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かわの かつとし
1954年、北海道生まれ。防衛大学校21期卒業後、海上自衛隊入隊。第三護衛隊群司令、佐世保地方総監部幕僚長、掃海隊群司令、護衛艦隊司令官、統合幕僚副長、自衛艦隊司令官、海上幕僚長を歴任。2014年、第5代統合幕僚長に就任。19年、退官。初著作として『統合幕僚長 我がリーダーの心得』(ワック)がある。

日本防衛の現状

 先日放送された『日曜報道THE PRIME』(6月12日/フジテレビ)の番組内で行われた視聴者投票では、「防衛費GDP比2%への拡大」に対して回答した約3万6000人のうち、9割が賛成に票を投じました。戦後、ここまで防衛問題に関心が高まったのは初めてのことではないでしょうか。国民の国防意識は確実に高まっています。

 そんななか、自民党安全保障調査会の小野寺五典会長(元防衛相)が国会で、日本の防衛政策における問題点を指摘しました。長年、防衛費が横ばいで新型装備の補充に支障が出ていること、新型装備の導入に従来装備の3倍の金額がかかること、などに言及し、“このままでは日本は守れない”という厳しい現実を明らかにしました。

 現在、日本の防衛費はGDP比1%にあたる約5兆円で、そのうち4割は人件費と糧食費にあてられています。そのほか、借金返済や基地対策費などにも割り振ると、装備にあてられる費用は、実質的には2割ほどしかありません。
 そうしたなかで限られた予算を、どのように使えばいいか──。

 自衛隊としては防衛力の整備をするうえで、優先的に「正面装備」と呼ばれる船や潜水艦、飛行機、戦車などを取り揃えなければなりません。弾薬やミサイルが山ほどあっても、それらを発射する正面装備が整っていない軍隊などあり得ませんから。そのため、残りのわずかな費用を継戦能力(燃料や弾薬)に振り分けざるを得ないのです。
 私が現役だった頃は、先輩から「いずれ有事が近くなったら継戦能力に目を向ければいいから、とにかく今は正面装備を整えることが大事」と教えられました。正面装備さえ揃えておけば、いずれ燃料や弾薬は後からついてくる──そのような考え方でしたから、やはりプライオリティ(優先順位)は低かったわけです。
 その結果、現在は部品の不足から「共食い」と呼ばれる現象が起きています。稼働している飛行機から部品を抜いて、別の飛行機に転用することで、なんとか運用しているような状況なのです。五兆円という少ない予算のなかで、家計簿をつける主婦のように“やりくり”してきた結果、そうした歪みが現場では次々に出てきています。

 バイデン大統領が来日(5月23日)した際に行われた日米首脳会談では、岸田文雄総理が「防衛費の大幅な増加」に言及しました。昨年は補正予算を合わせて約6兆円という過去最大の防衛費をつけましたが、さらに防衛費が増えるのなら、ぜひ継戦能力に重点を置いてもらいたいところです。(続きは本誌にて!)
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『WiLL』2022年8月号(6月24日発売!)
◎『WiLL』2022年8月号目次
安倍晋三・櫻井よしこ:■葛西敬之JR東海名誉会長を偲(しの)びつつ 防衛費GDP比2%は独立国家の覚悟の証(あかし)だ/河野克俊:米ミサイル配備で中国の野望を挫(くじ)け/平井宏治:疑惑の上海電力 浮上した金脈と人脈
中国が仕掛けるハイブリッド戦争 付 上海電力関連人脈 北尾吉孝・竹中平蔵/大高未貴:米海兵隊岩国基地を包囲するメガソーラー 付 上海電力関連人脈 林芳正外相・山口県議会の〝ドン〟/北村 滋・平井宏治:中国の野心 警戒なき日本 トヨタ・ソニー・ソフトバンクは大丈夫か/片山さつき・有本 香:北海道 中国資本の土地買い その先に自衛隊の施設/阿比留瑠比:ステルス岸田、幸運の星に恵まれて/高市早苗:「岸田内閣が無為無策」という虚構/ 飯山 陽・岩田 温:帰ってきた「魔女・重信房子」―日本赤軍は死んだフリ/武藤正敏・髙山正之:オモテでニコニコ ウラで対日軍備増強 韓国はナニ考えてンだ!!

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