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LGBT理解増進法は、日本に本当に必要なのか(画像はイメージ)

自爆テロリストか

 2月8日、衆院予算委員会で立憲民主党議員から「LGBT(性的少数者)理解増進法案を作っていく覚悟はあるか」と問われた岸田首相は次のように答えた。

「議員立法の法案であり、自民党においても引き続き提出に向けた準備を進めていく。議論が広がることで国民の理解や議論も進む。しっかり受け止めて判断していきたい」

 LGBT法案は、後で触れるように、「左翼活動家支援法案」というべきものだが、増税と違って、この案件では首相は特に前のめりではない。ただ、秘書官の失言のため、法案推進勢力が勢いづき、追い込まれ感が出たことは間違いない。問題の荒井首相秘書官発言を振り返っておこう。

「僕だって(同性婚カップルを)見るのもイヤ。隣に住んでいてもイヤだ。秘書官たちに聞いたらみんな嫌と言う」

 オフレコが条件の「本音の吐露」だったが、これほど「おいしいネタ」をマスコミが単に腹に収めて済ますはずがない。オフレコ破りは通常、懇談の場からの排除などペナルティを伴うが、この場合、一層野党に攻撃材料を与えかねないため政府としては動きにくい。そこまで読んだ上での確信犯的な掟破りだろう。
 明らかに解任必至の発言を記者団の前で行った秘書官の浅はかさには呆れる他ない。

 他にも、岸田首相と並んだ国連の場でカバのような大あくびをしてテレビカメラに撮られた林外相や、ホワイトハウス出口で会見する首相をポケットに手を突っ込んでねめつけた木原誠二官房副長官など、側近の不行跡は目に余る。
 リーダーには良い意味でのこわもての統率力や威厳が必要だが、岸田氏はその面で相当欠けるのではないか。というより、そもそもおかしな人事が多すぎる。同盟国アメリカが媚中派として忌避(きひ)する林氏をいつまで外相にとどめておくのか。

 結果論的な陰謀論に立てば、荒井秘書官などはLGBT左翼が首相周辺に送り込んだ自爆テロリストだったとなろう。
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LGBT理解増進法案成立に前のめりだった稲田朋美議員
 さて、LGBT理解増進法案だが、これは約2年前に自民党の特命委員会(稲田朋美委員長)が原案をまとめたものだった。
 野党が共同提出した、幅広く差別の「除去」を規定し、どこまで恣意的解釈を許すか分からない(すなわち左翼弁護士による訴訟の乱発など危険度が高い)「LGBT差別解消法案」に対抗しつつ、性的少数者に配慮する自民党を適度にアピールする内容との理解のもと、党内多数の同意を得た。実際、「多様性を受け入れる精神の涵養」など比較的穏やかな書きぶりだった。

 ところが、野党とすり合わせを行う中で、稲田氏が無原則に譲歩し、何が差別かを定義しないまま「差別は許されない」との文言を加えた「与野党合意案」を作成して自民党に持ち帰り、正式承認を得ようとした。
 しかも稲田氏は、強引に指導部一任を取り付け、全党一致で提出した法案は審議を省略して採決できるという慣行を利用し、国会で一秒の議論もないまま(すなわち理解増進と言いながら、国民の理解を深める公開討論を一切しないまま)成立させようとした。ここに及んで、自民党の有志から強い反発の声が上がる。

 結局、自民党の最終関門たる総務会で、審議日程不足との理由から「党3役預かり」とされ、危うく踏みとどまった状態で今日に至る。
 日本ではLGBTに理解を示すドラマ、映画、小説、漫画等が溢れている。稲田氏が改悪する前の当初の自民党案ですら不要、というより有害無益である。
 この種の法案が成立すれば、全国の職場や教育施設で、LGBT専門家(その大半が左翼活動家)を呼んでの指導講演会や研修が半ば義務付けられよう。左翼勢力に多額の税金や企業の研修資金が流れ込むことになる。とりわけ野党が成立に熱心な一つの理由である。

 アメリカ等における混乱事例も参照せねばならない。自称トランスジェンダーが女性専用施設で性暴行事件を起こしたり、女子に「転向」したスポーツ選手が次々優勝をさらったりといったケースが社会問題となっている。この場合、最も被害を受けるのは相対的に体力の弱い女子である。
 信仰上の理由から、同性カップルの結婚式執り行いを謝絶した神主等が処罰されてもいけないだろう。
「攻撃勢力」は左翼だけではない。暴力団も、LGBTを装えば恐喝できると「差別禁止」法案の成立を心待ちにしている。
しまだ よういち
1957年、大阪府生まれ。福井県立大学教授(国際政治学)。国家基本問題研究所企画委員、拉致被害者を「救う会」全国協議会副会長。著書に『アメリカ解体』(ビジネス社)など。

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