「女系天皇実現」へ走る勢力とマスコミの動きが激しくなってきた。具体的には、政界では立憲民主、共産、社民、マスコミでは朝日新聞、毎日新聞、共同通信、NHK、TBS、テレビ朝日などだ。

 女系推進メディアは、世論調査という〝武器〟を使って盛んに実現に国民を導こうとしている。だが世論調査には「誘導」という露骨な目的があるので、その質問にも〝本音〟を隠した巧妙な操作がある。
 例えば、2019年11月9日、10日にTBSが行った世論調査を見てみよう。TBSが隠す思惑を説明する前に、先に女系天皇とは何かを説明しておこう。
 女系天皇とは、母方にのみ天皇の血筋をもつ天皇のことだ。つまり今の皇族でいえば、愛子内親王が結婚され、生まれた子供が天皇になれば、その方は女系天皇となる。今上天皇のお嬢様である愛子内親王が天皇になれば「女性天皇」、その子供は「女系天皇」だ。

 天皇は代々「男系」で継承されており、過去に「女性天皇」は8人10代いるが、すべて父親が天皇、もしくは皇太子等の男系であり、皇統でない父親を持つ「女系天皇」は歴史上1人も存在しない。日本の皇統唯一のルールが「男系」であり、天皇の父親を辿(たど)っていけば、神武天皇(注=記録が残っているのは崇神天皇)まで遡ることができる。それが「万世一系」だ。
 つまり、今、女系天皇実現を策す勢力は「歴史上、存在しなかった」女系天皇を誕生させ、2000年を超える皇統への〝挑戦〟を敢行しているわけである。当然、女系天皇にするということは、男系の正統な継承者である悠仁親王は、事実上、「廃嫡」となる。そのことを頭に入れて、TBSの世論調査を考えてみよう。
 
質問:今の法律では、皇位を継承できるのは男性の皇族のみですが、あなたは、女性の皇族が天皇になることに賛成ですか? 反対ですか?
 回答:賛成 77%
    反対 14%
    答えない・わからない 9%
 
質問:では、女性天皇の子供が天皇になること、すなわち「女系天皇」に賛成ですか? 反対ですか?
 回答:賛成 74%
    反対 15%
    答えない・わからない 12%
 賛成が多数であることがわかる。愛子天皇を実現し、その子供を天皇に、という声が国民の中に圧倒的であることがアピールされている。だが、質問に以下のものが入ったら、結果はどうなるだろうか。
 
質問:女系天皇になるということは、事実上の「悠仁親王廃嫡」となり、2000年以上、男系で繫(つな)いできた皇統が途絶し、万世一系が終了します。あなたは、そのことに賛成ですか?

 私は講演や記事、あるいは取材を通じて多くの方に意見を伺っているが、女系天皇を支持する人は、これが悠仁親王廃嫡を意味することを知らず、これによって万世一系の皇統が途絶されることも知らない。
 もし皇室が男系を捨て、英国王室と同様、長子継承を基本とし、女系天皇を容認するなら愛子天皇の次はそのお子様、もし子供がいなかった場合は、眞子内親王、そして佳子内親王……と続くことになる。これが事実上の悠仁親王廃嫡論だ。天皇家は、内親王が英国人と国際結婚されるなら英国系、韓国人と結婚されるなら韓国系と「移り変わっていく」ことになる。

 10月から11月にかけて世界最古の国・日本で注目される行事が続いた。なかでも即位礼正殿の儀や大嘗祭(だいじょうさい)など、世界をリードする「先端技術国・日本」とは対を成す〝平安絵巻〟さながらの伝統の儀式に国際社会から驚きの声が上がったことに私は感慨を覚えた。
 国家とは興亡をくり返す宿命にあり、2000年の長きにわたってひとつの国、ひとつの王朝が存続することは、世界の常識ではあり得ない。しかし、日本人は天皇家を尊重し、2000年以上にわたって守り通してきた。
その時々の権力者・独裁者がその気になれば、いつでも奪取することができたのに、男系という皇統唯一のルールによって「万世一系」が守られてきたのだ。藤原家、あるいは平家や源氏であろうと、また足利や織田、豊臣、徳川であろうと、天皇家を乗っとることができなかったのは、ひとえにそのルールによる。

 これを葬ろうとする勢力が、もともと天皇制反対であったり、批判的だったものであることを国民はどのくらい知っているだろうか。「安定継承」を口実に悠仁親王廃嫡を策し、皇統を途絶させようとする人たち──伝統と秩序を重んじる私たち日本人が決して騙(だま)されることがあってはならないのである。

門田 隆将
1958年、高知県生まれ。作家、ジャーナリスト。著書に『なぜ君は絶望と闘えたのか』(新潮文庫)、『死の淵を見た男』(角川文庫)など。『この命、義に捧ぐ』(角川文庫)で第十九回山本七平賞を受賞。最新刊は、『新聞という病』(産経セレクト)。

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