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河野太郎氏。次期首相候補と噂されるが……
「伊達や酔狂でやっている」が最もよく当てはまるのが小泉純一郎元首相の反原発運動だろう。「歩く無責任」と言うべき軽さで国益を損ねる言動に興じてきたが、同じ話を繰り返すのに飽きたのか、他の遊びの方に関心が移ったのか、2022年4月、高齢を理由に反原発講演会は「もうやんない」と宣言し、運動の第一線から身を引いた(らしい)。

 いま、原発停止の長期化で電力不足、電気料金高騰が深刻化する中、一体、どこに隠れているのだろうか。堂々と出てきて、「間違っていました」と国民に謝罪すべきだろう。
 何事も真面目に勉強しないながら、時に裂帛(れっぱく)の気合いで政局を動かした「ライオン宰相」にしては、何とも情けない、恥ずべき晩年だった。

 宰相候補に数えられる現役政治家の中で最も危ない存在は依然として河野太郎氏だろう。
 極左パフォーマーの山本太郎氏(本稿執筆時点、れいわ新選組代表)と並び立って「脱原発」の色紙を掲げた姿はなお記憶に鮮やかである。
「河野グレタ郎」と呼んでいるせいで私は彼のツイッターからブロックされており(身分を明らかにし実名でツイートしている人間をブロックするのは政治家として器が小さ過ぎるだろう)、エネルギー問題に関する河野氏の最近の発言は知らない。しかしその「常識に欠けている」(所属する麻生派の麻生太郎会長評)独善的性格や太陽光パネル絡みの利害関係に照らして、反原発の立場は変えていないはずだ。

 この点に関し、「河野さんは反原発を封印したから大丈夫です」と擁護する自民党議員が少なくない。
 しかし「封印」とは、考えを改めずに一旦は雌伏(しふく)し、権力を握った時に封を解くということだろう。
 そのような人物を首相にすれば、ようやく動き始めた原発建て替え、新増設の動きが水泡に帰しかねない。日本のエネルギー基盤はいよいよ崩壊するだろう。

 河野氏は消費者担当相として、旧統一教会関係の被害者救済法案を主導することで「存在感を増した」と言われる。
 ここで大きな不安材料は、2021年の自民党総裁選で、盟友の安倍元首相と袂(たもと)を分かつ形で河野氏を推した菅義偉前首相が、河野総理総裁実現を目指す態度を変えていないとされる点である。
 安倍氏の信が厚かったあるジャーナリストによると、「菅さんは、これがやりたいと明確に政策を掲げてぶつかってくる政治家が好き」なのだという。
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「ポスト・トランプ」の最有力候補、ロン・デサンティス・フロリダ州知事
 しかし問題は政策の中身である。河野氏は反原発のみならず、反撃力の保持にも否定的態度を取ってきた菅氏が引き続き河野氏を首相にすべく影響力を行使するなら、重大な形で安倍氏の遺志を裏切ることになろう。そうした不幸な展開とならないことを祈る。

 自民党内の力学では、ポスト岸田の目下の最有力候補は河野氏ではなく茂木敏充幹事長だという。しかし「周りにはパワハラ、中国にはシェーシェー」が一般的評価の茂木氏に、国民各界各層どの方面からも待望論はない。
「河野よりマシ」で、立ち位置の不分明な人物が首相として続く流れをできるだけ早く断ち切らねばならない。
 安倍元首相の衣鉢を継ぎ、政治力も蓄えつつある萩生田光一氏aaたりがどこで勝負に出るかが一つの鍵になろう。慎重に構え過ぎれば機を逸する。

 アメリカでは44歳のロン・デサンティス・フロリダ州知事(共和党)が先の中間選挙で大差の再選を果たし、大統領レースのトップ近くに躍り出た。
 同氏は2018年、下院議員の座を捨てて知事選に出馬し、対立候補に0.4ポイント差で薄氷の勝利を収めた。落選していれば、その時点で政治生命を断たれたかもしれない。大きな賭けであった。
 その後コロナ禍で世界が都市封鎖や自粛強要に走る中、「経済も市民生活も動かす」という姿勢を貫いた。そのためバイデン・ホワイトハウスやマスコミからは猛烈に叩かれたが動じなかった。

 結果として、フロリダ州は経済の落ち込みが全米最小で済んだ。この実績が州民に評価され、20ポイント近い差での圧倒的再選となったわけである。
 デサンティス氏はトランプ氏同様、ポリコレに挑戦的態度で応じている。脱炭素原理主義にも迎合しなかった。2人はライバルとされるが、政治姿勢はよく似ている。
 いずれも「闘う政治家」であり、自ら道を切り開いてきた。日本でもぜひ同じ光景を見たい。
島田 洋一(しまだ よういち)
1957年、大阪府生まれ。福井県立大学教授(国際政治学)。国家基本問題研究所企画委員、拉致被害者を「救う会」全国協議会副会長。著書に『アメリカ解体』(ビジネス社)など。

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