニスタン政府壊滅に際して、アメリカのバイデン氏は「自ら国を守ろうとしない者たちのためにアメリカ軍が血を流すことは無い」との演説を国内外に向けて発信している。これは、タリバン勢力の支配地域拡大に対して、アメリカの支援を受けたアフガニスタン政府が汚職(架空の兵士名簿を作成してその給与を詐取するなど)を繰り返して、祖国を守る精神を欠いていたことに対する批判である。この言葉は、他人事ではない。我が国にもそのまま当てはまるのではないだろうか。我が国の防衛能力は通常兵器による戦闘は最高水準であっても、最新のドローンを使った数千数万という自爆波状攻撃に対する防衛戦術は未だ準備中であり、何より前述したように亜音速で飛来してくる新型ミサイルに対する防衛能力を現時点では何ら持ち合わせていないのである。

 この安全保障の欠陥を突いたのが、高市早苗議員であった。夫婦同氏の賛成、欠かすことのない靖国神社への参拝による英霊への真摯な感謝、そして反日報道を繰り返したNHKへの是正勧告や受診料金値下げ政策など、安倍内閣の閣僚として残してきた数々の功績と共に、「日本を守る政策」として高市議員(当選回数8回)が掲げた「経済安全保障包括法案」は、今後の日本の方向性に強い影響力を持つといえよう。

高いハードル―それでも高市氏に期待する

 しかし、現実問題として自由民主党総裁選には、20名の推薦人が出馬の前提となる。

 リベラル系マスコミ会社の「次期首相に相応しい人」で常々トップを飾る石破茂氏は、水月会(石破派)16名を率いているが、推薦人20名に至らない。また、230万ものTwitterのフォロワー数を誇る河野太郎氏(麻生派54名所属)も、「ワクチン担当相として、まずいましっかりと自分の仕事をやりたい」(日経新聞令和3年8月20日報道)とコメントしており、総裁選出馬への言及を避けた。

 一方で、二階派(37名所属)トップの二階俊博幹事長は、次期総裁も菅義偉総理が相応しいとの立場を明確にし、二階派として再選支持を「当然のこと。愚問だよ」と強調した(毎日新聞8月24日報道)。また、岸田派(所属36人)トップの岸田文雄氏は総裁選出馬に意欲を示している(産経新聞8月23日報道)。

 すると、自民党内最大派閥の細田派(清和会97名所属)と麻生派(志向会54名所属)は現時点(8月26日)で、誰を総裁に支持するか明確に表明していないものの、菅義偉総理の続投支持をする見込みが各種報道から読み取ることが出来る。安倍前総理も、先月の時点では菅義偉総理続投を支持しているとの報道だ(FNN 8月17日報道)。

 ただし、ここで高市早苗議員は無派閥であるから総裁選出馬の可能性は無いに等しいと断じるのは早計だ。無派閥であることの理由をもって不可能とするならば、そもそも菅義偉総理も無派閥であったからだ。
橋本琴絵:高市早苗氏に期待が集まるこれだけの理由

橋本琴絵:高市早苗氏に期待が集まるこれだけの理由

それでも大きな可能性を秘める高市氏
 もちろん、官房長官としてテレビを通じて長期間多くの国民の目に映り続けた菅義偉総理は、「令和」の元号を国民に公表した人物として、総裁選前の時点でも菅義偉議員を知らない国民は誰もいなかった。これに対して、高市早苗議員は総務大臣として数々の功績を遺したものの、菅総理ほどの知名度(看板)があるとまでは言えない。

 しかし、それでも「日本憲政史上初の女性総理大臣」の誕生は、有権者のおよそ半数を占める女性票の動員について、著しい期待可能性を秘めていることを否定できないだろう。女性は、同じ女性へ対して強い共感を示すものである。目の前にあらわれた「女性総理」の姿は、女性が活躍する社会の象徴的存在となり、女性有権者の目に高市早苗議員は新時代の活路を切り開く指導者として映ることに疑いはない。

 以上から、私(筆者)は各種世論調査から菅義偉総理続投の路線を決して否定する考えではないものの、今後の安全保障政策を包括した高市早苗議員の経済包括政策に強く賛同するとともに、同氏の政治家としての飛躍のためにも、なんとしてでも推薦人20人の確保の成功を強く期待するものである。
橋本 琴絵(はしもと ことえ)
昭和63年(1988)、広島県尾道市生まれ。平成23年(2011)、九州大学卒業。英バッキンガムシャー・ニュー大学修了。広島県呉市竹原市豊田郡(江田島市東広島市三原市尾道市の一部)衆議院議員選出第五区より立候補。日本会議会員。
2021年8月にワックより初めての著書、『暴走するジェンダーフリー』を出版。

関連する記事

関連するキーワード

投稿者

この記事へのコメント

goma 2021/8/30 13:08

スリランカ、オーストラリアなどと同様に日本でも外国からの侵略が進んでいる。日本人のイメージする戦争は過去のもの。時勢に合った安全保障なくして将来日本は大国の属国になってしまう。この観点について分かり易く警鐘を鳴らす高市早苗氏に期待したい。

すべてのコメントを見る (1)

コメントを書く