ナザレンコ・アンドリー:移民解禁で中国"日本省"への道

ナザレンコ・アンドリー:移民解禁で中国"日本省"への道

台湾有事は「日米有事」

 安倍元首相が「台湾有事は日本有事であり、日米同盟の有事でもある」「軍事的冒険は経済的自殺への道だ」(12月1日・オンラインの講演)などと発言し、中国外務省の汪文斌報道官から抗議された。

 島国であり、歴史上200年以上の鎖国を経験した日本には、いまだに閉鎖的な考え方が広く普及しており、「直接関係のない国際問題に巻き込まれるのは嫌だ」と考えている人が少なからずいる。それには、日本から主体性を奪うことを目的にしていたGHQによる洗脳教育、多くの縛りをかけ続けている憲法の影響も大きいだろう。しかし、近年の中国の経済力・軍事力向上が国際情勢にもたらす変更を考えると、これからは消極的でいられないことは目に見えている。そういう意味では、安倍発言の背景にある同盟国との連帯強化を重視する思想は、より多くの人に共有されるべきだと強く感じた。
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安倍首相の発言に中国政府は「必ず頭を割られて血を流すだろう」と批判。さすが世界のハンシャ、脅し文句はまるで「殺人予告」だ

移民解禁で日本は中国領土になる

 中国が台湾のみを狙っているかというと、まったくそうではない。まず、たしかに中国大陸による台湾支配が長かった歴史的事実があるが、固有の領土ではないことは明らかだろう。本来は多数の先住民族が住んでおり、その民族らは植民地にしようと乗り込んできた大陸人に農地や水源を奪われ、山奥に押し出されたわけだ。これは「過去だからできた」話ではなく、いま現在でも中国共産党の国家政策として東トルキスタンやチベットで同じような植民地化が続いている。世界各国に多くの中国人が移住し、土地購入などを進めているのもその一環であろう。「漢族が多く住んでいれば、そこは中国領土だ」というのは中国共産党が受け継いでいる認識であり、その理屈が通れば、「外国人労働者の受け入れ拡大」という実質的な移民解禁を進めている日本も狙われるに違いない。
 東アジアにおいて日本の味方といえる国は台湾しかない。ロシアは北方四島を不法占領しているし、北朝鮮はいまだに拉致された日本人を返さず、日本に向けてミサイルを飛ばしており、中国は毎日のように領海侵犯を続けている。韓国も一応、形式上は敵国ではない分類に入るが、反日感情が反共感情より強いうえ、政権が変わるたびに外交スタンスもコロコロ変わる国なので、信頼するに値しないと断言してもいいだろう。つまり台湾が陥落してしまえば、日本は包囲状態になる。

 もちろん在日米軍という強力なカードはあるが、中国が台湾に対する圧力を強めるのと同時に、ロシアもウクライナ国境周辺に軍隊を集結させているため、連動して行動に出れば米軍の力が分散され、即時に十分な対応ができない可能性がとても高い。また、仮に台湾に対して友好的な気持ちを抱かないとしても、地政学の常識として、防衛線は本土からなるべく遠い所に置くべきである。

台湾を助けることは「民主主義」を守ること

 私自身もウクライナ人として、かつて味方を助けるために十分に動かなかったことを強く反省している。2008年、ロシアが旧ソ連の小国・ジョージアに対する侵略戦争を始めたとき、ロシア海軍はウクライナ南部のクリミア半島にある基地から出動してジョージアに向かった。しかし、多くの人は「われわれと関係ない戦争」、「他国のためにわが兵が死ぬことなどあってならないこと」、「ジョージアは小さいけど、ウクライナは規模が全然違うからロシアがこちらを襲うことはない」などと考えて、立ち上がらなかった。
 
 そのような消極的な世論に影響を受けたウクライナ政府も、限度的な協力しかできなかったし、他の欧米諸国も遺憾表明のみ。そうして6年後、ロシア軍は、今度はウクライナ人を殺しにやってきたのであった。あの時に国際社会がしっかりと団結し、ロシアに対抗していれば、一体何万人の命が救われただろうと思うと心が痛む。

 冒頭でも述べた通り、中国は日本をも狙っている。対岸の火事ではないのだ。
 
 ここで台湾を守らなければ、いずれ日本も後悔することになる――「あの時に台湾を」と。
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中国に毅然とした態度を示す台湾。台湾の次は沖縄を取りに来るという意味では、「台湾防衛=日本防衛」ということでもある
ナザレンコ・アンドリー
1995年、ウクライナ東部のハリコフ市生まれ。ハリコフ・ラヂオ・エンジニアリング高等専門学校の「コンピューター・システムとネットワーク・メンテナンス学部」で準学士学位取得。2013年11月~14年2月、首都キエフと出身地のハリコフ市で、「新欧米側学生集団による国民運動に参加。2014年3~7月、家族とともにウクライナ軍をサポートするためのボランティア活動に参加。同年8月に来日。日本語学校を経て、大学で経営学を学ぶ。現在は政治評論家、外交評論家として活躍中。ウクライナ語、ロシア語のほか英語と日本語にも堪能。著書に『自由を守る戦い―日本よ、ウクライナの轍を踏むな!』(明成社)がある。

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