日本は「非白人圏のリーダー」【谷本真由美:WiLL H...

日本は「非白人圏のリーダー」【谷本真由美:WiLL HEADLINE】

演説は非常に抑制の利いたものであった―
 去る3月23日に、ウクライナのゼレンスキー大統領が日本の国会でオンライン演説を行った。その内容は多くの人々の予想を良い意味で裏切るものであり、抑制が利き、日本人の心に訴えかける落ち着いたものだった。

 ウクライナの避難民の人々の苦難を、原発事故により故郷を失った日本の東北の人々に重ねた。広島と長崎の原爆、原発事故による汚染のことを日本人はよく知っていることにも触れている。ほかには日本の環境保護意識が高く、技術も大変高いこと、日本人は破壊ではなく、復興が得意であることに言及した。

 日本の昔話がウクライナで出版されていることも指摘されたが、日本でウクライナの童話「てぶくろ」がロングセラーであることにつながる。

 日本人とウクライナ人の心情には何か通じる部分があることを感じた人も多かったのではないだろうか。

 日本ではほとんど指摘されていなかったが、ゼレンスキー大統領による演説が、フランスよりも早く日本で行われたことの重要性に気がつくべきだ。
 経済大国である中国は、現時点(4月18日)では全く無視されている。南米、中東、アフリカも皆無。あの中国を称賛する声は一体どこに行ってしまったのだろうか。

 つまり、日本はアジアを代表するリーダーとして世界に認められているのだ。
 そして、それはアジアだけではなく「非白人圏のリーダー」として、自由主義社会を守る役割を日本に期待しているということなのである。

 日本の役割は日本人が思う以上に大変重く、期待値が高い。

 ロシアによるこれ以上の蛮行を止めるのに、軍事、経済、技術、復興の点で日本の力が大きく求められている。単に経済制裁だけすればいいというわけではないのだ。
 さらに演説のポイントとして、日本に対する非難が全くなかったことが挙げられる。これは演説の内容が非難だらけだったドイツとは様相が異なる。

 第二次世界大戦時、同盟を結んでいた日本とドイツではあったが、ゼレンスキー大統領の認識は違うようだ。日本はドイツと異なり、エネルギー政策の面で化石燃料を使っていても、その高い技術力で効率化を進め、現実的になり、原発を維持してきた点が評価されたものであるといえよう。日本の火力発電所の効率は世界一と言われている。

 さらに、日本のリサイクル技術や再生可能エネルギーの技術も世界トップクラスである。

 アイスランドの地熱発電は日本の技術が使われている。ペットボトルや金属のリサイクル率も世界トップクラスで、欧州の国々をしのいでいる。トヨタのハイブリッド車の技術を、欧州のメーカーは真似できない。

 ディーゼルエンジンを発電にも使うコージェネレーションシステム(熱源より電力と熱を生産し供給するシステムの総称。以下、コジェネ)は30年以上前から商業施設で使われており、私の父は一時期、技術開発に関わっていた。そんな昔からコジェネを幅広く活用してきたのは日本ぐらいのものだ。さらに50年以上前から欧州の厳しい排ガス規制の基準も乗り越えてきた。

 資源の少なさを技術革新でカバーしてきたのが日本である。知恵と努力の国だ。度重なる災害も、原爆や空襲による破壊も乗り越えた。そんな国は、非白人圏では日本だけなのだ。
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日本は「非白人圏のリーダー」【谷本真由美:WiLL HEADLINE】

実は日本に対する欧州の期待は非常に高い―
 ドイツは経済を重視するあまり、価格的に手頃のロシアの天然ガスや原油をどんどん輸入し、依存度を高めてきた。ドイツは安いエネルギーを使って工業生産を行い、ユーロ圏における為替の有利さの恩恵も受けて、近隣国に自国の製品を売りつけ儲けてきた。ロシアの増長はドイツが金を払い続けたことも原因の一つである。ドイツの自己中心的な態度がウクライナの人々を死に追いやったとも言える。

 そんなドイツは、欧州各国から恨みを買っている。だからこそ、経済的な合理性だけを追求しなかった日本は、ゼレンスキー大統領からの批判を免れることができたわけだ。

 非白人圏の国で、民主主義国家であり、自由主義の国として認められているのは日本だけなのだ。復興のノウハウや最先端技術への期待も大きい。

 この重みを理解し、民主主義を踏みにじるロシアに対して、日本はどのような態度をとるべきか、今一度よく考えなければならない。
谷本真由美(たにもと まゆみ)
1975年、神奈川県生まれ。シラキュース大学大学院にて 国際関係論および情報管理学修士を取得。ITベンチャー、コンサルティングファーム、 国連専門機関、外資系金融会社を経て、現在はロンドン在住。日本、イギリス、アメリカ、イタリアなど世界各国で就労経験がある。ツイッター上では「May_Roma」(めいろま)として舌鋒鋭いツイートで好評を博する。

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