20世紀最高の政治家 李登輝
李登輝元総統が亡くなった。アジアに位置する民主主義国日本にとって、今日の台湾はその民主主義を守っていくための実に重要なパートナーでもあるが、この民主台湾を築いた巨人が李登輝氏である。
日本が戦争に敗れて台湾から引き揚げていった後に、一時的な占領統治のために中国の国民党軍が台湾に入ってきた。つまり国民党軍の扱いは日本本土を占領統治した米軍と同様に、新体制が決まるまでの一時的な統治になるはずだった。
ところが進駐してきた国民党軍は台湾にずっと居座り、台湾を経済的に搾取する場として利用し続けた。つまり当時の台湾は、日本統治時代から台湾に住む台湾人(内省人)を、国民党軍としてやってきた中国人(外省人)が支配する構造になっていた。これは、インドにおいてイギリス人がインド人を支配していたのと変わらない植民地的な国家構造だったことを意味する。
台湾では内省人の抵抗を抑え込むために国民党が戒厳令を敷き、選挙を認めない独裁政治が推し進められていた。この植民地的支配構造を打ち破って、内省人と外省人の区別なく平等に普通選挙に参加できる民主主義国へと台湾を変えていったのが、李登輝氏である。インドにおいて、イギリス人とインド人がともに平等の立場で普通選挙が行われるような国家を、話し合いによる説得で地道に作り上げたようなイメージである。
こうして見た場合に、李登輝氏が行ったのは実に平和的な無血革命とも呼べるものだということが理解できると思うが、そこに至る道がどれほど困難なものであったかは、言うまでもないだろう。しかも、アメリカがソ連に対抗する勢力として共産中国を支援する立場に回り、将来的に台湾が中国に併呑されても黙認しかねない状況になっていた。
そもそも台湾の支配層を形成する国民党は大陸中国との統一を目指す勢力でもあった。こうした中で独立を守り、民主化を果たすべく台湾を導いていったのが李登輝氏である。李登輝氏は文字通り20世紀最高の政治家である。
日本が戦争に敗れて台湾から引き揚げていった後に、一時的な占領統治のために中国の国民党軍が台湾に入ってきた。つまり国民党軍の扱いは日本本土を占領統治した米軍と同様に、新体制が決まるまでの一時的な統治になるはずだった。
ところが進駐してきた国民党軍は台湾にずっと居座り、台湾を経済的に搾取する場として利用し続けた。つまり当時の台湾は、日本統治時代から台湾に住む台湾人(内省人)を、国民党軍としてやってきた中国人(外省人)が支配する構造になっていた。これは、インドにおいてイギリス人がインド人を支配していたのと変わらない植民地的な国家構造だったことを意味する。
台湾では内省人の抵抗を抑え込むために国民党が戒厳令を敷き、選挙を認めない独裁政治が推し進められていた。この植民地的支配構造を打ち破って、内省人と外省人の区別なく平等に普通選挙に参加できる民主主義国へと台湾を変えていったのが、李登輝氏である。インドにおいて、イギリス人とインド人がともに平等の立場で普通選挙が行われるような国家を、話し合いによる説得で地道に作り上げたようなイメージである。
こうして見た場合に、李登輝氏が行ったのは実に平和的な無血革命とも呼べるものだということが理解できると思うが、そこに至る道がどれほど困難なものであったかは、言うまでもないだろう。しかも、アメリカがソ連に対抗する勢力として共産中国を支援する立場に回り、将来的に台湾が中国に併呑されても黙認しかねない状況になっていた。
そもそも台湾の支配層を形成する国民党は大陸中国との統一を目指す勢力でもあった。こうした中で独立を守り、民主化を果たすべく台湾を導いていったのが李登輝氏である。李登輝氏は文字通り20世紀最高の政治家である。
日本の対応~李登輝氏の追悼は「日本精神」で
さて、亡くなった台湾の李登輝氏の葬儀に、生前に交流の深かった森元総理が参列する意向が日本政府から示された。
対中関係を懸念する外務省の反対を押し切って、李登輝氏に日本滞在ビザの発給を決めた森氏が参列するというのは、国際的なメッセージという観点からして、好ましい選択であろう。元総理という格の高さも含めて、こうした点では日本政府を評価したい。
だが、森氏に対して「政府特使」などの肩書をつけないという方針は、あまりに情けない話である。
現在中国は世界中を敵に回すような動きを示しているが、だが現実には当然ながら世界中を敵に回すことはできない。こういう観点から考えれば、今は絶好の「攻め時」であると言えるのに、何を遠慮しているのだろうか。今こそ、アメリカ・イギリス・オーストラリアなどと調整した上で、揃って「政府特使」を派遣すべきタイミングだと、どうして考えないのだろうか。
さて、李登輝氏が「あなたはどうして台湾の民主化を実現できたのでしょうか」と尋ねられた時に、「それは私が日本人だからです」と答えたことがある。それはどういう意味なのだろうか。
李登輝氏は、「はい」という素直な心、「すみません」という反省の心、「私がします」という奉仕の心、「おかげさま」という謙虚な心、「ありがとう」という感謝の心からなる「日常の五心」が書かれた湯呑を偶然見つけた際に、大いに興奮されたという。「日常の五心」の根底には、心の内から響いてくる本物の正しさにまっすぐ向き合い、これに沿って自らの生を真剣に進めるという人間のあり方がある。私たちが尊敬する李登輝氏の生き方も、まさにそのようなものであった。
そして、それは李登輝氏が愛してやまない「日本精神」であり、戦前の日本人が実に大切にしてきたものでもあった。李登輝氏はこの「日常の五心」=「日本精神」を大切に懸命に努力を続けていった結果として、どう考えても起こりえないような無血革命を成功させた。
李登輝氏の葬儀に参列するに際して、日本政府が「日本精神」に回帰する姿勢を示すことが、氏に対する何よりの供養ではないか。森元総理に政府特使として堂々と参列していただき、李登輝氏の業績をきちんと顕彰するくらいのことを、日本政府は行うべきだと考える。
対中関係を懸念する外務省の反対を押し切って、李登輝氏に日本滞在ビザの発給を決めた森氏が参列するというのは、国際的なメッセージという観点からして、好ましい選択であろう。元総理という格の高さも含めて、こうした点では日本政府を評価したい。
だが、森氏に対して「政府特使」などの肩書をつけないという方針は、あまりに情けない話である。
現在中国は世界中を敵に回すような動きを示しているが、だが現実には当然ながら世界中を敵に回すことはできない。こういう観点から考えれば、今は絶好の「攻め時」であると言えるのに、何を遠慮しているのだろうか。今こそ、アメリカ・イギリス・オーストラリアなどと調整した上で、揃って「政府特使」を派遣すべきタイミングだと、どうして考えないのだろうか。
さて、李登輝氏が「あなたはどうして台湾の民主化を実現できたのでしょうか」と尋ねられた時に、「それは私が日本人だからです」と答えたことがある。それはどういう意味なのだろうか。
李登輝氏は、「はい」という素直な心、「すみません」という反省の心、「私がします」という奉仕の心、「おかげさま」という謙虚な心、「ありがとう」という感謝の心からなる「日常の五心」が書かれた湯呑を偶然見つけた際に、大いに興奮されたという。「日常の五心」の根底には、心の内から響いてくる本物の正しさにまっすぐ向き合い、これに沿って自らの生を真剣に進めるという人間のあり方がある。私たちが尊敬する李登輝氏の生き方も、まさにそのようなものであった。
そして、それは李登輝氏が愛してやまない「日本精神」であり、戦前の日本人が実に大切にしてきたものでもあった。李登輝氏はこの「日常の五心」=「日本精神」を大切に懸命に努力を続けていった結果として、どう考えても起こりえないような無血革命を成功させた。
李登輝氏の葬儀に参列するに際して、日本政府が「日本精神」に回帰する姿勢を示すことが、氏に対する何よりの供養ではないか。森元総理に政府特使として堂々と参列していただき、李登輝氏の業績をきちんと顕彰するくらいのことを、日本政府は行うべきだと考える。
1964年、愛知県出身。私立東海中学、東海高校を経て、早稲田大学法学部卒。
日本のバブル崩壊とサブプライム危機・リーマンショックを事前に予測、的中させた。
現在は世界に誇れる日本を後の世代に引き渡すために、日本再興計画を立案する「日本再興プランナー」として活動。
日本国内であまり紹介されていないニュースの紹介&分析で評価の高いブログ・「日本再興ニュース」( https://nippon-saikou.com )の運営を中心に、各種SNSからも情報発信を行っている。
近著に『左翼を心の底から懺悔させる本』(取り扱いはアマゾンのみ)。