石炭火力削減を考える~安易な自然エネルギーへの転換は危険~

石炭火力削減を考える~安易な自然エネルギーへの転換は危険~

 梶山経産相は、旧式の石炭火力発電所114基のうち100基程度を2030年度までに休廃止する方針を表明した。これにより、電力構成における石炭の割合を現在の32%から2030年度には26%に引き下げる予定だ。地球温暖化の原因が二酸化炭素の人為的排出が原因であるとする説が正しいとは自分には思えないが、世間の風潮に合わせた政策判断が求められるようになっているのだろう。

 石炭火力発電は天然ガス火力発電の2倍のCO2を排出することから特に批判されることが多いが、その見方は単純すぎる。世界には安価に天然ガスを利用できる地域とそうではない地域がある。

 日本の場合には国内では天然ガスの産出がほぼできないので、マイナス162度以下にまで冷却して液化し、容量を小さくした上で専用船に積み込んで海外から運んでこなければならない。この結果として、例えばシェールガスの利用が広がったアメリカと比べると、日本の天然ガスの値段は5倍以上になっている。アメリカで石炭火力が減って天然ガス火力が増えているのは、環境意識の高まりとかではなく、こうしたコスト事情が関係している。

 日本の場合には石炭もほぼ全量を海外からの輸入に頼っているが、石炭の場合には冷却の必要などはなく、安価に入手できる。日本では石炭火力の方がコスト安なのだ。

 コストのことを問題にするのを毛嫌いする人もいるだろうが、東日本大震災前と比べると、日本の製造業が支払う電気料金はすでに3割も上昇している。安価な発電方式である原子力発電を止めたことが最大の原因だが、安価な発電をやめて値段の高い太陽光や風力にますます切り替えていくことが適切かどうかは、まじめに検討すべきだろう。

 世界は石炭をどんどん使わなくなっていると思い込んでいるかもしれないが、高まるエネルギー需要の一部を石炭に頼るのは必然で、世界の石炭需要はアジア圏を中心に今後も増大する見込みだ。インド石炭公社は、現在年間6億トンの生産能力を、8400億円を投資して10億トンに引き上げることを先月発表した。石炭火力発電を利用する国が高効率なプラントを利用できるようになれば、二酸化炭素排出量を減らすことにつながる。

 石炭でも天然ガスでも、火力発電で最も効率が高くて環境負荷が小さい最先端のものを開発しているのは日本だ。発電でのエネルギー変換効率は30%台が当たり前という世界の中で、石炭火力で50%、天然ガス火力で60%超水準のものを日本はすでに生み出している。それどころか、さらに高い効率を目指した技術開発を行っている。国際的な圧力に屈して石炭火力発電を全廃する道を選び、この日本の技術進展を止めるとすれば、それは世界的な損失になる。

 経済産業省は、石炭や天然ガスの発電比率を引き下げる中で、原子力と再生可能エネルギーの割合を高めようとしている。原子力については休止している発電所の再開をどんどん進めればよいが、太陽光や風力の増大には慎重であるべきだろう。

 太陽光や風力はエネルギー密度が低く、エネルギー変換効率が低く、自然のきまぐれ任せで安定した電力供給が望めない。100万kwの発電所1基が年間に生み出す電気量を太陽光で賄おうとすれば、山手線の内側全部を太陽光パネルで覆い尽くせるだけの太陽光パネルが必要になる。日本が現在必要とする電力を賄うためには100万kwの発電所換算で200基程度は必要となることを考えれば、太陽光・風力発電を広げることが、いかに環境破壊的で非現実的かがわかるだろう。

 太陽光発電や風力発電の施設の製造・設置・廃棄にかかるエネルギー量は膨大だ。山手線の内側全部を覆う太陽光パネルをつくり、それらを設置し、耐用年数を過ぎたら回収して廃棄するまでを考えてもらいたい。これらに必要な総エネルギー量は、こうした設備が生み出すエネルギー量よりも大きいかもしれないと言われているが、これがさほど大げさな話ではないことがイメージできるだろう。

 空が曇って風もない状態になれば、太陽光も風力も役に立たないが、こんな時でも電力が必要になる。つまり、太陽光や風力が作動する場合には使わないが、作動しない時だけ補うのに利用する電力施設が余計に必要になる。太陽光や風力は、こうした無駄を要求するのである。

 電力は質も高いことが重要だ。2010年に中部電力で0.07秒間電圧が低下する事態が発生した。このことにより、東芝メモリのNAND型フラッシュメモリ生産プラントに甚大な影響が及び、被害額が100億円に達した。

 不安定な自然エネルギーへの依存を高めることは、そのまま電力料金が上がるだけでなく、電力の質にもつながる問題をはらんでいる。低品質の電気を高い金額で提供することになれば、日本の産業基盤を揺るがすことになる。こういう視点からもエネルギー問題は考えていきたいものだ。
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朝香 豊(あさか ゆたか)
1964年、愛知県出身。私立東海中学、東海高校を経て、早稲田大学法学部卒。
日本のバブル崩壊とサブプライム危機・リーマンショックを事前に予測、的中させた。
現在は世界に誇れる日本を後の世代に引き渡すために、日本再興計画を立案する「日本再興プランナー」として活動。
日本国内であまり紹介されていないニュースの紹介&分析で評価の高いブログ・「日本再興ニュース」( https://nippon-saikou.com )の運営を中心に、各種SNSからも情報発信を行っている。
近著に『左翼を心の底から懺悔させる本』(取り扱いはアマゾンのみ)。

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