特殊なイデオロギー集団?

 毎日新聞はイデオロギー集団と化しているのではないか──。近ごろの言論を見ていると、そんな印象を抱かざるを得ません。
 毎日新聞「桜を見る会」取材班による『汚れた桜』(毎日新聞出版)では、「桜を見る会」に関する取材・検証をしており、「脱法内閣」などと、安倍政権がまるで犯罪集団のような扱い方で批判一色に染まっています。

 ちょっと待ってください。確かに安倍政権の説明責任は問われる面があるでしょう。ですが、法に抵触する事実はまったくありません。モリ・カケ問題と同じです。ところが、毎日は安倍政権を貶(おとし)めるため、批判のための批判を繰り広げ、恣意的かつ偏向的な報道ばかりをくり返す。こんな毎日新聞社に対して、私は不信感を覚えるほかありませんでした。
 そんなとき、『WiLL』の取材でワック社を訪れる機会がありました。そこで、同社から毎日新聞が正当な理由もなく唐突に広告料値上げを要求してきたという話を聞かされたのです。「言論機関」のくせに……毎日のやり方に驚き、呆れた私は「やっぱりそうか」と思ったと同時に、3年余り前にあった毎日新聞とのやり取りを思い出しました。

 それは2016年11月15日、「虎ノ門ニュース」で百田尚樹さんと私が出演した際のことです(『WiLL』2017年1月号に掲載)。
 毎日新聞の報道姿勢を批判したところ、その内容に毎日新聞が嚙みついてきました。確かに、私自身、放送中「毎日はバカ新聞だ」といった内容の不適切な発言をしたことは否定しません。この件に関しては謝罪文も送り、同年12月13日放送の「虎ノ門ニュース」で先の発言を撤回する旨を発表しています(『WiLL』2017年2月号に掲載)。
 ですが、批判の本質は、毎日新聞社が言論機関としての役割を果たしていないこと、むしろイデオロギー集団になり、真実を伝えることを放棄した宣伝機関になり下がっている姿勢に向けたものだった。
 こういった我々の一連の発言に対して、毎日新聞は「違う」と思うのなら、紙面上で批判を展開するのが筋でしょう。

 ところが、「抗議と説明・謝罪を求める通知書」を配達証明郵便物として送りつけてきたのです。通知者は執行役員社長室長の名義で、法的手段も辞さないことが書かれていました。さらに「当社に無断で本書状の文面を引用、公表することがないように求めます」と言ってきたのです。『WiLL』にも同様の通知書が送られてきました。
 言論を司るメディアがこんなことを言ったら笑われるのがオチです。なぜ公表することを拒むのか。後ろめたい気持ちがあるからではありませんか。

 また、毎日側は言論機関としての価値がないと批判されたことに対して、数多くの賞を受賞しており、事実無根であると反論してきました。でも、賞の数なんか読者にとってまったく何の関係もない。一読者、一消費者として「毎日新聞は価値がない」と思えば、それがすべてです。
「虎ノ門ニュース」と『WiLL』誌面上で毎日新聞の通知書に対して反論をしたところ、その後、何の音沙汰もない。完全な沈黙状態です。この一件を見ても、言論・報道機関の役割を果たしておらず、報道機関としての矜持は雲散霧消しています。気に入らない言論に対しては抑圧し、切り捨てる。
 一方的な主張を展開し、批判されたら法的措置も辞さないと恫喝(どうかつ)してくるのですから。
 そう言えば、似たような言動をする人たちがいるなと。それは日本映画に出てくるヤクザ集団。そのやり口とオーバーラップしてしまうのは、私の思い違いでしょうか。

非常識で、悪質な要求

 さて、ワック社によれば、『WiLL』2020年3月号の発売日(1月24日)の2日前に、毎日新聞社は広告料の一方的な値上げ通告をしてきたそうです。聞いてびっくり、なんと実質、約7.5倍もの値上げ! 読売新聞の広告よりも高く(読売新聞の発行部数は約794万部、片や毎日は約232万部〈ABC協会新聞発行社レポート/2019年下半期〉)、あまりにも非常識で、悪質な要求ではありませんか。

 毎日側が言うには「値段の改定をお願いしたい。原料費などが高騰しているため、広告料の値上げを実施します」とのことですが、日本社会で7.5倍も物価が高騰していますか。ただでさえ「デフレから早く脱却せよ」と叫ばれて久しいのに。
 ワック社と毎日はこれまで15年間、同額で広告掲載の契約をしてきたそうです。そんな関係なのに、発売日の2日前に営業の副部長が来て約7.5倍の値上げを一方的に、しかも唐突に通告する──商業道徳的に考えて、まったくあり得ない話です。

 同社は毎日の担当者に「こんなバカな話があるか。ほかに理由があるだろう」と問うたそうです。担当者は「実は読者から抗議があり、会議が開かれたことがあります。それも理由の一つかもしれません」と答えたとか。
 読者の抗議? ならば『WiLL』の読者や執筆陣、論考の内容などにつき、毎日新聞はどうなのか。
 社会の公器を自任している毎日新聞が、そんな理由で『WiLL』の広告掲載をいわば実質的に拒否する形に出たのです。もはや社会の公器を自任する資格はありません。

 さらに悪質、悪辣、陰湿なのは、曖昧な理由を盾に、また広告掲載拒否の意思をハッキリ示さず、7.5倍の広告料を提示してきたことです。法外な値段をふっかけることで、『WiLL』の広告掲載を拒否したい意図が透けて見える。一言で言えば「卑怯」な方法です。今回の広告掲載拒否ともいえる行為は、まさに毎日新聞による言論統制ではありませんか。雑誌の内容が自分たちの思想や信条と合わないので、載せたくない──毎日の本心はここにある。

 毎日のやり方は中国共産党宣伝部のそれと同じです。事実、「チャイナデイリー社」が海外で発行する『チャイナウオッチ』を毎月第4木曜日に折込んでいる毎日。
 もはや中国の宣伝機関となり、そのプロパガンダ手法に倣っているのかもしれません。

権利の放棄

 冒頭にも述べましたように、毎日は「反安倍」に徹しています。それゆえか、なんと官邸の取材を取り仕切る官邸クラブのキャップが、総理との記者懇談会に出席しなかった。これは総理から直接生の声を聞ける貴重な会で、毎日のやり方に他社のキャップたちも呆れているそうです。

 また、総理番記者も同様で、日頃から密着しているとは言え、サシで総理と話ができる食事会の場という絶好の機会も、毎日は上からの指示で若手記者を出席させなかったとか。編集幹部が「社の方針がブレていると思われてはいけない」と判断したためらしい。
 若手記者はできるだけ総理から直接考えを聞く機会を得たい意思があるようですが、どうやら編集幹部と現場記者の間で意見のズレがあるようです。

 編集幹部の判断は疑問視せざるを得ません。何も聞き出さず、一方で先の『汚れた桜』を出版するなど、ひたすら政権批判だけに邁進する姿勢はおかしい。読者に正確な情報を提供するという言論機関として最低限の義務も放棄していると言えます。
 毎日だけではなく朝日やNHKの報道姿勢も、やはりイデオロギー先行のように見えて仕方ありません。特定のイデオロギーを守るために、事実を捻じ曲げたり、隠蔽しています。実際に毎日新聞では、左派系の活動家たちが事実上、社内の言論を乗っ取っており、イデオロギーでがんじがらめになっているそうです。
 なお、毎日の丸山昌宏代表取締役社長は事実上の広告掲載拒否について「社内の状況を把握していない」とか。毎日の幹部レベルが『WiLL』系の雑誌を拒否しているのでしょうか。

 どうしてこんなことになったのか。毎日OB記者の話によると、1960年代後半、大手新聞社と言えば毎日か、朝日と言われるほどで、読売は格下でした。記者も岩見隆夫や内藤国夫、三宅久之、週刊新聞「東京オブザーバー」を創刊した大森実など、多士済々だった。
 ところが、西山事件(1971年の沖縄返還協定にからみ、取材上知り得た機密情報を国会議員に漏洩した毎日新聞社政治部の西山太吉記者らが国家公務員法違反で有罪となった事件)などが発生し、部数が激減、77年に事実上倒産してしまった。数年の間、記者採用はなく、再び採用を始めたものの、優秀な人材が集まらなくなったのです。
 それによって社員のレベルが劣化してしまった。毎日のブランドはがた落ちし、新聞記者を目指す人たちの目標が、朝日か読売に取って代わられたのです。
 もはや大手新聞社の多くは善良なる市民の世界から大きく逸脱し、活動家のための宣伝機関になり果てています。もう毎日や朝日に期待をかけることはありません。我々は臆することなく、真っ当な言論・報道を発信し続ける──それこそが正しいメディアのあり方だと思います。

石 平 (せき へい)
1962年、中国四川省成都生まれ。北京大学哲学部卒業。四川大学哲学部講師を経て、88年に来日。95年、神戸大学大学院文化学研究科博士課程修了。民間研究機関に勤務の後、評論家活動へ。2007年、日本に帰化。『なぜ中国から離れると日本はうまくいくのか』で、第23回山本七平賞受賞。『米中「冷戦」から「熱戦」へ』(藤井厳喜氏との共著、ワック)等、著書多数。2017年より自身のツイッターで本格的に写真作品を発表し好評を得ている。

関連する記事

関連するキーワード

投稿者