静かなる侵略が進行中

平野 国土の買収問題について宮本さんとここ10年、ずっと追いかけ続けています。

宮本 外国人勢力による北海道や対馬、沖縄諸島を含めた離島の土地買収が加速度的に進んでおり、観光施設だけでなく、農地や森林などの水源地、自衛隊基地周辺や太陽光発電用の土地が狙われています。しかも、その多くが中国人という実態がわかってきた。

平野 まさに〝静かなる侵略〟が進行中です。1960年代以降、日本の辺境で進んできた「過疎化→無人化」という現象が、「外国化→中国化」という現象に置き替わるようになった。危機感を覚えて、2人で『領土消失』(角川新書)という本も出し、国会議員にも口酸っぱく提言してきました。ところが、どれだけ警鐘を鳴らしても、立法府も政府もその重い腰をあげる気配がまったくない。

宮本 悔しさしかありません。平野先生が改めて『日本はすでに侵略されている』(新潮新書)を上梓されましたが、多くの日本人にとって啓発の書となってほしい。

平野 政府発表(2019年)によると外資による山林の買収面積は全国で6800ヘクタール、農地に関しては14ヘクタールです。ただ、発表された数字は氷山の一角ではないでしょうか。届け出をしなかった買収やダミーを使って名義を日本人にしたもの、外国法人の子会社(日本法人)を名義にして登記した土地がほかにもごまんとある。ですから、新型コロナウイルスと一緒で、公式発表の数字の10倍と見たらいい。

宮本 北海道だけに絞ると、東京ドーム約531個分の土地が買収されています(北海道庁発表/2006年~2017年)。でも、この中に外資企業による太陽光発電用の土地購入分については、まったく入っていない。もちろん用地買収に関して国籍を問うていないし、北海道電力や経産省もどこの国の参入なのか、フォローしていません。

平野 無国籍状態です。

宮本 1つ怖い話があります。ある韓国系企業が新千歳空港の近くにひと山分を購入し、そこに太陽光発電所を建設しました。よくよく調べてみると、実はその背後に中国系企業がいたことがわかったのです。ただ、表には一切出てきません。

平野 太陽光発電の制度も問題だらけでしょう。2017年時点で認定されたソーラー発電は、資源エネルギー庁によると、ワット数にして7900万キロワット。買収された土地の面積は、設備認定の量から推定して全国で約20万ヘクタール。このうち外資は3~4割程度と見られます。

宮本 パネルの耐用年数は20年と言われていますが、後処理について経産省に聞いたら、パネルだけ処理すればいいし、残った土地は好き勝手に利用すればいいと。

平野 パネルの処理さえ怪しいです。放置したままだと最終的にはゴミ捨て場ですよ。

宮本 地ならしされていますから、工場をつくろうが解体ヤードをつくろうが、まったく構わない。それに民法では「時効取得」が規定されています。〝悪意〟(他人の所有地であることを知っている)の場合は20年ですが、〝善意〟(他人の所有地であることを知らない)の場合は10年で土地を取得できる。
 たとえば、ひと山の中で所有者のわからない土地がたくさんあるとします。そこに外国籍の人間が「誰が所有者か知りませんでした」と、素知らぬ顔して10年間そのまま住み続けて、〝善意〟であるとみなされれば所有権が移転します。農水省にこの法律の是非について質問したら、「過去にそんな例はないから、対応の想定はしていない」という答えでした。

平野 そんなバカな(苦笑)。

宮本 今までなかったから、これからもないかと言ったら、そんなことは
ありません。

中国32番目の省?

平野 日本の法制度に精通した外国人弁護士が、これから増えるに違いありません。彼らの多数が優秀な弁護士だったら、どうなるか。日本の法制度を活用すれば、既存の住民を合法的に追い出すこともできます。

宮本 北海道で土地を買収している、ある中国人は「北海道で条例が制定されても、具体的な罰則規定がないから、いくらでもつくってください」と。条例をつくれば規制がかかると思っているのは、日本人特有の〝性善説〟に立っているからです。

平野 核心的な勢力が法曹界に現れる可能性は大です。そして、日本はいつの間にか追われて少数民族になっていく。

宮本 そういう状況が目前に迫っていることを当事者である日本人が気づいていない──まさに悲惨です。目覚めたときには後戻りできません。

平野 憂慮すべきなのは、優秀な人材が国家の未来を考える政治家や官僚になろうと思わないことです。給与条件がより優る外資系企業やIT企業を選んでしまいます。首都圏の有名進学校の御三家では、使っている教科書や教師が左がかっているという話が聞こえてきていますが、今の憲法学界も圧倒的に左派が優勢ですね。

宮本 3代、4代先の日本のあるべき姿を見据えてほしい。1995年、李鵬首相が、オーストラリアのキーティング首相に「日本という国は、40年後(2035年)にはなくなってしまうかもしれない」と語ったそうですが、寝言ではありません。中国は強かに、着実に日本の土地買収を続けていますから。一部の中国メディアでは、「北海道は2027年には中国の32番目の省になる」とも書いています。

平野 2005年には「北海道人口1000万人戦略」という構想が話題になりました。国交省と道開発局が主催する講演会で発表されたもので、北海道チャイナワークの張相律代表が提唱したのです。

宮本 当時の資料を見ると、札幌に大中華街をつくりましょうと威勢のいい話が出ました。ある中国人は「入管法を改正しましょう」と声高々に訴えていた。
 実際、2018年5月、李克強首相が北海道を訪問した後、不思議な現象が起きています。菅官房長官がある講演会で入管法改正について仄(ほの)めかしたのです。実際に半年後に入管法が改正されています。また、下村博文文科大臣(当時)は「カジノは北海道で有力だ」とも言い出した。政界・財界の動きが北海道新聞で連日報じられるほどでした。さらに北海道産のお米が正式に中国に輸出されることも決まり、記念式典も開催されています。

平野 2019年には王岐山副主席も来ています。虎視眈々(こしたんたん)と北海道視察を続けているとしか思えません。

宮本 北海道からしたら、習近平が来ることも大歓迎でしょう。安倍首相は「完全に正常な軌道へと戻った日中関係を新たな段階へと押し上げていく」と言っていますが、何か裏のつながりがあるような気がしてなりません。

諦めの境地か

平野 政府だけでなく、国民全般も当事者意識に乏しく、思考停止状態です。どうやったら関心を高くしてくれるのか、悩みどころです。かねがね気になっているのですが、税金問題を全面的に訴えるべきではないかと。現在、法務省・国交省等の政策として相続登記の義務化を進めていて、それによって公共事業がやりやすくなり、相続税も徴収しやすくなります。ところが、一つ抜けている面があります。それが、外国人による土地所有問題です。外国人がペーパーカンパニーをつくり、日本の土地を買うのは実に簡単ですが、外国で転売や相続があったら、そういった土地資産はもう未来永劫、税金を徴収することができない。

宮本 法の抜け穴ですね。

平野 ペーパーカンパニーが土地を転売しても、報告義務なんか実質ありません。所有者不明のままです。だから譲渡税や所得税、固定資産税を徴収する相手が不明です。相続も日本人であれば、一世代で一度相続税が発生することがありますが、中国や香港には相続税なるものがありません。

宮本 日本人ばかり損をする。

平野 国ごとの対応となると、法整備を含め制度づくりが煩雑になる。そこで手つかずのまま、ズルズルと現状維持を続ける。これは健康保険料を払わないまま外国人が日本で治療を受ける仕組みと同じです。少子高齢化で地方の過疎化は加速する一方。だから外国人を受け入れて、今、この時点を何とか生き延びていこう。そんな見切り宣言をしているのではないか。そう思ってしまいます。だから、さあ、土地をどんどん買ってください、移民もどんどん入れますよ、と。日本のガバナンス(統治・主権)が薄まるばかり……。もう諦めの境地なのか(苦笑)。

宮本 都内の不動産会社から聞いた話ですが、あるマンションのオーナーが日本人に1部屋貸したところ、中国人に又貸ししたそうです。しばらくしたら、まったく見ず知らずの2人の中国人がオーナーのところに来て、「マンションを買ったので、我々のものだ」と言ってきた。オーナーはびっくりして又貸しした中国人に連絡を取ろうとしたら、本国に帰ってすでに日本にはいない。彼らは「日本には登記義務がないから売買は成立している」と主張し、オーナーは困惑するばかり。こういったケースが全国各地で頻発しているそうです。

平野 日本の法律は不動産所有の国外化について、いかに無頓着であるかがわかります。

宮本 今、地方のホテルでは「分譲ホテルコンドミニアム」が流行っています。1室を購入し、利用しない期間は客室として賃料を得る制度です。ここに外国人資本が大量に入ってきています。たとえば、ニセコや長野でホテルを建て、部屋の分譲を始めると、中国人がほとんど買い占める。しかもオーナーは本国にいて、管理だけは日本企業です。オーナーの本拠地は中国ですから、固定資産税や住民税、法人税などからするりと逃れることができる。

平野 うまい脱税方法と言えます。

宮本 こうやって、あらゆる場面で日本の法律が適用されなくなれば、地方自治は崩壊するしかありません。実際に、今やニセコでは中国系資本がリゾート地の約60%以上を買い占めています。じゃあ、誰か損をしているかといったら、これまた表立っては誰も出てこない。土地を売った当事者は具体的に金銭を得ていますし、役所は不都合な事実は隠し通しますから。ここが問題なのです。

平野 当事者が消えています。

宮本 ところが長い目で見ると、地域全体が空洞化し、果ては喪失してしまいます。

平野 発信力の問題もあります。国税庁や東京都など巨大組織であれば、税の問題にしても全力を挙げて対策を打つだろうし、周知徹底もできるでしょう。でも地方だと税務担当者はせいぜい2人か3人。徴税のプロなんていませんし、すべての税制度に精通するなんて土台無理な話です。地方税を徴収できなかった場合は、「不納欠損処理」という制度があります。徴税が無理だと判断したら、町議会で審議をかけて、その案件はなかったことにして即時消滅させるか、あるいは時効(3~5年)を待って消滅させることができます。

宮本 土地そのものも闇に葬られてしまう。

平野 固定資産税を含む地方税全体の不納欠損額は年間1376億円(2012~17年平均)。率に換算すると地方税全体の0.37%だそうですが、この数値の自治体ごとの積み上げ根拠がなぜか公表されておらず、実態はブラックボックスそのものです。

骨抜きにされる特命委

宮本 ただ、一方で外国人購入への対策を実行している自治体も存在しています。2018年3月、北海道新得町の狩勝牧場が閉鎖されました。そこで浜田正利町長はじめ町議会は外国資本の土地購入を懸念し、2億円で約370ヘクタール分を購入したのです。浜田町長は外国資本が国内の不動産を自由に買収できる現状に危機感を覚えていて、「国のほうで制限を設けてほしい。地方公共団体でやれと言っても無理な話ですから」と訴えていました。そこで、この話をある国会議員に伝えたんです、地方でもこんな取り組みをしていると。答えは「あ、そう、良かったね」──まるで他人事(苦笑)。

平野 ひどい話だなあ(笑)。

宮本 領土問題について話し合っている場で、そんな冷たい反応だったから腰砕けです。

平野 民主党政権時代には「外国人による土地取得に関するプロジェクトチーム」があり、実態を報告したことがあります。でも、なんら動きがありませんでした。民主党で思い出すのは、山田正彦元農林水産大臣の政治資金パーティーのとき、小沢一郎さんが来ていました。ある幹部が小沢さんとの立ち話で「韓国人が対馬の土地を買っている。大変な事態です」と訴えたところ、小沢さんは「対馬が買われるなら、日本人は済州島を買ってしまえ」と言ったとか。韓国にも外国人土地法があるので、そんなことはできないのですが。

宮本 不勉強極まりない。

平野 対応できない理由はいろいろあげられると思います。でも、何ができるか──その議論さえしていないのはおかしいし、憤りすら覚えます。

宮本 ある地方議員も「現状はわかっています。でも、選挙のとき、領土問題を訴えたら、国会議員に潰されてしまう」と。これが現実です。

平野 国のことを憂えると応援してもらえない。自民党政権になってから「安全保障と土地法制に関する特命委員会」が立ち上がり、最初は威勢よくスタートしたものの、ほどなく尻すぼみに。政治家の性でしょうか、1期、2期当選の若い議員は元気いっぱいでも、政府の重要役職につくと、あっという間に人間が変わってしまう(笑)。市町村長が北京を訪問して帰国すると、似たような変貌ぶりを示すのと同じ。

宮本 ある議員でも「よし! 私が何とかしよう」と言って、頼りにしていると、突然豹変し、顔も合わさなくなる。むしろ、こそこそ逃げ出す始末。

平野 選挙ばかりを考えるサラリーマン的政治家が多いのです。先の特命委員会は3年以上休眠し、2017年秋、人事も刷新。超党派の「日本の領土を守るため行動する議員連盟」会長を務める新藤義孝議員が委員長となり、山谷えり子小委員長で再スタートしました。再開直後は活発な動きを見せていたのですが、2018年以降、年に1回だけの会合へと。

宮本 奄美大島に視察も行っているんですけど。

平野 慰安旅行だったんでしょうか(笑)。本格的に規制の動きを始めようとすると、タイミングよく議員のゴシップ記事が流れたりして特命委が骨抜きにされてしまうのです。そう言えば、日経新聞が「外資の土地取得制限 新法検討」(1月22日付)について報じていました。米軍や自衛隊の関連施設、原子力発電所の周辺など安全保障上の懸念がある地域などを対象に事前審査などを求める方針だそうですが、これまで何度も打ち上げられたような観測気球でしょうか。地域を限定すると地域格差などが生まれますし、実現可能性を含め、なかなか頭の痛いところです。

国益よりも省益

宮本 日本はすべての国や人々に性善説で対応し、世の中には悪い人間がいることを理解していない気がします。

平野 戦後教育で「世界は1つ。外国とは仲良くしていくことが一番大切です」と70年以上言い続けてきました。その弊害が出ているようです。大人になった政治家が事の要諦を忘れ、ディズニーランドの中にいるみたいです。

宮本 対馬は韓国、北海道・沖縄は中国に買い占められている事実を提起すると、みな、口々に「中国・韓国はけしからん、出ていけ」と感情的に言い放つ。でも、この問題は、実は日本人自身に問題の根があるのに、そこに気づいていない。

平野 スイスのように、自国は自分たちの手で守るしかありません。

宮本 ところが、その意識が希薄になっているので、責任の所在を外に求めてしまいます。2年ほど前、朝鮮半島有事勃発の噂が出ていたころ、対馬の人たちは困惑していました。有事が勃発したら、おそらく多くの難民が対馬にやってくることになる。住むところがなくなり、乗っ取られてしまうと。北海道も広範囲の土地を中国人に買われている。
 そこに住んでいる中国人の中に新型コロナウイルスの保有者がいたらどうするのか。治外法権化し、中国の自治区とされたら、政府や厚労省は介入できません。東日本大震災直後の新潟市体育館がそれに近い状況でした。市の施設に集められた約1万人の中国人への立ち入り調査権の行使が制限されたわけですから。

平野 租界的状況です。安全保障は常に最悪の事態を想定する必要がありますが、日本政府のやっていることは目先のことばかり。

宮本 新型肺炎対策だって後手後手。アメリカは明快に対応しており、その差は歴然としています。

平野 植民地的発想から抜け切れていません。戦後は経済活動だけすればいいという価値観で生きてきましたが、将来を考えるべき人たちも同じく目先だけ。私も元農水官僚だったのでわかりますが、「国益」「国家」を口にすると、まわりから失笑されたものです。「省益」であれば何にも言われない(笑)。
 公務員は60歳まで身分を保障されて、生活もできる。実態を把握しているのに口を噤んでいるのは、理解に苦しみます。行政としてやるべきことを、政治家に訴えるべきです。一方で、少数ですが、先の新得町のように地方公務員の中には問題意識を持っている人がいる。そういう有志を集めて、少しでも前進したいものです。

宮本 メディアも同様です。

平野 地方を丹念に歩いて、事実をしっかり報じてほしい。人々が目を背けたくなるような事実があったとしても、提示しなければなりません。それが「報道の自由」を背負ったマスコミの使命ではありませんか。


宮本 雅史 (みやもと まさふみ)
1953年、和歌山県生まれ。慶應義塾大学法学部卒業後、産経新聞社入社。90年、ハーバード大学国際問題研究所に訪問研究員として留学。93年、ゼネコン汚職事件のスクープで新聞協会賞を受賞。その後、書籍編集者、ジャーナリスト、産経新聞社那覇支局長を経て、現在、産経新聞東京本社編集委員。主な著書に『報道されない沖縄』(KADOKAWA)、『「特攻」と遺族の戦後』『海の特攻「回天」』(共に角川ソフィア文庫)、『歪んだ正義』(共に角川文庫)、『電池が切れるまで』(角川つばさ文庫)など。

平野 秀樹 (ひらの ひでき)
1954年、兵庫県生まれ。九州大学農学部卒業後、農水省入省。国土庁防災企画官、大阪大学医学部講師、環境省環境影響評価課長、林野庁経営企画課長、農水省中部森林管理局長、東京財団上席研究員を経て、現在、姫路大学特任教授、国土資源総研所長。博士(農学)。専門は辺境社会学(国土、離島・地域再生)。主な著書に『日本はすでに侵略されている』(新潮新書)、『日本、買います』(新潮社)。共著に『領土消失』(角川新書)、『奪われる日本の森』(新潮文庫)など。

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