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立憲民主党の野田佳彦元首相が行った安倍元首相追悼国会演説は多くの聴衆の胸を打ったが……
 戯(たわむ)れに、しかし現状への強い怒りを込めて、次の質問をフェイスブックとツイッターに掲げてみた。

《入試に出せない難問(奇問)。
【問1】日本の国会の存在意義を簡潔に述べよ》


 早速、多くの有志が「解答」を書き込んでくれたが、予想通り「ない」という答が多かった。

 産経新聞の阿比留瑠比論説委員のように、「バカとしか思えない愚かな大人が、世の中には結構いるとの理解が進む」と反面教師としての効果に慰めを見出す以外ないと記した人も少なからずいた。
 もっとも存在意義を、「日本にとっての」ではなく「中国や北朝鮮にとっての」と定義するなら、国会は、軍備充実、エネルギー確保など国家的課題への取り組みを妨害する、相当有力な工作機関と言える。

 7月の参院選を経て、国会は間違いなく一段と劣化した。週刊誌・ワイドショーの後追いのみの「粗悪品」議員がほぼ全員生き残る一方、正しい国際認識と政策判断の中心にあった安倍晋三元首相が凶弾に倒れたためである。
「井の中の逆恨み」アベガー議員たちは、同じく逆恨みテロリスト山上某の走狗(そうく)と化し、「旧統一教会問題の追及」に血道を上げている。
 
 10月25日、立憲民主党の野田佳彦元首相が行った安倍元首相追悼国会演説は、情のこもった内容だったが、「再びこの議場で、あなたと、言葉と言葉、魂と魂をぶつけ合い、火花散るような真剣勝負を戦いたかった」という彼の言葉を虚しく聴いたのは私だけではないだろう。
 自党を「魂」ある存在に育て上げるため、彼が党内で「真剣勝負」を戦ってきたとは思えないからだ。
 前回、2021年の総選挙結果を見ると、野田氏(千葉4区)は、唯一の対抗馬である自民党候補をほぼダブルスコアで破っている。すなわち選挙に強い。

 であるなら、党の誤りを公然と正すなり、離党届を叩きつけてより現実的な国民民主党に移るなり、決意を形で示すべきだろう。ただ何となくぬるま湯にいて歳費をもらっています、では話にならない。


 若手時代から、盟友の中川昭一氏らと保守の理念を掲げ、旧弊を打ち破るべく、野中広務、古賀誠、加藤紘一、山崎拓ら党を牛耳る大幹部連中に挑んできたが、裏で賛意を表してくれる人は多いものの、行動を共にしてくれる人は非常に少なかった。向かい風を厭(いと)わぬ「闘う政治家」が次々と生まれなければならない──。

 野田氏は、自分は一貫して安倍氏の「かませ犬」だったと自嘲の言葉も口にしたが、実際には、かませ犬としての存在感すらもはやない。松下政経塾出身の自称「リベラル保守」にはこういう不甲斐ないタイプが多い。
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立民党の無責任なエネルギー政策
 首相時代、野田氏は左派の抵抗を抑え、一部原発の再稼働に動いた。正しい判断だったと言えよう。その立場から、今の立民党の無責任なエネルギー政策をどう見ているのだろうか。
 10月29日、福井新聞のインタビューに応じた岡田克也立民党幹事長は、「再エネのウエートが高まればエネルギーの安定性が増す」と現実離れした議論を繰り返し、改めて原発新増設に反対した。太陽光や風力が不安定電源(変動電源)である事実や、闇雲な設置による環境破壊などが問題になっている事実は無視するつもりらしい。

 原発に関しては、日本維新の会の定まらぬ姿勢も非常に問題である。
 7月の参院選で維新(松井一郎代表・当時)は「安全性を確認できた原発は可能な限り速やかに再稼働する」を公約に掲げた。

 ところが一方、選挙戦さなかの6月28日に開かれた関西電力の株主総会において、筆頭株主の大阪市(松井一郎市長)は「脱原発」を主張している(結果的に否決)。
 松井氏は、「短期的には今止まっている原発の再稼働はやむなしだ」と、夏場の需要期のみ一時的に運転を認めると取れる発言も繰り返していた。

 これはかつて橋下徹大阪府知事(その後、大阪市長)が、東日本大震災後のムードに迎合して反原発を唱えつつ、夏場の電力がひっ迫するや、福井の原発をすぐ動かせと叫び、夏が過ぎると再び「原発止めろ」に回帰した悪しき事例を想起させる。筆頭株主がこれでは電力会社は長期計画を立てられない。
 馬場伸幸新代表のもと、維新は「脱橋下」を明確にせねばならない。
島田 洋一(しまだ よういち)
1957年、大阪府生まれ。福井県立大学教授(国際政治学)。国家基本問題研究所企画委員、拉致被害者を「救う会」全国協議会副会長。著書に『アメリカ解体』(ビジネス社)など。

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