奇妙な紛争

 1992年からイスラエル・パレスチナで紛争が起きるたびに、彼の地に足を運んだ。今回のハマスによるイスラエル人襲撃テロと、その後の帰趨は、イスラエル・パレスチナ建国以来、奇妙な紛争としか言いようがない。
 1948八年のイスラエル建国以来、80年近くにわたり蓄積された憎しみの連鎖を、徹底的にやり合うこと以外に終止符を打てないとでもいうような絶望的な状況に陥っている。
 今回の紛争をエネルギー問題の角度から見てみよう。

 1999年、ガザ地区沖に大型ガス田が発見された ガザ海岸から36キロの地中海内のガス田「ガザマリン」には推定1兆立方フィート(2083億立方メートル)以上の天然ガスが埋蔵されており、これはパレスチナ領域の需要をカバーして余りある量。当時、イスラエルとパレスチナ自治政府の間で結ばれた一連の合意は、パレスチナに属しているが、安全保障上の理由からイスラエルの承認なしに開発することはできないというものだった。

 金融の専門家、広瀬隆雄氏によれば、2010年にはイスラエル沖の地中海で巨大な天然ガス田が発見されたという(『ZAI』2018年2月26日)。ハイファの沖合47キロ、海底1645メートルに位置する天然ガス田は「リヴァイアサン(聖書に出てくる海の怪物の名前)」と名付けられ、少なくとも16兆立方フィートの天然ガスを含有している。これだけでイスラエルの必要とする100年分のエネルギー供給が可能と言われ、この天然ガス田を発見した米国のノーブル・エナジー社は、「リヴァイアサン」の権益の39.7%を所有。

 そして長年放置されていたガザのガス田に関して、2023年に入り大きな動きがあった。

《イスラエル大統領、ガザ地区のガス開発を容認、安全保障の確保を求める
 ガザ市:イスラエルはガザ地区沖のガス田の開発を仮承認した。この協定が最終的に締結されれば、パレスチナ経済にとって追い風となる。(略)
 米国が主催したこれらの協議では、パレスチナ・イスラエル双方の安全保障・政治関係者が一堂に会した。ヨルダンとエジプトも協議に参加した。(略)協定が締結されれば、エジプトの企業がガザマリンで天然ガス開発事業を行っていくことになる。(略)ラマッラーに本拠を置き、政府系ファンドのパレスチナ投資基金(PIF)が代表を務めるパレスチナ自治政府が、ガス田の生み出す利益の27.5%を得ることになっている。PIFとパートナーシップを結んでおり、パレスチナ人が経営者を務めるCCC(Consolidated Contractors Company)もまた27.5%を得る。残りの45%は、操業を実際に行うエジプトの天然ガスホールディング株式会社(EGAS)が得る》
(『アラブニュース』2023年6月19日)

 エジプトの会社とパレスチナ政府系のファンドなどが手を組み、ガス田開発を進めることをイスラエルが容認するかわりに、経済的にパレスチナが潤(うるお)えば、イスラエルの安全保障の緊張も緩和されるので、イスラエルも合意したという。
「エコノミストのハメッド・ジャド氏は、協定が今年末までに最終的な締結となることを望んでいる」ということで、本来、2023年10月7日のハマスのテロが起こらなければ、今頃はガス田開発の流れが加速していたはずだった。残念ながらイスラエルとPA、エジプトのシナリオ通りにいかない懸念も指摘されていた。
 (13592)

イスラエルとハマスがガザで激しい戦いを繰り広げているが――

世界一巨大で天井のない監獄

 ジャド氏は、
《ガス田における操業に更なる支障が生じないために、ガザ地区の事実上の統治組織であるハマスの承認を得た上で最終的な合意を交わすべきだ》
 と述べた。ハマスの報道官であるハゼム・カセム氏はアラブニュースの取材に対し、「我々はガス問題および当該の合意に関するあらゆる動向を追っている」とし、続けて「我らが人民の、自国の所有する自然資源およびガスから利益を受ける権利は、全ての国際法および国際決議において保障されている」とも述べている。

 つまり、ガザマリン開発のためには、ハマスの存在が開発側にとってネックになっていたのだ。
 ここでハマスの報道官が指摘した国際社会から保障されている権利について、国連報告書にはこうある。

《占領国による原油や天然ガスを含むパレスチナの天然資源の開発は、パレスチナ人民に莫大な犠牲を強いるものであり、占領が続くにつれ、その犠牲はエスカレートし続ける。これは国際法に反するだけでなく、自然正義や道徳律にも違反している。現在までに、原油と天然ガスの分野だけで占領がもたらした実質的・機会的コストは、数千億ドルとは言わないまでも、数百億ドルに達している。
 本調査は、原油・天然ガス資源に関連する財産権を確認するために、国際法に基づき、さらに詳細な経済的・歴史的・法的調査が必要であることを強調し、結論としている。従って、パレスチナ人民の独立した天然資源に対する権利と、イスラエルを含むこの地域の近隣諸国が共同で所有する共有資源に対する正当な取り分を明確に立証するための詳細な調査を推奨する》
(『国連貿易開発会議』2019年8月)

 そして10月7日以降の紛争継続中でも、エネルギー資源開発は着々と進行している。

《イスラエルのエネルギー省は、地中海沿岸の天然ガス探査のため、6社に12件のライセンスを授与したと発表した。イスラエルとハマスの紛争が4週目を迎えたこの日、イタリアのガス大手ENI、ダナ・ペトロリアム社、イスラエルのレシオ・エナジーズ社が、イスラエルにガスを供給し、輸出にも使用されている巨大なリヴァイアサン油田の西側で探鉱を行うことになった(略)》(『ロイター』2023年10月30日付)

スエズ運河に匹敵する利益

 ジャーナリスト、G・エドワード・グリフィン氏によれば、

《英首相一族、イスラエルとガザの天然ガス取引に調印も停戦せず》《英国のリシ・スナク首相が、インドの億万長者でITサービス大手インフォシスの共同設立者であるナラヤン・マーシーの娘と結婚していることを発見した。リシ・スナクのファミリービジネスは義父を通じて最近、ガザ沖の天然ガス資源を開発するために十五億ドルの契約を結んだ》

 といった英国のお家事情も指摘されている。

《1999年、パレスチナ当局はブリティッシュ・ガスと契約を結び、ガザ海岸沖で〝幸運にも〟2つの油井を掘削した:ガザマリン1と2だ。それは数十億ドルの〝神からの贈り物〟であり、国内外に経済的恩恵をもたらした。(略)
 2007年、イスラエルはリヴァイアサン天然ガス田の発見を発表したが、そこにはガザの富が含まれており、その価値は総額4530億ドルに達した。それ以来、ガザでは一シェケルも受け取っていない。より正確に言えば、約4177億ドルの収入を拒否されている。
 イスラエルのカリーヌ・エルハラール・エネルギー相(2021~22年)は、〝これは、イスラエルという小国が世界のエネルギー市場で重要なプレーヤーとなる歴史的瞬間である〟と述べた。この覚書により、イスラエルは初めて、イスラエル産天然ガスをヨーロッパに輸出することが可能になる。(略)
 2022年当時、ロシアの原油とガスは制裁され、イランの原油は制裁され、シリアの油田は米軍に不法占拠されていた。重要なラタキア港はイスラエルによって爆撃されていた。中東の玄関口」であるレバノンのベイルート港は廃墟と化していた。ガスの海を持ち、港湾が機能し、ヨーロッパの問題に対する答えであり、おそらく最も重大なことだが、米国の恩恵を受けているイスラエルが登場したのだ》


 そして、もう一つ大事な観点が「ベングリオン運河」構想だ。
 初代イスラエル首相の名前にちなんで計画された運河が実現すれば、スエズ運河に匹敵する莫大な利益をイスラエルにもたらす。エジプトが管理するスエズ運河は世界の貿易の12%が通過する巨大な運河だが、エジプトに影響力を持つロシアが背後にいたため、米国とイスラエルは1960年代からイスラエル領内にスエズ運河に匹敵する運河建設を構想し、その横断計画の中にガザ(現在よりも広い)が含まれていた。豊富なエネルギー資源を、自国の運河を利用して地中海とアカバ湾(ひいては紅海とインド洋)を結ぶことができれば、イスラエルにとって素晴らしい資産となる。

 そういった流れで見ると、ハマスのテロ攻撃後、さっそく米ブリンケン国務長官が中東に飛び、「ガザの住民はエジプトに移住すべきだ」などと発言した意味もうなずける。ガス田権益を持つエジプトは、米国による債務救済と引き換えに難民の受け入れを検討している一方、本当に受け入れたら、パレスチナ人の怒りの矛先がイスラエルからエジプトに向かいかねないリスクもある。
 即座にガザの住民に対してゲートを開けないジレンマを抱えている。その間にも、逃げ場がどこにもないガザの非戦闘員の命が失われてゆくのに世界はなすすべもなく、国連の無力さが露呈するばかりだ。
 (13593)

スエズ運河を航行するアメリカの原子力巡洋艦ベインブリッジ。ベングリオン運河が完成すれば、スエズ運河に匹敵する?

イスラエルのガスを欧州に?

 ベングリオン運河が開通すれば、ガザマリンやリヴァイアサンの天然ガスをイスラエルは効率よく輸出できる。2022年9月にインドで開かれたG20首脳会議において、米国は中国の「一帯一路」に対抗する狙いで、「インド・中東・欧州経済回廊(IMEC)」を提案していた。
 もちろん10月7日のテロがなければ、イスラエルとサウジアラビアはめでたく国交正常化となり、米ドル基軸巨大経済圏構築を試みていたはずだ。
 そのためにもウクライナ紛争でロシア制裁に加わらなかった米国に従わないグローバルサウスやBRICSなど、世界の80%以上の国々を取り込む必要性にかられていたことは疑う余地もない。いずれにせよ、イスラエルはガス輸出最大のお得意様としてEUを想定している。

 そこでロシアの侵攻から数カ月後の2022年9月26日に、ロシアからドイツに天然ガスを運ぶノルド・ストリーム・パイプラインが爆破された。爆破当時、犯人はロシアと報道されていたが、半年後、在米ジャーナリスト、シーモア・ハーシュ氏が綿密な取材をもとに犯人はバイデン政権と断定。実際にバイデン氏は2022年2月7日、ロシアがウクライナに侵攻するなら、「ノルドストリーム2はなくなるだろう。我々はそれを終わらせる」と警告。どうやって破壊するのか?「約束する。我々にはできる」。などと、ドイツのショルツ首相同席の場で意味深な言葉を述べている。

 2022年1月下旬、ウクライナでクッキーを配り、マイダン革命を成功させたビクトリア・ヌーランド国務次官補は「もしロシアがウクライナに侵攻したら、何らかの方法でノルドストリーム2は動かなくなるだろう」と述べており、爆破後は「ノルドストリーム2が、今や海底の金属の塊になったことをとても喜ばしく思っている」などとコメントしている。
 これに関し、プーチン大統領はこんなコメントを発している。

《ドイツ連邦共和国とは半世紀以上にわたって、実務的なビジネス協力を発展させてきた。それは両国に利益をもたらし、そしておそらく我々だけでなく欧州大陸全体にも利益をもたらしてきた。その上、エネルギーは常に二国間協力の魅力的な分野であった》

 プーチン大統領は、ロシアが何十年もの間、ドイツに環境に優しいガス燃料、原油、その他のエネルギー製品をリーズナブルな価格で確実かつ途切れることなく供給してきたと指摘。一方、「この協力は、《ノルドストリーム》に対する破壊工作などにより、文字通り損なわれた」と付け加えた。
 ロシア犯行説が風化すると、次に西側メディアは、ノルドストリーム破壊工作を親ウクライナ派の仕業と報じたが、ハーシュ氏は、

《「論理的に一番の(関与が疑われる)バイデン米大統領」以外の人物に世間の注目をそらすCIAの仕業》(『スプートニク』2023年12月5日)

 と、ウクライナ説を一蹴。

 考えてみればロシアが自国の利益のためにはパイプラインが何よりも大事で、それを破壊するメリットはない。いずれにせよ、ロシアのエネルギーに頼れなくなったドイツは米国から4~8倍もの高い液化天然ガスを20年契約で輸入せざるを得なくなった。ドイツ国民は高い電気代にあえぎ、製造業は国外に脱出。その代わりに増え続ける移民に悩まされ、かつてEUの盟主であったドイツの地位は失墜した。
 ハーシュ氏の指摘が正しかったとしたら、バイデン政権はロシアとEUのエネルギー需給関係をウクライナ戦争やノルドストリーム爆破によって断ち切り、やがてイスラエルからのエネルギー買い付けの流れとなれば、米国とイスラエルにとっては御の字というわけだ。

自国の権益を主眼に

 一方、こういった流れに与しない大きな動きも中東で加速した。

《アラブ首長国連邦(UAE)が原油取引において大胆に米ドル離れを進めているため、世界の金融情勢に激震が走っている。この戦略的軸足は、UAEが最近加わったBRICS経済同盟の広範な野心と一致している。原油取引における現地通貨への移行を含むこの転換は、世界の原油市場における長年のドル支配からの大きな脱却を意味する。(略)UAEが新たな原油貿易パートナーを積極的に探していることは、進化する経済情勢をナビゲートする機敏さと先見性の証である。この動きの重要性はいくら強調してもしすぎることはない。単に通貨を切り替えるという問題ではなく、国際原油貿易の構造そのものを変えるということなのだ。米ドルへの潜在的な波及効果は大きく、世界経済のパワーバランスに変化をもたらす可能性がある。
 報道によれば、UAEは中国、ロシア、エジプトといったBRICS同盟のメンバーであり、脱ドルの提唱者でもある大国を含む、最大15カ国との原油・ガス取引の可能性を視野に入れているという。これは単なる貿易の多様化ではなく、グローバルな舞台での主張なのだ。UAEは単にトレンドに追随しているのではなく、トレンドをつくり出そうとしているのだ》
(『クリプトポリタン』2023年11月27日)

 さらにUAEに歩調を合わせるように、アルゼンチンのハビエル・ミレイ大統領による中央銀行制度批判と離脱宣言。オランダの総選挙も、これに続くかのような右派の大勝。あきらかに世界では大きな地殻変動が起きていて、日本がしがみついている西側陣営も日に日に貪欲(どんよく)な欺瞞(ぎまん)の仮面が剥(は)がれ落ち、過去の栄誉栄華も終焉を迎えつつある。
 各国が資源収奪のために戦争も辞さない大胆な策略を巡らし、実行しているのが、世界の実相なのである。今までイラク、リビアなどドル基軸からの脱却を試み、アメリカに潰された指導者、サダム・フセイン大統領やガタフィ大佐らと同じ末路とたどらせるほどの力をもはやアメリカは擁していない。

 1976年、田中角栄を失脚させたロッキード事件。アメリカよりも先に日中国交回復させたとしてキッシンジャーの逆鱗に触れたとされているが、石原慎太郎は自著『天才』の中で、「資源外交で逆鱗に触れた田中角栄をアメリカがロッキード事件で葬った」と述べている。
 角栄は1973年の外遊でドイツ、英国、ロシア、そしてフランスなどとも具体的な資源外交の道筋をつけ、それが米国の虎の尾を踏んだと指摘するエネルギー専門家は多い。

 ひるがえって現在の岸田政権は、実は破れているアメリカの核の傘の下で自立に向けた資源外交を展開するのかと思いきや、ウクライナ戦争では駐日ロシア大使館員7人を日本国から追放し、ロシアと共同開発していたサハリン2LNGガスの輸入も再開のメドがたっていない。
 これからはUAEからスエズ運河やマラッカ海峡を越え、2万キロの航路を必要とする従来型の航路ではなく、ロシアも資源外交の主眼として展開している北極海航路(EUから北極海をわたりベーリング海峡を越えて日本に運ぶ海路)1万3000キロの活用も視野に入れたほうが日本にとっては有益だろう。めざとい中国はすでに砕氷船を目下、製造中だ。
 イスラエルvsパレスチナ問題はあまりにも複雑で、10月7日以降、ガザの壊滅も免れず、今までの諍(いさか)いとはあきらかにスケールが違う取り返しのつかない悲劇が進行中だ。「国際法を無視したイスラエルのガザ掃討作戦に関しても双方でプロパガンダの応戦も続き、何が真実で嘘かを見抜く目はよほどの中東通でも難しい。

 日本は第一に自国の権益を主眼におくべきだ。日本が自立した主権国家にならない限り、いつまでも政治力学の世界では蚊帳(かや)の外、キャッシュディスペンサーで不可解な争いにまで金を拠出させられる情けない立場を変えなければいけない。
 日本が大東亜戦争に追い込まれた要因の一つはABCD包囲網だったことを今こそ思い出し、中東の混乱を反面教師とするのであれば、早急なエネルギー政策の見直しをはかるべきだ。官民挙げたグリーン・トランスフォーメーション政策に150兆円も投入し、多くの予算を電気自動車と再エネに投入するというのだから狂気の沙汰としかいいようがない。

イスラエルの安全保障につながる?

  ワリード・シアム駐日パレスチナ常駐総代表部大使がこう言う。

「ガザマリンの資源も土地も本来、私たちパレスチナ人のものです。残念ながら圧倒的な軍事力と欧米のサポートを受けたイスラエルの攻撃に我々にはなす術もなく、日本という安全な場所で抗議運動をするだけです。でも先日、私たちの活動にイスラエルの人も参加してくれました。入植地拡大などよしと思っていないイスラエル人もいます。
 イスラエル建国から70年も過ぎれば、お互い共存しか選択肢はありません。ガスもきちんとシェアしてパレスチナをせめてイスラエル並みに豊かにできれば、今回のような激しい抵抗運動も下火になると思います。逆に、資源をイスラエルなどが奪えば、もはや次世代には我々の手には負えないモンスターが産まれることでしょう。多くの肉親や大切な人を失った記憶は一生忘れることはできません。今以上にガザ、もしくはどこかに追放されてパレスチナ難民として生きねばならぬとしたら、イスラエルとパレスチナの悲惨な未来は火を見るより明らかです。現にガザの人はどこにも逃げられませんが、たとえ逃げられたとしても、もうどこにも行かずここで死ぬと覚悟している人が多いです。なぜなら一度ガザを出れば二度と戻れなくなるのは、追放され続けてきた歴史が証明済みです」

  ネットにはカタールで暮らすハマスの指導者たちがプライベートジェットに乗って、けた違いな裕福な生活をしている姿がアップされている。占領地区で生きるパレスチナの若者たちは子供の頃から、「イスラエル兵3人とイスラエル兵5人、あわせて何人の兵隊さんを殺害できますか?」といった洗脳教育を受ける。私が訪ねた時、ガザのカフェでは自縛テロを奨励するVTRが流されていた。
 かたやイスラエルも12月に入って祖国を脱出する人が50万人弱に達している。イスラエルには2重、3重国籍を持つ人も多く、ニューヨークやLAといったアメリカの大都市に一年のうち半分くらい滞在している人も少なくはない。こういったライフスタイルの方が税金対策になるのだという。アメリカには約600万人ものユダヤ人が在住し、金融、メデイア、法曹界など多くのユダヤ人がいて、豊富な資金力を背景にAPACなど政界へのロビー活動も活発だ。

 12月8日、国連のグテーレス事務総長の求めに応じて安全保障理事会はガザでの即時停戦を求める決議案の採択を行ったが、アメリカの反対で否決された。そこで、12月12日、国連総会は緊急特別会合を開き、人道目的の即時停戦を求める決議案の採決が行われた。193の加盟国中、日本、フランス、カナダなど153カ国が賛成し、イギリス、ドイツ、イタリアなど23カ国が棄権し、アメリカ、イスラエルなど10カ国が反対した。EUが棄権にまわった意味合いは大きくイスラエルとアメリカの国際的孤立が印象づけられた。

 イスラエルではこれからもIDFや一般市民の犠牲者も増え続けるだろう。知人のイスラエル人はこう言う。
「アメリカン・ジュ―はいい気なもんだ。金だけ送って、イスラエル存続に貢献しているつもりだろが、同胞ならきちんとイスラエルに住んで徴兵義務もこなしてほしい」
 イスラエルで生活するということは確かに容易なことではない。常時戦場の国だからだ。
 今回の抗争でイスラエル・パレスチナ国外にいる関係者が、安全地帯で涼しい顔をして府紛争の側面支援をしている構図はなんとも皮肉としか言いようがない。

 ともあれ、17年間、あの閉塞感の中で将来の希望を奪われた若者たちをテロリストとして育てあげるにはできすぎた環境だ。ガザマリンの資源がパレスチナ人に還元されることは、長期的な視点でみれば、イスラエルの安全保障につながるという考えは甘すぎるだろうか……。
 (13594)

左からドイツのアンゲラ・メルケル首相、米国のマイク・ポンペオ国務長官、グテーレス事務総長
大高 未貴(おおたか みき) 
1969年生まれ。フェリス女学院大学卒業。世界100カ国以上を訪問。チベットのダライ・ラマ14世、台湾の李登輝元総統、世界ウイグル会議総裁ラビア・カーディル女史などにインタビューする。『日本を貶める─「反日謝罪男と捏造メディア」の正体』『習近平のジェノサイド 捏造メディアが報じない真実』(ワック)など著書多数。「サンケイ・ワールド・ビュー」(レギュラー)、「虎ノ門ニュース」などに出演している。

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